白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

71 / 79
第六十八話

「ねぇ、何かな、あれ。」

「発光してる?いやでも、あれはもう撃墜判定を喰らったやつでしょ。」

「そうだけど・・・、なんかいやな感じがする。」

「確かに。」

「おい!あそこ!なんだあれは!」

妖精さんが声を張り上げる。空に目を向けると、曇っている空の一部が、明るくなってる。

「なんなの⁉あれ!おかしいでしょ!確かに大破させたはずだよ!」

「最後の雷撃機と通信を取って!攻撃を許可するって!」

「いいの⁉下手したらルール違反で私たちの負けよ!」

「いいでしょ!それに、先に違反したのは向こうなんだから!」

「もう、仕方ないか・・・。」

戦闘で、撃墜判定になり、引き返していた航空機の一部が、また戻ってくる。それらは例外なく発光している。

「対空砲じゃ、届かないわね。」

「直掩機に攻撃してもらう?」

「いや、演習弾しか積んでないから・・・。ルール違反してるやつに、撃墜できない弾をいくら当てても意味ないわよ・・・。」

「確かにね。」

「それよりも、なんか近づいてきてるぞ。」

「そうね・・・。念のため、離れておこう。」

「電探は何が映ってるの?」

「航空機しか映っていない。だが、妙に固まっている。」

「多分、発光している航空機が集まっているんでしょうね。・・・念のために、対空砲には実弾を装填しておいて。」

 

***

 

「まずい・・・。龍驤のあれはどうやって止めればいいんだ・・・。」

「なんですか?あれは・・・。」

「龍驤の持つ固有能力、神龍の逆鱗だよ。龍驤は今、結構キレてる。そうだ・・・、なぁ白霜、悪いが、龍驤を止めに行ってもらえないか・・・?」

「行くにはいいが・・・、間に合わないと思うぞ?機関がつぶれること覚悟で全力で行っても、一時間ぐらいはかかる。」

「そうか・・・。」

「まぁ・・・やってみる。多分機関がつぶれるから、その時はよろしく。」

「あ、ああ。わかった。ありがとう。」

それから、白霜は海に飛び降りて、走っていった。

「いや・・・速くね?」

 

***

 

「波が高いな・・・。走りづらい。」

天気はかなり悪くなってきている。風も強くなってきた。

「どこまでもつか、何とかなるかな。」

 

***

 

もうすぐそこまで来てる。結局何なの⁉あれは!

「来るぞ!」

「高角砲撃て!」

演習弾ではなく、実弾を込めた高角砲で射撃するが、通用している感覚は全くない。

「突っ込んでくる!」

機関出力を最大まで上げ、全力でよける。雲から姿を現し、一瞬だけ見えた。もしかして、あれは、龍?あの二人・・・名前的には、龍驤の固有能力だっていうの⁉

その龍が、海に突っ込む。ギリギリで直撃は免れたが、あまりの衝撃に体が吹き飛ばされる。

「機関を改装しておいて本当に良かった!前のじゃ避けられなかったよ。」

龍は、空に昇っていく。龍が突っ込んだ後の海面付近には、蒸気のようなものが立ち込めている。

「本当に何なの?対空砲でも全然落ちないし。」

再び、龍が突っ込んできた。必死に足を動かし、ぎりぎりでよける。

「あっつい!海水が過熱されてる!火傷しちゃうじゃない!」

やはり、かなりの熱を持っている。あの光は炎だったのか。瑞鶴の方を見ると、何とか避けれているようだ。だが、対空砲は何の効果もない。これでは、だんだん追い詰められていくだけだ。何か、何か状況を変えなければ。だが、向こうまで行くのには時間がかかるし、あの雷撃機がどうなったのかは、全然わからない。彼らに賭けるしかないのだが・・・。

「また来るぞ!」

急旋回をしながら、何とか避ける。海面を転がりながら衝撃を受ける。

「暑い・・・。」

この三回の攻撃だけでも、周囲の海水はかなり加熱されて、暑くなってきた。

「少し離れないと。」

そういえば、瑞鶴、というか、爆撃隊は実際に、龍驤に爆弾を直撃させたのだろうか。直撃させていなければ、または、大破していなければ、雷撃隊が魚雷を外した瞬間に、攻撃能力の喪失により、私たちの負けとなる。いや、引き分けか?でも、向こうがまだ攻撃能力を保有していたら・・・。それこそ私たちの負けだ。いやでもその前に、向こうがルール違反したか。うん。撃墜判定の機体を攻撃に使ってるから。

「また来るぞ!」

四回目の攻撃をよける。そろそろ慣れてきた。タイミングを見て、急旋回から一気に離れれば何とかなる。攻撃パターンを変えられたら結構大変だが。しかし、こちらの艤装もあまりの熱でゆがみ始めている。対空砲の砲旋回装置が故障し、電探矢通信系統にも異常が出始めた。

「熱い・・・。」

冬に入ろうという時期なのに、汗が滝のように出てくる。熱の影響で空気が歪み、遠くをはっきりと視認できなくなった。これじゃあ距離感をつかめない。

「なんだ、なんか様子がおかしいぞ。上に昇っていかない?」

変なことを考えるんじゃなかったよ。パターンを変えてきた。今度は雷撃のコースか。

「どうやって避ければいいと思う?」

「分からんな。頼んだぞ。」

「無責任だなぁ。」

龍が低いところから迫って来た。どうやってよけるか、今は飛ぶしかないかな。タイミングを合わせて飛び越える。しかし、避けきることができず、炎の一部が艤装をあぶった。

「アッツ!」

「装甲が溶けた!ポンプで海水をくみ上げて冷却しろ!」

さらに状況が悪化して、高角砲や墳進砲の弾薬に誘爆し始めた。

「消火急げ!格納庫まで火が回ったら大変なことになるぞ!」

爆弾や燃料に引火したらとんでもないことになる。あの大敗の二の舞になるわけにはいかない。

「また来る!」

「機関全開!離脱!爆弾と魚雷の投棄急いで!」

「熱のせいで距離が分らない・・・。」

「高角砲!海面を撃って!」

生きている高角砲で海面を撃つ。水柱が上がり龍にかかった。水蒸気が上がり、ほんのわずかに炎が和らいだが、それは誤差範囲。勢いを全く落とすことなく突っ込んできた。

「面舵!」

直撃する寸前に舵を切って離脱を試みる。間に合わない。すると、艤装から身を乗り出した妖精さんが100番爆弾を投げ、それを水中で起爆させた。すぐ近くで爆発したため衝撃で体があおられ、バランスを崩す。しかし、対空砲で発生させた水柱とは比べ物にならないほど巨大な水柱が発生し、龍を飲み込んだ。水が沸騰する音が聞こえる。出てきた龍は炎がほとんど消え、かなり小さくなっていた。爆弾で吹き飛ばされたこともあって、回避に成功した。そして、通り過ぎた龍の様子がおかしい。

「どうしたんだろ?」

すると、炎が消え、集まっていた航空機がバラバラになった。中には、海面に落下してしまった機もいる。そこで、予備の通信機から通信が入った。

「演習、そこまでだ。龍驤、分かっているな?爆弾が五発直撃してさらに魚雷が六本直撃したんだ。すでに大破判定になっていたが、動けていた。だが、これ以上は言い逃れできない。白霜、行ってもらったところ悪いが、もう大丈夫だ。ありがとう。」

「そう、じゃあ俺は帰るよ。」

「瑞鶴と瑞鳳の勝利だ。演習終了、お疲れ様。」

・・・やっぱり、勝っていたか。

「はぁ・・・、円卓の騎士があんなんだとはね。」

「そうだね。さらに失望したよ。」

 




なんでこんなに極端な文字数の配分にしちゃうかなぁ…?

最近投稿ペースが執筆ペースにまったく追いついておらず、Googleドキュメント77ページ分たまっているので、一気に投稿しました。第3章も執筆を進めています。現在33ページ書きました。つまり、第2章があと44ページのこっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。