「あんたさ・・・、沈んだ方がいいんじゃない?」
「おい、流石にそんなことは言わない方が・・・。」
「なんやと⁉もう一度言うてみぃ!」
「だから、沈んだ方がいいんじゃないって。」
「流石に、あんなあからさまなルール違反はないでしょ・・・。あんたが勝手に行動してるぐらいなら私たちにもわからないけど、撃墜判定をもらった機体を復活させるなんてね。」
「昨日の時点で既にあやしかったがな。」
「これだから第一世代は・・・。」
「そうね。ここまで傲慢で自分勝手だとは思わなかったわ。」
「さて、これで分かったな。お前らがやってきたことすべてが無駄だったということを。全員が固有能力とかいうものを発動してもなお、数で劣る俺達に一切の損傷を与えることができなかった。まぁ、あんだけの損傷を負ってもなお、立ち上がったその意思は素直に称賛するが。」
「あなたに言われてもうれしくはないですね。」
「そうか。俺もそんなつもりで言ったわけじゃないから安心しろ。」
「はぁ・・・、二人も入渠してきたらどうだ?結構きついだろ。」
「そうですね・・・。それでは、失礼します。」
龍驤は、残った艦娘三人を睨みつけながら赤城に抱えられて歩いて行った。
「はぁ・・・、めんどくさいやつらばっかだな。本土は。」
「第一世代が筆頭だからね。子は親に似るとは違うかもだけど、そんな感じなんじゃない?軍令部なんかじゃあ、艦娘のお手本だなんて言ってるわよ。あんなんを手本なんかにしてたら、この国は終わるわよ。」
「三人は・・・、どうしてそんなに強いんだ?」
「戦い続けたから。」
「死ぬために戦っているから。」
「仲間がいつも沈むから。」
やっぱり、違う。この三人は、生きてきた環境が違う。そして、考え方の根本がが違う。それが、大きなずれを生み出して、今回の件につながったのだろう。おそらく、人間の悪意にも長期間触れている。それがさらに、この三人をゆがめてきたのだろう。
「じゃ、じゃあ、三人も休んでいいよ。」
それを聞いて、何も言わずに去っていった。
***
その夜
電話がかかってきた。
「もしもし。横須賀鎮守府提督の八代です。」
「おお、八代君か。遅れてしまったが、提督の着任、おめでとう。君はもう、戦闘で戦果を挙げているそうじゃないか。これからもその調子で頼むよ。」
「?ありがとうございます。それで、要件は何でしょうか。それと、どちら様でしょうか?」
「ああ、すまない、名乗っていなかったね。こちらは参謀本部だ。君には、あることを頼みたくてね。」
参謀本部、この組織は、軍令部とはかなり仲が悪い。それもそのはず。人権派の多く、艦娘との交流、受け入れに積極的な軍令部とは違い、参謀本部には人間主義派が多く所属し、艦娘の配備に否定的だ。その名前を聞いただけでもう、いやな予感がする。
「・・・何でしょうか?」
「ははは。そんなに警戒しなくてもいいだろう。なに、少し行きたいところがあるだけで。そこまでの護衛を頼みたいんだ。」
「護衛?なんのですか?」
「君のところの艦娘以外に、なにがあるというんだ。ちなみに、断ったらどうなるか、分かっているな?」
クソ、参謀本部の権力は、軍内部でもかなり強い。海軍と陸軍、そして空軍をつなぐ唯一の機関だからこそ、司令部や、各軍令部でも無視できない存在になっている。旧自衛隊の元幕僚長なんかがトップを務めているという話だ。
「目的地は、どこでしょうか。」
「硫黄島だ。」
「・・・申し訳ありませんが、我々は、九日後に北方へ行くことになっていまして、往復だけで四日から五日もかかる硫黄島へは・・・。」
「なにを言っている?十分間に合うじゃないか。」
「準備なども必要でして・・・。」
「安心したまえ。出撃は明日だ。そのこともちゃんと考えておる。」
「明日⁉あまりにも急すぎませんか⁉」
「そうか?あああと、君のところに所属している艦娘は、全員出撃させなさい。」
「全員⁉いくら何でもそれは無理です!中には昨日建造されたばかりの艦娘もいるんですよ!戦闘どころか、海上航行すらもあやしい状態でして。」
「はぁ・・・、君は、それでも提督なのかね?艦娘は船だ。船は水に浮かぶ。海上航行ぐらい大したことではないだろう。」
「なにを言っているんですか!彼女たちは人ですよ!そんなにいきなりできるわけないじゃないですか!」
「まったく・・・、もう埒が明かない。とにかく、出撃は明日。輸送艦をそちらに向かわせる。君も同行するんだ。」
「なにを・・・!撤回してください!今の横須賀鎮守府ではできることではありません!」
「そうか・・・、では、君を解任することもできるが、どうする?」
「私は、司令長官の命でここに来ました。あなた方の権限で私を解任することはできないと思いますが・・・。」
「なんの根拠もなしに、そんなことを言うと思うかね?まぁ、いきなりはさすがにかわいそうだから、一度だけチャンスをやる。明日、東京湾の入り口に輸送艦を回す。それに護衛をつけなさい。そして、君はボートで乗り込むこと。もし来なかったら、君は次の日からそこに居れなくなると思いなさい。分かったかな?」
あまりにも強引過ぎる。権力が強いばかりに。俺一人では、どうすることもできない。それに、今参謀本部に目をつけられたら、あとあと面倒くさいことに巻き込まれる。
「分かりました。作戦の詳細を教えてください。」
「やっと分かったかね。詳細はあとで送る。」
そういって、電話が切られた。
「クソ!自分勝手すぎる。早く誰かに相談しないと・・・。」
大本営にいる高雄や、司令長官の三河さんに電話をかけたが、まったくつながる気配がない。もしかしてと思い、周囲の電波状況を調べる。その結果は、レベル1。このレベルは、何かしらの妨害をしなければ出ない数値だ。どこまで用意周到なんだ。少しして、作戦の詳細が送られてきた。今ならいけるかもと思い、もう一度電話をかけたが、まったくつながらなかった。
「ダメか・・・。」
諦めて、詳細を読む。そして、全員を食堂へ呼び出した。
後半から始まるエピソードで第二章が終わります。