白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第七十二話

11月18日

横須賀鎮守府

 

「よし、みんな、出撃だ。絶対に沈むなよ。必ず生きて戻れ。」

輸送艦はすでに近くに停泊している。すぐそばまでボートで行き、そこから乗り込む。輸送艦自体も、そこまで大きいものではないため、養生での乗り降りも比較的簡単にできる。側面に設置されているタラップを上り、甲板に出ると、数人の将校が待機していた。

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ。ボートは返してもよろしいですか?」

「ああ、任せる。今日はよろしくな。」

「はい。こちらこそ。ここが艦内への入り口となります。CICまでご案内します。提督はそこで、指揮を取ってもらいます。」

どうやら、最近建造された武装輸送艦のようだ。近代的な設備が整っており、深海棲艦の航空機にも対応できる自立無人制御の機銃が、艦橋側面に大量に設置されていた。そして、艦首付近には、127mm連装速射砲が設置されている。この時代において、洋上では人間規格の砲などほとんど使えないが、精度や射程に関しては遥かに高いため、対空運用では絶大な効果を発揮する。

「この船に搭載されている武装は対空用に?」

「そうです。提督もご覧になったでしょうが、艦首には127mm連装速射砲が、艦橋側面には、多数の機銃を設置しています。対艦戦闘においてはなすすべはありませんが、対空運用なら、少しばかりの助けにはなるかと。」

「いや、かなり大きな力になる。横須賀の艦娘はまだ練度が低い子も多くてね、これだけの機銃があれば、かなりの弾幕を張ることができる。とてもありがたいよ。」

「ありがとうございます。」

「ところで、昨日横須賀に電話した人は?」

「後ろの船に乗船しております。」

「そうか。ありがとう。」

「艦娘が配置についたようだぞ。」

「そうか、では行こうか。」

 

***

 

東京湾を離れて約12時間、特に何も起こっていない。あるとしたら、第一陣の方に時々潜水艦がやって来たぐらいだ。すぐに撃沈したらしいが。

「この調子で行けば、あと20時間ぐらいでつきますね。」

そこに、第一陣から通信が入る。

「潜水艦発見。攻撃します。」

「分かった。注意しろ。」

「いや、今回はおかしいぞ。数が多い。そっちも気をつけろ。今はもう夜だ。本格的に仕掛けてきてもおかしくない。潜水艦に加えて、夜戦部隊にも警戒したほうがいい。哨戒機、もっと出せるか?」

「ええ、大丈夫です。増やしておきますね。」

「空母赤城から、航空機新たに八機発艦しました。」

「右三時の方向から、異音を検出。潜水艦の可能性があります。」

「五十鈴、潮、三時の方向から異音。潜水艦の可能性ありだ。」

「分かったわ。聴音、開始。」

「はい。爆雷の準備をしておきますね。」

「右舷対潜水艦戦闘、用意。」

「右舷対潜水艦戦闘、用意。対潜迫撃砲の準備急げ。」

「敵潜水艦発見。三時の方向、距離16,500、深度40。」

「結構深いな。」

「対潜迫撃砲発射準備。」

「対潜迫撃砲発射準備よし。撃ち方始め。」

「着水まで残り5、4、3、2、着水、今。」

「爆発、きます。」

「ヘッドホンを外せ。」

聴音員が外したヘッドホンから、かすかに音が聞こえた。

「聴音、再開せよ。」

「聴音、再開します。」

誰も、何も言葉を発しない。海の中の様々な音から、潜水艦の音を聞き分けなければならない。この船から発せられる音だけですぐにくるってしまうほど小さな音を。

「潜水艦のスクリュー音は聞こえませんね・・・。」

「何かが沈んでいってる音が聞こえます。」

「撃沈したか?」

「そのようです。ただ、かなりバラバラになってしまったようで、確証は持てません。エンジンを止めただけかもしれないです。」

「引き続き警戒を続けろ。」

「こちら赤城、海面に複数の潜望鏡を確認しました。船団より二時の方向、距離14、四時の方向、距離24、六時の方向、距離13、八時の方向、距離26です。いずれも2〜4の潜望鏡を確認しています。囲まれています。」

「八時と二時の間にはいないのか?」

「今のところ確認できていません。」

「どうしてこんな一斉に?」

「分からない。もしかして誘導されている?」

「その可能性はある。赤城、龍驤。爆雷を搭載した攻撃機を出して、迎撃に向かわせろ。」

「分かりました。」

 




今回はテンポよく。もう戦闘が始まりますよ〜。
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