2045年 11月6日
「これで荷物の積み込みが終わりました。」
「ああ、ありがとう。」
「にしても、意外と少ないんですね。私たちが突入した時は結構ひどかったのですが…」
「そうだな、でも俺が行ってすぐに大量の荷物を一気に持ち込むわけにはいかない。多分人間不信になっている子たちもいっぱいいるだろうし、荷物の移動や整理がかなり負担になるはずだ。だから、いきなり荷物を大量に持ち込むことはしない。」
「確かにそうですね。あそこには憔悴している艦娘も大勢いました。本当にショックです。確かに、艦娘は人間と全く同じというわけではないのですが、私たちと同じように心を持っている存在です。なぜ、あそこまで痛めつけられるのか。あいつらを同じ人間とは思えません。もっと早く気づけていれば!抜き打ちの監査ができるようになれば!」
「そうだな、俺が残った子たちを必ず救うと約束する。そして幸せを感じることができるようにする。何かあったときは君たちの力を借りることがあるかもしれない。その時は協力してほしい。」
「もちろんです。全力で協力させていただきます。あの鎮守府を頼みました。」
「ああ、では、もう時間だから俺はもう行くよ。ありがとな。」
「お気をつけて。ご武運を。」
***
2045年 11月5日
横須賀鎮守府
「皆さん、ちょっとすみません。」
「どうした?大淀。」
「今、大本営から通達が来まして、明日、新たな提督がこの鎮守府に着任するようです。」
「はぁ!?あいつら、あたしたちのことなんも考えてねーのかよ!」
「また提督が!?じゃ、じゃあ、また前みたいになっちゃうの?」
「せっかく生き残れたのに、これならいっそのこと沈んだ方が」
「そんなこと言わないでください!私たちが今まで必死になってやってきたのは何のためなんですか!」
「そうですよ!それに、次の提督があんな感じというわけではないかもしれないですし!」
「そんなわけない!人間はみんな変わらない!僕たちの環境も全く変わらないんだ!希望を持つだけ無駄だよ!」
バン!と最上が机を叩きながら立ち上がる。するとその音に驚いたさつきが泣き出してしまった。
「ヒッ! そ、そんなにみんな、怒らないでよぉ。」
「あっ、ご、ごめん。」
「今、この鎮守府で人と全く臆することなく話せる人は誰かな?多分、第一印象もよくしとかないと。」
「そうですね…、前の人が拘束される少し前に建造された人たちは問題はないでしょうが、この鎮守府のことをよく知っておかないと、何か質問が来た時にこたえられなくなってしまうので、その人達は避けた方がいいかもしれませんね。」
「この鎮守府で一番人間と話せるのは多分白霜だ。あいつ、かなり淡々としてるからな。だけど…」
「一昨日、どっか行っちゃいましたね。」
「瑞鶴と瑞鳳も話せそうだけど。」
「あの二人も避けた方がいいでしょう。瑞鶴さんは態度がいいとは言えませんし、瑞鳳さんは態度が柔らかすぎます。」
「だよなぁ。」
「とにかく提督が来るのは決定してしまったことです。最初は私が身代りになりましょう。あと、せめて提督室をきれいにしましょうか。それで、いきなり怒られたくはないですから。」
「そうするしかないのか…。すまん、大淀、本当に。掃除はあたしらがやる。大淀は今だけでもゆっくりしてほしい。」
「ありがとうございます。」
***
2045年 11月6日
横須賀鎮守府外部駐車場 10:00
「では、私たちはこれで。」
「ああ、ご苦労様。」
後ろからついてきた小型トラックの運転手が別の車に乗って帰っていった。料理隊のみんなに事情を言ったら食材をいっぱいくれたからな。何かお返ししないとな。ひとまず、気温も低いから外に置いていても大丈夫か。…さて、ここが横須賀鎮守府か。覚悟を決めないとな、ここに着任する以上、もう逃げていられない。俺は、今度こそ必ず!
「よし!行くか!」
頬わ叩き、気合を入れる。ちょっと歩いたらすでに開放された正門が見えてきた。あそこにいるのは・・・軽巡洋艦 大淀か。…案の定ひどいな。顔はやつれていて生気がないし、目に光がない。それに右足、曲がってる?
「お待ちしておりました、提督様。鎮守府の案内をさせていただく大淀です。よろしくお願いいたします。」
そういって、頭を下げた。少し震えている。
「本日付けで横須賀鎮守府提督となった八代樹希だ。こちらこそよろしく。ところで、一ついいか?その足や顔はどうした?大丈夫なのか?」
なるべく、優しく声をかける。
「いえ、何も問題ありません。私は艦娘ですので大丈夫です。今から鎮守府を案内します。どうぞこちらへ。」
そういって、ぎこちない足取りで動き出す。
「いやいや、絶対大丈夫じゃないだろ。歩き方がぎこちないぞ。」
「いえ、艦娘はこの程度何も問題ないです。」
はぁ、結構頑固、というかかなり警戒されてるな。
「しゃーないな。…それ!」
「え?は?ぇえ!?いやいや、提督様、このようなことをされなくても私は歩けます。おろしてください!あなたの手を煩わせるようなことは…」
「いいからおとなしくしろ。」
そういっても、大淀は暴れる。仕方ないな。
「大丈夫ですのでおろしてください!」
「あまりこういうことはしたくないんだが、おとなしくしろ、これは命令だ。」
「うっ…、わかりました。」
「食堂はどこにあるんだ?」
「こ、こっちです。」
食堂
「もう提督が来たころ合いっぽい。どうなっちゃうんだろう。いい人だったらいいっぽい。」
「きっといいひとですよ!元気を出してください!夕立ちゃん!」
「大淀さん、大丈夫でしょうか、心配です。」
すると、声が聞こえ始めた。
「ここが食堂です。」
「ほー、ここが食堂かぁ。」
なぜ食堂なのでしょうか。提督、どんな方なのでしょうか。
「おっす、失礼しまーす。
入ってきた瞬間、私たちは目を疑いました。なんと、大淀さんが一人の男性に抱っこされているのです。
「あっ、失礼しました。私は給糧艦の間宮と申します。そしてこちらの二人は…」
「陽炎型駆逐艦 雪風です。」
「白露型駆逐艦 夕立っ…です。」
「間宮に雪風に夕立か、俺は八代樹、階級は大佐だ。よろしくな。意外ときれいな食堂じゃないか。」
「ありがとうございます。ここは提督様もよく使用されていたので、よく掃除をしていたんです。」
「そうかそうか。えっと、大淀はひとまずこの席に座ってくれ。」
「…ありがとうございます。このお返しは何をすればいいか…」
「お返しなんていらないよ。君たちはこれまで散々苦労してきたんだから。本来はこちらが君たちに謝罪をしなければならない立場だ。同じ人間として謝罪する。本当に申し訳ない。」
「いえ!あなたがやったことではありませんし、私たちは人間様に使える存在ですので、」
「そうです!私たちが満足な戦果を挙げることができないから…」
「いやいや、実際に君たちを傷つけたのは、俺たち人間だ。それに、人のことを人間様なんて呼ばなくていいし、俺のことも様をつける必要なんてない。普通に提督と呼んでほしいし、何なら、名前で呼び捨てでも構わない。樹希、とか。」
「いえ、そんな。」
「いや、俺も困るんだよな、様なんてつけられると。俺はみんなと仲良くしたいし、それに鎮守府にいるみんなは家族でありたい。そんな関係に、様なんてつけてるとなんかぎこちないし、壁を感じる。俺はみんな平等で仲良くしたい。あと、敬語も使わなくてもいいぞ、特に雪風と夕立。」
「本当ですか?なんとお呼びしても…」
「ああ、いいぞ。提督でも司令でも、樹希でも。」
「じゃ、じゃあ!、しれぇ!」
「そうだそうだ元気よく!夕立もどうだ?」
「じゃぁ、提督さん!よろしくお願いします!」
「いやまだだ!もっと夕立っぽい語尾があれば!」
「本当につけていいの?」
「ああ!いいぞ!」
「本当に?」
「もちろんだ!」
「なら…、提督さん!改めてよろしくっぽい!」
「それでこそ夕立だ。俺に遠慮する必要はないぞ!」
雪風ちゃんと夕立ちゃんが提督に頭をなでてもらっていて、とても楽しそうです。八代提督はとてもやさしいお人柄のようですね。なんだか、肩が軽くなったような感じがして、目の奥が厚くなってきました。大淀さんはもう涙を流しています。
「提督?お茶でも飲みますか?」
「お!そうだな、お願いするよ。」
「はい!少々お待ちを。皆さんは?」
「私たちの分もお願いします。」
「ちょっと寒いからあったかくしてほしいっぽい!」
「わかりました!」
楽しくなって、小走りになってしまいます。冷蔵庫を開けてコップに麦茶を注ぎ、電子レンジに入れて温める。この単純な作業が楽しいと感じたのは初めてです。
「あ!潮ちゃん!こっちこっち!」
「ゆ、雪風ちゃん!?だめですよ!提督様の前でそんな言葉づかいは!」
「大丈夫っぽい!夕立がぽいぽい言うのも許してくれたっぽい!」
「潮か、こっちにおいで。俺は八代樹希、俺のことは何とでも呼んでくれたらいい。」
「えっ、いやっ、でも…」
「いいんじゃないかしらー?提督がいいって言ってるし。」
「荒潮か、よろしくな。」
「こちらこそ。よろしくお願いします。」
「わかりました。提督、よろしくお願いします。」
「ああ、俺に遠慮しなくていいからな。」
二人分追加ですね。結構賑やかになってきましたね。まだまだこの鎮守府にはたくさんの方がいますが、スタートは良さそうです。私も精いっぱいサポートしましょう。みんなを幸せにするために、暁の水平線に勝利を刻むために!
会話がめちゃくちゃ多くなった。艦娘の喋り方は間違っていないですかね。登場した艦娘はその場で思いついた艦娘を入れています。決して作者の趣味というわけではありません。さて、次はちょっと暗くなるかもしれません。
追記:100UAありがとうございます。頑張って投稿していきますのでゆっくり読んでいってください。