白く染まる世界   作:快晴Ⅲ

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第六話

六人で談笑していると不意に声が聞こえた。

「随分と賑やかですね?」

「おわあ!びっくりしたなぁ。」

「あっ、すみません。」

鎮守府にいるということは艦娘ではあるのだろうが、誰だかよくわからない。服は結構ボロボロ、というか、この中で一番ひどい。それに…、全身青黒く染まっている。肌も見えてはいるが、そこにも青黒いものがこびりついてる。大きな切り傷のようなものも見えている。あと…、声が聞こえた瞬間、みんなが凍り付いたような空気に変わった。何かあるのだろうか。

「えっと、君の名前は?」

「航空母艦 瑞鳳です!正規空母並みの活躍をお見せできます。よろしくお願いします!」

全く気が付けなかった。いつの間に入って来た?あと、なんだ?このオーラのようなものは。まるで、心の奥まで見透かされているような。そんな気分になる。正直言って、かなり不気味で怖い。目に光がないし、笑顔との対比で余計に不気味さを増している。

「ああ、俺は八代樹希だ。こちらこそよろしく。」

「みんな、楽しそうに話していたけれど、この提督は結構自由な感じだったりする?」

「え、えぇ。呼び捨てでも構わないとおっしゃっていたし、遠慮する必要もないと。」

「・・・そうだ。俺はこれまでとは違う、何か不満があればいつでも行ってくれ。・・・すべては対応できないだろうが、できる限り力になるからな。何かあったのか?」

「ううん。ちょっと休んでたら知らない人が入ってきたから、気になって来ただけ。」

「そうか。 …ところでその服とか傷跡はどうしたんだ? …あと、いつぐらいからいた?」

一瞬聞いてもいいか迷ったが、勇気を出して聞いてみた。一応提督としても知っておかないといけないしな。だけど、なぜか怖い。

「ああ、これ?…なんでそんなことを聞くの?まあ、いいか。えっとまず、服は深海棲艦の返り血をかぶってそのままだったり、自分の血が固まったものだね。傷跡は戦闘してたら怪我もするよ。入渠ができないから、生物的に自然治癒した感じだね。あとが残っちゃった。いつ入ってきたかについては…、まだ10分は立ってないけど、それくらいだ。」

「…全然気づかなかった。ごめんな。…あと、痛くないのか?」

「もう全然。怪我も治ってるし。じゃあ、私はそろそろ戻るね。これからよろしくお願いします。」

「…ま、またな。こちらこそよろしく。」

なんだ?この違和感、彼女が来てからみんなの空気が変わった。なんか少しぎこちない。雪風たちは少しおびえてる感じだ。それに、おかしな圧を感じる。俺も言葉が出にくかった。何かに気圧されていた。有無を言わさぬような…。完全に会話のペースを瑞鳳に握られていた。

「大丈夫か?どうしたんだ?瑞鳳に何かあるのか?」

駆逐艦の子たちがおびえている。やはり、瑞鳳が現れてから空気が変わった。

「いえ、ちょっと瑞鳳さんを怖がってしまっていて。」

「なんでだ?」

「瑞鳳さんの戦闘スタイルがかなり怖いんです。空母なのに接近戦をしてて、その時の表情がさらに不気味なんです。血を求めている感じというか。前の提督が航空機を全然支給してなかったというのもあるのですが。」

確かに、あれだけの返り血を浴びたら相当気持ち悪いだろうし、あの傷跡、たぶん相当深い傷のものだ。それをあんなに淡々と語るとか、普通はできない。それで駆逐艦があんなに怖がっていたのか。

「空母なのに航空機を支給しないとか…、バカすぎるだろ。それで、あんな傷を…、そうだ!傷!ここの入渠ドックはどうなってる?」

「えっと、一応稼働していますが、かなり汚くて、正直入りたくないです。損傷の治りも遅いし、治った後も違和感がずっと残って、気持ち悪いです。」

「今はだれも使ってないか?」

「はい。ここ最近、損傷した人はいないので。」

「そうか、じゃあ、ちょっと行ってくる!みんなはそこで待ってろ!」

「えっ!?どこに!?」

「入渠ドッグをきれいにしてくる。」

「私達も手伝います。あそこ結構広いですから。」

「いや、大丈夫だ。なぜならー」

「「「「われわれがいるのです。」」」」

「この通り妖精さんがいっぱいいるからな。」

「そうじでもけんぞうでもなんでもおまかせを。われわれはなんでもできるのです。」

「この通りだ。だから手伝いは大丈夫だ。みんなは風呂に入る準備をしててくれ。」

「そういうことなら、分かりました。」

「よし、行くぞ!頑張ったら金平糖だ!頑張りに応じて増えるぞ!」

「なんと、ふえるとは。これはうでがなるな。」

「いちばんはこのおれだー!」

そう言って食堂を出て、まずは道具を取りに行かないとな。

 

入渠ドッグ

「うわ、これはひどい。どんだけ汚いんだ。」

「あたりいちめんかびだらけです。こんなところにはぜったいにはいりたくないです。」

「いったいどれだけほうちしたんだ。」

「これはたいへんだ。」

カビが生えまくって壁が黒くなってるし、変な臭い臭いがする。

「うわ!なんだこの色!」

多分修復材なのだろう。真っ黒になっている。艦娘たちの血や汚れ、深海棲艦からの返り血が混ざっているのだろう。これでは傷が治らない。前任への怒りがわいてくる。おぞましい異臭も放っている。機械油や燃料の臭いにも平然としている妖精さんが顔をしかめている。

「なんなんだこのにおいは。ひどすぎる。」

「とにかくさっさと終わらせてしまおう。まずはこの水の排水をしないとな。」

そういって栓を開けるが、なかなか流れない。

「もしかしてぱいぷがつまってる?」

「てかこれ、ながしてもだいじょうぶか?」

「ん?どういうことだ?」

「ここまでのあれようだとじょうかぽんぷがうごいているかあやしいし、ぱいぷがはれつしてるかも。」

「確かに。いったん止めよう。」

栓を閉じる。

「誰か見てきてくれないか。」

「わかった、いってくる。」

「さて、俺らは掃除を始めるか。こりゃ時間かかるな。」

そう言いながら洗剤をつけてスポンジで壁をこする。が…

「やっぱり、全然落ちないな・・・、仕方ない、あれを使うか。持ってきてるよな?」

「もちのろん!みんなもてー!」

全員に配り終えたら壁にカビキラーをかけ始める。効果が出るまでに少し時間がかかるから脱衣所の掃除に取り掛かる。ここにも埃がたまってる。まずは荷物をすべて出す。そしたらここにもかなりのカビが生えていることが分かった。

「ここにも生えてんのか。まずは埃をとってからだな。箒と雑巾はあるか?」

「ここに。」

「おーい、たぶんはいすいできるようになったよー。」

「そうか、どうだった?」

「えっと、じょうかそうにみずをおくるぽんぷがこわれてたから、いまなおした。」

「早くね!?」

「ようせいのちからをなめるなー。これぐらいすうふんでおわる。」

「ならとっととみずをぬこう。」

もう一度栓を抜く。するとみるみる水位が下がっていった。

「ちゃんと治っているみたいだな。」

「こんぺいとうついかしてもいいんだぞ。」

「それは終わったらな。」

しばらくして、一度休憩する。

「いったん休むかぁ。」

「しょくどうにおちゃをもらいにいってきます。」

「おお、ありがとな。」

「まさかこれほどとは。」

「そうだな。前任はどれだけ粗雑な艦隊運用を行っていたんだ。艦娘たちの損傷が治らなければ戦うことができなくなるし、戦力だって低下する。人類は艦娘がいなければとっくに滅びてる。誰もがそこに気づけなければいけないんだけどな。」

「そうだね。」

「おーい、おちゃもってきたよー!」

「おー、ありがとな。よし!これを飲んだら一気に終わらすぞ!全員気合入れろ!」

「「「「おう!」」」」

 

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