白く染まる世界   作:菊水晴雅

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第九十話

 

「瑞鳳先輩、少しお時間いいですか?」

今朝感じた艤装の不具合の調整を終え、弓道場に向かって歩いていると、声をかけられた。

「ん?あぁ、葛城ね。いいよ。どうしたの?」

「ありがとうございます!」

「それで、何かしら?」

「先輩は、瑞鶴先輩とは長いんですか?」

「・・・うん。まぁね。最初にあったのはトラックだから・・・、15年前の8月ね。トラックにいた時の、最初のうちはあんまり僚艦は組んでいなかったけど、戦況が劣勢になって、私や瑞鶴の姉妹が次々と沈んでからは、先の大戦の関係でよく僚艦を組むようになったね。練度が合う空母艦娘もいなくなってたし。それからかな、一緒に何かをし始めるっていうのは。」

「最初はどんな感じだったんですか?」

「瑞鶴が私の真似をし始めたのよ。最初は、私も艤装とか使う航空機の整備を手伝えないかなって思って工学とか物理学の勉強を始めて、瑞鶴も気づいたらやってたの。聞いてみたら「瑞鳳がやってるから。」だってさ。ま、その時は劣勢になりかけていたころだから、多少焦りみたいのはあったんじゃない?自分も何かしないと、っていう。」

「自分たちで勉強して、自分たちで整備を・・・。私もそれぐらいやらないと強くなれませんか?」

「やって損はないと思うよ。航空機とかエンジンの理解が深まれば、より限界を感じやすくなるし、自分の、機械に対する不満も具体的に言葉にできるようになる。限界を超えない、無茶のない作戦を立てるのも大事だし、機械を改良して不満を解消するってこともできるようになるよ。少なくとも、かなり妖精さんに協力してもらっているけど、新型機の開発は自分たちでやってる。なるべく不満をなくして、理想に近づけるように。あと、整備妖精さんから信頼されて仲良くなれるよ。整備兵は怒らしたらダメだからね。」

「あはは・・・、それはそうですね。どうして新型機を開発したいと思ったんですか?」

「その、さ。零戦はもう戦えるような環境ではないし、烈風は大きすぎるから搭載できる数が減っちゃう。天山もいいけど、速度が遅くて迎撃に遭うとどんどん落とされちゃう。流星も大きすぎる。彗星も使える爆弾が思いのほか小さいから。どうしても数をそろえられない空母航空隊だと、単機の火力を上げないとだから。でも、既存の航空機は、どうしても理想に届かない。だから、新しく開発したのよ。あとは、軍を信用してないからだね。」

「たし・・・かに。海軍の航空機って微妙なものが多いですよね、零戦は火力と旋回はいいけど撃たれ弱いし遅い。烈風はその弱点をある程度克服したけど、今度は大きい。空母艦載機としては致命的な欠点です。あと・・・、軍を信用していないっていうのは・・・?」

「色々あったのよ。あ、でも海軍航空技術廠は、あそこはいいところだよ。色々面白いものがあるし。データとかも提供してくれたから。」

「空技廠かぁ・・・。どんなところなんだろう。」

「まぁ一言に、面白いところよ。それで、瑞鶴の、なにが知りたいのかな?」

「え?・・・えっと・・・?」

「ごまかさなくても、分かってるよ。別に私は付き合っているわけじゃないし。だから、別に瑞鶴を好きにしてもいいよ?もし葛城が瑞鶴のことが好きなら。」

「ぇえ⁉いや、えっと、そういうことではなくて・・・!」

「じゃあどういうことなの?耳まで真っ赤だよ。」

「ち、違いますぅ!べべべ別にぃ⁉瑞鶴先輩のことが好きとか、そういうことじゃないですけどぉ⁉」

「あははは。でも、瑞鶴を落とすのは大変だから、頑張ってね。」

「もう!」

「・・・葛城、これは覚えておいて。」

「な・・・なんですか?」

「瑞鶴は、完全に戦争に染まっている。まぁ、私もだけど。」

「・・・?」

「いずれ分かるよ。この先は、今までとは違う、別の意味で厳しい戦いが続くから。」

 

***

 

11月27日

 

北海道出発まで1日

 

「白霜。」

「分かっている。俺と周りの感覚は離れすぎているからな。そして、ここと単冠湾泊地の感覚も。」

「ああ、それと、択捉島には陸軍も駐留している。そこもいろいろと頼んだ。人と普通にかかわれるのはお前と瑞鶴に瑞鳳、そして新たに建造した艦娘、霧島、長波、清霜、清月、大月、祥鳳、能代だけだ。」

「よくこんな忙しい時期に建造なんてしようと思ったな。」

「それはそうなんだが今は置いておいて、今、ロシアに不穏な動きがみられる。ないとは思うが、もしも衝突に発展した際は、ロシア艦隊の迎撃を、お前を旗艦として、今言った艦娘を率いてほしい。」

「・・・分かった。」

「頼んだぞ。明日は〇八〇〇に鎮守府出発だ。ここから東京大本営まで自動車で行き、そこから地下鉄で一度松代大本営を中継して網走に行く。そこからは輸送機に乗って単冠湾泊地まで飛ぶ。分かったか?」

「ああ、大丈夫だ。」

「今日はもう休んでおけ。」

 




ズイカツ、有りか?

ついに第二章終了しました!第四十ニ話から始まってなんと四十八話分!長すぎる!97247文字です!10万はいかなかった。次回から北海道に出発します。
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