第九十一話
11月28日
08:00
横須賀鎮守府
「全員、忘れ物はないな?」
「はい。全て積み込み終わりました。」
「よし、じゃあ指定の車両に乗ってくれ。」
移動はすべて軍が用意した車両に乗る。まぁ艦娘も俺も軍人で、任務のために長距離を移動するから当たり前ではあるんだが、
「・・・なぁ。」
「・・・どうした?」
「なんで16式と24式が?」
「護衛だってさ。」
「いや・・・、専用地下道を通るんだろ?」
「まぁ・・・そうなんだが・・・、一応ってことで・・・。」
深海棲艦との戦争がはじまり、世界の海岸付近の都市はたびたび空襲や艦砲射撃を受けるようになった。そのため、物資や人員の移動は基本、地下を通る。そして、そこは一般人は立ち入り禁止のはずだから、護衛は必要ないと思うのだが・・・。
「まぁ・・・、気にするな。」
はぁ、人間もよく分からん。・・・とにかく乗り込むか。
「全員乗ったな?」
提督が通信機で確認する。
「よし、では出発。」
兵員輸送車が動き出す。日本は、長期化する戦争に疲弊し、低迷を続けていた経済がさらに悪化。防衛予算が大幅に増やされ、今は平時の10倍になっている。社会保障を大幅に削り、激しいインフレーションによって国民の生活は困窮。警察機能も弱まり、治安が悪化した。・・・それでも世界的に見ればいい方らしいのだが・・・。・・・まぁ、そんなわけで護衛がついているのだと思う。
「だいぶ速いな。」
・・・そういえばここ地下だから16式はいてもあまり意味がないんじゃないか?
***
松代大本営
「やっと到着した・・・。」
「この先の方が長いから頑張れよ。」
ここが松代大本営か。
松代大本営、深海棲艦との戦争において、世界的に劣勢に追い込まれ始めた2031年に、かつての旧帝国軍が建設していた松代の地下に、軍の司令部機能を移し、徹底抗戦を行う計画が始動した。細かく言うと、本体はかつての地下壕よりも東にずれてはいるのだが、松代と呼ばれている。ここは、陸海空軍令部と陸軍司令部、首相及び天皇の避難先として機能し、北日本と西日本の地下鉄道の中継地となっている。最深部で地表から340m、最も浅い場所でも160mの深さにあり、天井は全て2mのコンクリートと1mの砂の層が交互に4層重なっている。これにより、バンカーバスターの複数発の投下にも耐えれるような構造となった。甲信地方全体に多数の高角砲と迎撃ミサイル、大規模レーダーサイトを配備し、中部地方の内陸三県の山岳地帯の地下には、多数の工場が建設され、屋内農業施設、発電施設も充実している。さらに、補給なしで2年以上孤立して戦闘を続けることができるだけの量の物資が備蓄されている。噂程度の話ではあるが、核兵器に関する研究を行っているというものがある。実際に発電施設は基本、核融合炉を使用しているため、そのようなうわさが立つのも仕方のないことではある。現在、日本の政府機能はほぼすべてここ松代に避難しており、日本の政治の中心を担っている。その広大な面積、巨大な鉄道基地の存在、工業生産などから、世界最大級の軍事要塞となった。
「こっちだ。」
案内についていく。ここは地表から220m付近にある地下鉄道駅。12本の貨物プラットフォームがあり、そのうちの一つに降りる。他のプラットフォームとは壁で仕切られてはいるものの、ここで貨物コンテナや燃料タンクの積み下ろしを全て行うため非常に広い空間が広がっている。
「こちらの車両にどうぞ。」
「ありがとう。さ、乗るぞ。秋雲はここでお別れだ。気をつけてな、頑張れ。」
「東シナ海はこの秋雲に任せておきなさい!」
「無茶しないようにね。」
「大丈夫だよ!陽炎も心配性だなぁ。」
ここで秋雲が離脱。我々は北、秋雲は西へ行く。
「乗るか。」
「そうね。」
内部は意外にも広く、豪華だった。ずっと地下を走るため車両に窓はなく、外から中の雰囲気は分からなかったが、少し意外だった。
「寝台車は後方にあります。列車も揺れますのであまり寝られないとは思いますが、そこで休憩することもできます。貨物の積み込みがもう少しで終了するので、もう少しお待ちを。」
しばらくして、列車が動き出した。網走まで暇だな。海図でも読み込んでおくか。
第三章始まりました。おそらく第二章と比べたら短くなると思いたい。長くなる可能性も出てきた。助けて。