「・・・なるほど。事情は理解しました。ですが、実物を見せてもらわないことには・・・。」
そうして、俺達の対応をしてくれた人が固まった。なかなか解凍しないため、その視線を追って、俺達も固まった。
「あの・・・、なにをしているんですか?」
いつの間にか白霜が立ち上がっており、その正面に一人の初老の男性がいる。そこまではいいのだが、その男性の手には刀が握られており、白霜がその刀を持つ腕を締め上げていた。
「おや、ばれてしまった、ようだね!」
「いやなにしてるんですか⁉」
「なに、ちょっとちょっかいをかけようとしたら見事に返り討ちに遭ってしまっただけだよ。ちょ、ちょっと、そろそろ痛い、離してくれるかな?」
白霜は刀を取り上げ、それを首筋に当てたところで、男性を解放した。
「いやぁ、まさかここまで反撃されるとは思ってもいなかったぞ。それで・・・、返してくれるかな?」
「今までの行動を振り返って、俺がお前を信用できる要素がどこにある?」
「それもそうだな。一つ信じてほしいのは、私に、君を殺すつもりはなかったことだよ。」
「口だけなら何でも言えるからな。まぁ・・・、たとえお前が本気で殺しに来ても、結果は変わらない。」
そういって、白霜は刀を返した。
「やれやれ、私自身、修行を怠っているつもりはないのだが。」
「いくら修行したとしても無駄だよ。それだけ差が開いている。お前の残りの寿命で、その差をなくすのは不可能だ。」
「そうか・・・。さて、では本題に入るとするか。自己紹介が遅れた。私はここで鍛冶をしている小花大栄だ。よろしく。」
「俺が、先日横須賀鎮守府より来ました。八代樹希です。で、こっちが。」
「駆逐艦、白霜。先の大戦にはいなかった艦だ。」
「そうか。八代樹希に白霜。分かった。それで、詳細はもう司令長官から聞いている。早速見せてほしい。」
「これだ。」
白霜が、壊れた刀を見せる。
「む、これは・・・。」
ボロボロになった刀を一目見て、目に驚愕が宿る。
「マジかよ・・・。」
「一体どんな使い方をしたらこんなになるんだ。・・・確かに粗悪品ではあるが、使えないようなものではない。刀としての最低限の耐久はあるはず。」
「人間が使うのなら問題はないだろうね。だけど、俺は艦娘だ。それも、他とは違う。艦娘の力は人間とは比べ物にならないほど違う。人間が使うことを想定して作られたものを艦娘が使うと、限界は早くやってくるさ。」
「新しく渡された刀はどうだ?」
「まだ使っていないからわからんな。」
「フーム。さて、どうしたものか。する気はないだろうが、修理は絶対に不可能だ。」
「それは分かっている。やる気もないし。」
「普段はどう戦っている?」
「余裕があるときは、深海棲艦の装甲の隙間を狙って突く。これが基本だな。ただ、魔女となると話は変わる。刺突だけでは殺せない。だから、装甲ごとたたき割る必要が出てくる。厚さ数百ミリの鉄の塊を斬ることは不可能。たたき割るしかない。通常ではありえない衝撃がかかるから、生半可なものだとすぐに壊れるだろうな。その分、こいつはよくここまでもってくれたよ。」
・・・あれ?こいつ意外とものを大切にしてる?
「・・・道場、少し振ってほしい。それを見てからではないと想像もつかない。」
「分かった。」
どうやら、直接動きを見たいらしい。全員で付属している道場に入った。
白霜が中央に立ち、腰の刀に手を添える。鞘を少し前方にずらす。次の瞬間、空気を切り裂く音が響いた。気付いたら、刀は頭上に振り上げられ、刃先が下を向いている。半歩踏み込みながら振り下ろし、そこからは怒涛の斬撃が繰り出された。まったく目で追えない。刀が振られていることだけは分かる。たびたび方向を転換しながら、空気を切り裂く。少しずつ目が慣れてきたところで、白霜が刀を振り上げたまま、一瞬だけ固まる。そして、激しい音とともに刀が振り下ろされていた。そして、刀を反し、振り上げ。気のせいだろうか、一瞬だけ白く包まれたような・・・。そして、一切の淀みなく、刀身を鞘に収めた。
「これでいいか?」
「・・・・・・こーれは予想外だ・・・。・・・なるほど、武道としての美しさを全て捨て、実用一辺倒の動き。そして、武術として完成された美しさ。敵を殺すために、磨き上げられたその技術。私もすべてを終えていたわけではないが、駆逐艦白霜の剣術の技術は、とにかく戦闘に向いているらしい。久しぶりだな。芸術的な美しさをここまで捨てた剣術は。ああ、完璧だ。ありがとう。面白いな、駆逐艦白霜。」
「そうか。」
小花さんは、なにやら満足したような顔をしている。
「これで、私の研究が終了する。」
「何か言ったか?」
「なんでもない。さぁ行こう。」
***
「さて、駆逐艦白霜は、どんな仕上がりが好みかな?」
「・・・打ち合うことも多いし、砲弾もよく弾いてるから、一点に集中する衝撃に耐えられてかつ、全体への衝撃を吸収できる。長期間使い続けられ、折れない感じだな。かなりわがままだとは思うが。」
「大丈夫さ。こう見えても私はかつて、東京大学にいてね、色々と研究をしていて、金属には詳しいんだ。この知識と、今まで培ってきた技術があれば、君の要求にもこたえられる。一点に集中する衝撃に耐え、全体に広がる衝撃は吸収、それでいて折れず、長持ち。」
「そうだ。」
「この私に任せておきなさい。君が帰るまでには完成する。楽しみに待っていなさい。」
「分かった。感謝する。」
え?いやいや、いきなり来ることはありませんって。・・・嘘ついた、だって?いやいやそんなことありませんよ〜。