どのくらい時間がたっただろう。
僕はまどろみの中から抜け出すような感覚を覚えた。段々何か機械の音が聞こえ始めた。その音につられてゆっくりと目を開ける。
(……死に損なったか。)
目が覚めて一番最初に感じたのは死にきれなかったことに対しての辛さだった。
見回すとどこかの病院であること、上半身全体が包帯でぐるぐる巻きにされていることは分かった。
しかしそれ以上に頭が全然回らなかった。
何かしたいというような気分にもなれずそのまま再び目を閉じようとする。
そんな中、扉をノックする音が聞こえそれと共に扉が開かれた。
音のした方に目をやると看護師が様子を見に来たのかこちらを伺っていた。
やがて僕が起きていると分かったとたん驚いた顔をしてすぐに部屋から出ていった。
人の顔を見て逃げるなんて失礼な奴だなと思いながらもそのあとすぐにまあいいかと興味をなくす。
それから数分後、再び扉をノックする音が聞こえた。
「あ、本当に起きてるみたいだね。」
優しそうな男性の声がしたので、扉の方を見やると先ほど来た看護士と医者のような初老の男性がいた。
「……誰?」
「ああ、ごめんね。私この病院に勤めている医者だよ。君の担当医でね。起きたって看護士さんから連絡が来たからここに来たんだよ。」
僕の担当医だと名乗る男は、まるで子供を相手にしているような口調だった。
「そうなんだ……。それで?」
そりゃあ病院なんだから医者くらいいて当然かと思いつつ医者に続きを話すように促す。
医者はそれに気づき、続きを話す。
「それで、今の容態が大丈夫なのか検査したいんだよ。寝たままの状態でいいからお願いできるかな。」
「分かりました。」
医者からのお願いを聞いて僕は素直にそのままの状態で待機する。しばらくすると、医者の方から話を振ってきた。
「それにしても君は強いね。本当だったらパパやママのことが心配なのに。」
「……何で心配するんですか?」
両親は僕を捨てて逃げた人たちだ。心配するはずがない。
「え?もしかして覚えてないのかい?」
一体何のことだろう。もちろん覚えているに決まっている。
僕は学生の身分から両親が残していった借金のせいでどん底に堕ちた。
その後、劣悪な環境に耐え切れず、自殺未遂を計った。
その一連の記憶は今思い出そうとしても頭自体が拒むくらい嫌な記憶だ。
そんな僕を尻目に医者と看護士が何かを話し合いを行っていた。それもやたらと神妙な顔つきでだ。
何か検査で悪い結果が出てしまったのだろうかと思っていると、医者がこちらに顔を向ける。
「ごめんね。もうちょっと検査したいからここから移動してもいいかな?」
「え?いい、ですけど。」
「じゃあ、立てるかな。難しそうなら手伝うけど。」
どうやら相当やばい結果が出たらしい。
はあ、もう金もないのに入院費いくらになるだろう。
嫌な気分になりつつも、大丈夫だとことわり一人でベッドから降りる。
……ん?なんか目線が低いような。そういえばさっきから声も高い気がする。
もしかして落ちる際に喉とかやられてるのか?そう今の状態を疑問に思いつつ、歩き出そうとする。
すると、急に激痛が走り思わず膝まずく。それをみて医者たちは慌てて僕のところに集める。
「ごめんね。無理なお願いをしちゃって、交通事故に遭ったのに。」
「交通……事故?」
おかしい、僕は高所からの自殺で怪我をしているはずだ。
それなのに交通事故?
普通だったらそんな間違いするはずがない。
一体全体どうなってるんだ?
そう思いながら看護士たちに補助をしてもらいながら歩いているとふと鏡にいる自分を見つけた。
「……え?」
鏡を見た僕は驚きを隠せなかった。おそらくどんな人でも今の状況を目にすれば驚きを隠すことはできないだろう。
なんせ……全く見覚えのない子供が映っていたからだ。
「……誰?」
その後ある程度の時間をかけて検査を受け、医者から一体なのがあったのかの説明をしてもらった。
僕は真嶋拓という名前らしく、年齢は7歳で両親と車でお出かけをしていた時に暴走車から真正面からぶつかり、意識不明の重体になっていたらしい。
おまけに両親は正面からの激突だったために父親は即死、母親は救急車の中で死亡が確認されたらしい。
どうやら僕は真嶋拓という子の中に入ってしまったらしい。
その話を聞いて僕は真嶋拓くんに申し訳ないという気持ちでいっぱいになった。
今僕自身の意識が働いているということは、拓くんの意識は眠った状態であるか消滅しているということである。
自分が入らなければ救われていたかもしれない命を僕自身が奪ってしまった。
こんなのは加害者同然とみてもいいだろう。
そのように思っていたことが医者に伝わってしまったのか、まだ精神が安定していないから落ち着くまで入院することになった。
部屋はさすがに変わり、1部屋4人の部屋に移るらしい。
一応同年代の子が1人いるから安心してほしいと医者から言われたが、正直そんなことよりも罪悪感が心を蝕みつづけていた。
それから1時間も経たないうちに僕は病室を移動した。(自分一人では移動が厳しいので、車いすで引いてもらった。)
時刻はもう21時を過ぎていたせいか同年代の子はもう寝てしまっているらしい。
実際、すやすやと寝息が聞こえてきた。
他の同室の2人は60~70代くらいの女性で快く俺を迎えてくれた。
そのことに感謝しつつも僕はどこか場違いな気がしてならなかった。
本当だったら拓くんが、という考えが一向に止まないおかげでその日は一睡もすることはできなかった。
夜が明けて7時を指したころだろうか。看護士が病室を開けた。
「みなさーん。朝ですよ。まず体温確認してから血圧測るんで準備してくださーい。」
そう言ってまず女性2人から計測を始めていく。そこから僕の番になると、看護士が話しかけてきた。
「あれ、拓くんちゃんと寝た?くまがすごいよ?」
「え?」
自分からはわからないが相手が気付くくらいひどいくまができているらしい。
「ごめんなさい。ちょっと不安で眠れなくて。」
「……そっか。そうだよね。…………でも、寝るときはちゃんと寝ないと体調崩すから今日はちゃんと寝てね。」
僕はその言葉を聞きうなづいた。
相手は両親が亡くしたから眠れなかったと思っているみたいだが、その方がいささか楽だったので訂正せずに受け答えをした。
そこから滞りなく検査は終わり、最後の1人である同年代の子の方に向かったが、まだ寝ていたらしく看護士が小さい体を揺する。
「おーい。咲希ちゃん朝だよー。そろそろ起きなー。」
「う~ん、まだも少し寝ていたいよ~。」
「待って、寝る前に検査だけさせて、すぐ終わるから。」
「ん~。・・・はーい。」
まだ眠いのか少しけだるげに聞こえる。
声や名前的に女の子だということが分かった。
なんか声が幼少期の天馬咲希の声に似てるなと少し考えたが、まさかと切り捨てる。
いくら意識が他人の体に入るという訳の分からないようなことがあってもさすがにそんなことがあるわけないからだ。
そう思いチラッと少女の方へと目を向けると金色で先の方が少しピンクがかっている髪で、ピンクというよりも赤い色をした目をした少女がいた。
その特徴は明らかに天馬咲希の特徴と一致していた。
「う、嘘だろ。」
第2話は以上です。
いかがでしたでしょうか。
第1話にてプロセカキャラは第2話からの登場だと言っておいて最後の部分のみでの登場になってしまいすみませんでした。
本当は司を出したかったんですけど、キリがよかったので次回の登場になります。
次はプロセカキャラの活躍を見せれるよう頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします。