待ってろ早苗ちゃん。
変な夢を見た。まあ変ではないけどね。外の世界にいた頃の夢だった。どうやら安眠も妨害され始めた。なんて世界だ、外の世界。そんな夢を迎えた朝は景色が素晴らしかった。紅葉がチラチラと見えてくる景色。良いね、こんな風景も。さっさと着替えて霊夢さんを待つ。まだ日の出すぐの時間帯なので起きてくるには時間がある。境内の枯葉を掃くか。箒を取り出して一箇所に集めていく。ちりとりを持ち出すのを忘れていた。持ってきて今度こそ終わりを迎えようとしたその時、客人が来た。緑髪、白と青の巫女装束。…現れた途端に私が姿を隠したのも無理はなかろう。霊夢さんを起こすとする。
「…あれが?」
「出てくるの、待ってますよ」
「はぁ…」
渋々、と言った感じで出た。さて、私は式神を一枚、客人に着ける。こうすれば式神に命令を出せば客人が見えなくなっても追いかけることができる。やったぜ。まあ客人とは言うが、私の知ってる人間だ。東風谷早苗、守矢神社の…あの服を着てるってことは巫女になったのか。もうそんな年齢だったのかぁ〜。妹とは言え、忘れてたな。まあそんなことはどうでも良いか。大量の式神を引き出して準備をする。一応パチュリーから貰った魔導書も。返せなかったから暇ついでに学んでたんだよな。
「どうでした?」
「信仰を集められない神社は潰してしまうか、山の上の神様に明け渡せって。まあ、確かに信仰は集まらないから良いかな、とも思うんだけど。」
「霊夢さんが良いならどうでも。私はちょっとお出かけするのでね」
「…どこに?」
式神に乗って早苗の後を追わせる。特にこれといった意味はないが、向かう方角がかなり不穏だ。早苗自身がどこに向かったのかまでは見てないが、何故妖怪の山へ向かうのか。…天狗に盗られたわけではあるまい。幻想郷において巫女は下手に手を出せない存在だ。理由もなく手を出したら立場が悪くなるのは自分だからな。だから…マジで妖怪の山にいるのか…?妖怪の山…紙の束に包まれていけば突破出来るだろうか。無理だな。あそこ無駄に厳重だし。
「じゃあここだってわけ」
「…悪いですが、今日は非番ではありませんよ」
「椛さん…通して欲しいなぁ。」
「そう言う気分ではないので。
「その名前ではないなぁ。今は七だよ」
「…」
押し黙った。始めるか。乗ってる式神から幾つか式神を出す。ところで、弾幕ごっこですよね。弾幕ごっこなのに剣と盾を構える必要はないと思うんですよ。と言うわけで突撃、紙吹雪ではなく紙を固めたもので。弾幕なんて打たせない、不意打ちに近い形だが当てたので私の勝ちだ。椛さんの上を通って山を登る。式神を戻すが…少し減ったかな。減ったみたい。困ったなぁ。全部持ってくればよかった。一枚出すか。このまま行けば次は誰に会うかな。椛さんが通してくれればよかったんだけど。
「あやや、これまた奇怪な」
「文…」
「悪いですけど、私としてもここは通せませんね」
「通してくれよなぁ。新聞読んでるじゃん」
「お茶一杯のお駄賃で、ですがね?」
…面倒だ。式神を全部散らばらせる。私も下に落ちるが、血の染み付いた服があれば死なないはずだ。怪我はするだろうけど。式神が大量にあれば、血の匂いがあってもバレない。すげえだろ、天才だろ?まあ妖怪相手にしか意味がないし、吸血鬼にはバレると思うけど。文が面を食らったような顔をしているが、これなら安心だろう。式神を呼んで私と文の間に壁を作る。まあ、文の速さなら関係はないだろうけどね。服の式神を使って山を登る。飛べないが、山を走りながら登るのは簡単になる。
「はぁ〜…疲れた」
「そうですか?」
「っ」
「まあ、私自身唯一の読者をここで殺してしまうのもなぁ、と思いまして。ここで素直に帰ってくれればなと思うんですが…」
「嫌だ」
「…では」
翼で前が見えなくなる。文の翼だろう、式神を呼びながら翼を押し除けようとしたら後ろからかなり強めの衝撃。意識が飛びそうになるが、なんとか堪えた。文を見ると、かなり強めに殴ったつもりらしい。グーで構えてた。…まあ、考えるまでもなくその手は私を捉えているわけで。…まずいな。ギリギリで避けるが、痛いものが痛いんだから、まあかなりヤバいわけで。私自身、そこまで動ける方じゃないからね。日によっては霊夢さんにも負ける。魔理沙にも。だから本当にまずい。
「…あっ」
「さあ、お帰りを。お迎えですよ」
「…式神のことをお迎えって言うのはダメでしょ」
「さ、早くおかえりを。これ以上はダメですよ」
「こらーー!!!」
上から早苗が落ちてきた。奇跡的にも、文の急所を突いたようだ。文が倒れる。…式神の束が何かに見えたのだろうか。そして悲しいことに早苗は私を忘れている風だ。なんて悲しい。…まあ、そっちの方が都合はいい。早苗に参拝者と勘違いされながら神社に案内してもらうか。早苗に手を引かれる。割と大きくなってたなぁ。そんな感情に浸りながら歩いていると、今度は後ろから鈍い一撃が。鈍いと言うか、硬いものでぶつけられたような感触。文の手ではないはず。なら、何?振り返ったところ、文が石を持って立っていた。振りかぶった。頭を守ろうと手を上げるが、腹を殴られる。
「ゔえっ」
「よいしょっと…全く。参拝客を招くなら許可を。それが妖怪の山です。」
「…はい…?」
殺さないよー。殺したらうるさいのがいるからねー。