元東風谷です   作:覚め

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七君の背中に傷はない
細々とした傷はあるけど


第十七話

会って早々に気付いたのだが、私と諏訪子神は一度出会っていた。ため息一つ。霊夢さんと魔理沙を帰らせる。どうしたのか。何故今更出て来たのか。神奈子神は早苗の傷を手当てしようと神社の中へ。血まみれの私と、傷ひとつない諏訪子神。まあ血はもう止まってはいるのだけども。私自身、私がどうなっているのかを帰って確認したい。申し訳なさそうに言葉を探す諏訪子神を見ながら、八雲紫の呼び方を考える。そろそろ冬眠も近いだろうから、帰ったらすぐに。霊夢さんに頼むのも有りだと思うよ。

 

「…苗代、だよね?」

 

「そうだね」

 

「早苗のお兄ちゃんでさ」

 

「うん」

 

「…ごめんね」

 

「いない人に謝るの?」

 

「…」

 

言葉がなくなる。せめて祟ってもらえればとでも思っているのか。私自身祟る気だったのだが、いつの間にかそれが消えていた。霊夢さんの存在がでかいと思う。まあそれはそれとして。諏訪子神の様子を見ていたら眠たくなって来た。気が緩んでいるとか思われたのか、有り得ない提案をされた。守矢神社に住まないか、と。馬鹿馬鹿しい。有り得ない話だ。軽く突き放して、諏訪子神の言葉がもう出ないことを確認した後、私も帰る。身体の変化を調べないと。流石にいきなり飛べるのはおかしいだろうから。

 

「…フラン?」

 

「あ、来た」

 

「何でいるの?」

 

「七の血の匂いが濃くなったから。私、鼻が良いの。」

 

「犬かな」

 

「犬と一緒にしないで。」

 

日傘を持ったフランがずいっと近づいて来る。私はそんなフランの横を通って霊夢さんに帰宅を告げようとしたのだが、どうやらいないらしい。どこかへ薬を取りに行ったとかなんとか。フランがそこまで物を見る吸血鬼だとは思わなかったな。神社の縁側に腰を下ろすと、フランが部屋の中まで入る。まあ、吸血鬼なのだから日差しを警戒するのは当然か。霊夢さんが帰って来るまでは八雲紫も簡単には呼べない。大人しく待つしかなさそうだ。

 

「ねえ」

 

「?」

 

「私と出会った時のこと覚えてる?」

 

「んー…まあ」

 

「私が哀れって言った後、なんて答えたかは?」

 

「覚えてない」

 

「ずっとね、って答えたのよ。この場合、七が自分のことをずっと哀れだと思ってた…で、良い?」

 

「どうだろ。その時と今じゃ結構違うから。」

 

「そうよね、覚えてないんだから。」

 

フランに魔導書を渡す。私からだと流石に気が引けるから、返しておいてと言ってみる。答えは拒否。まあ当然か。いくら式神にしたからと言って、血まみれの魔導書だけを行かせるわけにはいかないだろう。私もそこら辺の分別は着く。霊夢さんが帰って来たのでフランを突き出す。無視された。フランからはこいつマジかという目線を貰った。ごめんね。霊夢さんが薬やら何やらを取り出そうとしたところに静止をかける。八雲紫を呼んで欲しい。私自身、身体がどうなっているのかがわからないから、そこら辺に詳しそうな八雲紫を呼びたい。

 

「だからって気合いで隙間を作らないこと。」

 

「愛の力は無限大ってね」

 

「はいはい。それで…七がどうなってるか、だったかしら」

 

「私の認識だと一回死んでると思うんだよね」

 

「えっ」

 

「そうねぇ…死んだ時の状況がわからないから何とも言えないけど…」

 

「待って、七が死んでるって?」

 

「ええ。そこに嘘はないの。事実ね。」

 

私の血液が着いたものは式神になる。これの副作用か何かで、私の体が式神になっているとか何とか。…自分の体は対象外とか思ってたけど違うんだ。内出血をしたら式神になるのか、死んだから式神になるのか。山を転げ落ちた記憶があるせいでよくわからないな。八雲紫は私に対して触診をし始めた。スキマ越しに何を触っているのか、訳がわからないがまあ触診関係だろう。私の体に異変はない。スキマ越しに何を見ても分からないと思うのだが、そこら辺は…どうだろう。わからないな。フランもスキマの中を見始めた。

 

「…弱ったわぁ」

 

「何が」

 

「七の体、所々式神になってるのよ」

 

「…は?」

 

「式神?人間の七が?」

 

「内出血でも起こしたのかしら。だとすれば血のせいね。身体が血に浸って…この分だと頭もね。」

 

「やっぱり?」

 

「死んだ後、脳が機能を損なう前に式神になって保護されたのかも。」

 

式神にした紙が少し破れにくくなったり、昔の紙と今の紙の強度が変わらなかったりするのはそのせいなのか。式神ってすげえ。しかし、頭も式神に出来るとは。妖怪を式神にできるって話も嘘じゃないのか。死体ならかなり楽なんだろうか。死後硬直とかいうのも、死んだすぐ後であれば関係ないだろうし。そんなことを考えながら触診を受けていたところ、客人。諏訪子神だった。嫌な時に現れる神様だなとか思ってたら霊夢さんが応対しに行った。住むかどうかなんて答えるつもりはないのに、何故来たのか。

 

「あいつは何?」

 

「私の生まれ育った家の…神様になるのかな?」

 

「へぇ。そこで何されたとかあるの?」

 

「…最後の方は何もなかったかな」

 

「なんだ、つまらない。」

 

「ちょっと、動かないで」

 

諏訪子神が何やら叫んでいる。声だけが聞こえて来る。私には関係がないからと無視を決め込みたいのだが、それでは済まない声量だ。私を呼んでいる。と言ったところでフランから日傘が渡される。小さいが、これで体を隠せと言ったところだろうか。何を態々。日傘を返す。八雲紫の触診が終わったところで私も表に出る。諏訪子神が顔を明るくさせる。今更何を言うこともない。帰ってくれないかな。顔を見る限りは帰る気はなさそうに思える。帰って欲しい。

 

「苗代、さっきのことを謝りたくて来たんだ。」

 

「…言い分だけは聞くけど」

 

「七、紫の触診は?」

 

「終わったよ」




兄のことを何も覚えていない東風谷早苗
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