「どうぞどうぞ」
そう言われて私は紅魔館の中へ通される。館の中は真っ赤だから、そこまで好きじゃないんだよね。レミリア曰く、レミリア姉妹はイメージカラーが赤だから、らしい。フランは赤だが、少なくともレミリアはそこまで赤ではないと思う。私の目が狂っていなければ、だが。図書館までの道を、式神化によってできるようになった空中浮遊で行く。これがまた、楽しい。少し酔う。酔ったら休憩。私自身、空を飛ぶのは得意ではない。早苗じゃないんだから。
「着いた…」
「言ってくれれば小悪魔に迎えさせたのに。」
「それには及ばない。パチュリーさんに、これ返したくて」
「血まみれの魔導書は返品不可」
「あー…そりゃそうか」
「それより、私よりも会いたい奴がいるから」
「…誰のこと?」
口から言葉を出した直後、横からヌルッとフランが出て来た。びっくりした。て言うか今どうやって出て来た?私は全然気付かなかったのに。私の真向かいにフランが座り、私に対して目の前の席に座るよう促して来る。ここに来るまででかなり疲れた。心置きなく座らせてもらう。いくら式神とは言え、身体の疲労は感じるらしい。少し、きついな。空飛ぶのってこんなに疲れるのか、とも思う。かなり。式神にした紙の束も同じように疲れているのかもしれない。私には感知できないが。と、パチュリーさんが席を外した。
「…何?」
「いえ、なんだかスッキリした顔だから。」
「そりゃあね。私が受けた扱いについてよく知れたわけだし」
「何をされてたの?」
「…まあ、ありきたりな発言で言えば何もかな。早苗が生まれてからみーんな早苗に夢中だったし」
「ネグレクトって訳ね」
「じゃないかな」
よくわからないことを喋られたが、そんなことを言われても記憶にない私は何とも言えない。諏訪子神が覚えていない部分まで詳細に話して来たからね。それだけだ。しかしまあ、あの神は良くも私をそのままにしたのに心配していた風を装えたものだ。私には理解しかねる。普通、逆襲とかが怖くて何もできなさそうだ。それでなくとも、気まずいとなそんな感じになるのが普通だろう。神になればそんな気持ちに左右されず、自分の感情が出せるのかな。んー、神じゃないからわからない。
「少なくとも、私は覚えてない訳だし。復讐心も…今思えばって感じ」
「私とは真反対」
「フランも同じでしょ。お姉さんに対して何も思えてないでしょ」
「…いいえ。私、冷めたのよ。私が本気で殺そうとした時、私が本気で殴ろうとした時。こっちを見て何もしないのよ。防げるし避けられるはずなのに。」
「…それは、冷めるなぁ」
本気でやることに対し、ある程度の温度差を感じると冷めるのはわかる。何故だか嘲笑われてる気がしてならないときと、何も感じず冷めるときがある。この違いは何だろうか。本人に対する気持ちなのかな。わかんね。私も式神になったからかも知れない。少なくとも死ぬ前までは…そう、ちょっとは考えていたはずだ。殺すとか、どうやって痛めつけてやろうか、とか。そのはずなのに全然思い出せないのは何故だろう。式神化の時に失ってしまったんだろうか。そんな、精密機械見たいな。ファミコンのセーブ機能みたいな。
「…何を見てるの」
「魔導書」
「血生臭いけど」
「私の血に浸ったからね。いる?」
「私はそんなに悪趣味じゃないのよ」
「それは残念。私の式神にしたから魔法も打てるよ」
「何それ便利」
「…そう?」
実際にフランに向けて打ってみるが、魔導書自体にそこまでの効力はない。片手どころか防ぐ価値すらないとでも言うように胸で受け止められた。どうやら服すら破れない悲しい魔導書のようだ。尤も私自身そこまで自信があったわけではない。私の式神だぞ。紙の束に少しの装飾がついた魔導書にそこまでの力が宿るわけがない。よほど愛用されてない限りはこの程度だろう。その場合、式神ではなく多分付喪神になるのかな。私には違いがよくわからないけど。プランも分からなさそうだ。じゃあこの場にいる奴には全部わからないか。
「そうだ。七が私の眷属になるかどうか気になるわ」
「断る」
「えぇ…」
「流石にねぇ。私も自由意志は欲しいし」
「学がないくせに言葉は知ってるのね」
「八雲紫のせいだね。」
「あのスキマ妖怪め」
「咲夜は何で来たの?」
「…驚きですね。私が来る前から私の名前を呼ばれるとは。」
「今のは…式神かな」
勝手に口から出て来た言葉に少し驚きながらも咲夜に対して応対する。茶菓子と茶が指パッチンと共に現れる。よくやる。時間を止めてあれこれしたのだろうが、それだけでも大変なことだろう。私の感想としては、本当によくやる、である。式神が感知できても私は感知できない。意思疎通なんて出来ないからね。口のない生き物は喋れないわけだ。エスパーなら別だけど。私自身式神ではあるけど、部位ごとに違うかも知れない。式神になった時間によるのかも。そこら辺は完全にわからない。
「さて、今日やりたいことはアレね。咲夜、用意」
「はい」
「…?」
「私たちに共通するのは家族への虚しい恨み。じゃあその家族の私物でダーツをやろうと思ってね」
「…迷惑だからやめたら?」
「え…あ…ん…そう、ね…咲夜、やっぱヤメ」
「わかりました」
「ごめんなさい」
純孤「復讐心を忘れた結果があると聞いて」ズズズ