元東風谷です   作:覚め

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フランドールを殴ろう


第三話

「じゃあ七、何か危険があったら式神で教えて。」

 

「はーい!」

 

「レミリアはお祓い棒の刑」

 

「いだぁぁあぁあ!?」

 

事の発端はこう。レミリアが外出した後、忘れ物に気付いて振り返ったら館の周りだけ雨が降っており、帰ることも出来ない。その為、気兼ねなく尋ねられる場所の博麗神社に来たらしい。強力な妖怪であるレミリアを放っておくことはできない。一緒に連れて行って死なれても困る。私と霊夢さんで行けば良いと言ったが、神社を壊されては敵わないらしい。そして私とレミリアを残していくことは更にダメらしい。…やれることが色々とあるはずだが、レミリアが駄々捏ねたんだろうか。式神を連れて紅魔館へ。…方角合ってる?

 

「来たのかな」

 

「…あぁ。どうぞ。門番はサボってませんからね」

 

「はーい」

 

合っていたが、雨は小雨程度だった。いくら弱点とは言え、こんな雨で死にかけるのかな。まあいいか。何はともあれレミリアの話通りに進む。十六夜咲夜に会えばやらせたいことがわかるかもとか原因がわかるかもとか曖昧な誤魔化し方を併用された説明を受けたので、とりあえず十六夜咲夜を…いた。後ろに。怖っ。でも説明してくれた。レミリアよりもわかりやすく。紅魔館の中で一番やべえのが出てきたんだって。吸血鬼で、レミリアの妹で、どこか頭のネジが飛んでて…あれ、それはやばくない?

 

「…レミィは貴方のような軟弱者を遣したってこと?死なせるつもり?」

 

「つまり私は死ぬと?」

 

「レミィ初の失態ね」

 

「えっ」

 

図書館に来た時、目の前にいた謎の紫人間はこちらを一瞥した後、ため息をついてどこかに消えた。レミリアを信じて通してくれたのかな。それともただ相手するつもりもないから通したのかな。…図書館の中で案内人もいないのにどうすればいいのか。放置されたままというのもあまり好まないのでふらつく。シンとしていて、耳鳴りも聞こえてくるような図書館。あの紫人間どこに行った?…そうだ、式神で危険があったことを教えておこう。レミリアの妹大暴走ってね。

 

「…?」

 

何やら耳鳴りとは別の音。重低音と言うか、なんと言うか…体の中でよく響く音。なんの音だろうか。この図書館にはエアコンやら空調でもあったのかな。季節的にはおかしくない。魔導書があるらしい図書館において、エアコンやらなんやらが必要とは思えないけど。…何もなさそうなので魔導書を開いてみる。読み方はわからないけど、外の世界の本だって満足に読めない私からすれば全て同じ。まあ読めない文字と読める文字では大きく違うか。そう思って本を棚に戻した時、轟音が響いた。

 

「ごっ」

 

「貴方は違うでしょ。お姉様は等々会話もできなくなったの?」

 

「いっだ…!」

 

「私は前館に来た人間を連れて来いって言ったのに…」

 

金髪、赤い服、歪な羽。咲夜から聞いた姿と合う。これが紅魔館で一番頭のネジが外れている吸血鬼か。そんでもって、羽をぶつけられたのか。腹がもう青くなってる。力を入れたらもう痛い。その上で目の前にいる吸血鬼は興味もなさそうな目でこちらを見ている。と言うかこれはもう、私を見て食べるかどうか悩んでいる目だね。式神に私を引っ張らせて逃げる。が、もちろん私の式神は力が弱いのでそこまで早くは動かせない。目の前にいる吸血鬼が食べようとしないことを祈りながら移動するしかない。

 

「決めた」

 

「ぐぇ」

 

「貴方を食べながら目的の人間を待つことにしたわ!」

 

「ぇあっ」

 

もってきた式神はもちろん少ないし、胸を足で押さえ付けられた今では少ない式神の数で対抗できるわけがない。魔理沙に向かって使った式神の量を持ち歩くなんてことはできない。つまり、今の私はとてもとても不味い。式神で目の前を覆ってやろうと血で染まった紙を出したが、羽で一蹴された。いやまあ、そりゃそうか。胸元にかかる力が段々強くなって行くのを感じる。踏んでくる足を掴んで抵抗してはいるが、ほぼ誤差。意味はない。

 

「っ…」

 

「式神が使えるなら、今から全力で人間を呼べ。そうすれば私の目的の人間が来るかもしれないでしょ?…あぁ、さっきの式神で全部?使えない」

 

胸を大きく踏み込まれ、その後に担がれた。あまり激しく息が吸えないし、多分踏み込まれた時に骨が折れたかヒビが入ったのかわからないけど息を吸うだけで激痛が走る。痛みのせいで息を吐き出してしまう。痛い、きつい、死ぬ。空を飛んで運んでくれるだけでまだ良い方だろう。それに気付いたのか途中から歩き出したぞこの吸血鬼。しかし図書館の中からどこに運ぶのか。わからないが、おそらく出入り口とは別の扉があるのだろう。私は知り得ないけどね。

 

「さて…死なれちゃ困るから、そこでジッとして」

 

「…意外と優しい?」

 

「人間が来たら目の前で解体するだけ。いつだってお腹を空かせてるわけじゃないのよ」

 

「私は食える時に食うけどね」

 

「…何?そんなか細い声で、死にたいって言ってるの?」

 

か細いつもりはない。…でもそうだなぁ…そうだ。呼ぶなら魔理沙の方が良かったかもしれない。レミリアに一杯喰らわせた…らしいから、なんとかなったのかもしれない。まあそんなことするくらいなら霊夢さんを呼ぶだけだな。今の私にはもはやどうしようもないので、霊夢さんが来るのを待つだけ。式神はまだあるけど、もう意味ないしなぁ。血を吐き出したわけじゃないから新しく式神を作ることも出来ない。内出血と言うやつだろう、アザだけで済ませているところを見るに素晴らしい技量だと思う。おそらくはそんなこと考えてないだろうけど。

 

「…哀れ。」

 

「ずっとね」




フランドール視点における七は妙に頑丈な人間。
全力でタックルと踏み込みを耐えたんだからね。
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