都会ナメてた   作:.-.

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ハロウィン、電車内での死闘 (前)

 

 今年で18を迎えるこの俺。ついに親元を離れ、上京に至る――!

 

 最も別の親の元に移るようなもんで、一人暮らしってわけじゃないが。それでも夢見た都会暮らし…

 

 地元じゃブイブイ言わせてたがド田舎でブイブイ言わせたところでダッセー前時代的ヤンキー。あんな草臭えところじゃなくて人工臭ぷんぷんの都会でブイブイ言わせなきゃな。

 

 目指すはさながらシティボーイならぬシティヤクザ。バッチバチに稼いでボンッキュッボンのおねーちゃんを両手に担いでやるぜ。2人ずつな。

 

 想像したら口元が緩んできちゃった。髪型も野郎どもに合わせた短髪から今風のストレートウルフヘアにしてやった。美容院に高え金払ってな。

 

 この髪型にも色んな悶着があった…野郎どもにはダセエだの漢じゃねェだの、親には同性愛者を疑われる始末。

 

 だがカンケーねえ。上京したダチ曰く、俺の顔ならピアスバチバチでこのヘアスタイルならクズ感?ってやつが出て爆モテらしい。

 

 そして今日はハロウィーン!!!

 

 これが1番重要だ。今日この日、俺はパンピーを卒業し、コスプレチャンネーと大人の階段を共に登るんだ…!

 

 中高と野郎どもをまとめ上げたカリスマと口車があればナンパなんてちょちょいのちょいだろ!

 

 にやけが止まんねえぜ…待ってろよ渋谷…!

 

 

 そうして渋谷まで数駅というところ。隣の車両の喧騒に気付く。

 

 この俺の地獄耳は流石で、他の乗客が違和感を抱き音の方向に注意を向ける頃にはもう席から立ち上がっていた。

 

 そして力を使う準備をする。

 

 この世にはバケモンがいる。比喩とかじゃねぇ、マジの。そいつらは俺が生まれた時から見えてた。

 

 そいつらが近くにいる時、俺の右頬がピクつく。それと、右頬から鎖骨の右側にまでに広がるキンモクセイのマークが光るんだ。

 

 それも俺の力らしいが、オプションみたいなモン。

 

 力っつーのは俺がいつの間にか使えてた、バケモンをブッ殺す唯一の道具だ。

 

 

「向こうじゃ週に二、三回だっつーのに、ここじゃア毎日見んなァてめェら!」

 

「だず、だずげでぇぇえぇ」

 

 

 懇願を耳に入れる努力を一切せず、目の前の異形を右フックで一撃ノックダウンさせる。

 

 両腕の周りで発光する鱗粉と花びらが舞い、覆っている。コイツが俺の力。

 

 なんでか知らねえがコイツは俺にしか見えてねえし、コイツで殴るとバケモンは1発で死ぬ。

 

「ぁ゛、ぁ゛」

 

「この車両にゃ入れさせねえよ」

 

 ドゴ、ドゴッと鈍い音が車内に響く。ひたすら迫り来るバケモンの群れを殴り倒す。

 

 そうして殺したバケモンが10体を越え、乗客が全員他の車両に逃げ込んだあたりで、違和感に気づいた。

 

 

「…まさかコイツら、人間…」

 

 

 それに思い至ったのは、死んだバケモンの死体を見てからだ。

 

 経験上、バケモンは俺の力で殴り殺すと塵になって消える。が、コイツらは死んでもそのまんま。

 

 それに俺の知るバケモンは、向こうじゃ俺以外に見えてなかった。

 

 コイツら、攻撃方法も突っ込むくらいなもんで、言葉を介する知能もあるように見えねえのに、人語を介す。死んだフリなんかできっこねえはずだ。

 

 それにバケモンとはまた別だとしたら、俺のマークが反応したのもよくわからねえ。

 

 …どうなってんだ?

 

 

「いや、田舎のバケモンと都会のバケモンはまた別ってハナシか…?」

 

 

 バケモンが見えてんのもこっちのパンピーは俺と同じ奴らばっかで…いや、それはねえ。

 

 You◯ubeやらTik◯okやらは嗜んでるが、バケモンの話は一回も見たことねえ。バケモンが見えねーのは共通のはずだ。

 

 ってなると…

 

 

「お?なんだよ、術師いたんだ」

 

「あぁ?なんだテメェ…親玉ってトコか?」

 

 

 バケモンを倒し続けてたらツギハギ顔の男が出てきた。…ま、人間じゃねえだろ。マークもそうだが、俺の本能が警鐘を鳴らしてる。

 

 コイツはここで殺さなきゃ…

 

 俺のボンッキュッボンのチャンネーが殺られる!!

 

 

「っおっと、危ない危な…ぶっ!?」

 

「ばァか。初撃避けて油断してんなよ」

 

 

 これは俺の力とは関係ねえが、生まれつき体が柔らかくて、体の扱いがバツグンに上手い。おかげさまで変則的な戦闘スタイルを確立できた。

 

 ストレートを避けられてもそこからフックにもエルボーにも変わる。人間バケモン関わらず使えるスキルで重宝してんぜまったく。

 

 

 モロに顔面に入れたパンチで、バケモン男の頭はぶっ飛んだが、ブクブクと再生する。

 

「お〜。なんつー手品だ?キモチワリ」

 

「そっちこそ。腕どーなってんの?」

 

「ッ!」

 

 バケモン男の足が変化する。…ありゃぁ…なんかの動物か?瞬間的なスピードが凄まじいな。1発喰らうかこりゃ…

 

 と思えば、足の変化が戻り、パンチを…いや、手のひらをこっちに向けて…

 

 

 

 

 ブワッ!!!!

 

 

 

 瞬間、全神経が回避に注がれる。

 

「…っは」

 

「え、マジか。当たると思ったんだけどなぁ」

 

 本能が告げていた。あの手のひらに触れられたら死ぬ。

 

「ははっ、面白ぇ」

 

「?」

 

 18年の生、初――

 

 姿勢を直し、構え、手を天に向け人差し指をちょいちょいと起こす。

 

 ソレに呼応し、バケモン男は姿勢を低く、野生的な構えを取る。

 

 

「テメー、名前はあんのか?」

 

「あるよ。言わないけど」

 

「はっ、上等」

 

 

 死が香る。ここで、死闘を越える。





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