いつエタるか分かりませんが、書きたくなったので書きました
僕の兄は天才である、それも上澄みの上澄み
時計塔と呼ばれるイカレたパーティーピーポーがうじゃうじゃいる場においても
兄は天才であるとハッキリ言える
対して弟である僕は凡人、凡夫である
いや、落ちこぼれ、失敗作だと言われても僕は否定しない
実際、時計塔の奴らには陰でそう呼ばれていることを僕は知っている
「出涸らし」「鷹から生まれたトンビ」「兄の金魚のフン」
まぁ散々である
そして僕もその印象を利用して甘い蜜を啜っているので文句など言えるはずもないのだ
「おじさん、それとこれ、あとこれもよろしく」
「はいよ。それにしてもロキア君。いっつも同じパンを買いに来るねぇ」
「ほらいつも同じパンを買いに来た方が常連っぽいでしょ?」
「ははは!なるほど!ロキア君もそういうのに憧れるお年頃になったんだなぁ。はいこれ、お釣り」
「どーも。あぁ、そういればおじさん。例の泥棒は捕まったの?」
「それが尻尾すら掴めねぇんだ。いつの間にかパンのいくつかが無くなってやがる」
「...ふーん」
そんな小話をしたのち、僕は店を出る
僕はそのパン泥棒に心当たりがないわけではないが、今はそのときではない
なぜなら兄はまだ五体満足であるからだ
「やぁ、兄さん。ご機嫌いかがかな?」
「ロキア。何度も言うが、ノックもせずに私の自室に入ってくるのはやめてくれ」
「はいはい、すみませんすみません。これ、朝ごはんね。どうせ食べてないんでしょ?」
「ハァ...」
ため息を吐く姿も様になるのが兄の腹立t...スゴイところである
時計塔に兄のことが好きな女性も少なくはない
僕?小石には目もくれないだろう?
「君がもう少し意欲的であれば、時計塔に蔓延る悪評も無くなるだろうに」
「だから兄さんは僕を買い被りすぎなんだよ。魔術回路の量や質も兄さんには劣り、家からもいないものとして扱われている。こんな男に何ができるんだが」
「...そう演じているんだろう?ロキア」
「僕はあくまで兄さんの従者だからね、主を立てるのも従者の役割だろ?」
「ハァ...君が父にそう言って丸め込んだとき、断るべきだった。私の人生で数少ない後悔の一つだよ」
「兄さんが父さんを追い越す前だったからね、運がよかったよ」
そう、僕は兄の従者としてこの時計塔に居る
これは僕が父を言いくるめて勝ち取ったものだ。どうせ家の者たちは従者を雇う金が浮いたとしか思われていないだろう。僕が召使い顔負けの家事スキルを見せつけたときには大層驚いていたが
「君にはプライドというものが存在しないのかい?運命に選ばれた自覚、使命。美しいものを、素晴らしいものを作る。そんな情熱を」
これをただの15の青年が言っているのなら、厨二病だの、アニメの見過ぎだのバカにできるのだが
生憎彼はいたって真面目であり、才能を持ち、文字通り運命に選ばれているため笑えないのだ
「だから僕は従者になったのさ。僕は兄さんを越えるのではなく、支える。それが使命であり、運命なのかもしれないね」
「おかしいな、私の耳には楽をしたいからその道を選んだとしか聞こえないのだが」
「良かった。これで万が一兄さんが感動でもしたら、直ちに耳鼻科に連れて行くところだったよ」
そんな軽口を叩きながら僕と兄さんの談笑は続いた
突然だが僕は転生者である
うん、これでは僕の方が厨二病だと馬鹿にされるだろう
しかし、事実である
僕はこことは違う世界から転生、漂流してきた
それに気づいたキッカケは家名と兄の存在が大きいだろう
何故なら家名が『ヴォーダイム』で兄の名が『キリシュタリア』だったからだ
そう、僕は『キリシュタリア・ヴォーダイム』の弟に転生したのである
名を『ロキア・ヴォーダイム』
生まれたときには優秀な兄と同じようになるだろうと期待されていたのだが、残念ながらそうはならなかった
僕は全てにおいて兄に劣っていたのだ
これがFGOをゲームとして見るのであれば、キリシュタリアと比べ劣っていたとしても「まぁしゃーない」と肩をポンポン慰められると思うのだが
この世界が現実世界のしかも『ちゃんとした』魔術師である父からすれば、兄のように優秀でない僕は目障りで仕方ないのだと思う
だからこそ、僕は兄の従者になることで父に処分されることから免れようとしたのだ
なぜFGOの世界だって分かるか、だって?
『マリスビリー・アニムスフィア』が天体科の
マジ終わってるのである
最短で世界を救うのであれば、この時点でマリスビリーをぶちのめすのが正解なのだろう
だが今の僕にそれほどの力はない、
これは5年後にカルデアへ拉致られる主人公に世界を救ってもらうほかないのである(ゲスの極み)
第一、僕は原作を変える気がない
何故か?
死にたくないのである
僕はできる限り楽に、平和的に生きたいのだ(真顔)
僕は選ばれた人間ではない、世界にとってのイレギュラー、お邪魔虫という側面の方が強いだろう
だったら出来る限り、原作という物語の筋書きから外れないように『何もしない』というのが最善の行動だと言えるのではないだろうか?
少なくとも僕の中ではそう結論を出し、現在兄のすねかじr...従者をしている
僕はこれからもそう生きていくのだ
物語の傍観者として生きていくのだ
だから...
兄が父によって殺されかけようが、僕は見て見ぬふりをする
「じゃあ、兄さんお休み。春の夜中はまだ肌寒いからね。早めに寝ないと身体を壊すよ?」
「そうだな。ロキアの言う通り、今日は早めに休もう。お休み、ロキア」
そう言って僕と兄はそれぞれの自室へと入っていく
珍しく父から帰ってこいという連絡を兄が受け取りこうして実家へと帰ってきたのだ
どこが珍しいかというと、それに兄だけでなく弟である僕も対象であったからだ
いつもなら兄だけに顔を見せるようにと連絡が来るのだが、今回は僕も帰ってくるようにと連絡が来たのだ
兄は、久しぶりに家族で揃って夕食を取れることに内心嬉しそうだったが、僕は真逆だった
夕食に毒が入っていないか気にしたり、トイレに行くときも後ろを付けられていないか用心したほどだ
まぁ、それは全て杞憂に終わったのだが
だからと言ってあぁ良かったとそのままベットでグッスリスヤァできるわけではない
おそらく今日、兄と僕は父の手先によって暗殺されるからだ
どうして分かるか?それは父の様子を見ればわかる
いつもいないように扱うくせに今日は野郎、ブッコロシテヤルという気概を感じるのだ
どれだけ隠そうが、僕の眼を欺くことはできない、殺意であるなら尚更
夕食に毒を入れなかったのも、そんなことをせずとも殺せるという慢心があったのだろう
どーせ、父のことだ。兄を殺すついでのついでに僕を殺そうとしているに違いない
深夜、ギィとドアを開けられる
そして黒ずくめの人物は、銃を寝ている僕へと向け、発砲
魔術刻印を持っていない僕は、弾丸に込められた対魔術師用の毒物が一瞬で回り、苦しむ声も出さないまま即死
黒ずくめの人物は、僕が死んだことを確認して僕の自室を後にした...
おそらく次の標的である兄の部屋へと入っていったのだろう
そして数分後、窓のガラスが割れる音が聞こえた
兄は原作通り、命からがらの逃走劇を繰り広げているところだろう
「魔術師殺しなら、幻術の対策ぐらいしておくべきだと僕は思うんだ」
ベットで息絶えている僕の姿は花びらへと変わりやがて消え、変わりに虚空から無傷の僕が現れる
この術は使い勝手はいいのだが、如何せんハピエン厨の顔がチラついてしょうがない
まぁ、殺されずに済んだのだからそこは感謝しよう
さて、僕がやるべきことと言えば魔術師殺しから身を隠すぐらいにしかない
兄の方は、二週間ぐらいすれば、新たな決意をその身に宿して帰ってくるだろう
貧しく、優しい少年の命と引き換えに
ここで兄は人間の価値を示し続けると誓うのだ
僕は何もしなくていい、いやするべきではない
こうして、物語は動いていくのだ
僕の脳内では帰ってきた兄がカルデアにスカウトされ、それについていく形で甘い汁を啜る算段までついている
僕だって魔術師殺しに殺されかけたのだ、兄は必ず僕を連れてカルデアへ行くことになるだろう
そしてカルデア爆破を逃れ、甘い菓子でも食べながら主人公やカルデアの良き人々が繰り広げる人理修復の旅を傍観していればいい
そう、そうすればいい
僕は何もしなくていい
そう
そうなんだ
「そのはずだったんだけどなぁ...」
僕は焼き立てのパンを頬張る少年と、顔つきが変わった兄を見ながらそう呟く
僕が何をしたのかって?
いや、途中までは良かったのだ...
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「...キレイ...。ひひ...キレイ、キレイ...」
少年はそう呟きながら、命が尽きかけようとしていた
キリシュタリアはただ茫然とそんな少年を見つめるだけ
「__待て。待ってくれ。頼む。待って、」
そう口にするしか、彼にはできない
魔術刻印も、魔術回路も万全ではない身では、少年を救う手など持っていないのだ
そして...
「...ほんとうに、キレイ___」
少年の命の灯は消える
「...は」
キリシュタリアは驚愕した、少年の身体が淡い緑色に輝いたかと思えば少年は目を再び覚ましたのだ
これには少年自身も驚いており、自分の手の平を見て、次に服の下を確認する
少年の身体に付いていたはずの痛々しい打撲痕はすっかり消えていた
「痛、くない。どこも、痛く、ない」
少年は何が起こったのか分からない様子であった
「治癒魔術?しかもかなり高度な...一体誰が「やぁ、兄さん。ご機嫌いかがかな?」...⁉」
突如自分たちしかいないはずの地下室からすぅーと現れた人物に少年とキリシュタリアは驚いた
少年は、見知らぬ人物の登場に
キリシュタリアは、ここにいるはずもない人物の登場に
「ロキア...どうして」
「フフ、兄さんの驚き顔を見れるなんて思いもしなかったよ」
ケラケラと笑う弟の登場にこれは夢なのかと疑ったキリシュタリアだが慢性的な痛みが続いていることから現実なのだと判断する
「っ!」
少年は、キリシュタリアを守るように両手を広げロキアとキリシュタリアの間に立ち上がった
ロキアは、そんな少年を何とも言えない目で見ながらキリシュタリアに話しかける
「あー、どうしてここが分かったのかって?まぁ、偶然だよ。朝ご飯を買いにいつものパン屋に向かったら、パン屋のおじさんの怒号が響いてきてね。このパン泥棒を痛めつけていたのさ。で、僕がおじさんを落ち着かせているうちにこの子は逃走。それを追ってきたら...なんと兄さんがいたって話さ」
ロキアは飄々と話す
「...どうして姿を隠していたんだ?」
「驚かせようとしてたのさ、兄と弟の感動の再開に演出を加えようと思ってね。そしたらどうだ、この子がバッタリ倒れて、息も絶え絶え。このまま見殺しにしても良かったけど。兄さんを匿ってくれた恩もあるし、仕方なく治療したってワケ」
「そうか...ロキアには刺客は来なかったのか?」
「いや?来たよ?死にたくはなかったからね。上手く出し抜いたよ」
そこまで言うと、ロキアはしゃがみ込み少年と目を合わせる
「僕と、この人。家族、仲良し。分かる?」
少年は、ロキアの言葉を聞き、キリシュタリアの方を見る
キリシュタリアは心配を与えないように笑みを浮かべながら頷く
緊張が解けたのか、少年の腹がぐうっと鳴った
「せっかくパンがあるんだし、食べちゃいなよ。あ、お代はちゃんと僕が立て替えたからね」
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なーにが食べちゃいなよ、だ
これで兄さんの考えが変わらなかったらどうしよう
いや、兄さんの様子を見るにその心配はないようだけれど
結果的に僕は少年の命を救うという原作ブレイクをしてしまったのだ
最後の最後で助けてしまったのだ
ハァ...何してんだろ僕
気が付いたら治癒魔術この子にかけてんだからマジ意味わかんねぇ
絶対見殺しにしたほうが良かったのだ
助けてしまったのならアフターケアをしなければならない
そしてそのアフターケアでさえ既に頭の中で算段ができているのだから腹が立つ
そもそもおじさんを止めずに見て見ぬふりをしていれば、治癒の魔術も間に合うことなく少年の命は尽きていた
僕は中途半端な人間なのだと、もっと自分が嫌いになった
後はトントン拍子で事が進んでいった
魔術師殺しは、兄によって始末され、家の権力も兄が持つようになった
あのパン泥棒...あー、今はピノ君だったか
あの子はパン屋のおじさんへ僕と一緒に頭を下げに行き、兄さんが多額の募金を孤児院に渡して引き取ってもらった
兄さんは暇なときに顔を見せているらしい
養子の計画まで僕に話してきたときにはマジで勘弁してほしかったが
そして、兄さんは師匠であるマリスビリーによってカルデアへとスカウトされるのであった
もちろん、兄のすねかじr...従者である僕もカルデアについていった
兄さんからカルデアに一緒に来ないかと言われたときには計画通りと暗黒微笑を浮かべたものだ
僕の目的は既に達成したも同然である
カルデアに兄さんの従者として滑り込み、悠々自適な生活をしている
Aチームのリーダーであるキリシュタリアの弟という立場を存分に使い、色々好き勝手できるのだ
今度こそ僕は傍観者になる
たとえ、カルデアが爆破されようが、兄が人類の敵になろうが
僕にはどうでもいい
僕は死にたくないのでサボるのだ
前作が要素を詰め込みすぎてほぼエタっているので
要素を切り落として、新しく作り替えました
ですが、この作品はリメイクというより新しい作品という側面が強いです
拙い文章で読みづらい点もあると思いますが、楽しんでいただけたら幸いです
感想お待ちしております