蒼穹の銀翼(改訂版)   作:ミヤモゾン34239

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いかん、昼前からずっとこの作業しているせいで昼飯を食べれていない…かと言って家に食べるものもない。そしてあと一時間で宇宙戦艦ヤマトの新しいやつ見に行かなあかんのやけど…金もないなぁ。


第三章 戦闘開始

 アラスカ攻略作戦開始より数時間後

「敵はP-51で構成された5小隊の20機です」

「こいつらが迎撃機だ、全機落とすぞ!」

 明は一部隊を率いて敵の迎撃機との戦闘に突入している。

「「「了解!」」」

 遡ること14時間と22分、午後9時

「ブリーフィングを始める」

 艦隊がベーリング海峡に差し掛かった時、パイロットは全員招集された。ついに作戦開始の時が来たのかと覚悟を決める者や奮い立つ者が多く見られた。レジスタンスの指揮官であるコラー・レイクス少佐が端末を片手に説明に入る。

「皆わかっていると思うが今作戦の目標はアラスカ北部に在る敵の大規模基地の殲滅又は占領だ」

「爆撃機をあれだけ投入して落とせなかった所をどうやって落とすのか…」

 明は腕を組んで小さく呟いた。

「作戦を説明する。まずはアリゾナ州のモスボールから復帰させたB-52を40機用意した」

「デビスモンサンか…」

「そういえば明の地元だったか?」

 隣に座っているルーが聞いてきた。

「うん、あそこから機体が湧いてくる限りアメリカはまだ生きてる証拠さ」

「これらは通常の戦闘機を護衛として囮として通常のルートで敵の防空圏内に侵入、敵インターセプターをおびき寄せる。その間に我々の中から少数を選抜して構成された欺瞞部隊、スナーク隊が敵の哨戒隊をおびき出す。そして完全に敵基地をフリーにしたところで第一次攻撃隊、ヒュドラー隊を低空から侵入させ、基地の対空砲を破壊し、その後完全に無力となった基地を第二次攻撃隊であるゴーレム隊が撃破する。ゴーレム隊は全機ジェラルド R フォードの艦載機で対地装備のF/A-18Eであるが故に敵戦闘機との交戦は不可能に近い、制空権の確保を絶対とするように。これが作戦の概要だ、質問はあるか?」

 ひとりのパイロットが不服そうに声を上げた。

「なんでわざわざ二回も囮を出すんだ、B-52の部隊の分だけじゃダメなのか」

 レイクス少佐は静かに答えた。

「初撃をより確実なものにするためだ。あとレジスタンス搭乗員の損失を可能な限り少なくするということもある」

 少佐は話を続ける。

「個々が最も活躍出来る状況を用意することで戦力をより多く投入しつつも死傷率を下げることが出来る」

 全員が納得したのがはっきりとわかった。

「作戦開始は八時間後だ、部隊の編成は後で連絡する。しっかり寝るなり、心の準備をするなり、ママに手紙書くなり好きにしろ。以上解散!」

 三人が部屋に戻る途中

「ついに来ましたよ、この時が…」

 明日子は少し緊張気味に声を強ばらせて言った。

「そんな大袈裟に言うことは無い、いつも通りだ」

 ルーは驚くほど冷静だった。

「やっぱエースは違うな」

 里緒がため息を吐きながら嫌味ったらしく言い返した。

「問題は誰がどこに組み込まれるかだ、多分二人は爆撃の訓練をしてたからまぁ奇襲組だろうね。ルーは戦闘爆撃機隊の護衛か哨戒機の釣り出しに回るだろうね」

 明は冷静に三人の配置を考えている。

「そういうお前はどこに行くんだ」

 ため息を付いて答える。

「まぁ十中八九哨戒のおびき出しだろうね」

「なんで言い切る」

「ローマン達から噂程度に聞いたんだが、岩国でヘルダイヴァーを落とした時の一件を見てから上層部に目をつけられたらしい。完全に空戦が上手いってレッテルを貼られてる」

「まぁ事実だからいいじゃないか」

「…だといいんだけどね。俺は少しだけ仮眠取った後はすぐに準備するよ」

 そう言ってそそくさと部屋に帰った。

「そうだといいんだけどねってなんだろうな?」

 里緒が首を傾げた。

「多分本人は今まで生きてきたのは実力じゃないと思ってるんだ。ある意味罪悪感の一種だ、よく居るタイプだよ」

「なるほど」

 こうして三人も部屋へ戻った。そしての仮眠どころか5時間ほどガッツリ睡眠を挟んだ後。

「うん、あまりにも酷くないか…」

アラスカ攻略作戦(通称A作戦)部隊編成一部

 高飛 明 第二陣欺瞞部隊 スナーク隊隊長

 ルー・M・ポータル 第一次攻撃隊直掩機 第二小隊

 羽月 里緒 第一次攻撃隊 直掩機 第二小隊隊長

 三鷹 明日子 第一次攻撃隊 戦闘爆撃機

「良かったじゃないですか隊長ですよ、勝てば勲章ものですよ!」

「まぁ確かに、前向きに考えよう」

「とりあえず緒戦は全員生きて帰る事が目標だ、無理はしないでくれ」

 里緒が普段とはひと味違うリーダーとしての顔を見せる。

 作戦開始まではあと5時間だ。

 艦内で身支度をしていた時、レイクス少佐から声をかけられた。

「お前は第二陣欺瞞部隊の隊長だな」

「はい」

 咄嗟に姿勢を正す。

「今日のお前の部下を飛行甲板に集めてある、顔を拝んでおけよ、責任のためにな、分かったら命令を復唱しろ」

 その言葉が重くしかかった、今まで自分の部下を持ったことがなかったので理解していなかった。今まで自分に命令してきた男たちも同じ心境だったのかと考えると尊敬の念が溢れる。

「了解しました。飛行甲板に向かい部下と顔を合わせておきます」

「いいだろう、期待しているぞ」

 そう言うと少佐は去って行った、同じように各作戦の隊長を回っているのだろうか。

「行ってみるか…」

 飛行甲板に足を運ぶ。艦橋の脇から甲板に出ると飛行服を着た11人の男女が待機していた。

「あれか…」

 向こうもこちらの存在に気づいたようだった。

「高飛 中尉ですね。吾妻 秀一少尉、今日からあなたの部下です」

 黒髪の青年が敬語で話しかけてきた。年齢は自分と同じくらいか、少し低いかくらいだろうか。

「よろしく頼む、全員揃ってるな?」

「もちろんです、中尉はドッグファイトのプロフェッショナルとお聞きしています。この部隊へ配属されたのもそれが理由なのですか?」

「うん、そうだと思う…」

 どうも自信が持てないが部下を持ってしまえばそんな事を言い訳にはできない。

「全員名前と機体をお願いできるかな」

「はい、  浩一 搭乗機は一式戦闘機三型乙です」

「アレキサンダー・フレミング P-39Q」

「アメリア・ハルトグリーン 搭乗機はホーカー タイフーン」

「リチャード・ボング 搭乗機は…」

 11人全員の顔と名前をマッチさせて頭に叩き込む。そしてちょっとした演説をする。

「長い話は嫌いだから手短に済ませる、俺たちの今回の任務は敵戦闘機を基地から引っ張り出すことだ。いいか?第一次攻撃隊が基地に到着するまで耐えるのでもいいし、先に全部叩き落としてもいい。簡単なことだ、全員冷静に、生還することを優先で行こう。俺からは以上だ、解散!」

 できるだけ緊張と恐怖を隠しながら言ったつもりだったが明らかに声が裏返っていた気がする。さっき少佐の言葉を聞いてから分かりやすく動揺している。誰かの命を背負うこと、命の重さを今はっきりとかんじている。

「これじゃあ気が散るどころの騒ぎじゃない、自分が撃墜されかねないな」

 とりあえずで艦内の売店へ向かう、適当なスナックを買ってすぐさま口に運ぶと適度な糖分が身体に行き渡りリラックスすることが出来る。何か苦悩している時はこれに限る。

「あとだいたい4時間か…」

 知らない間に1時間も経過していた、異様なほど時の流れが早く感じる。普段はこのようなことは無いから本当に緊張しているのだろう。その事実にさらに驚愕した。

 二時間後 アラスカ アンカレッジ近郊 エルメンドルフ空軍基地

 ここでは囮であるB-52の準備が進められていた。

「自動操縦装置の最終チェック、完了しました。40機の内コンディショングリーンは38 イエローが2」

「クソ、あれだけ時間があったというのに完璧では無いのか。イエローの機体のチェックを急げ!」

 囮役B-52の指揮を受け持つローガン・ラムジー少佐は現場で最終チェックの指揮を執っていた。今回使用される爆撃機と戦闘機は全て無人化されており戦闘機は遠隔操縦、爆撃機はセットされた航路を飛ぶだけである。

 ラムジーは自分の指揮する部隊が直接敵を叩く訳では無いことを最初は不服に思っていたが、今となってはそんな事を言っていられない。アグレッサーならばアグレッサーを、囮ならば囮を完璧に全うしなければならない。

 駐機していたB-52のエンジンが唸り始める、暖気を始めたのだ。天気は雲量五割、快晴とはいかなかったが悪くは無い。敵基地がある方向を睨みつける、アンカレッジは山に囲まれた地形で非常に防御に適していた。

 山と空の境界線を見つめていたその時、その境界線から無数の黒い点が飛び出してくるのをはっきりと確認した。

「なんだと!」

 どう見ても敵機だった。ほぼ同時に誰かが叫んだ。

「敵襲っ〜!」

 黒い点は次第に大きくなり、形をはっきりと認識できる距離に至った。それは20機のP-47 サンダーボルトだった。翼に爆弾を二つ抱えている。

「隠れろ!」

 部下共々土嚢を積んだだけの簡素な遮蔽に身を隠す。近代の戦闘で使うことがあるのかと疑問だったが今となってはこれが生命線になっている。他の整備兵達も土嚢や機体の影に隠れた。

 防空兵器は真っ先に狙われ、機銃掃射やロケット弾を受けたSAMはすぐに機能を失った。SAMが片付くとP-47はすぐに駐機された爆撃機と戦闘機へ向かい。爆弾と機銃掃射で徹底的に破壊された。

「まさかこのタイミングで先手を打って来るとは…」

 部下が焦りを露わにする。

「すぐに機動部隊へこの事を伝えなければ、我々の囮がなければ第一次攻撃隊は戦闘機の迎撃に晒されます!」

「いや、その逆だ」

 ラムジーの考えは部下と180度違っていた。

「この間に、機動部隊の航空隊が一気に基地を叩くべきだ。何故なら敵主力戦闘機は今我々の目の前に居るからだ。ショットガンでも拳銃なんでもいい!あいつらを一秒でも長く足止めするぞ!」

 ラムジーと部下はすぐさま弾薬庫があるハンガーへ向かった。

 数分後、空母ロナルド・レーガン

「なんか、司令部が騒がしいな」

 明はルーと偶然通りかかった司令部をチラリと覗き込みながら言った。

「何か起きたのかもな」

「作戦に支障がないといいんだが…」

そんな願いも伝わることなく、館内放送が鳴り響いた。

『スナーク隊は全員ブリーフィングルームに集合せよ。繰り返す…』

「冗談だろ…すまん行ってくる」

 狭い通路で人をかき分けつつブリーフィングルームに到着した。中には少佐が居るだけで他の隊員はまだ到着していなかった、しかしそれから二分も掛からずに全員が集まり席に着いた。

「全員集まったな、自体は逼迫している。本日囮役の爆撃機を出撃させるはずだったアンカレッジの基地がおよそ20機の敵戦闘爆撃機の攻撃を受けている」

 その一言で一同は動揺しざわつきが広がる。

「お前たちも察しただろうがこれでは爆撃機は出せない」

(代わりにその基地への救援と言ったところだろうか…)

 だがその予測外れた。

「つまり敵戦闘機の釣り出しは完全に君たちに任された、敵の目がアンカレッジに集中している間に出撃させる。作戦開始は15分後だ、まだ夜は明けていないが、磁石に従って飛ぶだけならば問題は無いだろう…以上だ、君たちの健闘を祈る」

 このブリーフィングの後、明は12名の隊員を集めて陣形などの細かい指示を叩き込んだ。

「なんてこったいなんてこったい…」

 ぶつくさと唱えながら格納庫へ向かう。格納庫では爆装の攻撃機が隅に追いやられて戦闘機がひっぱりだされている。

「ミッドウェーの時の日本もこんな感じだったんだろうなぁ」

 我ながら洒落になっていない。

「隊長!」

 副隊長に指名した吾妻が声をかけてきた。

「アンカレッジを奇襲したのは20機のサンダーボルトだそうです」

「向こうの戦闘機の総数は40前後のはずだから敵の哨戒は多くても20機…」

「勝てますかね?」

 吾妻が不安そうに聞いてきた。

「いや、この機数差なら問題は無い。もう全員飛べる状態か?」

「はい、エンジントラブルなどもなく出撃が可能です」

「いつでも出れるようにしとけ、すぐに出撃するよう言われるぞ」

 機体の中で粛々と出撃を待つこと3分、ついに出撃の命が降りた。

『スナーク隊、出撃を許可する、上空で編隊を組み次第東北東へ250ノットで急行、その後敵哨戒を撃滅し味方攻撃隊の進撃路の制空権維持に勤めよ』

「了解、隊長機スナーク1以下11機出撃する!」

 スナーク隊の一番機なので今回のコールサインはスナーク1となる。

 新型のカタパルトで10分も経たずに全機が発進した、

一糸乱れぬ編隊を組み上げ目標の空域へ向かう。

「急を要する任務だ、出来るだけ迅速に目標地点へ向かう!だが各機燃料には注意されたし」

 同時刻、エルメンドルフ空軍基地

 P-47による猛烈な機銃掃射によってB-52の殆どは飛行不能、SAMもAAGANもほとんど稼働していなかった。

「かなり長居するじゃなねぇか、帰れなくなるぞ」

 倉庫から引っ張り出したM2ブローニングで空を睨みながら一人の兵士が言った。

「あぁ、そろそろ30分だ…いや待て!」

 給弾を行っていた兵士が答える。

 一機だけ翼端や機体にオレンジの帯を持つ機体が居たのだがそれが翼を左右に振ると、20機の戦闘機は一斉に引き上げた。

「リミットは30分だったか…」

「だがその30分でこっちはこの有様だ」

 炎上する爆撃機、あちこちに血痕や死体、傷を負って蹲っている兵士が見られた。

「俺たちにこんなことやらせた上層部を首吊りにしたいね…」

「んな事言ってる場合か、怪我人探して応急処置して運ぶぞ」

 この戦いでエルメンドルフ空軍基地は完全に戦闘能力を喪失した、今後は空母機動部隊の手腕に一任されることとなる。

 スナーク隊が出撃してから30分後のロナルド・レーガン上、里緒とルーは無線で盟友の心配をしていた。

「あいつは上手くやってるだろうか?」

「明なら大丈夫だよ問題なくやれてるさ…多分」

 何故か最後でちょっと自信をなくした。

「なんでちょっと不安になったんだよ」

「いや、彼が指揮をしてる場面を見た事がないのでな」

「確かにそうだけどなぁ…とりあえず今は自分の心配をしてろ、もう出撃だぞ!」 

 明達を追うように攻撃隊が出撃する。

 第一次攻撃隊 爆撃機28機 直掩機12機の計40機

 爆撃機と言っても戦闘機に爆弾を積んだだけなので、爆弾を落としたあとは普通に空戦が出来る。

「ないと思いたいが道中で敵の迎撃に合った場合、基本的に直掩機が抑えるがそれでも爆撃機隊が攻撃に晒されるような場合になった場合、2小隊が爆弾を投棄し対応するように」

 40機を束ねるのはコラー・レイクス少佐、指揮官が自ら前線に出るというのだ。

「いや、隊長といえど先頭、それもスカイレーダーで…」

「あぁ、肝が据わってるとかそういう次元の話じゃないな」

 真っ先に撃墜されても文句を言えない位置取りだ、里緒とルーの第二小隊はスカイレーダーの右後ろに陣取っている。そしてそのすぐ後ろには明日子を含む爆撃機隊がスタンバイしている。編隊は完成しスナーク隊を追いかける。

「明達が敵戦闘機は止めてくれる。何も難しいことは無い…なのに何故こんなにも胸の中で何か引っかかるんだ」

 ルーはコックピット内で一人、不安感に苛まれていた。

 同時刻 スナーク隊

(敵の警戒ラインまであとおおよそ5マイル(8キロ)…)

「あの雲を超えた当たりから敵の警戒ラインだ、撃墜されても文句は言えない、気を引き締めろ」

 編隊は雲へと突入して行く。

「各機、空中衝突に注意」

 無線を介して様々な命令、報告を行う。これは初めての感覚だ。

「雲を出るぞ、索敵を強化するんだ、下方まで目を配れ」

『発見しました!7時の方向、我々と並行しています、まだ遠い』

 編隊の右端に位置するパイロットから報告が来る。

「あれか」

 目を逸らすと確かに編隊が見える。

『後ろからだと…』

『こっちの方が高度有利だ、上から抑えよう。』

『液冷エンジンだ、メッサーシュミットかスピットファイアだろうか』

 私語で一気に無線が騒がしくなる、新兵も居るのでこうなることは予想出来た。

 すぐに状況を判断し次の一手を決める。

「私語を慎め!我々の任務は敵部隊の撃滅にある、このまま高度有利を維持しつつ仕掛けて迅速に終わらせる。だが俺が許可するまでドッグファイトは禁止だ、二機一組で取り掛かれ、後ろに疲れたら全速降下するか僚機と連携を密にしてサッチウィーブ徹底しろ」

 人の命を預かってるだけあってどうしても高圧的になってしまう。

『了解』『コピー』『イエッサー』

「断雲を利用して接近するぞ」

 少し高度を挙げて断雲に編隊を詰め込む、二つの編隊の距離は縮まり続ける。だが完璧な奇襲を行うにはまだ少し遠い。

『もうほぼ完璧な位置取りです、仕掛けましょう!』

 吾妻が無線で言った。

「いやもう少し、あと少し…」

 編隊はついに敵の真上に到達した、これでは敵の索敵能力を心配したくなる。

「今だ、ダイブして突っ込め!」

 全機が反転降下する。

『了解、お供します。』

「P-51は硬い、12.7ミリでは厳しいぞ」

『問題ありません、この機体20ミリですので…』

 一式戦闘機三型乙は機首武装を20ミリ二門に換装した画力向上型である。高レートの20ミリ機関砲は防弾装備が充実した重戦闘機や大型の爆撃機にも通用する。

 明の零戦も突っ込む、そして少し後ろに吾妻の一式戦闘機が追従する。明が真っ先に先頭の指揮官機を狙う。

P-51は優秀な加速と機動力で回避機動に移るがこちらは降下のエネルギーを利用して無理やり追い付き、P-51を照準器に捉えスロットルの引き金を引く。

 マスタングが炎上し高度を落とすのを捉えたら、すぐに僚機である吾妻の隼の姿を確認する。隼も一連射でマスタングをバラバラに解体しスクラップにしている。確かにあれは12.7ミリで出来る芸当ではない。

『うぉおおおお!』『キエエエエエエ』『死にやがれ』

『この鉄くずが!』『一族の敵ぃ!』

 無線が非常に血気盛んだ、現状味方機が落ちている報告は無い、火を吹いて墜落しているのはP-51ばかりだ。

『敵はP-51のB型とD型を混合した編成のようです。』

「あぁ、だが殆どはB型、D型は少しだなB型に苦戦するんじゃないぞ、D型は絶対上に逃がすな、8000メートル越えられたらもう追いつけないぞ」

『了解しました』

 マスタングは型によって改良が施されD型からはシャレにならないほど高高度性能が高い。現状の編成では高高度に逃げたマスタングを追撃できる機体はいない。

『奴が後ろに食いついた、援護を頼む』

『了解、15秒でカバーに向かう』

『行け!ファイターパイロットの維持を見せてやれ!』

『まるで花火の中に居るみたいだ』

 敵の数は着々と減っている、これならと思った矢先だった。

『後ろを取られた、誰か援護を!』

咄嗟に辺りを見回すと、味方のタイフーンの後方にマスタングが追従していた。

「待ってろ今行く」

 一番近いのはどうやら自分のようだ、スロットルを全開にして急行する。

『こいつが最後です、やっちまってください!』

 タイフーンのパイロットであるアメリアが言った。

「わかった、すぐに終わらせるからな」

『お願いしますよ、隊長』

 タイフーンがマスタングの攻撃を躱すために右へ左へと旋回する、そして離されまいと食いつくマスタングを明が追う。

 すぐさまマスタングを捉えて射撃する、13ミリと20ミリの弾幕をもろに受けたマスタングは火を吹いて降下していった。

「全機集合、こちらの被害を確認す…」

 翼を振って集合の合図を出そうとした時だった。

『緊急電!攻撃機が攻撃に晒されています、直掩機だけでは対処しきれていません!至急応援願う。位置はポイントチャーリーより南に20マイル』

 さらに続々と無線が入る。

『こいつらアンカレッジの基地を襲ったヤツらだ、鉢合わせしちまったんだ』

『P-47が15機、やたら腕が良いぞ』

『攻撃機が二機、直掩機も一機落ちたぞ』

「機体に損傷がある者は帰投させて残りで援護に向かう、変態を組み直せ」

 編隊は迅速に組み直され、欠員なく全機が揃った、しかし8番機だけ飛び方がおかしい。

「8番機、飛び方がおかしいぞどこかやられたのか?」

 8番機の機種はF6Fだ、防御力には定評がある。

『いいえ、飛行、戦闘共に支障はありません』

「いや嘘だな、エレベーターの効きが悪いんだろう、それに燃料タンクの近くにも被弾しているな、タンクから漏れ出た燃料が機体の中に溜まっているとあと一撃で火だるまだ…帰投しろ」

 似たような場面で無理をして撃墜された機体を多く見てきた、ここで無理をさせる訳には行かない。

『…了解しました』

「誰か二機ほど八番機のカバーを頼む」

 合計で3機が離脱し残りは9機となった。

「よし、攻撃隊の援護へ向かう」

 出しうる限りの速度で援軍に向かう。

(大丈夫だ、あの三人がいるならそう簡単にはやられないはず…)

 遡ること10分前。

「?」

「前方から敵機、機数16」

 ルーが真っ先に敵を見つけて報告する。

『単発機だがやたら大きいな、P-47辺りか…戦闘準備、全機守るぞ』

 レイクス少佐が上空に退避しながら指揮を執る。

 ルーと理緒を含む第二小隊の他二つの小隊が16機のサンダーボルトと向かい合う。

「第二小隊エンゲージ、ヘッドオン!」

 それは空戦と言うよりも騎士の決闘のようであった。

「デカイ割によく曲がるな、それに…」

 理緒はサンダーボルトの後ろに回り込み20ミリを叩き込むが

「クソ、硬いっ」

 燃料を吹いただけで撃墜には至らなかった。

『相手のドッグファイトに乗るな!』

『一機落としたぞ』

 敵は2機でまとまって行動することを徹底している、おそらく火力有利を作りたいのだろう。

「ここだ!」

 一糸乱れぬ編隊飛行だったがルーからすればそれは的が増えた程度のことでしかない、一連射で2機のサンダーボルトを仕留める。

「2機まとめて落としやがったのか!」

 里緒も驚きのあまり集中が途切れる。

 序盤は直掩隊の優勢かと思われたがとある乱入者によって状況は大きく変化する。

「接戦だな、何機かこっちにすり抜けてくるかもな…」

 爆撃機隊のパイロットはそんなことを口にした。だがその直後、頭上から影がチラついて上方を警戒した、しかし時すでに遅しだった。

「あ」

 間の抜けた声を最後に彼は機体ごと爆散した。

『何!?』

『1機だけ隠れてやがったぁ!』

『空対空ロケットを持ってるぞ』

『爆撃機隊がフリーになるのを待ってたんだ!』

『誰でもいいからあいつを止めろ』

 一気に無線が混乱する。

『理緒さん、ルーさん、爆撃機隊が襲われてます、相手は一機ですが強いです』

「何だと!?」

 理緒とルーがやっと異変に気づいた、だが19機のサンダーボルトを処理するので直掩は手一杯だ。

『スナーク隊が到着するまで耐えるしかない、一部機体は爆弾を投棄し交戦せよ』

 こんな状況でも冷静さを欠かないレイクス少佐からも命令が行き渡る。

『予定通り、これ以上被害が広まる前に爆弾を投棄して迎撃する。それでいいな?』

 爆撃機隊の一人がそう言って爆弾を捨ててサンダーボルトに向かった、機種はA-36アパッチ、P-51の原型となった高性能な攻撃機だ。

「お前の相手は俺だ!」

 体制を立て直すために一時的に退いたサンダーボルトを猛追する。サンダーボルトがアパッチの存在に気づくとすぐさま雲の中に逃げ込んだ。

「意外と逃げ腰じゃないか…」

 なんの躊躇いもなく速度を上げて追いかける。

「絶対に逃がさんからな!」

 しかし雲を抜けるとサンダーボルトは目の前から消えていた。

「しまった、完全に見失っ」

 言葉を最後まで言い切る前に彼は何処から奇襲を受けたかもわからず銃弾に体を貫かれて絶命した、

A-36を仕留めたサンダーボルトはまた編隊を攻撃するために反転する。

 ルーが3機目を撃墜した頃、明達が直掩機達の増援としてやってきた。

「来た!」

 ルーが声を上げる。

「酷くやられてるな、4機はこっちで直掩隊と協力して戦え。残りの5機はついてこい、爆撃機隊に張り付いてる奴の相手をする」

『最初の1機は雲の中に隠れて行方不明ですが他の個体が3機こちらに来ています』

「了解した、奇襲に警戒しつつ対応する」

 知らない間に爆撃機隊に張り付いているサンダーボルトは3機に増えていたらしい、この様子だとかなり押されているのだろう。

「爆撃機隊を含めれば数の有利がある、狙われてない奴は味方を囮にしてサンダーボルトの後ろを取れ」

 こちらで戦力となるのは明が連れてきた6機だ、相手が余程のエースじゃない限り負けはしない。

『さっきのマスタングより動きが重い、これならそれほど時間はかからないはずだ』

 明は5機の部下が戦う図を少し上から俯瞰していた。

『明、こっちはある程度片付いた、そっちは?』

ルーからの連絡だ

「あぁ、もうすぐ終わる、終わり次第損失を集計して報告を…」

『2機も落とすとは流石だな、やるな吾妻!』

『まだ来るぞ、気を抜くな!』

 雲の中から4機目が奇襲してきた。

 これが最初に爆撃機を単独で襲った機だろう、吾妻が対応している。しかし何かがおかしい、4機目サンダーボルトの動きを観察する。

 一式戦闘機が後ろについてる割には機動が甘い、誘っているようにも見える。

『追い付いた、吹き飛べ!』

 一式戦闘機の20ミリ機関砲が火を噴く、しかしサンダーボルトは余裕のある動きでそれを躱してみせる、更には減速しながらのバレルロールで一式戦闘機の後ろに回り込んだ。

『な、いったいこんな動き…』

「やばいっ!」

 反転降下して上からサンダーボルトを銃撃する。しかしそれは掠めただけで致命傷には出来なかったが注意をこちらに向けることは出来た。

「こいつの相手は俺がする、爆撃機隊の方へ行け!」

『了解しました!』

 零戦とサンダーボルトの2機は互いに体制を立て直すとすれ違う様に互いの横を飛び抜けてから、同時に旋回を始める。明が首を傾けて敵機を見た時、驚愕した。

「は?」

 居るはずのないパイロットがこちらを睨みつけている。ゴーグルをしていて顔ははっきりとは分からないが確実に人間だ。

 (なんで人が乗ってるんだ、味方なのか?でも味方にP-47は居ない、それに塗装も違う、仮に敵でも人間なら殺すことになるのか?どうなんだ、クソッ考えるな!)

 一瞬の雑念、しかしそれは0.1秒を争うドッグファイトの前では長すぎた。操縦桿を握る手が緩む、機体が少しふらつく、奴はそこを逃さなかった。

「しまった!」

 すぐさま後ろを取られてしまった、その動きには無駄がなかった。

(いやまだだ、向こうが射撃してきた時に…)

 次はこちらがあえてぬるい回避機動で相手を誘う。向こうの射程内で照準に収まった時。

「ここ!」

 スロットルを下げて、スナップロールからの失速で無理やり錐揉み状態に持ち込む、つまり人為的に失速するのだ。

 急減速して敵機の真横をすり抜けて後ろに回り込む、スロットルを開けて体制を立て直し相手を照準に捉える。

「取った…」

 すぐさま引き金を引く。サンダーボルトは機体から火を吹き燃料に引火したのか空中で爆発した。パイロットは最後まで脱出していなかった。

 相手は逃げなかった、しかし最後サンダーボルトのパイロットは不敵な笑みを浮かべているような気がした。それは『やっと俺たちの存在に気づいたか』と言っているような気がしてならなかった。

 もしかしたら自分は知らない間に同じように多くの人の命を奪っていたのかもしれない、そう思った。

「生かして投降を促せばよかった…」

 戦闘で熱くなっていた頭が冷えてから思いついた。

『大丈夫か、返事をしろ!』

「あぁ」

 声を聞いて顔を上げるとそこには見慣れたスピットファイアが飛んでいた、ルーだ。

『編隊が合流してもずっと逆方向に一人飛び続けてたぞ』

「これを伝えていいものか…」

 思わず思考が声になっていた。

『え?どうしたどこか被弾したのか?』

「違う、さっき交戦したサンダーボルトの事なんだ」

『ん?』

「…いややっぱ何でもない、たぶん気のせいだ」

 相談したいのは山々だが他の人を巻き込みたくないと思い踏みとどまる。

『そうか…ならいいんだが、無理するなよ』

「いっつも無理しかしてないさ」

 編隊に合流し結局欺瞞部隊の戦闘機も含めた残存機全てで敵基地を叩きに行く。

『護衛戦闘機は先行して駐機してる航空機を叩き壊せ、その後爆撃で対空砲を破壊する。ゴーレム隊はもうこちらへ向かっている。時間をかけるな!』

「了解」 

 敵基地上空に到達したが主力が迎撃に上がっていたせいで大したものは残っていなかった、だが命令通り先して対地攻撃を始める。

『隊長、残弾が残り少ないです。地上銃撃をすると帰り道で奇襲をかけられた場合対応できません。』

 吾妻から連絡があった。

「まぁ2門で300発だもんな、わかったじゃあ上空の警戒を頼む」

 水平線の向こうに基地が見えてきた、レーダーを掻い潜るために低空で飛んできた、基地上空に達すると全機ポップアップしてちりじりにになり各々の目標に向かって攻撃を開始する。基地の直前で滑走路や格納庫周辺で出撃を待っている航空機をスクラップにする。

『楽な作業だ、さっきのサンダーボルトと比べたら張合いがない』

『何言ってんだお前ずっと断雲に隠れてた癖に』

「うるさいぞお前ら、俺たちの仕事量で爆撃機隊の危険性が変わるんだぞ黙ってやれ!」

 明日子が爆撃機隊にいるのでこちらも必死だ、頼むから言うことを聞いて欲しいのだが…

『待て、駐機場から無理やり離陸したやつが3機居るぞ、単発機のくせにめちゃくちゃでかい!』

 無線に不穏な報告が入る、下方に目をやると戦闘機か雷撃機のような大型の機体が低空で編隊を組んでいた。

「あいつらまさか編隊を組んで離陸したのか!」

 迎撃に来たのかと思ったが違うらしい、奴らは我々のことは無視して南東の方へ舵を切った。そしてとてつもなく加速が早い、すぐさま見えなくなってしまった。

「あぁクソッ、空母だ」

 すぐさま指揮官機へ無線を繋いで報告する。

『どうした、敵基地をもう掃討したのか?』

「はい、敵戦力の殆どは地上で破壊しました。しかしスカイレーダーに告示した大型の単発機が3機離陸、南東へ向かいました、目標は十中八九我々の空母でしょう」

『なんてことだ、奴らの速度は?』

「かなり速かったです、推定300ノット以上並の機体では追いつけません」

『スカイレーダーにしては速いな、だが3機で何をする気なんだ…』

「仮定ですがあの3機のうち1機でも大量破壊兵器を搭載していたら艦隊が全滅する可能性が発生します」

『確かにそうだ、リスクとして存在しているならば確実に対応しなければならない』

「隊長、追いつけるか分かりませんが俺は奴を追います」

『待て、一人で相手するというわけじゃあるまいな?』

「僚機なら一人あてがあります、それも腕が立つのが」

『わかった!行ってこい、こちらは予定通りゴーレム隊の対地攻撃を行う、空母で会おう』

「了解!」

 ルーは直掩機としての仕事があるのでとにかく単機で奴らを追う、その途中、母艦への回線を開いた。

「こちら高飛 明特務中尉だ、アリス・燿子・バーノンを呼んでくれ」

 遡ること15時間前。

「えぇー!飛べなくなったァ?」

思わず大声が出た。

「そうよ、うっさいわね、冷却水が漏れてエンジンの中に入ってたのよ。一応エンジンは回るけど、吹かしたら排気管から水が出てくるわ、アイドリングでも音が酷いし、おまけにいつ止まるか分からないってことらしいの」

「そうだったな、お前の空冷っぽいけど液冷だもんな、まじで修理は間に合わんのか?」

 ダメ元で聞いてみる。

「無理ね、ギリギリ間に合わないとの事、あんた達が空戦してる時にやっと治るか治らないかって感じ」

 ということを聞いたのでワンチャン治って動けないかと思ってみたのだが。無線を艦の内線に繋いで話せるようにしてるらしい。少しのノイズの後あの憎たらしい声が聞こえた。

『何よ、人が気持ちよく寝てる時に急に呼び出して!』

「緊急事態だ、機体は動けるのか?」

『えぇ、まぁなんとか、さっき組み直したとこ』

「よし、じゃあちゃんと修理出来てるかテストしないと行けないよな」

 こんな時ですら小粋なジョークを言っていられる自分に呆れる。

『はぁ?何を言って…』

「強力な航空機が3機そっちに向かってる。俺は今そいつらを後ろから追ってるんだが全く追いつける気がしない」

『何?だから私が撃墜しろってこと?』

「いやいや、俺が来るまで耐えてろ。2機集まってから反撃する」

『そいつらの性能は?』

「分からんが魚雷か何かを抱いた状態で600キロオーバーの速度を出してるあたりエンジンはバケモンだろうな。他は何も分からん。うっかり落とされるなよ」

『りょーかい、とりあえず急いで出るからあんたもその低出力のエンジンで頑張りなさいな』

「いいから早く飛べっての!」

 無線を切られたので奴らを追いかけることに集中する。残りの稼働機があの3機だけだといいのだが。その頃

『3,2,1,降下開始っ!』

 指揮官機からの指示で爆撃機隊が逆さ落としで目標へ向かう、その中には明日子のコルセアの姿もあった。

(高度2500…2000…1500…1000…)

 目標を凝視しながら脳内の高度計で引き起こしのタイミングを図る。

 専用の急降下爆撃機ではないので速度と引き起こしには細心の注意を払わなければならない。

 周辺の監視を行っているルーと里緒は爆撃機隊の仕事を眺めていた、敵の戦闘機が一機も見当たらないので言ってしまえば暇なのだ。

「あんな速度でそれにかなり角度が深い、かなり経験があるようだな」

「そういえばルーはあいつの急降下爆撃見るの初めてだもんな。あいつはいっつもギリギリまで引き付けるのさ、ほんとおっかないくらいにな」

 そう言っているうちにコルセアが胴体の下から爆弾を二つ投下した。爆弾は目標である対空砲座を破壊した。

「弾薬を抱え込んでたか、いい音だ」

 対地攻撃はゴーレム隊の到着まで散発的に続けられ、対地ミサイルはもう要らないのではないかと思われるほど敵の戦闘能力は残っていなかった。

『急げ、空母まであと100キロないぞ!』

 無線で怒鳴られる。

「判ってる!」

 ほぼ最高速度の650kmで言われた方角へ向かう。 

「ん?見えた!」

 真正面に機影を確認した、大きなひとつの点に見えるが、よく見ると大型の機体が間隔を詰めて編隊飛行をしている。

「何あれ、絶対練度高いじゃない!」

『何処だ!』

「空母から88キロの地点ね」

『思ったより離されてないな、すぐ向かう』

「ヘッドオンに集中するから無線切る、生きてたらまた連絡するわ」

 無線をオフにして敵機と照準器に集中する。

「さぁいくらでもかかって来なさい!」

 意気揚々と叫んだが敵機はヘッドオンを嫌ったのかアリスを避けて散開した。

「チッ、ノリ悪いわね」

 3機のうち2機は魚雷を投棄し迎撃の用意を整えた。しかしアリスに向かってきたのは1機だけ、もう1機は魚雷を抱いた機体に寄り添って守り続けている。

「1機で来るなんて流石に舐められすぎじゃない?」

 敵機が攻撃下から突き上げるように大口径弾の弾幕を張る。しかしアリスにとってその行動はあまりにも遅かった。

 素早く躱し、高度差をエネルギーに変換して後ろへ回り、そのまま20ミリと7.92ミリの一連射を流し込む。しかし敵機は火を噴くことも無くケロりとした様子で飛行を続けている。

「ちょっと硬くない?」

『デカイからだろ、落ちるまで撃ち込んでやれ』

 この時には既に明もアリスと攻撃機を捉えていた。

「言われなくても…」

 後ろに追従し続けてもう一度引き金を引く。今度は相手が空中分解するか確実に墜落するまで射撃を辞めない。

 敵機に弾痕が増えるがまだ落ちない。

「あ〜もうしつこい!」

 20ミリを60発近く消費してやっと敵機の左翼がちぎれて落ちていった。

「よし、追いついた!残り2機に仕掛ける!」

 敵が旋回した事により速度が低下し零戦もかろうじて追い付くことが出来た。2機の後方から降下して奇襲する。明は魚雷を抱いた方を狙って射撃したがすんでの所で護衛が間に割って入った。

「まじか、我が身を犠牲にしてまでも…」

 機械にそこまでの信念があるのかと感心したがそんなことよりもあまりの手応えの無さに驚きを隠せなかった。だが策がないわけではない。

 明は増速して2機の前出る、すると護衛の1機は隙ありと言わんばかりに追従してきた。そこで待ってましたと言わんばかりに明は宙返りで敵機の後ろ上方へ回り込む。敵機はそのサイズから来る鈍重さ故か追従せずに右旋回で逃げようとした。

 零戦の照準器には無防備な巨体の上面が捉えられている。

「ここだ!」

 敵機のキャノピーに照準を合わせて13ミリを発射する。敵機はガラス片や奴らの機械の体そのものの破片を振りまきながら海面に突っ込んだ。

「嘘、操縦席だけ狙ったの!?」

「そうだよ、前から弾が少ない時はこうしてた、久しぶりだったからちょっと手こずったけど」

「いいじゃない、今度教えてよ」

「わかったわかった、暇な時に誘ってくれ」

 呑気にやりきった感を出していたが本命が残っていた。

『何をしている!あと1機残っているぞ!』

 我に返って辺りを見渡す。

「アリス、ラスト1機はお前にやるよ」

『偉そうに言ってるけど弾が無いから落とせる自信が無いだけでしょ』

 バレた、だが護衛のない爆弾を抱えて鈍重な戦闘機を撃ち落とす事など簡単だった。

 アリスが迅速に対応し、事なきを得た。

「こちら高飛、敵の攻撃機を全機撃墜、こちらの損害はありません」

『よくやった、一足先に空母に戻るように、いい結果の報告を待っていてくれ』

「了解しました、帰投します」

 明とアリスは一足早く空母へ帰還した、そして同時刻にはF/A-18E40機が空対地巡航ミサイルを吊り下げてアラスカ敵基地から100キロの地点に陣取った。

「目標敵基地ハンガー並びに滑走路、燃料貯蔵施設、GPS誘導の後終末誘導はレジスタンスから送られた画像誘導とする」

 通常戦闘機を指揮するのはキャメロン中佐である。中佐程の人間は本来全然に出ないが彼がエースであるが故に特別に隊長機として先頭に立った。

「全機へ告ぐ、シェフは客に料理を提供した、我々の仕事は皿洗いだ」

 翼下に吊るされたミサイルの安全装置が解除される。

「全機ミサイル発射!」

 横一列に並んだスーパーホーネットから一斉に系80本の巡航ミサイルが放たれる。

『よし、ゴーレムのミサイル発射を確認した、全機退避だ!』

「あ〜あやっとか、初めての割に疲れたぜ」

 里緒が編隊を組み直しながらボヤいた。 

「これでこの基地は戦闘能力を完全に失う、完勝とは言い難いが初回にしては重畳だろう」

 巡航ミサイルの着弾で次々と爆発が起こる基地を尻目にレジスタンスは全機撤退を開始した、これにて作戦は終了したのである。

 3時間後

「こっちの未帰還機は計8機か…結構辛勝だなぁ」

「あのP-47が想定以上に練度が高かったのが一番の要因だろう、だが明達の活躍がなければそもそも帰る空母さえ消えてたかもしれないな」

 甲板でコーヒーをすすりながら話しているのはルーと明だ。

「ほんと一人で行かなくてよかった、多分下手したら死んでたよ。今回ばっかりはアリスに感謝するかね」

「結局のところ二人の関係がはっきりしないな、あいつは元カノなのか?」

 明が顔色を変える。

「そんなの俺が嫌だよ、あいつはどちらかと言うと限りなく近いのが俺のストーカー」

「へぇ、そんなに言うってことは嫌いなのか?」

 少し悩んでから明は返答した。

「いや別に嫌いって程じゃない、ずっと付きまとうけどやる時はちゃんとやるタイプの人だから…うーん、仕事仲間としてならまぁありっちゃありって感じかな」

「なるほど…」

 ルーが空を仰ぎだした。

「もしかしてあいつに対してジェラシー感じてるとかないよな?」

 それを聞いたルーは少し赤面してから微笑んだ。

「ふふっ、別にそういうのじゃないさ、明は浮気とかしなさそうだし」

「おいおい、どういうことだってばよ…」

 誤解とかがなさそうなのでこれで安心して眠れる。

「なぁ、次何処かで上陸した時に何処かデートにでも行こう、いい感じのホテルも見つけて1泊2日位がいいかな」

「なるほど、え、ホテル?」

 思わず変なことを考えてしまったではないか、自分を最悪な人間だと卑下する。

「あぁ、別に抱いてくれてもいいんだぞ」

「それはいつか全て終わった時でいいよ」

 明が照れ顔でそう返した。

「夏とはいえ真夜中になると寒い、そろそろ部屋に戻るかな」

 ルーがそう言って立ち上がろうとしたのですかさず先に立ち上がる。

「送るよ」

「別に怪我もしてないしそんなに距離もないからいいさ」

「いや、送りたいから送るんだよ」

 空いたコーヒーの缶を踏み潰して、あとは勢いでルーをお姫様抱っこで抱き上げる。

「きゃっ…」

「あはは、たまに可愛いとこあるよなやっぱり」

「…いいから早く連れて行ってくれ、見られたら恥ずかしいじゃないか」

 ルーは目を合わさずにそう言った。

「でも降りようとはしないんだな」

 明がゆっくり歩き始める

「…いいから、早くっ!」

「わかったわかった」

 艦隊はノバヤ・ゼムリャ島へ向かう、そんな中二人はつかの間の休息を全力で謳歌していた。そして二人の影を追う人物が一人…

(おぉ!めっちゃ仲良くなってる、アッツアツのカップルじゃないか!いやぁこれはいいものを見せて貰ったよありがとう、てぇてぇだわ、よしこれで今日はよく寝れるぜ)

 まさかの里緒だった。

 第三章 END

 

1. 一式戦闘機三型乙 隼(中島飛行機)

「加藤隼戦闘隊」で知られる日本陸軍の主力戦闘機、その最終量産型である。エンジンを水メタノール噴射装置付きのハ115-IIに換装し、速度と上昇性能を向上させた。乙型では武装を12.7mm機関砲2門から、より強力な20mm機関砲2門へと強化しています。旧式化しつつも、持ち前の軽快な運動性と信頼性を武器に、終戦までビルマやフィリピンなどの最前線で連合軍の新型機を相手に孤軍奮闘し続けた。

 

2. ホーカー タイフーン(ホーカー・シドレー)

当初は高高度戦闘機として期待されたが、巨大なH型24気筒エンジン「ネイピア・セイバー」の不調や低速域での操縦性に悩まされた。しかし、低空での圧倒的なパワーと頑丈な機体構造が見直され、対地攻撃機として開花する。主翼に搭載した4門の20mm機関砲とロケット弾を駆使し、ノルマンディー上陸作戦以降の地上戦でドイツ軍の戦車部隊を壊滅させるなど、「戦車殺し」として恐るべき戦果を挙げた。

 

3. P-47 サンダーボルト(リパブリック)

巨大な排気タービンと強力なエンジンを包み込むため、当時の戦闘機としては異例の巨体となった「空飛ぶジャガーノート」である。8門の12.7mm機銃という圧倒的な火力と、急降下で爆撃機を追い抜くほどの重量を活かした一撃離脱戦法を得意とした。その頑丈さは伝説的で、機体がハチの巣にされてもパイロットを乗せて帰還するタフさを誇り、護衛戦闘機として、また対地攻撃機としても欧州戦線で大活躍した。

4. ボーイング XF8B(ボーイング)

戦闘機、雷撃機、爆撃機の機能を一台に集約しようとした、米海軍の野心的な試作機である。3,000馬力級の巨大なエンジンと二重反転プロペラを装備し、機体サイズは双発機に匹敵するほど巨大でした。機体下部に爆弾倉を備え、魚雷や2,000ポンド爆弾を積んでなお高速で飛行できる万能機を目指したが、開発の遅れと終戦による軍縮、そしてジェット機の台頭により、わずか3機の試作のみで終わった不遇の「怪物」となった。

 




あちょっと待って、荷物届くのに映画見に行くとかアホなんか俺、やらかしてしまった。
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