強化人間C4-621が、人として幸せになる為に   作:03-AALIYAH

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今(3月5日23時)見たらルーキーランキング5位になってるんですがこれってやっぱり幻覚ですよね……?


MISSION09 データ収集

朝の光が薄く差し込む。

 

デスクに置いた腕時計は六時を指していた。

 

 

私は掛け布団を跳ね除け、床に足をつけて立ち上がる。身体はよく動く。

 

 

「ん……」

 

 

パジャマを脱ぎ、インナーに袖を通した後、少しだけ伸びをして身体をほぐす。

 

 

洗面所へ向かい、歯を磨き、髪を整え、鏡に映る自分と短く目を合わせる。

 

相変わらずの仏頂面だ。

 

 

 

寝室に戻ってパソコンの電源を入れると、昨日と同じ画面が立ち上がる。

 

起動の間に、エアの声が耳の端で小さく囁くように響いた。

 

 

『おはようございます、レイヴン。昨夜、黒服より新しい依頼の通達が届いています』

 

 

依頼の画面にひとつ、簡潔なものがあった。

 

昨日色々と仕様を調べていてわかった事だが、わざわざ取ってきたものではない名指しのものは最初からここに並ぶらしい。

 

差出人は「Black suits」、つまり黒服だ。多分準備っていうのが整ったのだろう。

 

 

 

 

 

▢《A》無題

 

 

□場所

・ヘリで移動

 

 

□内容

・指定した武器を使用した戦闘データの収集

 

 

□報酬

¥100000

 

 

□備考

・敵撃破に応じて報酬を加算

 

・弾薬費は依頼主が負担

 

 

 

迷いなく詳細を確認する。

 

 

 

 

 

依頼の準備が整ったので連絡させて頂きました。

 

ここに来る時使ったヘリポートに迎えが来る筈です。

 

言わなくても持って来ることだとは思いますが、

 

この仕事には貴女の持つ【ハンドキャノン】が必須です。

 

また、詳細については着いてから説明します。

 

お待ちしていますよ。

 

 

 

 

 

危険度はA、上位のものだ。

 

だからどうということは無いけれど、少しは警戒した方が良いかもしれない。

 

報酬はかなり高い上にここから追加報酬もあるという割が良すぎるものだが、これは今に始まったことではないし…まあ、黒服がそれだけ私に興味を持っているのだと前向きに考えておこう。

 

 

コートを身に着け、ポケットに保存食を仕舞った後にホルスターへハンドキャノンを仕舞う。

 

ガンラックからショットガンを手に取り、付属するベルトを肩へと掛ける。今回は必要ないものだが、念の為だ。

 

 

荷物を最終確認する。

 

 

弾薬は既にいくつか詰めたが、依頼主負担らしいので割と内部スペースが豊富なコートのポケットへ、余分に詰められるだけ詰めていく。

 

 

階段を上がり、地下室の扉を開ける。

 

閉めた扉にカーペットをかぶせて蓋をし、偽装を済ませる。

 

 

外は既に街が目を覚ましていた。

 

砂埃の匂い、油の匂い、微かに漂う煤。

 

 

ヘリポートへ向かう途中、朝陽が廃ビルを照らしていた。影が長い。

 

 

 

ヘリポートには既にヘリが到着していて、運転手も前に迎えに来てくれたオートマタ──前に乗ったやつと同じペイントですぐに分かった。

 

 

操縦席に近づくと、金属の関節が軋み、扉が開く。

 

彼は私を確認し、無表情で(そもそも顔がないのだが)座席を示す。

 

 

私は乗り込み、ベルトを締めた。

 

シートに沈んだ感触が心地いい。

 

 

少しだけ、出立前の静けさを噛みしめる。

 

 

扉が閉まり、私が乗り込んだのを確認した運転手はすぐにヘリを浮上させる。

 

 

「どこに向かうの?」

 

 

私は問いかけた。

 

操縦席のオートマタは振り返らず、LEDの小さな光を点滅させる。

 

 

「すぐに分かります」

 

 

その返事はとても事務的で無機質なものだった。

 

まあ、多分こういう人(?)なんだろう。

 

 

『……少し調べたものの、ヘリには目的地設定がされていませんでした。足がつかないように、ということなのでしょうか』

 

 

宙へと消えた私の疑問に対し、エアが代わりに小さく、けれど確かな声で返した。

 

それじゃあ運転手本人の頭の中に入ってたりするのかな。

 

 

発進の振動が始まると、コックピット外の景色が遠ざかり、街が小さくなっていく。

 

 

飛行は滑らかだった。

 

ヘリのローターが吐く風がスリットをくぐり抜け、耳朶を震わせる。

 

 

ぼーっとしながらしばらく待っていると座席の振動が一段と深くなり、私は視線を窓の外へ向けた。

 

霧の間を抜け、徐々に下界の輪郭が近づいてくる。

 

 

着陸の直前、オートマタが小さな声符のように操作音を奏でる。

 

ヘリはゆっくりと降下し、廃墟に囲まれた広場めいている場所に降り立った。

 

着地の衝撃が肩に伝わる。

 

 

腕時計を見ると、移動にかかった時間は一時間ほどだった。

 

 

「到着しました」

 

 

操縦していたオートマタが振り返ることなく、機械的な言葉と動作で降機を促す。

 

その指示に従い、私はガチャ…っとベルトを解き、ヘリから降りて周囲を見た。

 

 

ビルは所々で躯のように折れ、窓ガラスは砕けて陽光を鈍く反射している。

 

道路は亀裂と陥没で原型を留めず、長い年月を放置されていたことを語っていた

 

 

誰も居ない、忘れられた場所。

 

なんとなく無機質で、冷たく感じられた。

 

 

少しして、風の流れが一気に変わる。

 

 

 

ヘリのローターがまだ回転を続けており、着地時とは違う形で廃墟の空気をかき混ぜていた。

 

少し遅れて、機体が上昇を始める。

 

何も言わずに、ただ任務工程だけを遂行するように。

 

 

 

そしてそのまま──ヘリは旋回し、私を後方に置き去りにして遠ざかっていった。

 

ローター音が空に溶けていき、静寂が戻る。

 

 

 

私とエア以外誰も居ない廃墟に満ちる空気はカラッとしており、だが一定の冷たさもあった。

 

 

『……行ってしまいましたね』

 

 

「まぁ、帰りの時また来るでしょ」

 

 

ローター音が廃墟の空へ吸い込まれるように遠ざかり、残された静寂がゆっくりと全体に貼りついていく。

 

 

埃がひとつ、またひとつ、着地する音すら聞こえそうなほどの静けさだ。

 

そんな空気の幕を、ふっと揺らすものがあった。

 

 

もや。

 

 

 

霧というには濃く、しかし煙というには薄いもの。

 

 

その影が揺らぎ、そこから【黒】が一歩、世界へ滲み出す。

 

黒いスーツに、黒い顔。

 

 

 

黒服は此方を観察するように、微かに手を挙げた。

 

 

 

「ここはどこなの?」

 

 

質問すると同時に、靄が緩やかに晴れた。

 

 

「三大校のひとつ、ミレニアム。その近郊にある《廃墟》と呼ばれる場所です。なんでも、ここキヴォトスから忘れ去られたものが流れ着いているのだとか。連邦生徒会からは立ち入りを禁止されていますが…少し細工をさせて貰いましたので問題はありません」

 

 

「ここで何をするの?これを使って敵を倒す、というのはわかるけれど」

 

 

私はホルスターから軽く持ち上げたハンドキャノンをちらと示す。

 

見た目はどう見てもただの拳銃。

 

重さも形状も、過剰な攻撃性能以外はそこを外れない。

 

 

「ふむ…しっかり持ってきていますね。貴女には今日それを使って、ここにある廃工場から延々と生産されている兵器類に対して、様々な弾薬を用いた攻撃をしてもらいます」

 

 

「弾薬?オプションでも使って換装するの?」

 

 

「いえ、そういったことではございません。それにはどんな弾薬にも互換性があるということが分かっていましてね。それがどのような意味を持つのかはまだ不明ですので」

 

 

『…確かに、この銃の弾倉は可変式であることが確認できます。黒服の言う通り、グレネードやロケットなどの大型弾頭でもない限りは装填出来ることでしょう』

 

 

エアの声が耳に落ちる。どうやって入れるんだとは思ったけれどそんな強引な方法とは。

 

 

 

「そんな機能知らなかったから、生憎と拳銃弾とショットガン用の散弾くらいしか持ってきていないのだけれど」

 

 

コートの内側を確認するが、言った通りの二種類しかない。

 

 

「それについてはご安心を。こちらで一式揃えております。作戦地点付近にまとめて設置しておきました。……それと、もう一つ」

 

 

「まだ何かあるの?」

 

 

黒服は続ける。

 

 

「……もしかしなくても、貴女は自身の神秘の流れを知覚しているのではありませんか?」

 

 

それを聞いて、私は腕時計を貰った話を思い出し、片腕を確認した。

 

確か、それを測定するために渡された筈だ。

 

 

「神秘って確か、これで測っていた…」

 

 

私は腕時計を見つめる。

 

それは今の髪色と同じように真っ黒で、空の色を反射したのか、青みがかった光沢を放っている。

 

 

「ええ。先日確認した戦闘データから、貴女が戦闘中、普通ならば不規則に変動するところを、かなり規則正しくされた…いわゆる段階を踏むような形で、神秘を行使しているという事実が導き出されました」

 

 

神秘。

 

 

 

その単語を正確に理解しているわけではない。

 

だが──自分の身体に「何らかの力」があるのは、確かに感じている。

 

他の生徒…ホシノやユメなんかは感覚で使っていたようだけれど、私はこれを元々持ってなかったからか、かなり正確に流れを把握出来ている。

 

 

「それが何かはわからないけど、この身体になにかの力が流れている事は一応分かってるし、それを意識して戦闘時には使ってる。多分、お前の言う通りに」

 

 

「やはり、やはりそうでしたか…」

 

 

黒服は一瞬だけ思考の淀みを見せた。

 

 

その後、言葉を慎重に選ぶようにして続ける。

 

 

「では、【何も込めない状態での攻撃】と、【神秘を込めた状態での攻撃】も、様々なバリエーション…力の増減も含めた上でお願いしてもよろしいでしょうか? 無論、その分の追加報酬は支払いますが」

 

 

「まあ、弾薬はそっち持ちだし、別に構わないよ」

 

 

「では、そのように。それでは早速、作戦地点の説明に入りましょう。この辺りには大昔に放棄された、自律兵器の生産工場がございます。本来それは放棄された時点で活動を停止するはずでしたが、とある事情で最近操業を再開しました。そして現在も兵器を、無尽蔵に生産し続けています」

 

 

「そこから産まれる無尽蔵の兵力が、サンドバッグに丁度いいってことね」

 

 

「ええ、話が早くて助かります。貴女の言う通り、だからこそ此処を指定した訳です。連邦生徒会によって立ち入りは規制されていますから、人目につくこともなく都合がいい」

 

 

「なるほどね。……それじゃあ行ってくるけど、帰りの用意はしてあるんだよね」

 

 

「ええ、勿論」

 

 

その言葉を背中に受けつつも私は軽く息を吸い、廃墟の空気を胸に入れる。

 

 

乾いた埃とコンクリートの匂いがかすかに喉を刺した。

 

 

 

 

瓦礫だらけの変わり映えしない景色の中、歩くこと数分。

 

廃工場はひとつどころではないらしかった。

 

 

同じ形の鉄骨とコンクリートの“箱”が並び、どれも中が薄暗く、入口は口を開けたまま風を吸い込んでいる。

 

 

 

『作戦地点付近へ到着しました。弾薬箱は…』

 

 

どうやら座標付近に到着したらしい。

 

エアの案内に合わせて視線を巡らせると、ちょうど廃工場の入口前、歪んだ鉄柱の陰に、誰かが投げ置いたような段ボール箱が腰を下ろしていた。

 

 

「あった、これだね」

 

 

 

風にさらされて色褪せているが、開けると中身は妙に整然としており、様々な種類に標準・強装・弱装のラベルまで貼られている。

 

 

「えっと、あるのは拳銃弾、散弾、それぞれ標準のものに強装弾、弱装弾のバリエーションもある」

 

 

自分の声が、廃工場前の静けさに溶ける。

 

 

 

アビドスにいた頃、暇な時間に常識を得ようと読み漁った本の断片が思い出される。

 

 

それで学んだのは、弾種の意味、効果、反動の違い。

 

 

 

ちゃんと役に立っている。良かった。

 

 

『マグナム弾、ライフル弾、アサルトライフル用の中間弾薬各種、それに加えて対物ライフルに使われるものまであります。こちらも様々なバリエーションが』

 

段ボール箱の奥にはさらに重そうな弾薬の列。

鋼鉄の匂いが濃くなる。

 

 

「…とりあえず全種類持って行こう」

 

 

『そうですね。ひとつ辺りは少なくなるものの、なんとか全種入りそうです』

 

 

灰白色のコートを開く。

 

 

内側にはなぜか最初から縫い付けられていた多数のポケット。

 

 

想定された用途は知らないが、今日ほど便利だと思った日はない。

 

 

箱の中の弾薬をひとつずつ、種類を確認しながらしまっていく。

 

 

コートが少し重くなり、動いた拍子に金属の触れ合う音が低く鳴った。

 

 

 

 

すべて収納し終えると、私は入口をくぐり、工場の奥へ向かって歩き始めた。

 

 

『どこから敵が出てくるかわかりません。注意を』

 

 

「分かった」

 

 

一本道の通路は妙に整然としていた。

 

 

中は煤で汚れていると思いきや、床はほこりが薄く積もる程度で、壁面のパネルは今も稼働できそうなほど綺麗だ。

 

 

やがて通路がぱっと開け、広場のようなスペースへ出た。

 

 

そして――

 

 

『敵性反応、ロボット兵器が20体です』

 

 

エアの声に反応して周囲を見る。

 

 

 

各通路から、金属の足音が規則正しく響いてくる。

 

 

影が伸び、白色のボディが次々と姿を現す。

 

 

通常のオートマタ。

 

 

円盤型のドローン。

 

 

脚を伸ばした大型砲台。

 

 

どれも白を基調にオレンジのセンサーが瞬き、そこから発せられる視線が一斉にこちらへ向けられる。

 

 

「……結構多いな」

 

 

 

その数に思わず息をつく。

 

 

だが、手は自然とハンドキャノンのグリップへ伸びていた。

 

 

 

《侵入者を確認。排除開始》

 

 

 

機械的な放送が頭上から落ちてくる。

 

 

次の瞬間──廃工場の静寂がひっくり返るように、敵たちの駆動音が一斉に高まった。

 

 

「早速お出ましだね」

 

 

腰のホルスターからハンドキャノンを引き抜く。

 

 

金属の重量が掌に落ち着いた瞬間、空気が変わる。

 

 

始めよう。

 

 

四方から伸びてきた銃弾の軌跡を、細かいステップと不規則な重心移動で回避しつつ、どこから潰すか思案する。

 

 

(まずは攻撃力の高い砲台から潰したいところ。ただそれにはオートマタが邪魔)

 

 

 

私はあらためて胸の奥で息をひとつ押し殺す。

 

 

防御面に関しては、自分が大して頑丈でないことはよく分かっている。

 

攻撃力と瞬発力は意識していれば十分に引き出せるが、身体そのものの耐久性はそこそこ止まりだ。

 

ホシノのように大群へ正面から突っ込み、身体スペック任せに弾丸の雨の中を強引に突っ切って暴れ回る──そんな芸当は到底真似できない。

 

避けられる攻撃はしっかり避け、受けざるを得ない時は防御姿勢を取る必要があるのは明らかだ。

 

防御に力を回せば多少の攻撃はノーダメージで行けるもののそれは雑魚に限るし、そもそも目の前の敵は見る限り装備が充実している。

 

 

「まずは、小手調べ」

 

 

拳銃弾を詰め、撃鉄を親指で静かに起こす。

 

力を込めず、ただ狙いだけを定めて、オートマタの接地面へ向けて撃つ。

 

瞬間、小さくも確かな爆風が床を叩き、衝撃波に煽られたオートマタが二、三体ほど横転した。

 

 

軽く撃っただけでこれだ。ハンドガンとは思えない威力だが、これはオーパーツゆえの異質さなのだろう。

 

 

今度は少し力を込める。

 

 

 

同じように着弾点が膨れ上がり、先ほどよりも大きい爆風が散った。

 

飛び散った破片の中では、手足を落としたり、頭部が焼け焦げたりしたオートマタが、ぎこちない動きでバランスを崩している。

 

 

「……ッ」

 

 

少し後退しながら撃っていたせいで、その破片が足元へ転がり込んでくる。

 

そして、その爆風をすり抜けて生き残った数体のオートマタが、こちらへ鋼鉄の足音を鳴らして迫ってきた。

 

 

蹴りで対処すれば簡単に倒せるが、依頼のこともある。

 

散弾を取り出し、ハンドキャノンへと近付ける。

 

 

その瞬間、銃身と弾倉がガシャガシャっと形を変え、変形した。

 

散弾にぴったり合わせるために最適化された形状だ。

 

…サイズの関係で装弾数は減っているが。

 

 

「この機能、エアは知ってたの?」

 

 

『いえ、私も今日初めて知りました。正直な話、私はこの銃のちょっとした機能が扱えるだけで、その全貌を把握、制御している訳ではありませんので』

 

 

「そっか」

 

 

返ってきた答えは、ある意味で予想通りだった。

 

 

この銃に宿った彼女が知らないのなら──やはり本当に偶然、この中に居ついているだけなのだろう。

 

 

「まあいいか」

 

 

ただ、今はそれを考えるような時では無い。

 

 

オートマタたちは、こちらが散弾の圧倒的な破壊力を見せつけたのを受けてか、生き残った数体がじりじりと後退した。

 

機械の身でありながら、“学習”という言葉が自然と浮かぶほどの慎重な挙動だ。

 

やがて彼らは距離を取り、背後から滑るように浮上したドローンと横一列に並び、まるで合図でもあったかのように一斉に斉射してきた。

 

白い閃光が一直線に伸び、金属の擦過音が空気を裂く。

 

 

 

なるほど、正面からの乱戦では勝てないと判断したわけか。

 

 

数と火力の飽和で押し潰す――シンプルながら、一番分かりやすいやり方。

 

 

 

「だったら、まとめて貫いてみようか」

 

 

 

私はコートを払って弾倉に手を伸ばし、ライフル弾をつまみ上げる。

 

 

拳銃弾よりも一回り大きい真鍮色の薬莢。

 

 

装填すれば当然、サイズの分だけ撃てる数は減る。

 

だが、その分だけ一発の重みは桁違いだ。

 

 

再び変形したハンドキャノンへ弾を押し込み、ガチリと閉じる。

 

 

 

まずは最前列のドローンへ照準を合わせ──力は込めず、ただ最適な軌道を描く感覚だけを頼りに引き金を引く。

 

 

発射音は、散弾のような轟音にはならなかった。

 

 

代わりに、鋼鉄を穿つような鋭い破裂音を放った弾丸はドローンを貫通し、そのままオートマタの胴体を一直線に抜き、さらに奥に構えていた砲台のコアを正確に射抜いた。

 

砲台が、火花を散らしながら沈黙する。

 

 

『ライフル弾を詰めれば貫通力や射程距離が強化されるようです。これは本来使用するべき火器の性質、及び使用用途が影響しているのでしょうか』

 

エアの声は、いつも通り落ち着いているが、わずかに興味を滲ませているようにも聞こえた。

 

 

「まあ多分、そういうことだよね」

 

 

装填した弾薬の【本来あるべき性能】を、そのまま底上げしている──そんな感触が指先から伝わってくる。

 

 

それはつまり。

 

 

この銃に詰められる種類が多いほど、私が選択できる【破壊の形】も増えるということだ。

 

 

 

 

ロボット兵器たちは、倒しても倒しても次から次へと湧いてくる。

 

 

まるでこの廃工場そのものが巨大な肺で、息をするたびに新たな兵器を吐き出しているようだった。

 

私は、迫りくるそれらを適度にいなしつつ、ひたすら弾薬と【力の込め方】を切り替えて試していった。

 

 

 

 

アサルトライフル用の中間弾薬。

 

貫通力はライフル弾より落ちるが──拳銃弾のように、着弾点で爆風が生じる。

 

 

 

まさしく貫通と爆発の中間。

 

 

扱いやすさと威力が威力偏重なものの、バランス良く噛み合っており、私でも連続で撃っていくテンポに余り無理はない。

 

 

ここら辺が、連射の限界だった。

 

 

対物弾薬。

 

装填できるのはたった一発。

 

 

だがその着弾点は──抉り取られる、という表現ではまだ足りない。

 

 

部品そのものが存在ごと削ぎ落とされ、そのうえ貫通力は他の弾薬を寄せつけない程。

 

 

だが代償として、撃った瞬間の反動と脱力感が尋常ではなかった。

 

 

指一本の力を全部持っていかれるような、足元が一瞬浮くような、そんな身体の深部が揺れる嫌な感覚。

 

 

威力が跳ね上がる分、その支払いを要求される──そんな正しい等価交換。

 

 

この銃の特異さを垣間見た気がした。

 

 

通常のライフル弾。

 

 

対物ライフル用ほどではないが、それでも先程のようにやはり高威力だ。

 

装填数は増えるものの、クールタイムが存在するのか発射間隔が開く。

 

 

引き金を引いても、銃が拒否するように沈黙するのだ。

 

 

反動のせいで撃てないのではなく、銃の側が“間”を要求している。

 

奇妙だが、この銃ならそれも自然に思えて来た。

 

 

拳銃用のマグナム弾。

 

これは、試した弾薬すべての特徴をバランスよく詰め込んだような万能型だった。

 

 

 

直撃すれば中規模の爆風、爆発が発生し、そこそこの貫通もあって扱いやすさも十分。

 

 

拳銃弾以上の性能だが、中間弾薬ほど威力偏重でもない。

 

ちょうど拳銃弾と中間弾薬の中間点に座る、絶妙な性能だ。

 

 

こうしてまとめてみると、身体に返ってくる代償は明確だった。

 

反動と脱力感の強さは順当に弾の大きさ、威力に比例して負荷が増えていく。

 

当然ながら、サイズの関係上強い弾ほど装填数も落ち、そして発射間隔も開く。

 

 

 

 

 

私は胸元のコートを整えながら、スクラップとなったロボット兵器が散乱し、煙がもくもくと立つ広場を見渡した。

 

 

『打ち止め…のようですね』

 

 

エアが困惑しながらも、そう言ってくれた。

 

私はホルスターにハンドキャノンを収納すると、入口に向かって歩き出す。

 

そこから持っていかなかった分の弾薬が入っている段ボール箱を持ち上げ、ヘリで来た場所まで持って行った。

 

 

 

 

さて、今私は依頼の完了を黒服に報告したところだ。

 

数百は壊したから余り数は覚えていないが、エアが詳細に記憶してくれていたので問題はなかった。

 

とても頼りになる友人だ。

 

 

「お疲れ様でした、レイヴンさん。今回の報酬は口座の方へと送っておきますね」

 

 

「分かった。あと、これ持ってきたけど…持って帰ってもいいよね?」

 

 

私は工場入口から持ってきた弾薬の入った段ボール箱を置く。

 

 

「ええ、構いません。元々貴女に使ってもらう予定のものでしたし、それを単に使ってもらうことでも有意義なデータが取れますから」

 

 

「ありがと」

 

 

今のところ、普段使い出来る銃器はショットガンしか持っていない。どこかで買うべきだろうか…?

 

なにはともあれ、仕事を終えた私達は無事ヘリで迎えに来てもらい、拠点へと帰還したのだった。

 

 

 




今回の概要

???
「この人間怖い!兵隊出してコア守らないとまずい!」

「あれ、もしかしてサンドバッグにされてるだけ?うせやん……」


オートマタニキはモブの運び屋で、この先特に関わるといったことはありません。

尚彼はキヴォトスで数少ない、ヘリを使った運び屋です。

撃ち落とされないようにする技術やらなんやらを持っている、所謂ベテラン。
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