強化人間C4-621が、人として幸せになる為に 作:03-AALIYAH
ということで一旦番外編を挟みます。
何故かと言うと、単純にひと段落するまで結構かかりそうだからですね()
え?バレンタインはもう過ぎたって?
ゲームじゃまだ報酬受け取り期間だから…(震え声)
今回時系列的には本編のバレンタインストーリーと同じで不明ですが、レイヴンの人間性はある程度復活してます。
冬の空気はまだ冷たい。
けれど街の色は、ほんの少しだけ甘い匂いを帯び始めていた。
商店街の店先には赤いポップ。
ガラス越しに並ぶチョコレートの箱。
そんな光景を横目に、外回りの途中だった私が歩いていた、その時だった。
『一週間後はバレンタインですね』
エアが唐突に言った。
私は少しだけ顔を上げる。
確かに周囲には、そんな雰囲気が漂っている。
いつもより華やかな店頭に、お菓子コーナーの人だかり。
街全体が、ほんのり浮き足立っているような気配。
バレンタイン。
いつもお世話になっている男性へ、女性がチョコレートを渡す日。
そんな文化だと聞いたことがある。
『既に多くの生徒が先生へ渡すことを考えていそうですが、レイヴンはどうします?』
少しの沈黙。
私は歩きながら、小さく答えた。
「渡したい」
自分でも驚くくらい、迷いのない言葉だった。
『バレンタインのチョコレートというものは、基本的に自作のものと市販のものに分かれると聞きますが……』
「勿論、作るよ」
即答だった。
市販のチョコにするのは、なんだか物足りない。
先生には、もっと――
「…にしても、どういうものにするか……」
そこが問題だった。
普通のチョコレートでは、きっとそこまで印象に残らない。
かといって、奇抜すぎても先生は困惑するだろう。
考えながら歩いているうちに、気づけばスーパーの自動ドアの前に立っていた。
私はそのまま中へ入る。
温かい空気、蛍光灯の白い光。
カートの車輪が床を擦る音。
そんななかぼんやりと店内を歩き回っていると、ふと一つの商品が目に止まった。
棚に整然と並ぶ小箱…そのパッケージの文字を読み上げる。
「Kフレーム?」
『これは……食玩と呼ばれるものですね』
「食玩?」
『食品のおまけに、文字通りの玩具を着けたものですね。近年では製造企業もかなり力を入れているそうです』
私は箱を手に取る。
そこには小さなフィギュアがポーズを取っている写真があった。
しばらくそれを見つめて――
そして、ふっと呟いた。
「……これだ」
『何かひらめきましたか?』
私は口元を少しだけ上げる。
「うん。いいこと思いついた」
一拍置いて、言った。
「食玩を、自分で作ってみる」
※
閃いてからは早かった。
シャーレにはクラフトチェンバーという万能3Dプリンターがあるけれど、私には使用権限がない。
だから今回は、シャーレに設置されている普通の3Dプリンターを使う。
PCを立ち上げて、エアの言う通りに設計ソフトを開く。
そして彼女と一緒に、チョコレートの型とランナーの設計図を作り始めた。
そう。
今回作るのは、ただの食玩じゃなくて、プラモデルだ。
前々から頭の中に浮かんでいたメカのデザイン。
タブレットに保存していたそれをベースに、造形を細かく詰めていく。
関節の可動域に、パーツ同士の噛み合わせ。
組み立て順序。
それぞれ一つずつ、丁寧に設計する。
「えっと……ここはクリアパーツで」
モニターを指差す。
「シールは使いたくないし、完全色分けにしたいから……」
『ならばこういう構造はいかがでしょうか』
エアが提案すると同時に画面上に表示される、新しいパーツ構造。
「……それ、いいね」
それを見て、すぐに設計を修正する。
気づけば、時間がどんどん過ぎていった。
設計。
試作。
再調整。
再出力。
何度も何度も繰り返す。
そして1週間後、バレンタイン当日。
※
……当日、なのだけれど。
問題が一つあった。
先生が、生徒から呼び出されまくっていたのだ。
次から次へとチョコレートを渡され、雑談し、お礼を言い、写真を撮り――
帰ってきて慌てて業務に取り掛かるも、気づけば深夜。
既に日付は変わり、時計は十二時を回っていた。
それだけやっても、仕事が全然終わっていない。
だから今、私と先生は机に向かっている。
私は、常備しているエナジーバーを齧りながら。
先生は、生徒から貰ったチョコレートを食べながら。
もの凄い勢いで、書類の山を捌いていった。
奇妙な深夜の作業風景だった。
※
“やっと終わった〜!!”
先生が机に突っ伏し、うーんと唸る。
時計を見れば、午前二時。
「つ、疲れた……」
私も思わず息を吐く。
でも、頑張った。
今からシャーレで寝れば、私が六時間、先生が四時間。
十分な睡眠だ。
これはかなりの成果だと思う。
先生は立ち上がり、伸びをする。
“今日は仮眠室で寝るかな……”
その背中に、私は声をかけた。
「ちょっと待って、先生」
先生が振り向く。
“あれ、まだ何かやり残しがあったかな”
引きつった笑みを浮かべる先生を少しだけ憐れみつつ、私は机の下から紙袋を取り出す。
そして差し出した。
「そうじゃなくて、これ。見てみて」
紙袋の中を見た先生が固まった。
完全にフリーズしている。
数秒の沈黙が場を支配した後、私は少しだけ目を伏せる。
「……要らなかったかな」
もしそうなら…たぶん、かなり悲しい。
でも先生はそれに対して、首がねじ切れそうなくらいぶんぶんと横に振った。
“これ……こんな素晴らしいものを、どこで……”
「一週間前に閃いて、昨日やっと用意出来たんだ」
私は言う。
「先生が好きそうだと思って」
先生が紙袋から、箱を持ち上げる。
“こんな大きなプラモデルを!?”
“箱絵まで!???”
その反応を見て、私は思わず笑ってしまった。
自分でも分かるくらいに、口元がかなり緩んでいる。
「クオリティは保証するね」
少しだけ胸を張る。
「勿論お菓子もついてるから、気が向いたときに食べて」
先生が箱をもう一度見る。
“え、これ食玩!?”
「うん、そのつもり」
そして、少しだけ視線を逸らして言った。
「いつもそれだけ、お世話になってるから」
その瞬間。
先生は、ぱあっと。
まるで花が咲いたような笑顔を浮かべた。
本当に、無邪気な顔で。
そして紙袋を抱えて、嬉しそうにしながら、仮眠室へと向かっていった。
廊下の奥へ消えていく背中を見送りながら、私は思う。
……ちゃんと喜んでくれて、嬉しかった。
それだけで、十分だった。
なお、あまりにもクオリティが高すぎたせいで後日先生からヘルプのメッセージが届き、結局一緒に休みを取って先生の家で組み立てることになったのは……また別の話である。
はい、という訳でレイヴンのバレンタインは食玩でした。
キヴォトス驚異の技術にスパコン並の処理能力を持つエアを組み合わせたらこうもなりましょう。多分。
プラモのデザインは白いAALIYAHですが、これは作者の趣味です()
箱がデカイのはそれだけ細かいということですね。
完全色分けを実現している分、VIシリーズよりも細かくなっています。
尚レイレナード産の全武装に、シャーレのエンブレムデカール付き。
箱絵はレイヴンがデザイン。
お菓子の方は心を込めて作ったウエハースになってます。
先生のおやつになりました。
プラモデルはこれ以降、シャーレのオフィスに飾られています。
この小説読んでくれてる方はこの中のどれ?
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シャーレの先生
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強化人間
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兼業
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実はどれもやってない