強化人間C4-621が、人として幸せになる為に 作:03-AALIYAH
まぁそれを書くのはシナリオ上結構先になるのでプロットにアイデアを適当に書き殴るだけに留まっていますが。
それはそうとホシノを曇らせるのも好きなのでこっちはこっちでちゃんと曇らせます。
一度目があればそりゃあ二度目はしっかり受け入れられるよね。
内心はともかく。
寝るのがいつもより早かった為か、夜の冷えがまだ床に残っている時間帯に意識が浮上した。
目を開けると、薄い光がカーテンの隙間から差し込んでいる。
砂に濁された朝の光はどこか鈍く、輪郭を曖昧にしたまま教室の中を満たしていた。
隣を見ると、先生はまだ眠っている。
呼吸は規則正しく、昨日の疲労がそのまま沈殿しているように見えた。
私は音を立てないようにゆっくりと起き上がり、マットと毛布を丁寧に畳んでいく。
身支度を整えて装備を確認し、コートを羽織り、フードを軽くかける。
一連の動作は、ほとんど無意識で進むレベルで身体に染み付いているようだ。
朝食は――
考えるまでもなくポケットに手を入れると、指先に硬質な包装の感触が触れた。
エナジーバー。
予備として持ってきていたもの。
味に期待するものではないが、栄養を摂取し、空腹を満たすものとしては十分だ。
昨日は先生と一緒に購買で昼食と夕食を確保したけれど、この時間帯に開いているとは思えない。
……それにしても。
昨日のことを…空腹で動けなくなっていた先生の姿を思い出す。
あの時、言ってくれればこれを渡していたのに。
シロコには背負われたのに私には抱えられることをよしとしなかった辺り、あの人は時々変な意地を見せるらしかった。
小さく息を吐いてから扉に手をかけ、軋む音を立てないようにゆっくりと開けて部屋を出る。
廊下は静まり返っていた。
人の気配がない空間は、音を吸い込むというより、最初から音の存在を拒絶しているようにすら感じる。
昨日、皆で集まっていた教室の前まで歩く。
取っ手に手をかけるが、動かない。
…鍵がかかっている。
「……さて」
行き先を失った思考が、わずかに空転する。
『外の様子を見に行くのはどうでしょうか』
腰に下げたハンドキャノンから、エアの声が静かに届いた。
「確かに、昨日は詳しく見れていなかったし、それでいいかもね」
頷き、校舎の外へと私は進路を変えた。
※
扉を開けた瞬間、空気が変わった。
冷たく、乾いていて。
そして、どこまでも軽い。
朝のアビドスは、夜の名残をわずかに残しながら、ゆっくりと熱を取り戻し始めていた。
地平線の向こうから昇る光が、砂を淡く照らし、街全体をぼんやりと浮かび上がらせる。
歩く。
足元の砂が、かすかに音を立てる。
それ以外には、何もない。
人の気配も、生活の痕跡も、そのすべてが切り離されているみたいだ。
建物は残っているから、外見だけ見れば街としての形は保たれている。
けれど、その内側は――
電気は止まり、ガスも流れず、水道も機能していない。
まるで、役割を失った器だけが延々と並んでいるような光景。
そしてその全てを覆うのが、砂だ。
窓の隙間から、扉の隙間から、容赦なく入り込み、時間をかけて、ゆっくりと侵食していく。
ポケットに手を入れ、エナジーバーを取り出す。
パリっと包装を破り、一口齧る。
味は――いつも通りに特筆するものもない、ただ必要な栄養を補給するための、機能的な味。
風はほとんど吹いていないから砂が舞い上がることもなく、静寂が保たれている。
そのおかげで、口の中に砂が入らずに済んだ。
咀嚼しながら、視線を遠くへ向ける。
この街は、終わりかけている。
それは感覚としても、事実としても理解できる。
それでも何故か、ここに残っている人間がいる。
終焉に抗っている人間がいる。
出ていった方が楽なのに諦めないその理由を、まだ私は完全には理解していない。
彼女達に関わっていくのなら、先生の業務補佐としての仕事をこなすなら、私はそれをちゃんと理解しなくちゃいけない…と思う。
食べ終え、包装を畳んでポケットに戻す。
痕跡を残さないようにするのは、ただの習慣だ。
しばらくその場に立ち尽くし、街を眺める。
何かが見えるわけではなく、ただ見ているだけだ。
暫く見つめた後、踵を返して校舎へと戻った。
※
先生の元へ戻ったときには、すでにその気配はなかった。
ほんの少し前まで誰かが居たはずの空間には、温度だけがかすかに残っている。
――先に動いたのか。
そう結論づけるには、少しだけ時間が経ちすぎている気もする。
でも、だからといって立ち止まっていてもしょうがない。
時計を見ると、針はすでに七時半を指していた。
思っていたよりも長く外を歩いていたらしい。
あの静まり返った街の中では、時間の感覚がどうにも曖昧になる。
変化がないというのは、それだけで感覚を鈍らせるのだと、改めて理解する。
ひとまず、思い当たる場所は一つしかない。
対策委員会の教室。
さっきのままなら鍵が閉まっているはず――と扉に手をかけると、抵抗なく開いた。
誰かが先に来ていたみたいだ。
「おはよう。もう居たんだね」
扉を開けた先、教室の中にはひとりだけ、先客がいた。
窓際の席に腰を下ろし、頬杖をついたまま外を眺めていたホシノが、こちらに気づいてゆるく視線を向ける。
朝の光を背にしたその姿は、相変わらず気だるげで、どこか輪郭が曖昧に見えた。
その曖昧さが、意図的なものなのか、それとも本質なのかは、まだ判断がつかない。
「おはよ〜レイヴンちゃん、今日もよろしく。ところで、先生は…」
軽く手を振るような調子で返される挨拶に、こちらも応じる。
空いていた椅子に腰を下ろしながら、私は短く答えた。
「私はさっきまで外に出てて、今戻ったところなんだけど、その時にはもう居なかったよ」
「そっか…となると入れ違いかな」
「多分」
短いやり取り。
それだけで会話が一度途切れた。
教室の中には、朝特有の静けさが満ちている。
遠くで風が砂を撫でる音がかすかに聞こえるだけで、人の生活音はほとんどない。
ここが本来、もっと賑やかな場所であるべきだという事実だけが、逆にその静寂を際立たせていた。
もう一度、時計を見る。
七時半。
やはり早い。登校時間としては、まだ余裕がありすぎる。
「登校するには早い時間だけど、どうしたの?」
何気ない問いとして投げる。
だが、その実、半分は観察だ。
彼女がどう答えるか、それを見ておきたかった。
「いや〜、レイヴンちゃんと同じでちょっと早起きしちゃってね。家でゆっくりする気分でもなかったから一足早めに来たんだよ」
軽い調子。
言葉の選び方も、声の高さも、特に不自然な点はない。
――ただ、それが「本当かどうか」は別の話だ。
この人は、必要とあれば表面を取り繕える。
そういう類の人間だと、昨日の時点でなんとなく察している。
けれど、今それを掘り下げる意味は別にないから。
「そっか」
それだけ返して、会話を打ち切る。
深入りする理由も、義務もない。
しばらくの沈黙。
私は沈黙を苦とする人間じゃないから黙々としているけど、ホシノはそうじゃないみたいで、なんだかそわそわしていた。
別に私から話しかける理由もないから黙っているけど。
空いた時間を有効活用しようと私は足元に置いていた銃を引き寄せ、分解用の簡易ツールを取り出す。
金属の冷たい感触が掌に馴染むと同時に、意識が自然とそちらへと向いていく。
慣れた手順で、無駄のない動作で。
そうして、静かに作業へ移ろうとした、その時だった。
「ねえ」
声がかかる。
さっきまでの気の抜けた調子とは違う、わずかに慎重さを含んだ呼び方。
顔を上げると、ホシノがこちらを見ていた。
その視線は、どこか探るようで、同時に距離を測っているようにも見える。
「えぇっと…その、見たことない形してるけど、どういうものか分かる?」
視線の先を追う。
自分の手元にあるそれ――見慣れているはずなのに、どこか説明のつかない異質さを持った武器。
「ああ、これのことね」
軽く持ち上げ、光にかざす。
輪郭は銃だが、既存のどれにも当てはまらない。
ショットガンのようでいて、ライフルの要素も混じっている。
だが、どちらとも違うとはっきり言える。
言葉にすれば曖昧になるが、手に取れば迷いはなく扱える。
それくらいには、身体に馴染んでいるもの。
「うーん、正直自分でも良く分からない。ショットガンでもライフルでもないけど、不思議と手に馴染むんだよね」
「それ…どこで手に入れたの?」
問いが、少しだけ踏み込んでくる。
その瞬間、ホシノの表情に微かな変化が走った。
視線の焦点が鋭くなり、何かを確かめるような色が宿る。
――それを見逃すほど鈍くはない。
「分からない。私には、記憶がないから」
だから隠す必要もないし、そのまま答える。
「それって…」
「うん、記憶喪失。ここ一ヶ月くらいより前のことは、全く覚えてないんだ。これも起きた時、側にあったものだし」
言葉にしてみても、実感は薄い。
ただの事実として、そこにあるだけだ。
「そっか…そう、なんだね」
返ってきた声は、先ほどよりもわずかに低い。
軽さは残っているが、その下に何か別の感情が沈んでいるのが分かる。
「?」
違和感はあるけど、それが何かまでは掴めない。
――ああ、そっか。
そこでようやく、これは普通なら驚かれる類の話なのだと気付いた。
先生は何事もないように受け流していたから、感覚が少し鈍っていたのかもしれない。
「ごめんね、こんな話して」
一応、形式的に謝る。
気を遣ったわけではなく、ただ場の流れとして。
「いや良いよ、聞いたのは私の方だしね。それに」
言葉が続く。
今度は、さっきとは違う意味で間を取るように。
「それに?」
促すと、ホシノは少しだけ肩をすくめて、いつもの調子を取り戻したように笑った。
「実はうちのシロコちゃんも、記憶喪失なんだよね〜」
「……あれ、そうなんだ」
意外だった。
あの落ち着いた立ち振る舞いからは、そんな要素はほとんど感じなかったけれど。
でも思い返してみると、なんというか…わずかなズレ、のようなものもあった気がする。
あれが、その結果だとするなら、辻褄は合う。
「そうそう。あれは二年くらい前かな?うちに盗みを働こうとしたおばかさんが居てね〜、それがシロコちゃんなんだ。昔はちっちゃくて可愛かったな〜」
「それから今までシロコとはどんなことがあったの?」
自然と、続きを聞いていた。
理由は自分でもよく分からないけど、ただ知っておくべきだと思った。
「ん〜と、それはねぇ…」
ホシノが言葉を選ぶように、わずかに視線を逸らす。
その仕草の中に、ほんの少しだけ、先ほどとは違う種類の感情が混じる。
そしてその瞬間、ガラガラと音を立てて扉が開かれた。
レイヴンは何も言われなければずっと3食カロリーメイト(プレーン味)のままですが、それはそうと先生の手料理が食べられなくなると結構な寂しさを覚えます。
レイヴンが休みの日は先生の食事を毎回レイヴンが作ってはいますが、当番の子もそれを知っているのでお弁当を作りに行く場合は先に先生を介さずレイヴンに言ってからお弁当を作って行きます。
この小説か良いと感じたなら、高評価と感想をくれれば作者がすごく喜んで執筆スピードもUPするかもしれません。
存在しない記憶まとめ、要る?
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必要だよ
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先に本編進めてもろて
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どっちもちゃんと書いて、やくめでしょ
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作者自身の感覚に従え