強化人間C4-621が、人として幸せになる為に 作:03-AALIYAH
全て神秘のせいなので(責任転嫁)
原作開始直後までストックはあるので、取り敢えずそこまではどしどし出して行こうかな。
『レイヴン、残念なお知らせがあります』
この空のように、透き通った音が耳を叩く。
エアの声だ。だが、周囲の風や砂の鳴き声には混ざらず、それははっきり聞こえた。
「何?エア」
『あなたも察している通り、ここはルビコンではありません。ですので、今までのように大気中のコーラルを利用してネットワークへ接続することは…
!?レイヴン、急いで扉から離れて下さい!!』
声が突然尖る。命令口調ではない──もっと深いところから引き裂くような警告だった。
背後の扉に残る熱と鉄の香りを感じながら、私は言われた通りに一歩、また一歩と距離を取る。
足元の砂が微かに滑り、後ろの建物の輪郭が歪み始めた直後だった。
──轟音。破片。火の塊。
先ほどまでいた施設の全てが、盛大に爆ぜた。
衝撃波が砂を叩き、空気が唸る。
顔に当たる砂と熱が、短い時間のすべてを現実へ押し戻した。
「…爆発?」
言葉は、砂の粒にかき消されて小さく震えた。だがエアは情報を吐き続ける。
『レイヴン、恐らくは貴女が離れることが爆発のトリガーとなっていたのでしょう。……ただそれによって、少しだけ良いことも起きたようです』
「それって?」
『先程の施設にはリリースの影響か、コーラルが漂っていました。そのおかげであの場所にはなにもないことを察知出来たのですが…今、爆発したことによりそれが辺りへと散らばりました。つまり、この付近の探知が可能になります。といっても一時的なものですが……それでも行き先を決めるには十分な筈です』
行く宛が出来るかもしれない。
その事実が、私の足を前へと向かわせる。
さっきの爆発と砂漠の気候もあって、喉が砂塵で擦り切れそうに乾き、身体がまだ冷凍睡眠の余韻で重い。
にもかかわらず、進むしかないと思わせる──それは多分、今までずっとそうしてきたからだろう。
『…ありました。前方10キロメートル先に生体反応。この銃…に似た何かに入っていたデータによると、反応の種類は【生徒】…どうやら二人組のようです』
十キロメートル。数値は明晰だが、今まで外ではACにしか乗っていなかったこともあって徒歩でのイメージは曖昧だ。
足を踏み出す。乾いた砂に足裏が沈んで、視界の縁が揺れる。歩みはぎこちないが真っ直ぐだ。
途中、ふと振り返ると、遠方の砂煙の向こうに大型の移設型砲台らしきものが見えた。
だがその上にも広がる青い空が、ここがルビコンではないことを無言で示している。
こんな場所にも、兵器の影は落ちるのかと、私は思った。
「エア、後何キロかな…?」
私の声が、砂に溶ける。だがエアはいつも通りすぐに答えた。
『あと5キロです、もう半分ですよ!』
「エア、なんだか喉が…」
『水分補給が必要ですね…』
そんなやりとりを交えながら歩いていると、遠く視界の先に人影があった。
二人組だ。ツルハシを肩にして、地面を掘っている。
身に纏うものは薄く、つるつるとした生地。
露出も多く、防御性は低そうに見える。
だが私はその服装の用途について、まだ何も知らなかった。
「ホシノちゃん、あそこに人が!」
浅葱色の髪にでかいアホ毛を乗せ、見事な発育具合が見ただけで分かるアビドス高等学校生徒会長、三年生の梔子ユメは、レイヴンが歩いて来た方角を大声を出して指差した。
「何言ってるんですか先輩…さっき遠くで爆発がありましたし、破片か何かの間違いです。こんなところに人なんて…ってホントに居る!?」
見事なノリツッコミを披露したのは同じくアビドス高等学校の副生徒会長、一年生の小鳥遊ホシノ。
ピンク色の髪にこれまた目立つアホ毛を乗せ、おっとりとしていて発育の凄まじいユメとは正反対、キビキビとした性格に貧相といっても過言ではないだろう体つきをしている。
二人はここで今、この砂漠で出会うはずのない他者を目にして驚いていた。
私はもう、限界だった。
冷凍睡眠から醒めてすぐ、道なき砂漠を水も無く歩いてきた足は音を立てて崩れ、最早身体は重力に逆らえなかった。
「う、うーん…」
膝が折れ、視界が波打つ。次に来たのは、床に崩れるような感覚だ。バタン——と、某世紀末救世主のように倒れ込んだ。意識は遠くへ滑り、ひと粒の砂になったように溶けていく。
『レイヴン!?』
エアの声が真剣に震えた。焦燥が混じっている。ただし、ここにいる誰にもその声は届かない。
「み、水を……」
「た、倒れちゃった!? ホシノちゃん、急いであの子助けないと…!」
「あーもう仕方ないですね……ここで死なれても目覚めが悪いですし、私も手伝いますよ」
二人の生徒は、見ての通り慌てふためいていた。
彼女たちの動揺ははっきりしていて、足取りは軽くも険しい。
だがその先がどうなるか──それは、ここで描かれた範囲の外にある。
私の視界は、砂と二人の声に包まれたまま暗転していった。
「うぅ……知らない天井」
自然に目が覚めた。
重たいまぶたを押し上げると、そこには初めて見る天井が広がっていた。
薄くとも色のある壁、人工的な光の明かり。
無骨な鉄板とパイプばかりだったルビコンのガレージとは違う、どこか生活感のある天井。
私は硬い地面ではなく、柔らかいベッドに横たわっていた。
「あ、目が覚めましたよ、先輩!」
甲高い声が飛び込んできて、私は顔を傾ける。
そこに立っていたのはピンク色の髪の少女。
寝起きで霞む視界の中でも、そのアホ毛がぴんと立っているのが分かった。
彼女はどうやらこちらを指差しているみたい。
あの変な服は着ていないようだ。
着替えたのだろうか。
視線を横に動かすと、小さなデスク。その上には、エアの宿るハンドガンが鎮座していた。
傍から見たら無機質な鉄の塊があるだけでも、私にとっては不思議と心が落ち着くものだ。
「目が覚めたんだ! 良かったぁ……!!」
別の声。緑がかった髪をした長身の少女が、勢いよく駆け寄ってくる。次の瞬間、ふわりと影が覆いかぶさり――
「わぷっ」
視界も呼吸も、柔らかいもので塞がれた。息が苦しい。
体がベッドに沈もうとするも腕の力で保持される。
『レイヴン!』
エアの焦燥した声が、頭の奥に直接響いた。
彼女が冷静さを欠くのはこの地に来て三回目だ。
「先輩、その人殺す気ですか!? 息できなくなっちゃってます!」
ピンク髪の小さい少女が慌てて駆け寄り、緑髪の少女を引きはがそうとする。
「あっ、ホントだ……ごめんね、大丈夫?」
「……あ、うん」
喉に空気が戻り、かろうじて頷く。
「全く、気を付けてくださいよ?」
ピンクの子は呆れたように肩をすくめた後、これだから巨乳は、でも私もいつかそのくらい…とかなんとか言っていた。
その目には単なる呆れではない、複雑な色が浮かんでいた。
あれは…羨望だろうか。
「えっと、自己紹介するね。私はここ、アビドス高等学校の生徒会長、梔子ユメ。こっちは副生徒会長のホシノちゃんだよ」
緑髪の少女──梔子ユメが笑顔を作り、隣に居るピンクの少女とまとめて紹介してくれた。
大きい緑色の人がユメで、小さくてピンク色なのがホシノらしい。正反対でありながら、二人並ぶ姿には不思議な調和があった。
「まあ全校生徒二人だけの廃校寸前な学校ですけどね」
ホシノは皮肉っぽく口を尖らせるも、その言葉に私は首を傾げる。
廃校、という言葉の意味が分からない。
『学校がなくなるということです』
すかさず、エアが小声で補足してくれた。説明の要不要を見抜いたかのように。
彼女が居る限り、私は大きく取り残されることはないようで少し安心した。
「何言ってるの、これから人にいっぱい来てもらうために盛り上げていくんだよ!」
「またそうやって出来もしないことを……少しは現実見たらどうなんです?」
ユメは前向きな声を上げるも、ホシノの冷めた言葉にむっと頬を膨らませる。
二人のやりとりはまるで日常の一幕であり、私だけがそこに混じれずにいるような感覚を覚えた。
「えっと……」
思わず声を出す。
存在を忘れられそうで、無意識に。
「あ、ごめんごめん! えっと、君はなんて言うのかな? どこの学校に通ってるの? 今は何年生? なんであそこに居たの?」
「ユメ先輩、一気に聞かれて困ってますよ」
「ほんとだ……ひとつひとつで良いからね?」
私は一呼吸置き、言葉を選んだ。
「名前は、レイヴン。学校……学校には行ったことがない。自分が何歳なのかも分からない。気付いたら砂漠に居て、あそこまで10kmほど、まっすぐ歩いてきた。何も……知らない、分からない。…ごめん」
流石に強化人間であることは口にしない。
身体に刻まれた痕跡を見られれば疑われるかもしれないが、自分から告げる必要はない。
「何も分からないってそんな……ここにいつまでも置いておく余裕なんて無いのに」
ホシノの声音には困惑と現実的な判断が入り混じっている。
「逆に考えるんだよホシノちゃん! 今まで二人だけだったここに生徒が増えるチャンスだよ! 見てる感じなんだか良い子っぽいし」
ユメの瞳は希望に輝き、ホシノの冷ややかな目と交錯する。
「えぇ!? ちょっと、年齢とかそこら辺はどうするんです? この見た目だと誤魔化しようも……あと先輩はすぐに人を信用しすぎです」
『レイヴンの肉体年齢は現在14歳なので、アビドスへの入学は出来ません』
不意に、ホシノのスマホからエアの声が響いた。
「うわっ!!! え、私のスマホ!?」
ホシノが飛び上がり、ユメは固まる。
「エア……?」
私の困惑に応えるように、エアが淡々と告げる。
『すみません、レイヴン。この状態からだと、レイヴン以外の他者へ言葉を伝えることが不可能で……こういった形となりました』
あの銃に宿る限り、声は私にしか届かないらしい。だが今はスマホを媒介に、彼女の声が空気を震わせている。
「えっと、どちら様……?」
硬直から脱したユメが恐る恐る問いかける。
『私はエア。レイヴンの所持するこの銃に宿る……OSのようなものです』
「ふぇぇ……すごい、AIが積まれてる銃とか初めて見た」
ユメは目を輝かせるが、ホシノは額を押さえて嘆息した。
「いや感想言ってる場合じゃないですよ!これからどうするんですか。入学出来ないならいつまでもここに居させる訳にいかないのは、先輩も分かってるでしょう?それに見るからに厄ネタ満載です。人のスマホ使って喋る銃に、名前以外何も分からない人とか」
「ひぃん、ホシノちゃん厳しい……」
ユメが肩をすくめる。
ホシノの厳しさに、私はただ静かに息を潜めた。
言い分としてはホシノが正しいのは確かだから。
ユメのように、感覚だけで人を信じたりするお人好しはなかなか居ないだろう。
でもひぃんって何だ…?
『それについてはひとつ提案があります』
ホシノの携帯端末から、再びエアの声。
「何、エア?」
私は促す。
『先程聞いた通りにアビドスの全校生徒が二人であるのなら、ここはかなりの人手不足でしょう。そこで、手伝いをする代わりに、行く宛が見つかるまでは滞在させて頂きたいのです』
「え、良いの!? むしろこっちからお願いしたいくらいなんだけど…! 良いよね、ホシノちゃん?」
「はあ……仕方ないですね。レイヴン、だっけ?私は返り討ちに出来るから良いとして、先輩に危害を加えることは許さないよ?しっかり見張っておくから」
背丈は小さい方であるもののその目は真剣で、忠告の意味を持っていた。まあ、私の方が背は小さいけれど。
「もう……レイヴンちゃん、こう見えてホシノちゃんは優しくて面倒見が良いから、誤解しないであげてね?」
ユメはあたたかい微笑みを浮かべる。
「え、あ、うん」
その言葉にホシノが反応、それにまたユメが返し…眼の前の光景から置いてきぼりになりそうでありながらも私は答え、手元のハンドキャノンに視線を落とす。
『賑やかな人達ですね』
スマホのハックを解除したのか今度は他者にではなく、私にだけ届く声でエアは愉快そうに呟いた。
賑やか──確かにそうだ。
けれど、そういう言葉で片付けて良いのだろうか。
だが、決して悪いものでないことは確かだった。
先に言っとくとここのレイヴンは強めになります。
尚コーラルは切れたので今後範囲探知は出来ません。
限定的な範囲になるものの、今回のように電子機器をハッキングすることでの他者との会話は出来ますが。
この小説読んでくれてる方はこの中のどれ?
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シャーレの先生
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強化人間
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兼業
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実はどれもやってない