強化人間C4-621が、人として幸せになる為に 作:03-AALIYAH
それはそうとアンケートの結果ですが、作者自身の感覚に従えって選択肢が一番多かったので、存在しない記憶はストーリーが一段落してからにしようと思います。
その方がいっぱい書けるのでね。
「校舎より南十五キロ地点にて、大規模な兵力を確認!」
帰ってきた対策委員会の部室に、アヤネの張り詰めた声が響いた。
ついさっきまでラーメン屋で緩んでいたワイワイしてい空気が、一瞬で引き締まる。
机へ置かれたタブレットには、複数の反応が密集したマップが映し出されていた。
「まさか、ヘルメット団が……?」
「それはないと思う。この前叩き潰したし」
ノノミの不安そうな呟きに対し、即座にそう返す。
あの規模で壊滅させられておいて、短期間で再編できるほど統率が取れてる連中には見えなかった。
「……傭兵です!日雇いの!」
アヤネがデータを拡大しながら続ける。
「傭兵かあ……結構高い筈なんだけど」
ホシノが、どこか慣れた口調で呟いた。
……なんでそんなこと知ってるんだろう。
少し気になったけど、今は流す。
とにかく。
武力を売り物にしている以上、ヘルメット団みたいな素人集団よりは遥かに厄介なはずだ。
「先生、命令を」
静かに問い掛ける。
すると先生は、迷いなくこちらを見渡した。
“皆、出動するよ!”
「了解」
※
そして現在。
砂塵舞う荒野の真ん中で、私達はその集団と向かい合っていた。
《前方に傭兵を率いる集団を確認!》
アヤネの声が耳へ届く。
その先に立っていた姿を見て、思わず目を細めた。
「あれ、ラーメン屋さんの……」
ノノミがぽつりと呟く。
うん、間違いない。
昼間、柴関ラーメンで隣の席に居た四人組だった。
「ぐぐぐ……」
アルって人が、露骨に顔を引き攣らせている。
なんというか、すごく気まずそうだ。
「誰かと思えば……ラーメンもタダで特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」
セリカが怒鳴る。
まあ、それはそう。
あそこまでサービスしてもらって即襲撃は、流石に罪悪感くらい湧きそうなものだ。
いや湧いてるからこそああいう引きつった顔してるんだろうけど…見る限り他はそうでもなさそうかな。
「それはそれ、これはこれ。こっちも仕事なんだよね」
ムツキはそれに、あっけらかんと返した。
うーん、悪びれた様子がまるでない。
「残念だけど、公私はしっかり分けないと便利屋の仕事は出来ないから」
カヨコも淡々と言う。
……まあ、公私混同が良くないって話自体には同意するけど。
「その仕事ってのが、便利屋だったんだ」
シロコが静かに返した。
声音は平坦だけど、どことなく不機嫌そうにも聞こえる。
「学生なら、セリカちゃんみたいにもっと健全なアルバイトがあるはずでしょう!」
ノノミが珍しく強めの口調になる。
「それなのに便利屋だなんて、もう!」
……なんかちょっと私の胸に刺さる。何でだろ。
「アルバイトじゃなくて、れっきとしたビジネスよ!」
アルが即座に反論した。
「ちゃんと肩書だってあるんだから!」
仕事って意味では、バイトとそんな変わらない気も…
「私は社長!」
胸を張るアル。
何故ドヤ顔……
「あっちが室長で……」
ムツキを指差す。
「こっちが課長」
カヨコへ視線を向ける。彼女は「えっ」って顔をした。
「社長……ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つと思うんだけど」
カヨコが疲れたように溜め息を吐く。
あぁ、そういう…。
「まあ、誰から依頼を受けたのか聞きたいところだけど」
銃を構えながら、そう口にする。
「職業柄、そういうのは無理だよね」
「ええ、勿論企業秘密よ」
アルも銃を構えた。
その背後では、日雇い傭兵達がぞろぞろと武器を持ち上げ始めている。
「なら力ずくで口を割らせよう」
……シロコの物騒な発想は、とりあえず置いておくとして。
アルが勢いよく腕を振り上げる。
「総員、攻撃開始!」
砂煙が一斉に舞い上がった。
――始めようか。
乾いた破裂音が、砂漠へ連続して響き渡る。
開戦と同時に、日雇い傭兵達が一斉に射撃を開始した。
砂煙の向こうで動く人影を数えながら、小さく目を細める。
…5、10、15…大体20弱か。
統率そのものは雑でも、全員が最低限以上には戦闘慣れしているのが見て取れる。
しかも、ただ数が多いだけではなくて。
射撃精度、ポジション変更のタイミング、遮蔽物の使い方
――どれを取っても、ヘルメット団とは比較にならない程度には……なるほど、【出来る】【出来る】連中だ。
なるほど、確かに金を払って雇うだけの価値はあるらしい。
「チッ……!」
そう考えたところで、乾いた銃声が響き渡る。
咄嗟に遮蔽物にした傭兵のヘルメットが弾け飛んだ。
非常に正確な遠距離狙撃。
ラーメン屋で会った、あのアルという少女か。
次弾が来るのを察知し、横にステップして回避…したところで、シロコが射線上に立っていたことに気付いた。
ドォンッ!!
爆風…着弾と同時に炸裂した……?
「シロコ!」
「大丈夫」
爆炎を横へ跳んで回避したシロコが、砂を蹴りながら体勢を立て直す。
良かった、まだ行けそうか…ただ。
「……なにこれ」
「どーお? アルちゃんの狙撃、なかなかイケてるでしょ?」
ムツキが楽しそうに笑う。
「せーの!」
そのまま、無造作にバッグを放り投げた。
嫌な予感がしたのでバッグから離れる。
が…
ドゴォンッ!!
ノノミの前方にあった遮蔽物が、爆発と共に吹き飛んだ。
「きゃっ!?」
ノノミが慌てて伏せる。
砕けたコンクリ片が砂地へ散乱した。
《皆さん、地面にも気を付けて下さい!》
アヤネの警告が飛ぶ。
そして、着地した先で地面が爆発した。咄嗟に危険を感じて防御を意識したから良いものの…。
「……地雷か」
戦場そのものを罠地帯に変えているのらしい。
無論ステップで避けたはいいものの、キリがない。
しかも。
「左後方、今!」
カヨコの声と同時に、傭兵二人が遮蔽物からこちらへ飛び出した。
体勢を立て直す前に絶え間なく攻撃を続けることで、どこからでも切り崩そうとしてくる。
「この……!」
セリカが即座に迎撃してくれた。
だが、その隙間を縫うように、小柄な影が突っ込んで来る。
「う、うわあああっ!!」
半泣きみたいな声なのに、動きは凄まじい。
ハルカがショットガンを乱射しながら真正面からこちらへと突撃。
散弾が砂煙ごと周囲を薙ぎ払い、先程散乱したコンクリ片を砕く。
ショットガンの射角を突いて前方斜めに回避しつつ、すれ違いざまにこちらも散弾をお返しした。
「な、なんであれで突っ込んで来れるの……!?」
セリカが顔を引き攣らせる。
軽装、小柄、見るからに打たれ弱そうな見た目。
普通なら一発貰った時点で止まるはずなのに、ハルカは被弾しても止まらない。
もう少し力を込めるべきだったか…?
「わ、私はムシケラですけどぉ!! でも!! 嫌われるのは慣れてるのでぇ!!」
泣きそうな声で支離滅裂なことを叫びながら、ショットガンをぶっ放してくる。
ええ…?
“ノノミ、弾幕を張って近寄らせないで!”
「はいっ☆」
ギュルルルルルッ!!
直後、体勢を立て直したノノミのミニガンが再び火を吹いた。
大量の弾丸が一直線に叩き込まれ、流石のハルカも後退する。
「ひぃっ!?」
……これで倒れないのか。
「頑丈過ぎるでしょ……」
思わず本音が漏れる。
そう言ったところで、背筋を嫌な感覚が走り抜けた。
「まずっ!」
叫んだ直後に、アルの弾丸が着弾した。
爆風が遮蔽物を吹き飛ばし、砕けた瓦礫が頭上を掠める。
私をフリーにさせない為か…?
戦闘において面倒は嫌いなんだが。
「うへぇ〜、結構精度高いねぇ……」
「先生、どうする?」
“狙撃手の彼女を自由にさせると危険過ぎる。レイヴン、シロコ、挟み込むように前へ!”
「了解」
「任せて」
“ホシノは盾を構えて前進しつつ、出来るだけ周りの注意を引いて”
“ノノミは弾幕を張って、セリカは狙撃で援護!”
「うへぇ、仕方ないなぁ〜」
「分かりました☆」
「分かったわ!」
二人同時に駆け出す。
こちらの動きに対して、カヨコの鋭い視線がこちらへ向いた。
「来るよ、社長」
「分かってるわ!」
再びこちらへの狙撃。
――でも。
「遅い」
砂を蹴り、感覚を研ぎ澄ます。
空気の流れ、銃口の向き、引き金を引く寸前の僅かな動き。
弾道を捉え、そのまま斜め前へ滑り込むように回避した。
近接信管もないのなら、爆発する前はただの弾丸でしかない。
射線を掠めるように突っ切り、一気に距離を詰める。
「なっ――!?」
アルの顔が引き攣った。
そこへ。
「ここ」
シロコが側面から飛び込む。
アサルトライフルの連射で傭兵を押さえ込み、そのまま低姿勢で滑り込んだ。
「近付かせないで!」
カヨコの指示。
傭兵達が一斉にこちらへ射線を通した。
連携が速い。
カヨコが全体を俯瞰し、最適なタイミングで指示を飛ばしている。
“ノノミ!”
「はい☆」
そこにミニガンの弾幕が空気を震わせた。
圧倒的火力が傭兵達を押し込み、無理矢理射線を崩す。
その隙に、ホシノが前進。
「ちょっとお、仲間外れは良くないなぁ〜。おじさんも入れてくれないと」
飄々とした声。
だが次の瞬間には、ショットガンが至近距離で火を吹いていた。
傭兵二人がまとめて吹き飛ぶ。
「うわぁっ!?」
「近距離なら、こっちの方が上だねぇ」
ホシノが笑う。
「今だよ、レイヴンちゃん」
これで、前に行ける…!
その直後。
カチッと、足元で嫌な音がした。
「……っ!」
反射的に跳んだコンマ数秒後、地雷が炸裂した。
爆炎が背後を呑み込む。
「今のを避けたの!?」
ムツキが驚いた声を上げる。
誘導されていた…?
周りの砂地のあちこちに【不自然な場所】が大量にある。そしてそこは傭兵も陣取っていない。
「いや多過ぎない?」
『戦場全域へ散布されているようです。相当量を事前に準備していたものと思われます』
エアが淡々と告げる。
なるほど。
便利屋68、やっぱり面倒な相手らしい。
でも、ここから詰めれば…
一気に距離を縮めた、その時。
キーンコーンカーンコーン……。
「……あれ、チャイム?」
戦場には場違いな音が響く。
「あ、終わった」
傭兵のひとりがあっさりと言った。
「今日の日当だとここまでだね。帰ろっか」
「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってよ!」
それを聞いたアルが慌てる。
「疲れたぁ。そば屋にでも寄って行こうかな」
……そこはラーメンじゃないんだ。
いや違う、そうじゃなくて。
あまりの唐突さにアビドスの皆も固まってるんだけど。
『恐らく、給料分は働いた……という意味でしょう』
エアの補足で理解した。
なるほど、だからアルが焦っていたのか。
対策委員会が想定以上に粘ったせいで、傭兵達の契約時間が切れたと。
「こらあああ!帰っちゃダメだってえええ!!!」
白目を剥いて叫ぶアル。
一方でカヨコは、まずいなという顔でこちらを見ていた。
……いや、なんでこっち向くの。
「この時間まで決着つかないとか、こりゃ不味いねアルちゃん。逃げる?」
ムツキが気楽に言う。
あの、手を止めたとはいえ目の前に私が居る状況で相談するのはどうなの…?
「これで勝ったと思わないことね!アビドス!……と、えーと…」
そこでアルが詰まった。
ああ、そういえばラーメン屋で名乗ってなかったっけ。
「レイヴン」
「そう! レイヴン!」
「あはは、アルちゃん、そこで詰まるのひどくない?」
「う、うるさい! 逃げ……違う、退却するわよ!」
そう言って、便利屋68は砂煙を巻き上げながら走り去っていった。
三流悪役みたいな捨て台詞を残して。
「独立傭兵、レイヴン……」
帰り際、カヨコがそんなことを呟くのが聞こえた。
多分、人違いじゃないかな…私はただのしがないシャーレ職員なんだけど。
あっ、シャーレって言っとくべきだったか。
アビドスとレイヴン、だと先生が仲間外れだし。
「行っちゃいましたね……」
「うへぇ、逃げ足速いねぇ、あの子達」
《詳しいことは分かりませんが……敵勢力の退勤、ではなく退却を確認》
《ヘルメット団に続いて、妙な便利屋にも付け狙われるとは……このアビドスで、一体何が起きているんでしょうか》
「少しずつ調べるとしよっか。アルって子の身元を洗えば、多分何か出て来る」
“とにかく、みんなお疲れ様”
《はい、お疲れ様でした!》
「お疲れ様」
とりあえず戻ろっか。
・レイヴン
実質的なスキャンとアラート音とイニシャルガードとクイックブーストを神秘で実現している。
記憶を失ってるにも関わらず、必要とあらば敵のひとりを肉壁にする外道戦法もやるタイプのしがないシャーレ職員。
まぁキヴォトス人なら頑丈だし肉壁にしても大丈夫でしょう。
実はこれでも記を失う前より弱体化してます。
・??????
失われた過去を知りたいと思ってるのに手掛かりをスルーし続けちゃう理由の半分はこいつのせい。
もう半分はレイヴンが今のことにまず取り組むタイプだから。
・ハルカ
散弾の対処をレイヴンが知っていたせいで軽くあしらわれてしまった。
でもレイヴン以外ならその気迫で結構やれることもあるかもしれない。
・カヨコ
レイヴンをバリバリに警戒。
こいつフリーにしたら絶対まずい……って考えからレイヴンはとにかく足止めと嫌がらせをされ、初手吶喊からのリーダー瞬殺戦術が取れなかった。
・アルチャン
安定の社長。
勝ちたいなら近接信管を持って来よう。つまりバズ。
Oh! Majestic!!
この小説がいいなと思ってくれた方、良ければ高評価、感想、ここすきなど貰えたら凄くモチベーションになります。
この小説読んでくれてる方はこの中のどれ?
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シャーレの先生
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強化人間
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兼業
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実はどれもやってない