強化人間C4-621が、人として幸せになる為に 作:03-AALIYAH
異格ケルシーがもうすぐ来ると聞いて私の心は死にました。完凸予定だけど450連で足りるかな……
「ここまで来れば、安全のはずです」
ヒフミがそう言って、ようやく足を止めた。
さっきまでいた大通りから少し外れただけなのに、周囲の空気は随分と違っている。
人の往来はまだ多いものの、先ほどのように武装した人間が堂々と銃を構えているわけではなく、店先から聞こえてくる声もどこか落ち着いている。
少なくとも、今すぐ誰かに撃たれるような状況ではなさそうだった。
「ここがずいぶん危険な場所だって認識してるんだね」
シロコは相変わらず仏頂面である。
けれど、その言葉には少しだけ納得したような響きがあった。
実際、ここまで来る間にも何度か物騒な光景を目にしている。
ブラックマーケットという名前だけならみんなはもっと小さな闇市のようなものを想像していたみたいだけれど、実際には人が生活し、商売をし、独自の秩序まで形成している巨大な街だ。
「まあ、当然です。連邦生徒会の手が届かない場所のひとつですから…ブラックマーケットだけで学園数個分に匹敵しますし、決してそこの無視は出来るものではありませんよ」
「たかg」
『たかがグッズでそんな危険な場所まで来たの?は流石に良くないと思います、レイヴン』
言葉を遮られた。
「…なんでもない」
「?ならいいですが…それに、様々な企業が利権を巡って争う、なんてこともあると聞きます。それだけでなく、ここ専用の金融機関や治安維持組織もある程です」
ヒフミの説明を聞いて、私は周囲を見渡した。
確かに、ただの無法地帯という雰囲気ではない。
無許可の店や怪しげな露店が並んでいる一方で、人々はそれぞれの商売を続け、客は客で普通に買い物をしている。
先ほどのような騒ぎが起きても、周囲の人たちは必要以上に関わろうとはしなかった。
つまり無秩序なのではなく、別の秩序がある。
「銀行や警察って…それってやっぱり、認可が降りていない違法な…」
セリカが不安そうに言う。
「裏には裏のルールがあるってことでしょ、セリカ…無法地帯ならここまで発展していないし、違法だとしても最低限のルールがないと破綻するし」
“そうなると面倒事を避けるためにも、ここの警察は避けて行ったほうが良いね”
そこに先生が周囲を眺めながら答えた。
たぶん、ここにはここなりのルールがある。
それが連邦生徒会の定めたものではないだけで、生活を続けるためには秩序が必要になる。
完全な無法地帯なら、誰も長く留まることはできない。
「レイヴンさん、でしたよね…?随分と良く知っているみたいですけど、前にもここに来たことが?」
ヒフミが少し驚いたように私を見る。
「ないよ、多分初めて。そういうヒフミはここに何度も来たことがあるみたいだね」
「え!?いや、そんな事は…その…」
ヒフミの視線が泳ぐ。
「分かりやすい」
「可愛いですね♧」
「あの、その…そうじゃなくて、事前調査はしっかりとして来たので…」
明らかに怪しいけれど、わざわざ追及するほどのことでもないので、私はそれ以上何も言わなかった。
すると、少し離れたところにいたホシノが、ぽんっと手を叩く。
「よし、決めた。ヒフミちゃん、助けてあげたお礼に、私達の探し物が見つかるまで、ここの案内をして貰うよ〜」
「えぇ!?」
ヒフミが驚きの声を上げる。
『恩着せがましいですね』
聞こえないからって好き放題言うのはどうかと思うよ、エア。
『レイヴン…はあ』
なんかため息をつかれたんだけど…。
「わあ☆良案ですね!」
「なるほど…参考になる手法。流石ホシノ先輩」
ノノミが賛成し、シロコまで妙に納得している。
「参考って、なんの参考にですか!?」
ヒフミが驚いてシロコを見た。
「それは勿論、銀行g」
「あー!あー!あー!…コホン。案内をお願いしたいだけよ。勿論、ヒフミさんが良ければ、だけど」
セリカがシロコの言葉を遮ってくれたようだ、安心。
「あ、はい!そういうことなら…アビドスの皆さんには先程お世話になりましたし…」
ヒフミが頷いた。
「私も同行します!」
「阿慈谷院」
“スタンド使いかな?”
「悪ノリしてないで、先生もレイヴンちゃんも行くよ〜」
ホシノに促され、私たちは再び歩き始めた。
※
カイザーPMC、事務所ビル内。
無機質な照明に照らされた事務所の一角で、カイザーPMC理事は一人、報告書へと視線を落としていた。
画面に並ぶのは、これまでに収集されたアビドス対策委員会に関する戦力データ。
その数値と、先ほどまでに現場から送られてきた報告を何度も照らし合わせていた。
「奴らのデータは正確だったはずだ」
ぽつりと零れた独り言は、広い室内へ吸い込まれていく。
他の一般的なロボット達とは明らかに異なるその巨体は、特注品による大型部品によって構成されている。
黒を基調とした特注のスーツにオレンジのネクタイを締め、さらに同色のマフラーを首から掛けた姿には、何か一つ事が起きた程度では揺るがない、ある種の余裕すら感じさせた。
しかし、その声色には僅かな苛立ちが滲んでいる。
計算と現実が、どうしても噛み合わない。
「計算ミスか?いやしかし、あの妙に強い追加人員を外したとしても、あの力は…」
アビドスの戦力そのものは、決して未知ではなかった。
これまでに集められた情報から算出した戦力評価。それに基づけば、今回の作戦がここまで崩される理由はない。まして、追加人員を除外して考えたとしても、現場から送られてきた結果は明らかに想定を上回っている。
だからこそ、納得がいかなかった。
「どうやら、お困りのようですね」
その時、背後から声がした。
まるで最初からそこに立っていたかのように、音もなくぬっと姿を現したのは黒服だった。
真っ黒なのっぺらぼうの顔、そこへ走るひび割れのような線から白い光が漏れ出し、時折その光が形を変えることで、そこに顔があるようにも見える。
何度見ても慣れることのできない異様な姿だった。
「…いや、問題はない。ただ、少々計算外のエラーが出ただけだ。アビドスの連中が、恐らくはデータよりも遥かに強かっただけの事」
理事は振り返り、黒服へ視線を向ける。
表面上は平静を保っていたが、内面はやはり動揺していた。
「データに不備はありませんよ。アビドスの生徒達が、強くなっただけの事です」
「どういうことだ?説明しろ」
即座に返ってきた言葉に、理事の声へ僅かな苛立ちが混じる。
自分達が把握していた情報そのものに問題がないのであれば、残るのは一つしかない。
想定していた戦力そのものが、変化したということだ。
黒服はそんな理事の反応を意に介した様子もなく、僅かに身体を動かした。
「…アビドスが強くなった要因を、こちらで確認してみましょう」
「……」
気に入らないと、理事は思った。
互いの利益から手を組んだ存在ではある。だが何を考えているのか、そもそもどこから現れて、どこまでを把握しているのか。
殆ど分からない相手を前にして、好意的に受け取れるはずもない。
だが、今は黒服の言葉を拒む理由もなかった。
理事が黙っている間に、黒服は踵を返す。
そのまま立ち去ろうとし――ふと、黒服が足を止めた。
「どうかしたか?」
理事が怪訝そうに問いかける。
黒服は振り返ることなく、淡々と口を開いた。
「言い忘れていた事がありました」
「なんだ、それは」
「……あちらには、かの独立傭兵レイヴンがついています。では、また」
「なんだと!?待て!……チッ」
呼び止める声も空しく、黒服はその場から去っていった。
残された理事は、しばらくその方向を睨みつける。
そして、先ほど告げられた名前を、改めて頭の中で反芻した。
「独立傭兵、レイヴン…」
追加人員の正体について思案する。
その名前には覚えがあった。
カイザーの依頼をかつて一度しか受けなかったにもかかわらず、その後は依頼を受けるたびにカイザーと敵対し、幾度となくその戦力を打ち破り、壊滅させ続けた忌まわしい相手。
依頼を受け、カイザーの戦力を潰し、そして、また姿を消す。
あの異様なまでの強さは、傭兵バイトなどという生易しい言葉では表現出来ない。
だからこそ、独立傭兵レイヴンと呼ばれた。
アジトの特定を試みたこともある。
しかし、そのときも途中で撒かれ、結局その所在を掴むことはできなかった。
こちらが情報を集めようとするほど、向こうはするりとその手から抜け落ちていく。
それが、レイヴンという存在だった。
「対策が必要だ」
理事は短く呟いた。
これまでならば、忌々しい相手ではあっても、こちらの戦力で対処できると考えていた。
だが、今回は事情が違う。
アビドスの戦力そのものが想定を上回っている。
そして、その中心にレイヴンがいる。
――ならば。
理事の脳裏に、一つの答えが浮かぶ。
彼は躊躇うことなく電話を手に取った。
数度の呼び出し音の後、相手へ繋がる。
「アレの二号機を納入しろ。あぁ、念の為だ…【カラス】が向こうには居るからな。出来る限りの改修をしておけ」
電話の向こうへそう告げると、理事は静かに受話器を置いた。
その声色には、先ほどまで浮かんでいた苛立ちとは違うものがあった。
計算外の存在が現れたのなら、それに合わせてこちらも計算を変えればいい。
少なくとも、カイザーPMCには、そのための手段が残されている。
※
「あー…しんど」
セリカが、とうとう堪えきれなくなったように声を漏らした。
ブラックマーケットへ足を踏み入れてから、いったいどれだけの距離を歩いただろう。
あちこちを巡り、そのたびに道を曲がり、階段を上り、また別の区画へ移動する。ブラックマーケットそのものが学園数個分にも匹敵するという話は聞いていたけれど、こうして実際に歩き回ってみると、その広さを嫌でも実感させられる。
「もう数時間は歩きましたよね…」
ノノミも少し疲れた様子で、周囲を見渡しながら呟いた。
それだけ歩き続けているのだから、疲れるのも当然だろう。
「そっか、もうそんなに歩いたんだ」
自分では、それほど時間が経ったようには感じていなかった。
脚部には力を強く巡らせているから、私はそんなに疲れていないのかな。
身体そのものに疲労がないわけではないけれど、歩き続けている割には脚が重くなることもなく、呼吸が乱れることもない。
少なくとも、今のところはまだ問題なく歩けそうだった。
「レイヴンも平気そうだね」
「そういうシロコもね」
隣を歩くシロコへ視線を向ける。
こちらと同じように、彼女もほとんど疲労を見せていない。相変わらずの仏頂面で淡々と歩いているあたり、本人にとってもこの程度の移動は大した負担ではないらしい。
「ん、当然。このくらいで疲れてたら自転車でキヴォトス横断なんて夢もまた夢」
「凄い目標…」
具体的にどれほどの距離になるのかは知らないけれど、少なくとも今歩いている距離を基準に考えても、簡単に達成できる目標ではないだろう。
シロコは本気らしい。
「レイヴンもやってみる?まずは一日50キロから」
「ん〜…また今度で」
今すぐ始める理由はないから。
シャーレの仕事もあるし……私が抜けると先生が地獄を見る分、なかなかそれを放り出して、そんな事をする訳にはいかないし。
シロコは少し残念そうな顔をした。
ほんの僅かな変化だったけれど、本当に一緒に走ってほしかったらしい。
「これは流石におじさんも参ったねえ…足腰が悲鳴を上げてるよ」
その少し前方では、ホシノが自分の腰をさすりながら、わざとらしい様子で歩いていた。
ホシノって体力結構ある方だった気がするんだけど気の所為かな…。
そんなホシノを見ていたヒフミが、ふと疑問を口にした。
「あの、ホシノさんっていくつなんですか…?」
「そう変わらないから安心していいよ。あとホシノは先生を見てから言ってね」
「…ごめんね先生」
“うん、大丈夫だよ…”
“やっぱり普段から運動していないと、こういう場面で響くね…”
先生が見るからに一番疲れているみたい。
考えてみれば、先生は普段からデスクワークが中心だ。
シャーレで書類を整理したり、仕事の指示を出したり、その他にも色々とやることはあるけれど、こうして何時間も歩き続けるような仕事とは縁遠い。
デスクワークばかりだと、身体も鈍るからなあ……。
私はそう考えながら、手に持っていたスポーツドリンクへ視線を落とした。
取り敢えず、自分の分を先生へ手渡す。
先生は少し驚いたようにこちらを見たものの、すぐに受け取ると、そのままごくごくと飲んでいく。
喉を鳴らしながらしばらく飲み続け、ようやく一息ついたところで、空になってはいないボトルを私へ返した。
“ありがとう、生き返ったよ”
「キヴォトス神拳伝承者の先生…」
“戦った時の絵面がグロ過ぎる”
その様子を見ていた皆は、それぞれ何か思うところがあったらしい。
「レイヴン、攻めるね」
「いや〜、若いって良いね〜」
「ちょ、ちょっとさりげなさすぎじゃない?なんで恥じらいのひとつもないのよ…」
「あはは…レイヴンさんと先生って、仲がとても良いんですね…」
「え??」
“…どういうこと?”
先生も同じように困惑している。
疲れていたから水分を補給してもらった。
それだけの話なのに、どうして皆がそんな反応をするのか分からない。
そんな私達を見ていたエアの声が、呆れたようにホルスターから響いた。
『…重症ですね。頭を叩けば…いえ、叩いてもそもそもの知識がないので話になりませんね…』
酷いよエア。
『残念ながら当然です。決して銃を叩きつけたことを根に持ってる訳ではありません』
めちゃくちゃ根に持ってるじゃん……。
いや、うん…あれは私が悪いね。
・レイヴン
ジャンプとかきらら系の作品しか読んだり見たりしていなかったせいで間接キスという存在をあまり意識していない。誰かこの子に少女漫画を読ませてあげて。
別にカイザーばかり潰していた訳ではない。でもカイザーの依頼でやる仕事は普通に気分悪くなったので、カイザーの敵対勢力の依頼を受けたら、そっち方面の依頼ばかり来るようになってしまった。勿論普通の依頼も受けていたが、カイザーからしたら怨敵も怨敵である。
記憶がないので弱体済みだけどそれでもイレギュラー。
・一級フラグ建築会社理事
イレギュラーをその程度で倒せると思っている可哀想な人。
・作者
後書きを忘れたバカ。
許されるはずがない。火だるまギロチン高圧電流以下略
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この小説読んでくれてる方はこの中のどれ?
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シャーレの先生
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強化人間
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兼業
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実はどれもやってない