強化人間C4-621が、人として幸せになる為に   作:03-AALIYAH

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ご友人

「赤バーなってるしルーキーランキング16位に載ってたよ」


「ははは、タチの悪い冗談はやめたまえ」

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( ゚д゚) ...(つд⊂)ゴシゴシ (;゚д゚) ...



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MISSION05 宝探し

明くる日。

 

朝の陽はまだ低く、校舎の白い壁を斜めに染めていた。

 

外で吹く砂漠の風は乾いて軽い。

 

ホシノと並んで昇降口をくぐり生徒会室へ入ると、ユメが既に待ち構えていた。

 

いつもの生徒会制服ではなく、出会ったあの日と同じ、薄手で防御力が全くなさそうな服──いや、水着姿で。

 

 

「二人とも、宝探しに行くよ!!」

 

 

ユメは朝の光を背に、子どもみたいに宣言した。

 

 

「え?」

 

 

 

「はい?」

 

 

思わず声が漏れたのは私だけではなく、隣のホシノもだった。

 

けれどホシノはすぐに目を丸くし、その瞳がきらりと光を帯びる。

 

 

 

「今度は…ってまさか」

 

 

(今度? まさかって何?)

 

 

 

何も分からない。

 

私だけが取り残された気分になる。

 

 

「そう、そのまさかだよ!」

 

 

 

ユメは笑って両手を広げ、待ちきれないとばかりに足踏みをする。

 

ますます分からず眉をひそめる私に、ようやく説明が返ってきた。

 

 

「あ、レイヴンちゃんは知らなかったね……。何を隠そう、あの日──レイヴンちゃんと私たちが出会った日ね、あれは宝探しの真っ最中だったんだよ!」

 

 

「宝探し?」

 

 

「うん。ここアビドスは今でこそ砂ばっかりだけど、昔はキヴォトス有数のマンモス校で、たくさん栄えてたんだ。だからたまに、砂の下から“お宝”が見つかる。所詮は過去の栄光だけどね」

 

 

 

ホシノが補足する声は、いつになく楽しげだ。

 

なるほど。あの時のツルハシにはそういう意味があったのか。

 

 

「でもその薄い服に意味とかあるの?」

 

 

「今回行く場所は、昔オアシスでね。万が一掘ってて水が出た時、服が濡れちゃうのは嫌でしょう? だから水着」

 

 

 

ユメは笑う。

 

寒冷化したルビコンでは、生身で水に浸かるのは自殺行為に近かった。

 

だから水着という発想自体が、私にはほとんど未知のものなのだ。

 

 

「私は水着を持っていないけど……」

 

 

「そこは安心して。ちゃんとレイヴンちゃんの分も用意してるから」

 

 

 

ユメは胸を張り、折りたたんだ水着を掲げた。

 

胸元にはアビドスの校章が刺繍されている。

 

 

「これを着ればいいの?」

 

 

「こっちだよ、ほら」

 

 

 

いつの間にか水着に着替えていたホシノが手招きする。

 

頬に朝日を受け、どこか嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

──着替えか。

 

 

水着を身に着けるのは少し手間取った。

 

服を着ることには既に慣れているが、ひとつなぎの柔らかい布を身体に通すのは勝手が違う。

 

教えられた通りに足を通し、肩を抜けると、不思議な軽さと肌触りに少し戸惑う。

 

肌を露出しているとなんだか少し不安になって来る。

 

更衣室の外に出ると、ユメが満足げに頷いた。

 

 

 

「うんうん、決まってるね、レイヴンちゃん」

 

 

「着替えたならさっさと行こう、時間は待ってくれないからさ!」

 

 

 

ホシノが声を張る。いつもよりも少し浮き立っているようだ。

 

私は銃とツルハシを肩に掛け、短く頷いた。

 

 

「分かった」

 

 

こうして“宝探し”が始まった。

 

 

 

 

現地。風に削られた岩の間に、砂が吹き溜まって小さな丘を作っていた。

ユメが立ち止まり、振り返る。

 

 

「ここ?」

 

 

「そう、ここ!」

 

 

彼女は足元の砂を蹴って、子どものように笑った。

 

 

「早速掘ろう!」

 

 

『レイヴン。こちらで近辺の地中をスキャンしました。深度約5メートルに砂ではない、何らかの物体の反応があります』

 

 

途端、耳元に響いたエアの声に、私はツルハシを持つ手を止める。

 

 

 

「もしそうだとしたら、大幅に手間が省ける。ありがとう、エア」

 

 

「レイヴン、どうしたの?」

 

 

 

不思議そうにホシノが覗き込む。

 

 

「エアが、この5メートル下に何か埋まってるって」

 

 

「え、ホント?なら早速ここを掘らないと!ユメせんぱぁぁい!」

 

 

 

砂を蹴り上げながらホシノが叫ぶ。

 

 

「元気だなあ……」

 

 

 

思わずそんな感想が口から漏れた。

 

 

 

スコップとツルハシを交互に使いながら掘り進め、深度が8メートルを超えた頃、万一を考えて手掘りに切り替えた。

 

乾いた砂は指先で崩れるほど軽い。

 

やがて指先に何か硬い感触が触れた。

 

 

 

「ん?」

 

 

「今度はどうしたの、レイヴンちゃん。 もしかして何か見つかった?」

 

 

 

ユメが覗き込む。

 

 

「多分」

 

 

 

答えつつ、砂を払って掘り出す。ごそごそと現れたのは、紐の付いた丸い塊だった。

 

乾いた砂漠に長年埋もれていたせいか、表面はすっかり砂色にくすんでいる。

 

 

「なにこれ」

 

 

「え、すごいよレイヴンちゃん!これ、尺玉だよ!?」

 

 

 

ユメが目を輝かせた。そんなに凄いのだろうか。

 

 

「しゃくだま?」

 

 

「え、花火!?すごい……数万は行きそう!」

 

 

 

興奮気味に詰め寄るホシノに、私はきょとんとする。

 

 

「はなび?」

 

 

ユメが優しく笑いながら説明した。

 

 

 

「ここら辺ではね、昔まだ砂漠化が進む前に“アビドス砂祭り”っていう大きなお祭りがあったの。多分これは、その時使われていたものなんじゃないかな」

 

 

祭り──人や物が集い、喜びを分かち合う場所だと本に書いてあった。

 

ルビコンではほとんどなかったその響きに、胸の奥で小さな波紋が広がる。

 

 

「これは苦労した甲斐あったなぁ……他にもないか探してみようよ!」

 

 

 

ユメが笑う。

 

 

「そうですね!」

 

 

 

ホシノも嬉しそうに頷いた。

 

 

 

その後も掘り進め、最初に発見したのと合わせて5つの尺玉と、小さな花火の詰められた段ボール箱をひとつ発掘した。

 

 

最初に掘り当てたものがいちばん大きく、三人で交代しながら慎重に抱えて運んだ。

 

砂漠に長く埋もれていたにもかかわらず、乾燥した気候が幸いして火薬はまだ使える状態らしい。

 

 

 

ユメによれば、祭りの花火にはアビドス独自の技術が使われていて、現在も花火を名物にしている百鬼夜行へ売ればかなりの金額になるだろうとのことだった。

 

 

そうして灼けた砂丘を背に、私たちは見つけたお宝を抱えて学校への帰路についた。

 

 

空はすでに午後の光を帯び、遠い地平の向こうに揺れる陽炎が、私にはどこか想像上の祭りの灯のように見えた。

 

 

戻ってきた生徒会室から見る窓の外は、やはり午後の砂塵を帯びた光で白く霞んでいた。

 

 

古びた机に散らばる書類の山を、窓からの風がぱらりと揺らす。

 

 

私はその揺れる紙束を、まるで遠い景色でも見るようにじっと眺めていた。

 

 

 

この数週間が、砂漠の熱気と同じくらい鮮やかに胸の奥に刻まれていると、ようやく実感していた。

 

……なら、もう良いだろう。

 

 

「ねぇ、二人とも」

 

 

 

ふいに口を開いた声は、いつもより少し硬い響きがあった。

 

 

ホシノが手を止める。

 

 

ユメが窓際で頬杖をついていた顔を上げる。

 

 

 

二人の視線が、同時に私へ向かう。

 

 

「行く宛が出来た。二週間後……ここを出発する」

 

 

短い言葉が落ちた。

 

 

乾いた砂漠の風が窓を鳴らし、紙がひらひらと舞った。

 

ホシノは、一瞬、瞬きを忘れたようにじっとレイヴンを見つめていた。

 

 

その表情は硬直し、言葉が出てこない。

 

 

しばらくして、唇をわずかに動かす。

 

 

「……どういうこと?」

 

 

 

 

ホシノが出したのは、掠れたような声だった。

 

 

無理もない。

 

 

いつの間にか、レイヴンも含めたこの日常が、続くものだと信じかけていたのだから。

 

レイヴンは少し視線を伏せる。

 

 

その横顔は、どこか決意を帯びているが、側から見ると、同時に感謝と、どこか申し訳なさそうな感情も見えた。

 

 

「…詳しいことは言えない。ただ、二週間後にここを出る」

 

 

その言葉を聞いたユメは、静かにまばたきをした。

 

 

いつもなら無邪気に笑うはずの唇が、少しだけ揺れる。

 

 

それでも、優しい声で言った。

 

 

「ここに居てくれてもいいのに……」

 

 

その響きには、引き止めたいという思いと、でもきっと届かないだろうという諦めが同居していた。

 

 

こういう時だけ、ユメは何故か鋭かった。

 

 

 

 

私は何も言わなかった。

 

その沈黙が、ユメにとっては答え以上に雄弁だった。

 

ホシノはまだ私を見つめたまま、理解できないと言いたげに眉を寄せている。

 

 

その顔にユメは一瞬そっと視線を向け、柔らかい調子で続けた。

 

 

「最初から、行く宛が出来るまでって話だったよね」

 

 

その声はまるで、砂漠の夕暮れの風のようにやわらかかった。

 

 

「そう、でしたね……」

 

 

 

ホシノは小さく呟き、それ以上は何も言えなかった。

 

その頬に、寂しさが影を落とす。

 

 

沈黙が落ちた。

 

 

風が窓を揺らし、夕暮れの光が古い生徒会室の木目を赤く染める。

 

 

ホシノはまだうつむいたままで、私も言葉を足せずに座っていた。

 

ふと、ユメがぽんと手を叩いた。

 

 

 

「……よし、だったらさ。それまでに早速、思い出を作っちゃおっか」

 

 

そう言って、部屋の隅に置かれた段ボール箱をがさごそと漁り始めた。

 

 

宝探しで持ち帰った花火が、まだそのまま詰め込まれている。

 

 

「ちょっとくらいなら使ってもバチは当たらないよね。だって、レイヴンちゃんがここにいる時間は限られてるんだし」

 

 

箱の底から、細い紙包みの束──後で知ったが、線香花火と呼ばれているらしい──を取り出すと、ユメはくるりと振り返り、いつもの明るい笑顔を見せた。

 

 

ホシノが顔を上げる。

 

 

目元が少し赤いけれど、ユメのその笑顔に少しだけ力を抜いたように見えた。

 

 

「……そうですよね。このまま落ち込んでても仕方ないですし」

 

 

私は意味が分からず一瞬だけ首をかしげたが、でもすぐにその意図を察して小さく頬を緩めた。

 

多分、ここに来てから、本当の意味で初めて笑ったのだと思う。

 

胸の奥に小さな灯がともるような感覚があった。

 

 

 

 

日が落ちきる前の校庭。

 

 

風は涼しく、砂混じりの地面がほのかに温かい。

 

三人は並んでしゃがみ込み、ユメが持ってきた小さなマッチの火で線香花火に火を点けた。

 

チリ、チリ……と、かすかな音とともに、細い火花が揺れる。

 

砂の上にこぼれ落ちる光の粒が、まるで星のかけらのようだった。

 

 

「ふふっ、やっぱりいいよね。こういうの」

 

 

ユメが火花を見つめながら、小さく笑う。

 

 

「……単純に売るより、確かにこうやって使ったほうが、ずっといいかも」

 

 

ホシノも少し照れくさそうに呟いた。

 

 

私は無言のまま、その細く丸い炎を見つめた。

 

 

 

ルビコンでは見ることのなかった、小さな灯り。

 

 

儚く、けれど温かい。

 

 

 

胸の奥が、ほんの少しだけ締めつけられるように熱くなる。

 

 

火の玉がぷるぷると震え、最後にぱちんと弾けて落ちた。

 

 

砂の上に、かすかな煙だけを残す。

 

ユメが新しい線香花火を取り出し、レイヴンへ差し出した。

 

 

 

「はい、次はレイヴンちゃんの番」

 

 

私は小さく頷き、それを受け取った。

 

 

指先に移った温もりが、なぜか心まで温めていくように感じられた。

 

 

三人の間を、火花の小さな光がゆらゆらと行き交う。

 

 

それは砂漠の夜の静けさを、ほんの少しだけやわらかく照らしていた。

 

 




エアに出来ること

・周囲数メートルのスキャン及び端末へのハッキング

・レイヴンのバイタル情報の確認

出来ないこと

・超広範囲のスキャン及び大規模な端末へのハッキング

・他者のバイタル情報の確認

・ハンドキャノンのブラックボックスへの意図的なアクセス

なのでルビコン時代より弱体化はしているものの、一応ハッキングやスキャンも出来るようになっています。


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