『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第22話

ギルド本部の喧騒から離れた路地裏。仮面を脱ぎ、一般市民に紛れた**祈手(アンブラハンズ)**の網膜が捉えた「ロクデナシ」という罵倒、そして神々が下した排斥の決定。それら全ての情報は、精神隷属機(ゾアホリック)を通じて、瞬時に第24層へと届けられました。

イドフロントの最奥、暗闇に包まれた制御室で、ボンドルドはモニタの光を浴びながら静かに首を振りました。

「……おやおや。心外ですね。実に心外です」

その声には、怒りではなく、理解を得られぬ先駆者が抱く深い悲嘆と、拭い去れぬ寂寥が宿っていました。彼は背負った装置のレバーを優雅に引き下げ、アリーナとエレナ、二人の「家族」から供給される熱量を神経に馴染ませます。

「ロクデナシ、ですか。……私はただ、誰もが望みながらも、その過酷さに目を背けてきた『黎明』を目指しているだけなのですよ。神々の箱庭に安住し、未知という名の可能性を腐らせておくことこそ、知性に対する最大の冒涜ではありませんか」

ボンドルドは、地上で自分を指名手配したロイマンたちの戦慄を、祈手の感覚を介して反芻しました。彼らが自分を怪物と呼び、その所業を否定するのは、彼らが「明日」を視るために必要な代償の正体を、まだ知らないからに他なりません。

「私は止まりません。この迷宮が奈落へと続くのであれば、そこに潜む真理を解明し、人類が次の一歩を踏み出すための階段を築く。たとえその歩みが、あなた方の信じる正義や倫理を磨り潰すものであったとしても……。それを成し遂げた先に待つ輝きだけが、この停滞した世界を照らすのですから」

彼は執刀台の上に置かれた、新たな「箱」の試作型を指先でなぞりました。エレナのカートリッジから漏れ出す、誇り高い命の余熱がボンドルドの手袋を温めます。

「おやおや。開き直り、と呼んでいただいても構いませんよ。私には、この暗闇を切り裂く義務がある。アリーナ、エレナ、そして私の後に続く全ての家族たちが捧げてくれた献身を、無意味な死へと貶めるわけにはいかないのです」

ボンドルドの仮面が、かつてないほど鋭く、冷徹なまでの意志を秘めて紫に明滅しました。

「さあ、祈手の皆さん。地上の喧騒など、黎明の光が差し込めば霧散するノイズに過ぎません。……準備を急ぎましょう。ギルドが動くというのなら、我々はそれを受け止めるだけです。彼らの放つ『正義』という名の熱量が、どれほど上質なエクセリアとして私たちの糧になるのか……。おやおや、次の一歩が待ち遠しくて仕方がありませんね」

イドフロントの深奥で、漆黒の外套が翼のように広がり、未知の階層へと続く縦穴の風を孕みました。

地上では「ロクデナシ」が狩りの対象として定義されましたが、ボンドルドにとって、それはもはや自分を縛る鎖ではなく、新たな探求の始まりを告げる福音に他なりませんでした。

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