『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第30話

イドフロントの最奥、垂直の闇を覗き込むようにして、ボンドルドは静かに佇んでいました。

英雄たちが第25層への降下を急かそうとも、彼は慌てる様子を見せません。探求には準備が必要であり、その準備には「人手」が必要であることを、彼は誰よりも理解していました。

「……おやおや。フィンさん、そう急いではいけません。真理は逃げたりしませんよ。……まずは、私たちの足場をより強固なものにせねばなりません」

ボンドルドは背後の闇に控える数人の祈手(アンブラハンズ)へと、慈愛に満ちた視線を向けました。

「行きなさい。都市(オラリオ)には、まだ見ぬ可能性が満ち溢れています。……道に迷える者、力に飢える者、そして何より、この退屈な世界の『外側』を渇望する者たちへ、私たちの祝福を届けるのです」

命令を受けた祈手たちは、無言で、しかし洗練された一礼と共にイドフロントを後にしました。彼らが向かうのは、英雄たちの本拠地である迷宮都市。そこは、多くの冒険者が夢に破れ、絶望し、あるいは出口のない閉塞感に喘いでいる場所でもありました。

オラリオの黄昏:祈手の勧誘

夕闇に包まれたオラリオ。その喧騒から外れた裏通りや、日雇いの冒険者たちが集まる酒場に、見慣れぬ黒装束の集団が現れました。

彼らは武器を抜かず、暴力を振るうこともありません。ただ、静かに、そして極めて理知的な語彙で、人々に語りかけました。

「……おやおや。あなたのその瞳に宿る陰り、それはこの街の天井が低すぎるせいだと思いませんか?」

一人の祈手が、路地裏で酒に溺れる中堅の冒険者に手を差し伸べました。

彼の言葉は、無理やり精神を蹂躙する洗脳ではありません。相手が抱える欠乏感や劣等感、あるいは「何かを成し遂げたい」という剥き出しの承認欲求に、優しく、しかし確実に入り込んでいく「救済」の提案でした。

「私たちは探求者です。神の恩恵(ファルナ)さえも一つの通過点に過ぎない、真の夜明けを識(し)ろうとする者たち。……あなたのそのエクセリア、ここで腐らせるにはあまりにも惜しい。……私たちの一部となり、共に黎明を視る路へ歩み出しませんか?」

祈手たちは、ボンドルドという「群体」が持つ独特の安心感と、絶対的な肯定を人々に分け与えていきました。

それは、自発的に己の意志を差し出し、ボンドルドという偉大なる意志に「溶け込む」ことを選ばせるための、極めて高度で合理的なリクルーティングでした。

「……強制はいたしません。愛です。あなたの意志が、私たちの意志と重なるその瞬間を、私たちは心から待ち望んでいるのですから」

監視の空白

イドフロントに残り、英雄たちの監視を受けながら、ボンドルドは遠く離れた都市での「拡充」を、精神のネットワークを通じて静かに観測していました。

「……おやおや。フィンさん、オッタル。私を縛る楔は、確かに機能しています。……ですが、人の心とは不思議なものですね。縛られれば縛られるほど、その魂は解放を求め、より広い『意志』へと合流しようとする。……ああ、素晴らしい。実に素晴らしい」

ボンドルドは、自らの血を分けた「家族」が増えていく予感に、仮面のスリットを深く紫に明滅させました。

英雄たちが「強制洗脳」を禁じたことで、ボンドルドは「真に共鳴する者たち」だけを集めるという、より純粋で強固な組織へと進化し始めていたのです。

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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