『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第36話

迷宮第37層、「白き宮殿」。

その広大な中心地では、かつてない規模の探掘隊「祈手(アンブラハンズ)」が、階層主ウダイオスと激突していました。

「卿より預かりし暁に至る天蓋を、これほどまでに損耗させるとは……不甲斐ない!」

白い外套を血と煤で汚しながら、戦隊長カロンが叫びます。

彼が率いる精鋭「死装束(シュラウド)」たちは、暁に至る天蓋の出力を限界まで引き上げ、魔石銃でウダイオスの骨の巨躯を削り取ろうと試みます。しかし、地中から突き出す巨大な骨の剣は、祈手たちの漆黒の装甲を紙細工のように貫き、粉砕していきました。

後方で負荷を肩代わりしていた一般隊員たちは、精神隷属機を通じて伝播する過負荷に焼かれ、次々と物言わぬ肉塊へと変わり、宮殿の床を黒く染めていきます。

「オートモード、起動……! 卿、私の身体をお使いください……!」

カロンが自我を明け渡し、ボンドルドの意識がその肉体を支配しようとしたその時、戦場に場違いなほど穏やかで理知的な声が響き渡りました。

黎明卿の降臨と、枢機に還す光

「おやおや。皆さん、随分とご機嫌ですね。……素晴らしい。この敗北、この痛み。これこそが、新たな発見へと至る瑞々しい経験ですよ」

暗闇の中から、漆黒の外套をなびかせ、仮面のスリットを深々と紫に光らせたボンドルドが静かに歩み出しました。

「卿……! 申し訳ございません、私たちの力が及ばず……!」

膝をつき、血に汚れた頭を垂れるカロン。ボンドルドは優雅な所作で歩み寄り、カロンの頭を慈しむように撫でました。

「謝る必要などありませんよ、カロンさん。あなた方の献身が、私にウダイオスの『今この瞬間』の限界を教えてくれたのですから。……愛ですよ、それは」

ボンドルドは顔を上げ、咆哮を上げる巨大な骸骨――ウダイオスを見上げました。その右腕に装備された装置が、空間を歪めるほどの熱量を孕んで鳴動を始めます。

「さあ、お返ししましょう。夜明けを阻むその古い骨に、真理の光を」

ボンドルドが腕をかざした瞬間、極細の、しかし圧倒的な密度を持った「光の枢軸」が放たれました。

――枢機に還す光(スパラグモス)。

音もなく放たれたその光は、ウダイオスが防御のために掲げた黒い大剣を、そしてその巨大な頭蓋を、熱したナイフで薄氷を裂くように滑らかに、一瞬で消滅させました。

再生の余地すら与えない、因果を断ち切る絶対的な「消失」。

「…………ガ…………」

階層主の断末魔さえも光の中に呑み込まれ、白き宮殿に静寂が戻りました。

ボンドルドは満足げに、消滅したウダイオスの残滓を眺め、再びカロンたちへと振り返りました。

「おやおや、素晴らしい。……カロンさん、次はさらに改良した暁に至る天蓋が必要ですね。……さあ、戻りましょう。次の探求が、待ち遠しくて仕方がありませんね」

蹂躙された戦場に、ボンドルドの朗々とした声だけが響き渡ります。

 

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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