『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第37話

白き宮殿に響いていた咆哮は止み、枢機に還す光(スパラグモス)の残光もまた、深淵の闇に溶けて消えました。

後に残されたのは、粉砕された漆黒の装甲と、白い外套(シュラウド)を引き裂かれた祈手(アンブラハンズ)たちの無惨な姿。そして、それらすべてを優しく包み込むボンドルドの影だけでした。

イドフロントの最下層、薄暗い工房へと帰還した一行を待っていたのは、沈黙の出迎えでした。

戦隊長カロンは、自らの腕から火花を散らす暁に至る天蓋の残骸を無理やり引き剥がし、卿の前に膝をつきました。

「……卿、不甲斐なき報告を。ウダイオスの圧倒的な質量と衝撃に対し、量産型天蓋の骨格強度が追いつきませんでした。駆動系の魔導回路も、魔石銃の連続出力に耐えきれず焼損。……我らの力不足です」

ボンドルドは、破損した装甲の断面を愛おしげに指先でなぞり、懃懃(きんきん)に首を傾げました。

「おやおや。カロンさん、気にする必要はありませんよ。……この破損、この歪み。これこそが、現在の我々の限界を物理的に示した貴重なデータなのですから。……素晴らしい。実に素晴らしいですよ」

ボンドルドの視線は、既に「次」の段階を見据えていました。上層や中層で入手可能な素材をベースに組み上げた現在の装備では、深層の階層主が放つ純粋な暴力に対抗するには、物質的な強度が絶対的に不足していたのです。

一方、この異様な光景を監視し続けていたロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの面々は、イドフロントを後にしました。

勇者フィン・ディムナは、最後まで疼きが止まらなかった右の親指を握りしめ、一度だけボンドルドの背中を振り返りました。

「……これ以上、あいつの『実験』に付き合う義理はない。僕たちは僕たちの戦場へ戻る。だが、忘れるなボンドルド。貴様がその『愛』とやらで街の日常を塗りつぶそうとするなら、その時は僕の槍が貴様の心臓を貫く」

オッタルもまた、無言のまま重圧を放ち、去り際に一瞥をくれました。アイズは、ボンドルドが優しく「家族」の残骸を拾い上げる光景に、最後まで拭いきれない嫌悪を抱きながら、フィンたちと共に地上へと続く路を歩み出しました。

神の寵児たちが去り、イドフロントにはボンドルドと、彼に付き従う祈手たち、そして自我を失い「機能」へと堕ちた闇派閥の者たちだけが残されました。

新たなる探求:第24階層の収穫

「おやおや。ようやく二人きり……いえ、家族たちだけになれましたね。……さて、カロンさん。新たな暁に至る天蓋の強化案ですが、迷宮(ダンジョン)のさらに深い、瑞々しい素材が必要です」

ボンドルドの声が、より一層深く、熱を帯びて響きます。

「これより、第24階層以降……特に水の大迷宮へと続く階層の原生生物から、高硬度の外殻、および魔導伝導率に優れた神経系を採取します。……素材が足りなければ、それこそ迷宮そのものの壁を剥ぎ取ってでも、我々の黎明への路を舗装せねばなりません」

「……卿の御心のままに。水の大迷宮、その激流さえも、我らの糧といたしましょう」

カロンが立ち上がり、白い外套(シュラウド)を翻しました。

一般の志願者たちが持つ魔石銃の出力を維持するためには、より強固な「器」が必要。そのための狩りが、今、始まろうとしていました。

「ああ、楽しみですね。……カロンさん、新しい素材を組み込んだ天蓋を纏ったあなたの姿を想像するだけで、私の胸は高鳴りますよ。……おやおや、次の一歩が、待ち遠しくて仕方がありませんね」

イドフロントの暗がりに、魔石銃の予熱と、次なる犠牲を待つ工廠の熱気が満ちていきます。

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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