『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

40 / 78
第40話

ボンドルドは、イドフロントの奥底で淡く、しかし力強く脈動し続ける『精神隷属機(ゾアホリック)』を見上げました。その巨大な影は、彼がオラリオに足を踏み入れた初期、まだ深層への足がかりを築き始めた黎明期から、この地に根を張っていたのです。

イドフロントの工廠の最奥に鎮座するその機械は、もはや風景の一部と化していました。

第37層への第一次遠征が行われる以前……ボンドルドが闇派閥の残党を「家族」として迎え入れ始めたその時から、精神隷属機は既に稼働していました。

この機械の完成こそが、ボンドルドの探求における真の第一歩でした。

まだウダイオスの結晶構造を手に入れる前、彼は迷宮(ダンジョン)の上層から中層に蠢く、自己修復を繰り返す「壁」の神経網に着目しました。そこに、捕らえた闇派閥の主神たちが遺した「神酒(ソーマ)」の触媒的性質を強引に組み込み、人の魂を電子的な信号へと変換する「基板」を作り上げたのです。

第一次遠征において、祈手(アンブラハンズ)たちが一糸乱れぬ連携を見せ、命を惜しまず盾となったのは、既にこの機械が彼らの意識を一本の糸で繋ぎ、ボンドルドという巨大な意志の端末へと変えていたからに他なりません。

避雷針システムの原点:使い潰される資源

「おやおや。カロンさん。……覚えていますか? 初めてこの機械に『家族』を接続した時の、あの瑞々しい感覚を。……愛ですよ、それは」

精神隷属機のハブには、第一次遠征のさらに前から、数え切れないほどの「避雷針」が接続され、そして焼き切られてきました。

男も、女も、彼らがかつて抱いていた野心や復讐心といった「個」の境界は、この機械に触れた瞬間に粉砕されます。精神隷属機は、彼らの脳を単なる演算リソースとして、あるいは装着者の精神疲弊(マインドダウン)を吸い上げるための「排水溝」として定義しました。

第一次遠征での撤退は、このシステム自体に不備があったわけではなく、あくまで「装甲の強度」と「魔石銃の出力」という物理的な限界に直面したに過ぎません。精神隷属機による精神の同期と負荷の転嫁は、その時既に完璧に機能していたのです。

第二期への昇華:既存システムと新素材の融合

「……卿。精神隷属機の同期精度は、初期の段階から既に臨界点にありました。……今、ウダイオスの結晶構造を演算核に組み込んだことで、処理速度はさらに異次元の領域へ突入しています」

戦隊長カロンは、自らの神経系を精神隷属機へと委ねながら、静かに報告しました。

古くから稼働していた精神隷属機という「揺るぎない土台」の上に、今回の遠征で得た「深層の素材」が新たなパーツとして組み込まれた。

それは、旧来の回路を最新の超電導素材で張り替えるような、機能的な飛躍でした。

「おやおや、素晴らしい。……元々あった素晴らしい仕組みが、新しい素材と出会い、より洗練された地獄へと変貌する。……見てください、カロンさん。レオさん。……そして、名もなき避雷針の皆さん。……我々は今、かつてないほど高く、黎明に近い場所に立っています」

ボンドルドの紫の明滅が、精神隷属機から伸びる無数のケーブルをなぞるように走ります。

祈手たちは、自らの背後に繋がれた「家族」たちが、どれほどの期間その脳を消費され続けているかなど知りません。ただ、精神隷属機から供給される「卿との繋がり」という至上の法悦を糧に、彼らは一歩、また一歩と、死の気配すら漂わない無機質な足取りで、深淵への路を歩んでいくのでした。

「さあ、準備は既に整い、熟しています。……おやおや、次の一歩が、待ち遠しくて仕方がありませんね」

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。