『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第44話

イドフロントの冷たい空気の中に、外の世界から「新たな資源」が次々と運び込まれてきました。

祈手(アンブラハンズ)たちの手によって、無機質なコンテナや布に包まれた状態で運び込まれたのは、紛争地帯で名前すら失っていた戦争奴隷たち、そして寄る辺なき孤児たちです。

工廠に並べられた彼らは、ボンドルドの紫の双眸によって淡々と選別されていきます。

成人の奴隷たちは、すぐさま精神隷属機(ゾアホリック)への適合試験へと回されました。彼らは強靭な肉体を持ち、カロンたちの「暁に至る天蓋」が発する激しい精神的廃熱を中和するための、高出力な避雷針としての運用が期待されています。

「おやおや。素晴らしい。……この方々の瞳には、絶望という名の純粋なエネルギーが宿っています。愛ですよ、それは」

ボンドルドは、怯え、あるいは虚脱した状態で座り込む男たちの間を歩き、その頭を慈しむように撫でました。彼らは間もなく項に端子を打ち込まれ、己の意志をボンドルドへと捧げることで、初めて「役割」という名の安寧を得ることになります。

一方で、まだ幼い孤児たちは、奴隷たちとは別の区画へと導かれました。

ボンドルドは、一人の震える少女の前に跪き、目線を合わせて優しく語りかけます。

「おやおや、泣かないでください。……あなたは今日から、私の大切な娘ですよ。……そうですね、名前が必要だ。……あなたは今日から、プルシュカ。黎明を告げる花の名です」

ボンドルドが孤児たちに求めているのは、単なる避雷針としての機能だけではありません。

彼らは、より純粋で、より深い「愛と信頼」を育むための対象として選ばれました。

孤児たちには、清潔な衣服と温かい食事が与えられます。ボンドルドは自ら彼らに言葉を教え、迷宮の素晴らしさを説き、彼らが「パパ(ボンドルド)」を心から愛し、全幅の信頼を寄せるように慈しみ育て始めます。

* 愛の蓄積:

精神隷属機を介さずとも、その魂がボンドルドと深く共鳴するほどに高められた「純粋な愛」。それは、将来的に彼らが「カートリッジ」へと昇華された際、あるいは避雷針として接続された際、通常の資源では決して到達できない、異次元の安定性と出力を生み出すための熟成期間なのです。

「カロンさん。……この子たちを大切に育ててください。彼らが我々を愛し、我々が彼らを愛する……その絆の強さこそが、深淵の呪いさえも無効化する最強の盾となるのですから」

「……了解。孤児たちの教育および心身の管理を、最優先事項として処理します」

イドフロントの新たな日常

工廠の一角では、奴隷たちが無言で精神隷属機に接続され、回路の「部品」としての調整が進められていく。

そしてもう一角では、ボンドルドの朗々とした読み聞かせの声と、孤児たちの無垢な笑い声が響き始める。

地獄のような合理性と、歪な家族の温もりが同居するイドフロント。

「おやおや、素晴らしい。……新しい家族たちが、これほどまでに瑞々しい愛を育んでくれる。……黎明の光が、すぐそこまで来ているのを感じますよ」

ボンドルドは、小さなプルシュカたちの手を引きながら、完成間近の暁に至る天蓋が並ぶ通路を、どこまでも優しく歩いていきました。

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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