『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第45話

イドフロントの最深部では、二つの「愛」が並行して、かつ冷徹な合理性のもとに育まれていました。

一方は、即戦力としての「部品」を組み上げる効率的な作業。

もう一方は、いつか訪れる決定的な瞬間のために、時間をかけて魂を熟成させる慈しみ。

機能の構築:奴隷たちの「部品化」

「おやおや。素晴らしい。……カロンさん、見てください。彼らの脳が精神隷属機(ゾアホリック)と、これほどまでに滑らかに融合している。愛ですよ、それは」

工廠の一角に設置された、新たな避雷針ユニット。

そこでは、運び込まれたばかりの戦争奴隷たちが、もはや一言も発することなく並んでいました。彼らの項(うなじ)には大型の接続端子が打ち込まれ、精神隷属機から伸びる無数の光ファイバーが、彼らの脊髄を介して脳幹に直接干渉しています。

「……卿。成人奴隷四〇名、同期率九割を維持。情報の処理能力、および精神的廃熱の受容体としての機能……。すべて規定値をクリアしています」

戦隊長カロンは、感情を排した声で報告します。

奴隷たちは、かつての名前や地獄のような戦場の記憶を、精神隷属機の強力なパルスによって「ボンドルドへの帰依」へと書き換えられました。彼らにとっての安寧は、今やボンドルドという巨大な意志の一部として、カロンたちの受ける負荷を黙々と吸い取ることだけに集約されています。

彼らは「声」を失った代わりに、イドフロントを支える強固な「インフラ」としての生を手に入れました。

愛の熟成:プルシュカたちの「教育」

その無機質な処理場のすぐ隣、防音壁を隔てた温かな光の差し込む部屋では、全く別の光景が広がっていました。

「おやおや、プルシュカ。……上手に描けましたね。それは、私ですか?」

「うん! パパ! パパが、迷宮の奥でキラキラしてるの描いたんだよ!」

ボンドルドは、小さな少女——プルシュカ——を膝に乗せ、その拙い絵を本当に愛おしげに眺めていました。周囲では、彼女と同じように保護された孤児たちが、清潔な服を纏い、ボンドルドを「パパ」と呼びながら無邪気に駆け寄ってきます。

ボンドルドは彼らに、迷宮の素晴らしさを説き、読み聞かせをし、時には一緒に食事を摂ります。

彼が彼らに注ぐ愛情は、決して偽物ではありません。彼が本気で愛し、そして彼らが本気でボンドルドを信頼し、その命を捧げたいと願うほどの「絆」がなければ、深淵の呪い——精神を焼き切る情報の奔流——を完全に無効化するほどの「質」は得られないからです。

「いいですか、プルシュカ。……いつか、私と一緒に黎明を見に行きましょう。……その時、あなたのその瑞々しい愛が、私を、そして皆を助けてくれるのですよ」

「パパのためなら、私、なんでもするよ!」

少女の無垢な瞳が、盲目的な憧憬と愛で輝きます。

ボンドルドはその小さな手を握り、慈愛に満ちた仕草で髪を撫でました。

イドフロントの二層構造

数ヶ月の時が流れ、イドフロントのシステムはかつてない完成度を迎えつつありました。

工廠では、感情を去勢された奴隷たちが静かな「避雷針」として列を成し。

居住区では、ボンドルドをパパと慕う子供たちが、将来の「献身」を夢見て、その魂を純化させていく。

「おやおや、素晴らしい。……一方では強固な『機能』が磨かれ、もう一方では至高の『絆』が実を結びつつある。……カロンさん。我々はついに、深淵の心臓へと手を伸ばすための、完璧な梯子を手に入れましたよ」

ボンドルドの仮面の奥で、紫の明滅がかつてないほど美しく、そして冷酷に輝いていました。

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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