『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

53 / 78
第53話

イドフロントを後にした混成部隊は、深層のさらに深淵、第50階層を目指して進軍を開始しました。ロキ・ファミリアの精鋭たちが前衛を固め、その間隙を埋めるように**祈手(アンブラハンズ)**たちが配置される特殊陣形。

しかし、進軍が始まって間もなく、フィンたちは「協力」という言葉の裏にある、戦慄すべき光覚を突きつけられることになります。

「前方、大型種を含む原生生物の群れ! 数、五十以上!」

フィンの鋭い号令が飛ぶより早く、祈手たちの集団戦術が起動しました。彼らには一切の声の掛け合いがありません。精神隷属機(ゾアホリック)を介し、ボンドルドの意志という一つの演算系に接続された彼らは、まるで百の目と百の手を持つ単一の怪物のように動きました。

「……掃討開始」

カロンの低い呟きと共に、一般祈手たちの『灯火の杖(ルミナス・ケーン)』が一斉に火を噴きました。

個々の威力は抑えられていますが、その弾道はミリ単位で調整され、原生生物の眼球、関節、喉元といった急所を、機械的な正確さで穿っていきます。

「……なっ、なんだあいつら!? 連携ってレベルじゃねぇぞ!」

ベートが驚愕の声を上げました。隣で剣を振るうアイズも、祈手たちの動きに一切の「迷い」や「個の感情」が混じっていないことに、言いようのない寒気を覚えます。

さらに、シュラウドの祈手たちが『双牙の連鎖(デュアル・アンフィス)』を構え、群れの側面に躍り出ました。彼らは避雷針を使わず、自らのマインドのみを燃料として、光の網を紡ぐように原生生物を切り刻んでいきます。

「ティオナ、左だ!」

「わかってる、団長(フィン)! ……って、ええっ!?」

ティオナが大斬機(ウルガ)を叩き込もうとした瞬間、彼女の背後から放たれた『深淵の吐息(アビス・ブレス)』の蒼白な火炎が、獲物を一瞬で炭化させました。

「おやおや。ティオナさん、危ないですよ。……カロンさん、彼女の死角を完全にカバーしなさい。……我々のパートナーを、一滴の返り血で汚してはなりません」

ボンドルドの穏やかな声が響きます。祈手たちはロキ・ファミリアの団員たちを「守る」というよりは、彼らの攻撃範囲を計算し、その漏れを完璧に「処理」する部品として機能していました。

「……フィン。これ、おかしいわ」

リヴェリアが杖を握り直し、眉をひそめました。

「彼らの戦いには、冒険者が持つべき『生存本能』が欠けている。……ただ効率的に、目的を完遂するためだけに最適化されている。これはもはや、軍隊ですらないわ」

通常なら数時間を要する難所を、混成部隊は「作業」のように突破していきます。

祈手たちが一糸乱れぬ動作で弾倉を交換し、返り血一つ浴びぬまま次の標的へと銃口を向ける様を見て、ティオネは嫌悪感に身体を震わせました。

「……団長、こいつら……本当に人間なの? 命令一つで、あんなに迷いなく動けるなんて……」

「……ああ。彼らには『恐怖』がないんだ。ボンドルド卿……あんたの教育は、地上のそれとは随分と作法が違うようだね」

フィンの冷徹な問いかけに、ボンドルドはプルシュカの肩を抱き、仮面を深く明滅させました。

「おやおや。恐怖とは、探求を阻む最大のノイズですからね。……我々はただ、愛を持って一つの目的を共有しているに過ぎません。……ねえ、プルシュカ。パパの祈手たちは、とても頼もしいでしょう?」

「うん! パパ、みんな凄くかっこいいよ! フィンさんたちも、これなら全然怖くないよね!」

プルシュカの無邪気な賛辞が、血の匂いのしない戦場に響き渡ります。

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。