『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第54話

第37階層、「白き宮殿」の中央。地中から這い出した階層主(フロアボス)ウダイオスが、その巨大な骸骨の双眸に侵入者への憎悪を宿して咆哮しました。

かつて、ボンドルドが単独で行っていた深層調査において、当時の祈手たちはこの王に挑みました。しかし、当時はまだ改良前の旧式魔石銃器。射撃のたびに銃身が激しく排熱し、精神負荷(ノイズ)の処理が追いつかず、避雷針を次々と焼き切りながらの拙い防衛戦の末、撤退を余儀なくされました。ボンドルドにとって、それは「素材の脆弱さ」を痛感させられた記録でした。

「おやおや。再会ですね、ウダイオス。……かつて貴方に突きつけられた『課題』は、今、この形となって結実しましたよ。愛ですよ、それは」

後方で見守るロキ・ファミリアの面々は、初めて目にする「魔石銃器」という概念そのものに言葉を失っていました。

「……全ユニット、演算同期。掃討を開始します」

カロンの冷徹な号令と共に、一般祈手たちが**『灯火の杖(ルミナス・ケーン)』**を展開しました。

シュン、シュン、シュン!!

旧式であれば、一発ごとに祈手が苦悶に喘ぎ、銃声も濁っていたはずの連射。しかし、今は蓄電膜がすべての負荷を呑み込み、祈手たちは微動だにせず、鋭い発射音と共に光の弾幕でスパルトイの群れを粉砕していきます。

「……信じられません。あの連射速度、そして魔力の指向性……。詠唱も、魔法陣の展開すら必要としないというのですか」

リヴェリアが、その高潔な眉を深くひそめ、戦慄を隠せず杖を握り直しました。彼女の瞳は、祈手たちが放つ攻撃に「不安定な魔力の揺らぎ」が一切ないこと、そしてそれが機械的なまでに最適化された「効率的な滅び」であることを冷静に、しかし驚愕をもって見抜いていました。

「……フィン。あれはもはや、魔道具(マジックアイテム)の域を超えています。あのように安定した魔力の投射を、これほど連続して行える術式など、地上のいかなる魔導書(グリモア)にも記されてはいません」

ウダイオスが憤怒に震え、地中から無数の黒い棘(スパイク)を突き上げようとした瞬間、ボンドルドはプルシュカの肩を抱きながら、静かに指示を下しました。

「おやおや。その予備動作は、既に観測済みですよ。……カロンさん」

「了解。……『双頭の絶火・改(アンフィス・バスター)』、最大出力」

カロンが担いだ砲身から放たれたのは、一筋の、空間そのものを削り取るような蒼白の熱線。

ドォォォォン!!

一撃。

かつて祈手たちを退けた階層主の巨躯は、叫ぶ暇さえ与えられず、魔石ごと蒸発するように霧散していきました。

「……信じられない。あんな戦い方があるなんて」

アイズは、剣を一度も振るうことなく終わった「階層主戦」という異様な現実に、黄金の瞳を大きく揺らしました。

「パパ! すごい! みんな、とってもかっこよかったよ!」

プルシュカが歓喜の声を上げ、ボンドルドの外套に飛び込みます。ボンドルドは彼女の頭を愛おしげに撫で、アイズたちの驚愕を他所に、懃懃にフィンへと向き直りました。

「おやおや。……フィンさん。我々のリベンジ、お気に召していただけましたか? ……あの日の敗北という糧が、こうして素晴らしい黎明を連れてきてくれたのです」

ロキ・ファミリアが言葉を失う中、イドフロントの「家族」たちは、一滴の返り血も浴びぬまま、さらなる深淵へと歩みを再開しました。

 

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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