『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第55話

第51階層。不気味な湿気を孕んだ大気が、不意に鼻を突く強烈な酸の臭いへと変質しました。

通路の先、無数の節足が這いずる音と共に、壁や天井を埋め尽くす巨躯が現れます。かつてロキ・ファミリアを絶望の淵に叩き込み、一級武装すら無価値な鉄屑へと変えた忌まわしき「新種の芋虫(ヴィオラス)」の群れ。

「……ッ!? また、これ……!」

アイズのデスペレートを持つ手が、かつてないほど激しく震えました。ティオナもティオネも、あの時の「酸に溶かされ、なす術もなく貪られる恐怖」がフラッシュバックし、足が凍りついたように動きません。

「団長(フィン)……! 下がって、これ以上は……装備が、みんな溶かされちゃう……!」

ティオナの悲痛な叫びを、ボンドルドの穏やかな声が遮りました。

「おやおや。フィンさん、皆様。どうされました? これほどまでに素晴らしい『可能性の苗床』を前にして、立ち止まるなど勿体ない」

ボンドルドは一歩前へ出ると、歓喜に震えるように仮面を激しく明滅させました。

「見てなさい、プルシュカ。これですよ。物理を無効化し、すべてを溶かし、貪り、増殖する。……この溢れんばかりの『渇望』。……愛ですよ、それは」

「うん、パパ! なんだか元気いっぱいの虫さんたちだね!」

プルシュカの無垢な賛辞を合図に、ボンドルドは祈手(アンブラハンズ)たちへ、慈悲なき「作業」を命じました。

「……カロンさん。ロキ・ファミリアの皆様のトラウマを、私たちが『浄化』して差し上げましょう」

「了解。……『深淵の吐息(アビス・ブレス)』、全力開放。……後方より、『灯火の杖』で核を穿て」

祈手たちが動きました。

まず、最前列に並んだ祈手たちがノズルを全開にし、アンフィス・バエナの体液をベースにした特殊燃料を、芋虫の群れへと叩き込みました。

ゴォォォォォォ!!

通路を埋め尽くす蒼白の業火。芋虫たちが吐き出す酸は、その超高温によって空中で蒸発し、再生能力さえも焼き切られた肉体は、ボロボロと炭になって崩れ落ちていきます。

「……あ、ああ……」

アイズが呆然と立ち尽くします。自分たちが死力を尽くし、剣を溶かされながら戦った「絶望」が、祈手たちの手によって、ただの「燃えるゴミ」として処理されていく。

さらに、炎の隙間を縫うように、後方の祈手たちが『灯火の杖(ルミナス・ケーン)』で精密狙撃を敢行。酸が飛び散る暇さえ与えず、中枢のみをピンポイントで撃ち抜いていきます。

「おやおや。……ウダイオスの時以上に、皆様ご機嫌ですね。これほどまでに効率的に、深淵の不純物を排除できる。……素晴らしいことだと思いませんか?」

ボンドルドは、芋虫の死骸から立ち昇る、かつてロキ・ファミリアが死ぬほど恐れた酸の煙を、あえて深く吸い込むように立ち尽くしました。

「……ボンドルド、あんた……」

フィンがようやく声を絞り出しました。

「僕たちが……あれほど苦しんだ相手を、まるで見世物のように……」

「おやおや、誤解しないでください。……彼らは、我々の機能を証明するための最高の『礎』となってくれたのです。……さあ、道は開かれました。……皆様、先を急ぎましょう。……もっと深い場所には、もっと素晴らしい『愛』が待っているはずですからね」

ボンドルドは、呆然とする英雄たちの間を、鼻歌でも歌い出しそうな足取りで通り抜けていきました。

プルシュカはそのパパの背中を追いながら、ティオナの凍りついた手を優しく握りました。

「ティオナお姉ちゃん、大丈夫だよ! パパが全部やっつけてくれたから。……ね、行こう?」

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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