ロキ・ファミリアが苦い沈黙と共にイドフロントを去り
彼らが持ち帰ったのは、未到達領域の栄光ではなく、「自分たちの存在意義を機械的に無効化された」という、英雄の魂を蝕むような空虚さでした。
ボンドルドは、彼らを見送った防壁の端に立ち、深い闇の底を見つめていました。
「娯楽」を殺す、絶対的な効率
「……卿。ロキ・ファミリア、および随伴する神々の反応。……恐怖を上回る『忌避』、そして深刻な『退屈』の兆候を確認」
カロンが、収集したバイタルデータと精神波形の分析結果を報告しました。ボンドルドはその内容を聞きながら、仮面をゆっくりと、慈しむように明滅させます。
「おやおや。神々が危惧しているのは、自身の死ではなく、この深淵から『娯楽(ドラマ)』が消え去ること……。英雄が苦悩し、絶望し、それでもなお立ち上がるという美しき様式美が、我々の機能によって『量産化された処理』へと置き換わることへの喪失感ですか」
神々にとって、ダンジョンとは最高の劇場でした。
英雄が血を流し、挫折し、一握りの可能性に命を賭ける。その不安定な輝きこそが、彼らが天界から下りてきた理由そのものです。
しかし、ボンドルドが提示したのは、英雄の「個」の輝きを必要としない、**祈手(アンブラハンズ)**という名の均質化された暴力。酸を吐く芋虫さえも「汚物処理」として淡々と焼き払うその光景は、神々が愛した「冒険」という名の娯楽を、根底から殺害する行為に他なりませんでした。
「……彼らは英雄を『作りたい』。ですが、私は黎明を『迎えたい』。……愛の形が、少々食い違ってしまいましたね」
量産される殺戮の果てに
ボンドルドは、整然と並ぶ祈手たちの兵装——『灯火の杖』の冷たい銃身に触れました。
一人の英雄が万の敵を倒す奇跡ではなく、千の祈手が論理的な必然として万の敵を解体する。
そこには「逆転の感動」も「不屈の魂」も入り込む余地はありません。あるのはただ、計算された殺戮と、効率化された前進のみ。
「パパ。……神様たちは、パパの作ったお薬(行動食4号)や武器、嫌いなのかな?」
足元で、プルシュカが不安そうにパパの外套を握りました。
「いいえ、プルシュカ。嫌っているわけではありませんよ。……ただ、彼らにとっての愛は、まだ『個の輝き』という狭い檻の中に囚われているのです。……私たちはその先へ行く。……誰が欠けても、誰が代わっても、決して止まることのない、完璧な祈りの形を求めて」
ボンドルドは、イドフロントの暗がりに潜む無数の祈手たちを見渡しました。
彼らは皆、ボンドルドの写し身であり、一つの目的のために最適化された部品。英雄という名の不安定な「一点物」を嘲笑うかのように、量産された殺戮の機能が、今日も深淵を淡々と塗り潰していきます。
「カロンさん。……次回の調整では、神々の『退屈』というノイズを、より効率的な『恐怖』へと変換する術式を検討しましょう。……彼らが目を逸らしたくなるほどの機能美こそが、真の黎明を連れてくるのですから」
ボンドルドの仮面が、冷徹な理知と狂気的な慈愛を孕んで、深く、深く明滅しました。
イドフロントには、もう英雄の叫びも、神々の歓喜も必要ありませんでした。
この先の展開アンケート
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和解ダンジョンの黎明を目指す
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全面戦争突入
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両方かけ(作者死ぬ)