『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第58話

バベルの上層。重々しい扉の奥で開かれた神会。

そこには、かつての朗らかな娯楽の追求は一切なく、ただ世界の調和を脅かす不純物への、冷徹な排除の意志だけが渦巻いていた。

「……ありえへん。ほんまにありえへんわ。ウチの可愛いアイズたちの心を、あっこまで不気味に磨り潰しよってからに……!」

円卓を力任せに叩き割らんばかりの勢いで、ロキが怒声を上げた。帰還した団員たちが口にしたのは、敗北の痛みではない。自分たちの人生と誇りを効率という名の天秤で計られ、ただの無価値な部品だと断じられた空虚さだった。

「あのクソボケ仮面……! ダンジョンを、冒険をただの作業にしやがって。ウチの子供らをコケにした罪、絶対に許さへんで!」

「ええ。あんな退屈で無機質な殺戮機構、私の箱庭には不釣り合いだわ。底知れない狂気は嫌いじゃないけれど、そこには美しさの欠片もない」

フレイヤの冷たい一言が、会議の空気をさらに凍てつかせた。

彼が作る魔石銃器に、英雄の魂を震わせる逆転の輝きはない。ただ、計算に基づいた確実な処理があるだけ。そんな世界は、神々にとって死よりも耐え難い退屈だった。

その時、部屋の影から黒衣に身を包んだ魔術師、フェルズが音もなく姿を現した。

「ウラノス神の意志をお伝えします」

フェルズの嗄れた声が、神々の注目を集める。常に中立を保つギルドの主が、自ら代行者を差し向けること自体が異例中の異例だった。

「『あの男は英雄を殺したのではない。英雄という概念そのものを、量産品に変えて踏みにじった。あれはダンジョンと我々の営みに対する明確な脅威である。ギルドは、オラリオ全戦力による対象の排除を特例として承認する』……とのことです」

「ウラノスのお墨付きも出たってわけやな。今回ばっかりはウチも本気や。ロキ・ファミリア、フレイヤ・ファミリア、いやオラリオの全戦力を投入してでも、あの工房ごと、あいつを深淵の底に沈めたるわ!」

地上でボンドルド排除という名の全面戦争が決定されたその時、イドフロントではカロンが静かにその報告をボンドルドへと伝えていた。

「卿。地上の神々、および主要ファミリアの総動員を確認。ギルドも我々を人類の敵と認定し、総力戦を仕掛けてくる模様です」

「おやおや。光栄ですね。神々が自らの娯楽を守るために、これほどまでに必死になるとは。愛ですよ、それは」

ボンドルドは、不安げに外套を握るプルシュカの小さな手を優しく包み込みながら、イドフロントの暗闇に整然と立ち並ぶ数百の祈手たちを見渡した。

神々は奇跡を武器に攻め寄り、ボンドルドは機能を盾にそれを迎える。

「プルシュカ。もうすぐ、地上からたくさんのお客様が来ますよ。彼らが持つ古い英雄の夢が、我々の現実に触れた時……どのような素晴らしい黎明が生まれるのか。楽しみですね」

ボンドルドの仮面が、かつてないほど激しく、昏く明滅した。

地上の全てを敵に回してなお、その声には一切の動揺はなく、ただ次の実験への純粋な期待だけが満ちていた。

「カロンさん。四種の兵装をフル稼働させなさい。神々が愛した奇跡を、我々の論理で一つ残らず解体して差し上げましょう」

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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