『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第70話

魔法部隊が沈み、盾たる重装兵が焼かれ、治癒士たちが射殺された。

組織としての機能をズタズタに引き裂かれた連合軍に対し、ボンドルドは「仕上げ」と言わぬばかりに、残された主要メンバーの排除へと動いた。

「おやおや。皆様、まだその瞳に光を宿していらっしゃる。……素晴らしい。ならば、その輝きが最も強い瞬間を、私が直接受け止めましょう」

ボンドルドはオッタルの覇黒の剣を受け流すと同時、背中のラックから新しいカートリッジを装填した。

限界を超えた身体能力の再充填。漆黒の異形が、残された「英雄」たちへ向けて吸い込まれるような速度で踏み込む。

「――っ! ティオナ、下がれッ!!」

ティオネが悲鳴に近い警告を発した瞬間、ボンドルドの肘部から発振された『枢機へ還す光(スパラグモス)』が無音の閃光となった。

「え……?」

天真爛漫な笑顔を絶やさなかったティオナ・ヒリュテ。

彼女が自慢の双刃(ウルガ)を構え直すよりも早く、光の刃はその細い胴体を、防具ごと、そして彼女の誇りごと空間から『抉り取った』。

上半身と下半身が泣き別れになり、断面から鮮血が噴き出す暇すらなく消滅する。

「ティオナァァァァァッ!!」

叫び、狂乱して飛び出したティオネに対し、ボンドルドは静かに顔を向けた。

「『明星へ登る(ギャングウェイ)』」

仮面のスリットから放たれた無数の光の帯が、ティオネの四肢を正確に、かつ容赦なく貫き、縫い止めた。

激痛に言葉を失い、血の泡を吹いて膝を突くティオネ。ボンドルドはその横を通り過ぎざま、彼女の胸部へ『呪い針(シェイカー)』を零距離で撃ち込み、アマゾネスの誇り高き戦士を、凄惨な上昇負荷の拒絶反応の中に沈めた。

「アマゾネスの姉妹……その不屈の魂、確かに観測いたしました」

ボンドルドの仮面が、次に捉えたのはロキ・ファミリアの団長、フィン・ディムナだった。

彼はボロボロになりながらも、親指を噛み破り、最後の一兵になっても戦い抜こうと槍を構えていた。その高潔な騎士道精神。

「フィン、逃げろッ!!」

ガレスの叫びも虚しく、ボンドルドは『月に触れる(ファーカレス)』を射出し、フィンの四肢を瞬時に絡め取った。

身動きを封じられた「勇者」に対し、ボンドルドは愛おしげに歩み寄り、至近距離でその仮面を向けた。

「あなたの知性、あなたの采配。この数日間、実に多くの示唆を私に与えてくれました。……お礼を言いましょう」

仮面のスリットから至近距離で放たれた、『明星へ登る』の収束照射。

フィンの胸部が眩い光に呑み込まれ、オラリオの頭脳と称された小さな巨人は、その気高い意志を抱いたまま、光の中に霧散していった。

「団長……! ティオナ、ティオネ……!」

アイズは、親愛なる仲間たちが、ゴミを掃くような事務的な手際の前に、次々と「物」として処理されていく光景に立ち尽くした。

残されたのは、ボンドルドの正面で立ち塞がるオッタルと、戦意を失いかけたアイズ。そして、全滅した主要メンバーの骸だけだった。

「おやおや。……アイズさん。あなたはまだ、その美しさを維持していらっしゃる。……ですが、今日の実験データとしては、これで十分な有意差が得られました」

ボンドルドは満足げに仮面を明滅させ、オッタルの剣をスパラグモスで弾き返すと、ゆっくりと後退した。

「皆様の愛。そして、死の淵で見せた不屈の誇り。……多大なる感謝を。……カロンさん。これ以上の追撃は不要です。彼らがこの『夜明け』を持ち帰り、地上の皆様に伝えてくれるのを待ちましょう」

主要メンバーの過半数を凄惨に失い、継戦能力を完全に喪失した連合軍。

イドフロントの漆黒の主は、絶望の種を植え付けるという目的を完璧に完遂し、静かに深淵の闇へと消えていった。

 

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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