『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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都市のそう人口を把握してない(にわか)なので適当な数字許してクレメンス(´꒳`;)


第72話

迷宮都市オラリオ。かつて「英雄の帰還」を祝う熱狂に包まれていたはずの北メインストリートを支配していたのは、凍てつくような沈黙と、それを切り裂く憎悪の礫(つぶて)だった。

ボンドルドが提示した「停戦勧告」という名の敗北宣言を受け入れ、命からがら地上へと這い戻った連合軍。だが、その歩みは葬列よりも重く、悲痛なものだった。

【イドフロント攻略戦:連合軍損害報告書】

ギルドが算出し、都市全域に掲示された損失の数字は、オラリオの歴史上かつてない絶望を刻んでいた。

* 戦死者総数:4,822名

* 主要ファミリア幹部:リヴェリア、フィン、ティオナ、ティオネ、ベート、アレン(死亡または再起不能の重症による事実上の脱落)

* 治癒士部隊、重装歩兵部隊:ほぼ全滅

* 負傷者(呪い・欠損含む):7,150名

* 消費物資量:

* 高級ポーション・万能薬:都市備蓄の95%を消費

* 兵糧・燃料:一般市場流通分の80%を強制徴用

「……なんだ、これは」

ガレスに肩を貸され、かろうじて歩を進めるアイズの視界に飛び込んできたのは、痩せ細り、泥にまみれた市民たちの群れだった。

数ヶ月に及ぶ攻略戦を支えるため、ギルドは大ファミリアの意向を汲み、都市の全物資を強制徴用した。パンの価格は平時の50倍に跳ね上がり、燃料を奪われた市民の間では、この冬だけで二千人近い凍死者と餓死者が出ていた。

市民にとって、この戦いは「英雄の試練」などではなく、自分たちの命を削って大派閥の面子(プライド)を維持するための、ただの搾取に過ぎなかったのだ。

「……人殺しッ! うちの娘を、薬も与えずに死なせやがって!」

「勝てもしねえ戦いに俺たちの税金を注ぎ込みやがって! 責任を取れッ!」

バキッ、という音と共に、アイズの頬に投げつけられた石が当たり、細い血が流れる。

だが、剣姫は剣を抜かなかった。抜く気力すら、今の彼女には残っていなかった。

「……すまない。守れなくて、すまない……」

フィンもティオナもティオネも、あの漆黒の仮面の前に消えた。残されたガレスが、降り注ぐ罵声と唾棄を浴びながら、ただ沈痛に頭を下げる。

その横を、レベル7の威厳を失い、覇黒の剣をボロボロの布で包んだオッタルが、虚ろな瞳で通り過ぎていく。最強の武勇すら、空腹に喘ぐ市民の憎悪を抑える力を持たなかった。

「継戦派のファミリアを解体しろ!」

「英雄なんて、もういらねえんだよッ!」

暴動に近い怒号が渦巻く中、かつて羨望の眼差しを集めていた第一級冒険者たちは、今や「都市を飢えさせ、若者を無駄死にさせた疫病神」として、石を投げられる対象へと成り下がっていた。

深淵からの祝福

イドフロントの最深部。

ボンドルドは、監視カメラが捉えた地上の惨状を、プルシュカと共に眺めていた。

「おやおや。……素晴らしい。実に素晴らしいプロセスです」

ボンドルドは、石を投げられ、下を向いて歩くアイズたちの姿を、心底愛おしげに見つめていた。

「パパ……。あのお姉さんたち、泣いてるよ? せっかくお家に帰れたのに、みんなに嫌われちゃってる。どうして?」

プルシュカが不安げにボンドルドの袖を引く。

「プルシュカ。あれは嫌われているのではありません。彼らは今、ようやく『憧れ』という名の呪縛から解き放たれているのです。誰かに縋り、英雄という虚像に夢を見る……そんな幼い時代が、大きな犠牲を経て終わろうとしているのですよ」

ボンドルドはプルシュカの頭を優しく撫で、モニターに映る「地上の地獄」へ向けて、静かに両手を広げた。

「四千を超える尊い命。そして、都市を支えてきた多くの蓄え。これほどまでに膨大な献身があって初めて、人類は次のステージへの扉を叩くことができるのです。……愛ですよ、皆様。あなた方の流した血と、市民の抱いた憎悪こそが、新しき夜明けをもたらす礎となるのです」

ボンドルドの仮面が、かつてないほど深く、慈愛に満ちた光で明滅した。

迷宮都市オラリオの機能は腐り落ち、英雄の時代は終焉を迎えた。

漆黒の探求者は、閉ざされた門の向こう側で、ただ一人、満足げな吐息を漏らした。

 

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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