『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第74話

イドフロントの復興は、地上の混乱とは無縁の、冷徹なまでの機能美に満ちていた。

四千人の死体と引き換えに、連合軍が数層にわたって穿った傷跡は、ボンドルドという巨大な「群体」にとって、単なる新陳代謝のきっかけに過ぎなかった。

戦死した412名の祈手(アンブラハンズ)。

その遺体は、かつてリコたちが目撃した「焼却炉」へと事務的に運び込まれ、塵一つ残さず処理された。

『精神隷属機(ゾアホリック)』によって共有されていた彼らの意識は、肉体の死と共に一度ボンドルドという「根幹」へと還り、残された祈手たちの中で再統合される。

「……意識の再同期、完了。欠損した個体分のリソースを既存ユニットへ再配分。……全個体、機能維持に問題なし」

カロンの報告通り、412名の喪失は、ボンドルドという意識の総体において、わずか数パーセントのノイズを生んだに過ぎない。生き残った祈手たちは、損傷した外壁を遺物で溶接し、破壊された機材を新たな予備パーツと交換していく。

わずか数日で、イドフロントは連合軍が攻め入る前よりも強固な、淀みない「完成された箱」へと復旧を遂げた。

暴徒化した市民に囲まれ、窓ガラスが尽く叩き割られたギルド本部。

ロイマンをはじめとする職員たちが、地下の安全圏に逃げ込もうとしていたその時、地上のメインホールを支配していた怒号が、突如として「静寂」へと変わった。

市民たちの波が、左右に割れる。

そこに現れたのは、煤けた軍勢でも、血塗られた英雄でもなかった。

漆黒の装束を纏い、背後に十数人の祈手を従えた、深淵の主。

「……おやおや。これは、いささか賑やかすぎますね」

ボンドルドは、割れたガラスの破片を踏みしめ、悠然とギルドのロビーへと足を踏み入れた。

彼を取り囲んでいた暴徒たちは、彼が手に持っていた「追加の救援物資(行動食4号)」と、その圧倒的な威圧感の前に、怒りよりも先に本能的な「依存」と「恐怖」で硬直していた。

「ぼ、ボンドルド……ッ! 貴様、何のつもりだ!」

ロイマンが護衛の冒険者の背後に隠れながら、震える声で叫ぶ。

「ロイマンさん。……皆様の管理能力が、少々限界を迎えているようにお見受けしました。このままでは、せっかくの『夜明け』が、ただの混沌(カオス)に飲み込まれてしまいます」

ボンドルドは、混乱の極致にあるギルドのカウンターへと歩み寄り、真っ白な封筒――イドフロントによる「都市統治支援計画書」を、音もなく置いた。

「英雄は死に、ギルドの権威は地に落ちた。……ならば、これからは『機能』がこの街を導くべきです。私は、皆様を助けに来たのですよ」

ボンドルドの仮面が、かつてないほど穏やかに、そして深く明滅した。

それは、神々の支配の終焉を告げる死刑宣告であり、同時に、飢えと絶望に苦しむ市民にとっては、唯一無二の「救済の光」に見えた。

かつて迷宮を管理していたギルド本庁舎は今、漆黒の探求者がその玉座へと手をかける、新たな黎明の舞台へと変貌していた。

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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