『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第76話

ボンドルドによるギルドの事実上の接収と、祈手(アンブラハンズ)による都市管理の開始。それは、かつて「英雄」として謳われた冒険者たちの矜持を、修復不可能なまでに叩き潰すものであった。

だが、全ての火が消えたわけではない。

ボンドルドの差し出した「依存」という名の救済を拒絶し、誇りを守るために地獄の底へと足を踏み入れた者たちがいた。

【英雄の堕落:新生「闇派閥(イヴィルス)」】

「……神の慈悲も、ギルドの秩序も死んだ。ならば、我々は悪としてこの街を焼くのみだ」

ロキを筆頭とした交戦派の神々は、表舞台から姿を消し、迷宮都市の「影」へと潜った。

かつて闇派閥が拠点としていた地下の下水道や廃棄区画。そこには、酒に溺れ、憎悪に瞳を濁らせたロキと、彼女に付き従う生き残りの眷属たちが集っていた。

彼らはもはや「英雄」ではない。

ボンドルドへの復讐という唯一の目的のために、かつて自分たちが守ってきた市民を盾にし、禁忌とされる呪道具や、モンスターの魔石を直接肉体に埋め込む「強化」に手を染めていた。

「ロキ様……。これなら、あの鉄クズに傷を負わせられますか?」

変わり果てた姿の冒険者が、魔石の浸食で黒ずんだ腕を差し出す。ロキは震える手でその腕を撫で、濁った笑みを浮かべた。

「ああ……。ええよ。綺麗や。……これで、ウチの子たちの仇を討てるなら、神の座なんていらんわ」

かつての快活な知性は消え失せ、執念という毒に冒された彼女たちは、イドフロントの巡回を奇襲し、救援物資の集積所を破壊するゲリラ戦へと身を投じていった。

【市街地戦:黎明と暗黒】

夜のオラリオ。

かつて魔石灯が美しく照らしていた通りは、今や祈手による検問と、闇派閥(イヴィルス)化した冒険者たちのゲリラ活動によって、血生臭い狩り場へと変貌していた。

「ボンドルドの犬共め! 死ねッ!!」

暗がりの屋上から、毒を塗った矢と火炎瓶が祈手の隊列へと降り注ぐ。

祈手たちは一切の動揺を見せず、即座に『灯火の杖』による正確な反撃を開始した。

「……反抗ユニットの検知を確認。……排除レベル3。周囲の一般市民への副次被害は許容範囲と設定。殲滅を開始します」

カロンの無機質な号令。

祈手たちは、ゲリラが潜伏している民家ごと『灯火の杖』の熱線で焼き払い、逃げ惑う市民の足元を『呪い針』で縫い止めていく。

ゲリラたちは、かつての仲間であったはずの市民の悲鳴を無視し、その混乱を突いてボンドルドの首を狙い、祈手たちは市民を単なる「遮蔽物」として処理する。

「おやおや。……素晴らしい。復讐という愛に駆られ、自ら闇へと堕ちるその選択。これほどまでに劇的な精神の変容を、間近で観測できるとは」

ボンドルドは、モニター越しに火の海となるオラリオの街を眺め、恍惚とした吐息を漏らした。

「パパ……。あのお姉さんたち、また戦ってる。自分たちの街を燃やしてまで、パパを倒したいの?」

「プルシュカ。あれは破壊ではありません。彼らは今、己の魂を燃やして、新しい自分を形作っているのですよ。……闇を知らぬ光に、真の夜明けは訪れませんからね」

かつての「英雄の箱庭」は今、復讐という名の狂気に染まった闇派閥と、それを冷徹に処理し、実験材料として消費する黎明卿との、凄惨な共食いの場と化していた。

闇派閥化したロキたちの執念が、都市をさらなる混沌へ導いています。

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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