『神々の箱庭に、黎明の光を』   作:もいもい130

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第77話

イドフロントから提供された救援物資と「特殊薬」は、オラリオという巨大な生命体の細胞を、内側から静かに、そして劇的に書き換えていった。

そこに悪意による扇動はありません。ただ、飢えから救われ、多幸感に満たされた市民たちが、自らの生存を支える「機能(ボンドルド)」を絶対的な正解として受け入れた。その結果、彼らの価値観はボンドルドの視座へと、自然に歩み寄ったのです。

下水道の最奥。腐臭が漂う闇の中で、酒の臭いに塗れたロキの前に、女神フレイヤが音もなく降り立った。

「……あら。随分と無様な姿ね、ロキ」

「フレイヤ……。あんたも、あの鉄クズに『美』を剥がされて、ここまで落ちてきたんか」

ロキは濁った瞳でフレイヤを見上げた。フレイヤの傍らには、魔石の浸食に耐え、理性を繋ぎ止めるオッタルが、折れぬ石柱のように立ち尽くしている。

「いいえ。私はただ、あの男が語る『愛』の先にあるものを見届けたいだけよ。……子供たちの命を、自らの肉体を削り、闇に堕ちてまで復讐を誓う。これほどまでに激しく、美しい愛が他にあるかしら?」

フレイヤは、自らの神性を汚すことを厭わず、ロキの震える手を握った。二人の神は、ボンドルドという深淵に対し、それぞれの「愛」を証明するための共戦を誓ったのです。

しかし、彼女たちが闇から這い上がろうとした時、それを拒んだのは祈手(アンブラハンズ)ではなく、彼らがかつて愛し、守ってきたはずの市民たちでした。

「ああ、いけませんよ。……皆様、まだそんなに悲しそうな顔をして」

路地裏で、ボンドルドの提供した「行動食4号」を口にする市民たちが、穏やかな、どこか恍惚とした表情で、潜伏していた元冒険者たちを囲んだ。

「パパ(ボンドルド)が仰っていました。過去のこだわりは、皆様を縛る鎖でしかない、と。……さあ、その重い武器を捨てて、私たちと一緒に黎明を迎えましょう」

市民たちは、迷いなく石を投げ、棍棒を振るう。それは憎しみによる暴力ではなく、迷える英雄たちを「正しい道」へ導こうとする、彼らなりの真摯な**「救済」**でした。ボンドルドの思想に共鳴した一部の冒険者たちもまた、かつての仲間に剣を向ける際、その瞳には一点の曇りもありませんでした。

「すまないな。……だが、これが今の私たちの『最適』なんだ」

イドフロントの最深部。ボンドルドは、市民がかつての英雄を「教育」し、黎明の光の中へ引きずり込もうとする映像を、慈しむように見守っていました。

「おやおや。……素晴らしい。市民の皆様が、自らの足で、自らの幸福のために動き始めましたか。……プルシュカ。これですよ。誰かに与えられる英雄譚ではなく、自らが機能の一部として歩む喜び。……実に見事な変容です」

ボンドルドは、市民たちに追われ、血を流しながらも執念を燃やすロキとフレイヤの姿を、心底愛おしげに観測していました。

「パパ……。あのお姉さんたち、みんなに追いかけられて、とっても悲しそう。パパ、あのお姉さんたちも、助けてあげられるの?」

「ええ、プルシュカ。彼女たちは今、自分たちでも気づかないうちに、この街に『不屈』という名の尊い価値を与えてくれているのですよ。……闇を払うのではなく、闇をも愛し、糧とする。……それこそが、私たちが目指す真の夜明けなのですから」

漆黒の探求者は、復讐に燃える女神たちと、彼女たちを「過去の遺物」として包み込もうとする市民たちの営みを、至福の喜びと共に記録し続けていた。

ボンドルドは市民の暴走を「素晴らしい自立」として祝福し、神々の復讐を「尊い愛の形」として称賛しています。

この先の展開アンケート

  • 和解ダンジョンの黎明を目指す
  • 全面戦争突入
  • 両方かけ(作者死ぬ)
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