憑依者しかいないゲマトリアがキヴォトスの破滅を回避しようとする話   作:シャンタン

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また、感想・評価・ここすき・誤字報告のご支援いただきありがとうございます。

今さらではありますが、今回は特に独自展開が強いです。原作沿いを期待されている方は閲覧しないことをオススメします。これ以降の話も同様になるため、予めご了承ください。


黒服って契約には誠実なイメージあるよね でもロリコンなんだよな(風評被害)

「では、マダムの報告は以上ということで…」

 

「黒服!!何を勝手に終わらせようとしているのです!」

 

「落ち着くがいい、マダムよ。少なくともその姿となったことによる弊害はないであろう。むしろ、普段の行動が実を結んだのだ。誇るがいい」

 

「そういうこった」

 

マダムの訴えは無情にも、黒服に流されそうになっている。マエストロに至っては説得フェーズに入ったようだ。デカルコマニーは話を終わりたそうな雰囲気を出しており、誰も真面目に取り合っていない。

 

「他人事だからと好き放題いってくれますね?!」

 

「実際に他人事ですから」

 

「やかましいですよゴルコンダ!!あなたを机の上でうつ伏せにしたって良いのですよ!!」

 

最後の希望が潰えたベアトリーチェが激昂する。ゴルコンダにとってあまりにも惨い仕打ちである。

 

「ですが、どうにも出来ないのでは?強制しているならまだしも、自主的な行動なのでしょう?数年前に"怖がって近づいてくれない"と嘆いていた時よりマシでしょう」

 

「それはそうですが…。

 いえ、貴方達に期待した私がバカでした。最初から私だけで解決すれば良かったのです」

 

哀れベアトリーチェ。世界線が変わっても味方はおらず、味方を騙る観測者(愉悦部)しかいない。

 

「では、マダムにも納得いただけたようなので、解散といたしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を言っているのです?ゴルコンダの相談が残っているでしょう。せっかくならば今すれば良いでしょうに」

 

意外にもマダムからの正論が入る。指摘を受けた黒服はバツの悪そうな顔をしている。忘れていたようだ。マエストロも忘れてしまっていたようで、双頭ともゴルコンダから逸らしている。

 

「いえ、また後日にいたします。黒服もマエストロも、マダムに触発されて今にも研究に戻りたそうにしているので。何よりコンセプトがあるだけで、今すぐ出来ることはないでしょうから」

 

「そういうこった!!!」

 

ゴルコンダ、咄嗟の気遣い。しかし、言ってはいないが自身も研究に戻りたそうにしている。作業者であるデカルコマニーも心なしかソワソワしている。

 

「すまない、ゴルコンダ。しかし、今ならば太古の教義(ヒエロニムス)の糸口がつかめそうなのだ。相談については、また連絡を寄越してほしい。予定は空けておこう」

 

「ククッ。マダムが崇高への道を一歩進まれたのです。私も負けていられないものでして、申し訳ございません。私は都合が合えば参加することにします。よっぽどの事がなければ参加できるでしょう。忙しくなるため、確約はできませんが…」

 

どうやらベアトリーチェ以外の全員に研究欲が満ち溢れているようである。マエストロはカタカタと身体を鳴らしている。黒服は亀裂から溢れでる光が強くなっている。

 

「いえ、先にマエストロと構想を組み立てておきます。黒服が忙しい時期であることを失念しておりました」

 

「クックック、ご配慮痛み入ります」

 

「そういえば、もう始まるのですね。まあ、黒服なら問題ないでしょう。何せ、10年近く関わり続けているのです。良いかどうかは知りませんが、執念だけは見上げたものでしょう」

 

「あぁ、原作まで2年。悲劇の一つが始まるのであったな」

 

そう、原作開始まで2年。原作において、"先生"が来た時には手遅れであった事例の一つ。

 

「えぇ、えぇ!原作開始まで2年!!ようやくこの時が来たのです!!暁のホルス(小鳥遊ホシノ)がアビドス高校へと入学するのです!!そして…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梔子ユメが亡くなった年となります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の名残をまだわずかに含んだ朝の空は、群青から薄い金色へと溶けはじめている。地平線の向こうから差し込む光は柔らかく、砂丘の稜線をなぞるように伸び、長い影を描く。砂は一粒一粒が細かく、冷えた空気をまとっているが、陽が昇るにつれて次第にぬくもりを帯びていく。

 

「あっつい…」

 

遠くには、風化した建造物の残骸が点在している。かつての文明の痕跡か、あるいは住宅の名残か。崩れたコンクリートと錆びた鉄骨が、砂に半ば埋もれながら静かに立ち尽くす。そこに吹き抜ける風は乾いているが、荒々しさはなく、朝の時間帯特有の穏やかさを含んでいる。

 

「まったく、夜更かしなんてするもんじゃないね」

 

足跡は、夜のうちについたものがいくつか。まだ風に消されきっていないそれらは、誰かがこの場所を通り、また去っていった証だ。やがて日差しが強くなれば、跡も、冷気も、すべて均されてしまうだろう。空気は澄み、遠くまでよく見渡せる。

淡い光の中、砂丘の波紋は静かな海のように広がり、世界がまだ目覚めきっていないことを感じさせる。戦いの舞台となることもあるその地も、朝のひとときだけは、ただ広大で、ただ美しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンク色の髪をした少女が廊下を歩いている。少女は小柄な体格ではあるが、纏う雰囲気が余りにも鋭利である。

コツンコツンと鳴った足音が砂に吸い込まれていき、やがて一つの扉の前で立ち止まる。

少女が数秒立ち止まると、一呼吸してから扉を開ける。

 

 

 

 

 

「おはようござ「ホシノちゃ~~~ん!!!おはよ~!!!」

ユメ先輩。離れてください」

 

緑の長髪をした、体格の良い少女が小柄な少女に挨拶をしながら抱きつきに行く。体格差を考えると倒れてもおかしくなさそうなぐらい体重をかけにいっているが、抱き着かれた少女はびくともしていない。そんな微笑ましい、アビドス高校のひと時である。

 

「ユメ先輩。いつも言っている通り抱き着かないでください。暑苦しいです」

 

「ひぃん、ホシノちゃんが冷たいよ~」

 

アビドス高校2年、梔子ユメ。原作にて脱水症状の末に衰弱死しており、"先生"に助けられる可能性がなかった生徒である。

アビドス高校1年、小鳥遊ホシノ。原作にてキヴォトス最高の神秘と黒服によって呼称され、"先生"が来る前から曇らせられている生徒である。

透き通った世界の話かこれ?

 

「そうだ。ホシノちゃん。今日もあの人来てくれるって!!」

 

「あの人?あぁ、アイツのことですか…」

 

 

 

 

 

「クックック。アイツとは心外ですねぇ。せっかく"黒服"と名付けてくださったのです。ぜひ、黒服と呼んでください。暁のホルス」

 

「うわでた」

 

何でお前がここにいるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何しに来たんだ。黒服」

 

「クックック。そう邪険にしないでください。暁のホルス…いえ、小鳥遊ホシノさん。こうして手土産も持ってきたのですから」

 

「わ~!いつもありがとう!黒服のおじさん!」

 

歓迎していない雰囲気をまったく隠さないホシノと、ホシノの反応も含めて楽しんでいる黒服。手に持った箱を掲げながら薄ら笑いをしている。

無邪気なユメがいなければ、一触即発の雰囲気であったろう。

 

「ねぇ!早速開けていい!?」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

「ユメ先輩!!もう少し警戒してください!!」

 

余りにも無邪気すぎんか?親戚のおじさんへの対応じゃん。

 

「わ~!大きなホールケーキだ!!お皿とかとってこないと!紅茶とかあったかなぁ~」

 

ユメがケーキをとるための皿などを持ってこようとして教室を出る。

 

「ユメ先輩!一人にしないでください!!コイツと2人は嫌です!!」

 

「クックック。ずいぶんと嫌われたものですねぇ」

 

哀れ黒服。ユメには懐かれているようだが、目当ての人物(小鳥遊ホシノ)からは、思春期の娘のパパぐらい拒絶されている。

手土産の大きなホールケーキにもあまり反応がない。埋蔵金の地図の方が嬉しいと思うよ。

 

「はぁ…仕方ありません。要件を済ませてさっさと帰ってください」

 

どうやら、ユメに期待するのを諦めて、黒服と対峙することを選んだようである。

 

「えぇ、歓迎されていないみたいですし、用件だけ済ませてしまいましょう。暁のホルス…いえ、小鳥遊ホシノさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたに決して拒めないであろう提案を一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのとってつけたようなセリフを今すぐ止めろ。黒服。私の呼び方を変える所から何回も聞いてうんざりしてるんだ」

 

「クックック。これは手厳しい。しかし、それならば何を言いたいか、もうお分かりでしょう」

 

「…私の体が欲しいんでしょ」

 

「えぇ、よくお分かりで」

 

ホシノが身構える。重心をわずかに低くし、何時でも戦闘が開始できるようにしている。いや、ずっと警戒はしていたのだろう。ただ、黒服にも分かりやすいように最終通告として身構えただけで。

 

「アビドスが抱えている借金は、貴女方にはとても払いきれるものではない。別に命まで奪うわけではないのです。それを考えれば、悪い提案ではないでしょう」

 

穏やかな声。だが温度はない。教室の空気が、目に見えない糸で張り詰めていく。

黒服は静かに手袋を整えた。革の擦れる小さな音が、やけに大きく響く。

 

ホシノは小さく息を吐いた。

 

「何度も言っているはずです。信用できません」

 

彼女の指先が、制服の下に隠された武器の位置を確かめる。

視線は変わらない。――だが、焦点は鋭く黒服の喉元を捉えている。

 

黒服もまた、一歩も引かない。

窓から差し込む光で影となり、亀裂から漏れ出る光が強調されている。

 

沈黙。

 

廊下の遠くで、何かが割れるような音が響いては消えた。

その一瞬、互いの間合いが測られる。

 

机一つ分の距離。

飛び込めば届く。

だが、踏み込んだ瞬間に何が起こるかは――どちらも理解している。

 

「…帰ってくれませんか?土に」

 

鋭い声。揺るぎない拒絶を隠そうともしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね~~!!2人とも~~!!お皿割っちゃって1人分足りないよぉ~~!!!」

 

 

 

静寂の中、突如として廊下をバタバタと走り出す音が聞こえ、ひぃんと泣きながら(鳴きながら)ユメが教室へと入ってくる。

その瞬間、張り詰めていた空気がほどけていく。

 

 

「今回はユメ先輩に免じて無事に帰してあげます」

 

「クックック。それでは、今日も無事に帰らせていただきましょうか」

 

黒服がユメに自分の分はいらない旨を伝え、ホシノの横を通り過ぎていく。

ゆっくり、ゆっくりと深いため息をつき、ホシノもユメのところへ向かう。これ以上、皿を割られてはたまらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~~ケーキ美味しかったね!!ホシノちゃん!!」

 

「そんなことありません。アイツが持ってきたという事実だけでマイナスです」

 

黒服はどうやら帰ったようだ。

 

「またまた~、少しだけ頬が緩んでたよ」

 

どうやら黒服がいる間だけ敵意むき出しなわけではないようだ。どうしてここまで嫌われているのか。

 

「それで、今回もされたの?あれ」

 

「えぇ、会うたびに懲りずにされてますよ」

 

それは、黒服の説明不足が招いた結果である。

 

「ひぃん。凄い熱意だよねぇ。初めて聞いたとき、びっくりしちゃったもん!!」

 

「やめてください。ユメ先輩。私は未だに被害にあっているんです」

 

原作では当たり前であった、小鳥遊ホシノ(キヴォトス最高の神秘)が目的であると伝わっていると勘違いしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの独特なプロポーズ!!」

 

 

哀れ黒服。前提を共有していない為に、女子高生と結婚したいと勘違いされている。






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