憑依者しかいないゲマトリアがキヴォトスの破滅を回避しようとする話   作:シャンタン

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ゴルコンダとデカルコマニーのセットって、ゲマトリアの中で一番怖くない? 夜中に遭遇したら気絶すると思う

とある不審者が、ロリコンという不審者にランクアップしているころ。ゴルコンダとデカルコマニーにも受難が待ち受けていた。

 

「…優美なものです。この感動を動きとして表現できないことを惜しく思います」

 

「どういうこった」

 

「分かっています。ただの現実逃避です。…はぁ、どうしてこんなところにいるのでしょうか…」

 

 

幾何学模様を描くように整えられた花壇と、柔らかな曲線を描く鉄製のテーブルセットが並び、淡いクリーム色のパラソルが穏やかな日差しを和らげている。磨き上げられたティーカップは陽光を受けて小さな星のように瞬き、ポットから立ちのぼる湯気は、かすかに甘い茶葉の香りを風に溶かしていく。

 

足元のタイルは温もりを含んだ白。そこに落ちる影は、揺れる木々の葉とレースのように絡み合い、まるで時間そのものがゆったりと編み込まれているかのようだ。規律正しい校内の鐘の音がしている。どこか気品を帯びた空気が、この場所をただの休憩所ではなく、“語らいの舞台”へと昇華させている。

ここに頭のない不審者と、喋る人物画がなければ完璧であった。

 

「すみません。お待たせしてしまいましたね。Mr.ゴルコンダ、Mr.デカルコマニー。この時期には新入生の対応に追われておりまして」

 

「いえ、構いませんよ。フィリウスの君。景色を楽しませてもらっておりました」

 

「それは良かった。トリニティが誇る庭園です。こう言うと嫌味になってしまいますが、誰でも見れるというわけではないのですよ?」

 

テラスの中央には、気品と威厳を感じさせる席が設えられている。そこは単なる座席ではなく、意志と理想が交差する場所。紅茶の香りに包まれながら交わされる会話は柔らかく、それでいて鋭い。微笑みの裏に宿る覚悟、穏やかな仕草の奥に秘められた緊張感――そのすべてが、この空間に溶け込み、静かに張り詰めた調和を生み出している。

 

ティーパーティーテラスは、優雅さと緊張が共存する場所だ。甘い菓子の香りと、冷静な思索。穏やかな陽光と、決断の影。ここでは、ひとつのティーカップが傾くたびに、物語が静かに動き出す。

 

「えぇ、ここに招かれたこと、身に余る光栄ですね」

 

そう、ゴルコンダとデカルコマニーは最大の受難の中にいる。原作にいない生徒と対話して、どうにか影響を極限まで少なくしなければならないのだ。しかも相手は、ティーパーティのフィリウス派ホスト。用件によっては無事に帰れない。

 

「ふふ、困らせてしまいましたね。Mr.デカルコマニーも楽しんでいただけましたか?」

 

「そういうこった!」

 

「それはなにより」

 

何がなによりなんですか?

 

「このテラスをもう少し見ていたい気持ちもありますが、長居してしまっても迷惑でしょう。本日の用件をお伺いしてもよろしいですか?」

 

「あら、話しすぎてしまいましたね。しかし、用件というほどの事ではないのです。ただ、お礼をさせていただきたく。本来であればこちらから出向くべきなのですが、所在地が分からず…無礼な真似をしてしまい申し訳ありません」

 

静かに礼をする少女。その頭は決して軽くはない。ないはずの胃痛がするゴルコンダ。気配を出来るだけ消そうとするデカルコマニー。

 

「ご配慮痛み入ります。しかし、生憎と見当が付かず、大変無礼ではあるのですが、詳細をお伺いしても?」

 

実は、ゲマトリア内で一番動いているのがゴルコンダとデカルコマニーである。記号とテクストのために三千里。"伝承"という情報を入手してはレッドウィンターに、"怪談"という情報を入手しては百鬼夜行に出向いている。幾分か前からトリニティへと赴いた理由も、古書館に来館するためである。もちろん足はそういうこった(デカルコマニー)

様々な土地を巡りお節介を焼いていく不審者であった。

 

「えぇ、ご存知ないのも無理はありません。ただ、貴方方にとって当然とばかりに行っていた事象によって、ただ救われただけなのですから」

 

「どういうこった?」

 

あまりにも見当が付かず、思わず声が出るデカルコマニー。

それを受けたホストはティーカップに口を着ける。その動作は一種の芸術のようでもあり、覚悟を決めるためのルーティンでもあるようだった。

 

「これは、愚かな小娘の話です。何のために地位を求めたのかも忘れ、盲目となり、意味を取り零した···そんな咎人の話です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咎人には、親友がおりました。相手がどう思っていたか、今となっては定かではありませんが…

 少なくとも、咎人が親友だと思っていた人物がおりました」

 

…あなたのためだった。

 

「咎人とは幼い頃から一緒で、輪から外れた者に寄り添い···いつの間にか心を救ってしまう···そんな親友がいたのです。

 しかし、幼児にとって輪とは絶対です。ましてやここはトリニティ。様々な被害を受けていました」

 

あなたが健やかでいられるように。

あの不器用な笑顔が、陰口や策謀に曇らないように。

だから私は、彼女の笑顔を守れるものになろうと決めた。

誰よりも高い場所に立てば、あなたを守れると思った。権限と発言力があれば、どんな理不尽も遠ざけられると、そう信じていた。

 

「故に、咎人は力を求めました」

 

でも現実は違った。

 

「戦闘技術を磨き、政争に勝利し、親友に恥じぬようにという志を忘れ、怪物と成り果てるまで…」

 

 

ホストの座を巡る政争は、紅茶の香りよりも濃い毒を孕んでいた。微笑みの裏に刃があり、賛辞の言葉には値踏みが混じる。

私はそれに抗うために、より冷静に、より計算高くなった。

…そして、親友(原点)を“弱点”と呼ばれる存在にしてしまった。

 

『彼女がいる限り、あなたは揺らぐ』

 

そう囁かれたとき、私は笑って否定できなかった。

事実だったから。

 

「咎人に多少の才覚があったことも原因だったのでしょう。権力に目が眩み、盲目になっていたことに気付かなかったのです」

 

あなたの名を出されるたび、私の心は僅かに揺れた。

だから私は距離を置いた。

守るために、あえて近づかないという愚かな選択をした。

 

「現実に向き合っているようで、現実逃避をしていたのです。だから罰が下りました」

 

 

あなたからのあのメッセージ。

あのとき、どうして私は気づかなかったのだろう。

いつもより短い言葉。

いつもより遅い返信。

あれがSOSだったなんて、今なら痛いほどわかるのに。

 

私はその夜、票読みと根回しに追われていた。

“あなたのため”に必要な準備だと、自分に言い訳をしながら。

 

「咎人ではなく親友に刃が向かうという形で」

 

気づいたときには、すべてが終わっていた。

不正の濡れ衣。

用意周到な証拠。

そして、退学処分。

 

あなたは最後まで、私の名を出さなかったと聞いた。

『迷惑をかけたくなかった』と。

 

…迷惑?

あなたの存在が、私の希望だったというのに。

それを弱点と呼んだのは、他でもない私自身だったというのに。

 

ティーカップを持つ指先が震える。

あの日と同じ、白磁のカップ。

中の紅茶は完璧な色をしている。

でも、こんなにも苦い。

 

「罪を犯しながら、罰も受けず、のうのうと生きている咎人は…」

 

守りたかった。

健やかでいてほしかった。

それだけだったのに。

 

私は高みに立つことを選び、あなたの隣に立つことを捨てた。

一番大事な(親友)を取りこぼしていることに気づかずに。

 

「トリニティにとって退学とは、家から見捨てられることを意味します。残った権力を使い、捜索しても行方が分からず、贖えない罪を背負う運命でした…」

 

 

 

 

 

 

「しかし!しかし!咎人は贖う機会を得たのです!!様々な地にて現れる存在に彼女(親友)は救われていた!!」

 

何とか生きている旨と『噂は本当であった』と手紙が届いた日を忘れられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ございません。声を荒げてしまい···はしたない真似を…」

 

「いえ、仕方ないことでしょう。学生の身で降りかかるには重すぎる仕打ちです」

 

トリニティ総合学園。学生が統治するキヴォトスにおいて政争が生業であり、優しいだけでは生き残れない土地である。これだからトリニティ仕草なんて言葉ができるんだ。

 

「ですが…一つだけ言える事があるとするのならば、その咎人に罪はないでしょう。故に咎人とは言えないでしょうね」

 

「そういうこった!!」

 

ゴルコンダが何とか感想を捻りだす。正直覚えがなさ過ぎて帰りたくなっていた。デカルコマニーに必死に念を送っているが、全く通じていない。

 

「ありがとう…ありがとうございます…」

 

咎人(少女)は泣いている。救われたような顔をして泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼いたします。今、お時間よろしいでしょうか」

 

「えぇ、問題ありませんよ。お客人は急用を思い出したとのことで、帰られましたから」

 

一人の少女がテラスへと入ってくる。揺れることのない背筋。乱れひとつない制服。その瞳は湖面のように澄みながら、底の見えない深さを湛えている。

桐藤ナギサ。原作にてフィリウス派のホストを務め、疑心暗鬼に陥り、友情を欺瞞へと貶めてしまった少女である。現在は派閥闘争に明け暮れている。

 

「珍しいですね。一年生の貴女が声を掛けて来るとは。貴方はあまりそういったことはしないでしょうに」

 

「私も失礼を承知しております。しかしながら、先輩方は震えてしまい、同期も泣いてしまいまして」

 

「全く、あの子達は…貸しを作れたと思っておきなさい。しっかり精算するように」

 

「えぇ、言われずとも」

 

少女が有望な後輩にアドバイスを送る。その存在感だけで気後れしてしまい、ナギサは失言をしないように精一杯であった。

 

「それで、用件は何でしょう」

 

「いえ、ただ質問を。本日の客人に古書館の来館許可をしたというのは本当ですか?」

 

「えぇ、事実です。彼らにはとある恩がありまして、もともと古書館に行くために、トリニティへ来訪している様子でしたから」

 

記号とテクストの研究を諦めたゴルコンダとデカルコマニーが来ることはないだろう。余りにも気まず過ぎる。

 

「私もこんなことは聞きたくないのですが…」

 

「みなまで言わずとも結構です。私の耳にも入っておりますので」

 

トリニティは政争が日常な組織である。そんな組織が得体の知れない人物を放置するであろうか。否、まず優位に立つためにあらゆる情報をかき集める。

 

「レッドウィンター、百鬼夜行。そして、このトリニティ。それぞれの自治区の文化を調べる異形の大人」

 

そして、トリニティはその情報を掴んだ。それぞれの自治区でどういった文化を調べていたか、報告してしまったのだ。

 

「そして、それぞれの自治区にて、倒れているヘルメット団員やスケバン、明日のない者(退学者)の前に現れる…」

 

特に、百鬼夜行の文化は致命的であった。

 

「その人物は世闇の中で現れる。倒れている者がどういった人物か問いかけながら」

 

噂に尾ひれ背びれがつき、不気味な姿形と相まって、自治区を超えて噂話が出来上がる。

 

「罪なき者には救いの手を差し伸べて…」

 

ゴルコンダとデカルコマニー、両者が共に睡眠を必要とせず、神出鬼没であったこともまた要因となった。

 

「罪ある者には顔など要らぬ」

 

生きる怪奇譚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"汝 咎人なりや?"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ、私はどうやら、咎人ではないようです」

親友に贖う機会を得れたことに感謝を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悲報。ゴルコンダとデカルコマニー。怪奇現象として広まってしまう。

あんまりでは?




書いている作品が作品なので、頭がゲマトリアになっていきます。皆様は執筆の際に、原作設定の間違いとともに気を付けてください(n敗)
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