憑依者しかいないゲマトリアがキヴォトスの破滅を回避しようとする話 作:シャンタン
「小生の番ですぞ!!」
「いやいや、どうやら割り込んだだけの様子。しかし、多少の無礼はお許しを···あんなトンチキ見せられれば、我慢しているのもバカらしく」
「何やらシナリオはドンドン進み、ドンドン愉しくなっている様子!!これは小生も参加しなければ···無作法というもの···」
「しかし、ゲマトリアはキヴォトスを救う気があるのか···どちらかといえば、キヴォトス崩壊RTAの方が良いタイムを出せそうですな!」
「特に、デカルコマニー!!紙一重で"怪談"とならずにすんでいる!!
あのヘンテコ話はあくまで問いかける者がいて成り立つ話···デカルコマニーが自由に話せたら即終了であったことでしょう···」
「問いかけるのはあくまで頭、すなわちゴルコンダしか出来ませぬ。ではゴルコンダに出来ない問いかけは?」
「ヒヒヒッ。頭の無い人物が問いかける。はたして問いに意味はあるのか?思考をするのはあくまで頭。
自由に動いて、問いが成立。頭が無しで、問いが成立。ゴルコンダはひとりぼっちになってしまう···
虚像をなくし、無意味と非実在が混ざり合い、制御がきかぬ"怪談"のできあがり···実に愉快ですな!」
「いやしかし、デカルコマニーに筆談などのアイデアは無かったのか?アイデアがクリティカルして試さないか、ファンブルして思い至ってないか···
まぁ、"匿名の行人"の介入があっただけでしょう。あの選択者気取りはこれだからいけ好かない」
「選択は"先生"の特権だろうが!?」
「はぁ、はぁ。――まぁ、その"先生"来訪の可能性ができたのです。それで良しとしましょう」
「ブルーアーカイブは、"先生"と生徒達の青春の物語。"先生"がいない時間の介入など、悪役としてしか解釈されぬ。ゲマトリアは所詮悪役ゆえに。
···とはいえ、黒服の売春扱いには、ヒヒ。ヒヒヒ!」
「···しかし、マダムも難儀な道を歩まれる。生徒の認知だけでは歪まぬだろうが、"先生"の後押しがあれば歪むでしょうな。逆にいえば、原作開始までは放置で良いでしょう···
失礼!原作はすでに形もありませんでしたな!」
「さて、では小生はどうすれば良いか?実に悩ましい···大目標は決まっているが、中目標が些か決まらぬ。いや、せっかくなら、"先生"に小生を刻みつけたいですな!!」
「やはり!小生ならば!!小生主催のキャンペーンを!!!」
「良い場面で!良い結果で!!都合が良すぎると感じた者が、やっと察せるタイミングで!!!小生は介入することといたしましょう!!!」
「さて、ではどう介入するか?······そういえばおりましたなぁ?!原作では影しかありませぬが、マエストロのおかげで光明が!接触してみる価値はありまする!!」
「さてさて、これにて脇役勢揃い!青春の物語の行く末や如何に?!」
「実に愉しみですなぁ」
黒服ってホシノ以外をどうみてるんだろうね やっぱホシノは特別なのかな
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風が吹く。
さらさらと、細かな砂が地表を滑り、建物の隙間を通り抜けるたびに、かすかな低い音を響かせる。まるでこの場所そのものが、静かに呼吸しているようだ。
太陽は高く、容赦なく砂丘を照らしつけ、黄金色の波がいくつも重なっている。だがその光景には、どこか寂しさが染み込んでいる。
道路だったはずの場所には、アスファルトの黒がまだわずかに覗き、そこへ砂がゆっくりと積もっていく。
時の流れは、この場所では目に見える形で進んでいた。
遠くで、錆びついた標識が風に揺れた。
ギィ、と軋む音。
その音は広い砂漠の中ではあまりにも小さく、しかし確かに、ここにかつて人がいたことを告げている。
そんな静寂の中を、黒いスーツの男が歩いていた。
両手には袋をひとつずつ。中には、白いレースの枕が詰められている。砂埃とはあまりにも不釣り合いな、柔らかな土産品だ。ゆっくりとした足取り。風に揺れるネクタイ。
そう、黒服である。砂に半ば埋もれた道路を、彼は迷いなく進んでいく。
その行き先は、すでに決まっていた。
砂漠の中にぽつりと残る、古びた校舎。
アビドス高校。
もはや土産品を持ってそこへ向かうという光景は、事情を知らぬ者が見れば、黒服が研究者などギャグにしか映らないだろう。だが、この世界線における黒服にとって、それは決して冗談ではない。
彼の歩みには、奇妙なほどの落ち着きがあった。
ゲマトリア発足後、神秘観測機の製造に成功した人物。それが、この男だ。
神秘を測る装置を用いた神秘を扱う手法の確立。そして――
崇高を生み出すための「前準備」。
黒服は袋を持ち直し、砂に埋もれかけた校門を見上げた。
砂に削られた文字。色褪せた校章。
かつて多くの生徒が行き交った場所。
彼は小さく息を吐き、独り言のように呟く。
「さて···」
その声は静かだった。だが、どこか楽しげでもあった。
これは――
ゲマトリアの黒服が行った、数々の実験の記録。
神秘を利用するために行われた、あまりにも悪辣で、そして奇妙な研究の数々である。
実験1つ目――神名のカケラ製造のための、神秘吸収機の作製。
原作にて、神名文字との交換が可能であったピンクの塊。これの類似品作成を目的とした実験の、第一実験である。
黒服はブラックマーケットで治験のバイトを掲載。ヘイローを持った存在を募集し、様々なデータを観測を行った。そして、計測した結果を基に、神秘吸収機を造り上げた。
椅子型の怪しい機械は、生徒を拘束するためにしか見えない。生徒の神秘を搾取する、恐ろしい機械である。
怪しみながらも、生きていくために治験を受けに来た者は、
『雰囲気怖いし、少し疲れるけど、3時間ぐらい座ってるだけでお金が貰える!!』
とリピーターとなった。時給8000円である。なんとその場で貰える。一週間の期間を空けねば受けられないのが、応募者の不満であった。
実験2つ目、この吸収した神秘を固定化する実験。この時の段階では、特別な容器でないと神秘を保管できなかった。容器から出した瞬間に、空中に離散してしまうからだ。黒服が目的としている実験に扱えない。
幸いにも、治験の噂が広がり、神秘の確保には困らない。
ブラックマーケット外からも、一抹の望みをかけた欠食児が応募した。
残念ながら健康ではないため、不適格である。しかし、欠食児もキヴォトスの民である。ご飯を食べさせ、睡眠を取らせ、一晩したら回復した。これで治験が受けられるね。
眠る前に啜り泣きが聞こえた気もするが、黒服には聞こえていない。
観測されない出来事は存在しないのと同義である。
投資や後ろめたい様々なことで稼いだ金を循環させていき、神秘を得られる循環を構築した黒服。
この潤沢な神秘を用いて出来上がったのが、ピンク色の液体である。
黒服の技術では、神名のカケラ化までできなかったが、これでも問題はない。液体の方が摂取には都合が良い。
また、この頃には様々な自治区で治験募集の認可がでていたため、応募者が多かった。すなわち、量が確保できる。
この神秘の液体の製造によって、実験のサブプランを進めた。黒服の忌むべき実験にして、結局成功には至らなかった、3つ目の所業···
モブ生徒 小鳥遊ホシノ化計画
考えたことはないだろうか?
キヴォトスのロリって強すぎないか?
アビドス、ミレニアム、ゲヘナは少なくともロリが最強である。
考えたことはないだろうか?
キヴォトスのピンク髪って強すぎないか?
アビドス、ミレニアム、トリニティには少なくとも、ピンク髪で強い生徒が存在する。
そう、その共通項を持った至高の存在こそ、小鳥遊ホシノである。
観測したくない出来事は存在しないのと同義である。
黒服、君に研究者は無理だ。
このような、かんぺき~な推察の基、立ち上がった計画が、"モブ生徒 小鳥遊ホシノ化計画"である。
黒服がイカれたと思っていることだろう。
その通りだ。ホシノに脳を焼かれ過ぎたらしい。
何でこの名前にしたんだと言いたくなるこの計画。まず、治験に来たモブで、ホシノに類似した特徴を持ったモブに声をかける。そして、神秘の液体を摂取させることで、神秘の保有量を増やし、ジェネリックホシノを誕生させようとしたのだ。
黒服の凄まじい執念。そして、百鬼夜行クロレラ観察部モブに似ている双子が、その毒牙にかかってしまった。
ピンク髪とロリっぽさ、ケモ耳と属性過多のモブっ子である。どうやらケモ耳は許容することにしたらしい。
交通費でるし、移動時間含めても割が良いから、と治験を受けていた双子は
『(私の実験に)貴女達が必要なのです』
と迫られ、頷いてしまった。思春期の吊り橋効果が効きすぎたようで、少し性癖が歪んだらしい。
思わず頷いてしまったが、双子は怖くてすぐに拒否をしようとはしていた。
しかし、自分達がバイトでは到底稼げない額を提示され、聞けばピンクの液体を飲むだけである。
黒服が目の前で飲んで見せて、安心してしまったのも良くなかった。定期的に怪しげなピンクの液体を摂取し、神秘の保有量を増やしていった双子。
なんと、百鬼夜行にてトラブルに巻き込まれた際に、傷を負いながらも中規模の魑魅一座を撃退している。
『黒服さん凄い人かもしれない!』
と良くない尊敬をしてしまった。
結局、この双子は、黒服の期待通りとはならなかった。
当たり前である。そんな簡単に
残念ながら、神秘の液体摂取のみでは、神秘の許容保有量の上限にきてしまったようだ。
原作風にいうと、戦闘中に一回発動可能なEXスキル相当の必殺技と、ノーマルスキル相当の特殊能力が発現しただけで終わってしまった。
モブ生徒が星1ぐらいになったのなら十分では?
しかし、黒服にとっては、小鳥遊ホシノしかいないと確信を強めるに至るだけであった。
量より質、もともとサブプランである。
双子は、
『もう大丈夫です。これで実験は終了。有意義な結果となりました』
と告げられ、唖然とした。黒服に人の心は分かっても、女心は分からない。
双子の性癖はかなり歪んだらしい。
こうした悪辣な実験を繰り返し、ついに本命を試そうとしている。
お察しの通り、小鳥遊ホシノのテラー化である。
原作では、梔子ユメの死を境に、心を病んでいったホシノ。ホシノは原作の地下生活者による策によって、心の傷につけこまれ、不完全なテラー化を果たしてしまう。
最終的には、"先生"の協力によって小鳥遊ホシノの精神世界に入り込み、ホシノがアビドスにて築いた絆と、精神世界のユメとの邂逅によって、テラー化からなんとか戻ってこれたのである。
小鳥遊ホシノにとって、梔子ユメの死は途轍もなく心に傷を負わせる出来事であった。
では、梔子ユメが生存していたら?
心の傷がなければ、テラー化の制御が可能となるのでは?
自由自在に
神秘と恐怖が共存した、崇高がみられるのでは?
とウキウキしているのだ。
テラー化の条件などどうとでもなると慢心している。このテラー化実験のために、双子は利用され、神秘そのものを摂取させる実験が行われた。
神秘がある程度テラー化しても良い猶予を作るために、多数のモブの神秘に被害が及んでいたのだ。
セトの憤怒はどうするつもりだ?!
そんな悪辣な実験を行ってきた黒服の目的···
それは、梔子ユメを生存させ、私が考えた最強の小鳥遊ホシノを誕生させることである。
こいつはキヴォトスを救うつもりはあるのか?
残念ながら、その考えがあまりない。
『"先生"と小鳥遊ホシノがあわされば、どうとでもなります』
とのこと。
黒服は"先生"にも頭を焼かれていた。
「クククッ。楽しみですねぇ」
校門を抜けて廊下に入っていく黒服。
コツ、コツ、コツ。
足音がやけに響く。
「···でちゃだめだよ!」
遠くの教室からかすかに聞こえてくる声。
「···見られでもしたら」
コツ、コツ。
足音が砂に吸われていく。
黒服は気にも留めずに歩き続けてしまった。扉の取っ手に黒服の手がかかる。
古びた教室の引き戸は、砂に擦られたような鈍い感触を指先に返した。
ゆっくりと横へ引く。
――ガラリ。
乾いた音が、静まり返ったアビドス高校の廊下に短く響いた。
扉は半ばまで開き、教室の空気が外へと流れ出る。窓から差し込む白い光が床を照らし、砂の粒が微かにきらめいていた。
その光の中に、何故かスク水姿のホシノがいた。
時間が一瞬止まったかのように、ホシノの動きが固まる。
次の瞬間、彼女の頬がみるみるうちに色を変えた。
白い肌の上に、朱が流れ込むように広がっていく。耳の先まで、信じられないほど真っ赤に染まっていった。
目は大きく見開かれ、普段の鋭利な表情は影もない。
黒服の視線が泳ぐ。
逃げ場を探すように机、窓、梔子ユメの方へと視線を向ける。
ユメは『あちゃ~』といった顔をして、額に手を当てていた。
ホシノの顔は、今にも湯気が立ちそうなほど赤かった。
ホシノは数秒遅れてようやく息を吸い込み、
「な、ななな······っ」
声にならない声を漏らしながら、完全に動揺したまま立ち尽くしていた。
黒服は忘れていた。悪とは裁かれるものである。
数多のモブっ子から神秘を奪い、双子の性癖を歪ませた報いを受けるのだ。
「···無罪を主張します」
当たり前だが有罪である。
小鳥遊ホシノ、スクール水着を見られてしまう事件よりしばらくあと。黒服は接近禁止命令を
なんとか高級レース枕によって死刑は免れたものの、余罪がバレていた場合、命はなかったことだろう。なんとか顔面が陥没するだけですんでいた。
「誤算でした。まさか、梔子ユメの失踪タイミングがよめない時期に、このような事態になるとは···」
ノックでもしていれば防げた事態であった。
黒服は、ユメを失踪させないためにも、接触禁止令が出された最初の数日は監視を試みていた。ドローンなどを用いて、なんとか状況を把握しようとしたのである。
しかし、悉く小鳥遊ホシノに監視機器の類いは破壊されてしまった。
学校の門前に、
これ以上したら殺す
という貼り紙を見つけてしまい、完全に撤退せざるをえなかった。
梔子ユメの失踪した地点などを明確に覚えていれば、こんなに焦る必要がないのだが、ゲマトリアで憶えている者はいなかった。
「しかし、土産品として、水を入れられる携帯用のバックパックなどは渡しています。都合良く持っていくかは賭けですが···梔子ユメの監視だけなら許されるでしょうか?」
なんだかんだで日付が過ぎていく。
ある日、電話がかかってくる。初接触時にホシノに渡した、使い捨て携帯電話の番号へとかかってきた。
「お前がやったのか?!」
焦ったようなホシノの怒号が、黒服の耳を貫く。いや、実際に焦っているのだろう。尋常ではない雰囲気が電話越しに伝わる。
「何のことでしょう??」
しかし、黒服に心当たりなどない。最近はどこからアウト判定か分からなかったため、アビドス自治区への監視すら止めていた。
「お前じゃないとしたら、ユメ先輩はどこに···」
「まさか···梔子ユメに何かあったのですか?」
黒服の問いかけ。ホシノも無意識のうちに助けを求めていたのだろう。普段ならしない選択をしてしまう。黒服に伝えるという選択を。
「ユメ先輩が···ユメ先輩が失踪した」
カウントダウンが始まった。