モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方   作:超かぐや姫!脳焼きの民

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超かぐや姫!に脳を焼かれたので初投稿です。


本編
遠田匠という男


「ノリと勢いで東京での一人暮らし生活...思ったよりまずいか??思うたより物価高いぞコレ」

 

そんなことをほざくのは遠田匠(おんだたくみ)

 

是の者、面白ければヨシ!楽しければヨシ!

そんなモットーの、少々どころではなく頭のネジが緩い家庭で育った男である。

「一人暮らしおもろそう!!!行くなら東京やな!!」

その一言で上京した。

当然のように、地元・関西との差異に初日から殴られている。

物価は高い。街を歩けば標準語の嵐。

テレビをつけても、関西人のバイブルたる某お笑い新喜劇はやっていない。

彼は一通り絶望した。

そして三秒後、立ち上がった。

 

「...まあ、せっかく来たんやし、楽しむしかないやろ」

 

何も考えずに上京したのは自分だ。東京は悪くない。たぶん。

 

この男は趣味に生きる人間である。

ゲーム、漫画、そしてモノづくり。

しかし――趣味には金がかかる。

 

そのため彼はせっせと、それはもうせっせとバイトをし、趣味に使う資金を捻出していた。そこだけは実に立派である。

 

そんな彼も高校生。趣味とバイトだけをやっている訳にはいかん!!というわけでちゃんと高校には通っている。

 

朝に学校へ行き、男友達とくだらない話でばか笑いをし、自作のからくり仕掛けの玩具を持ち込み、教員に怒られ没収される日々を送っている。

 

そんな彼は運動はそこそこ、文系教科もそこそこ、理系教科は完璧といった頭のおかしい理系人間なのである。

 

おそらく彼は高専に進学したほうがよかったのかもしれない。されどそんなことはお構いなしに笑うのが是の者である。

 

「あんの笑いも娯楽もわからん教師どもめ...なんど俺の玩具を奪えば気がすむねん!!」

 

そう彼は今日も自作のからくり仕掛けの玩具を持ち込み、没収されていたのである。

なお、悪いのは教師ではなくこの男である。

なんど同じ過ちを繰り返すのか...放課後に友人と集まり遊べば良いのに...

 

 

「いや、そんなものを学校に持ち込むほうが悪いでしょ」

 

そんなバカなことをほざく彼に冷静に突っ込んできたのは、酒寄彩葉(さかよりいろは)

 

母親との相性は最悪。

身一つで上京し、学費も生活費も自分で賄う努力家。

せっせと、それはもうせっせとバイトをしながらも、成績は常にトップ。

文武両道、才色兼備。

まさに高嶺の花。

 

身一つで上京したのは同じなのにどうしてこんなにも差がついてしまったのか

...理由はだいたい目の前にいる。

 

「そんなこと言われましてもねぇ酒寄さんよぉ...毎日毎日代わり映えもしない刺激もない授業を受けてちゃ俺は萎れて枯れてまうよ...」

 

そう語るこの男、遠田匠。

現代の若者らしく、やや刺激に依存気味である。

 

「授業ぐらいは真面目に受けなさいな。あと、刺激がなくたって人間は萎れないし枯れないわよ」

 

酒寄彩葉。

文武両道、才色兼備。

そして優秀なツッコミ役でもある。

 

陰では彼女は「あのバカ専属のツッコミ役兼ストッパー」と呼ばれている。

 

当のバカ――遠田匠は、学校にからくりを持ち込むことはあっても、授業中は意外と静かである。

文系教科は不得手とはいえ平均以上は維持しているため、教員側からすれば実に扱いづらい存在だ。叱るほど悪くはないが、放置するには不安が残る。

 

そのバカを制御しうる数少ない人物。

それこそが酒寄彩葉なのである。

 

「授業はまじめに受けてるよ...当者比やけど...

それはそれとして酒寄さんも今日の古典の時間に目開けたまま気絶してたやん

人のこと言えんの??」

 

「えっばれてたの!?」

 

意外にも、この男はよく周囲を見ている。

とくに彼女のことは、わりと。

それはそれとして、一言多い。

遠田匠の数ある欠点のひとつである。

 

 

 

ここで遠田匠と酒寄彩葉の出会いについて語ろう。

 

遠田は意外と緊張しいでビビりである。

入学式の日は誰より早く登校し、指定の教室で入学式の開始を待っていた。

 

ぞくぞくと集まる新入生。

その中の一人――酒寄彩葉に、彼は目を奪われた。

俗に言う一目ぼれである。

 

 

面白ければヨシ、楽しければヨシで生きてきた男だ。

色恋沙汰とは無縁であった。

顔は悪くない。性格は明るい。よく笑う。

そこだけ見れば、まあ、モテてもおかしくはない。

ただし欠点が多すぎた。

 

「遠田君? 面白いしええ人だよね。

異性として? いやぁそれはちょっと...」

というのが彼の評価である。世知辛い。

 

そんな男が恋をした。

 

人生初の一目ぼれにテンパり、入学式当日はそこそこ静かに終わった。

教員としては理想的な状態であった。最初で最後だが。

 

しかし遠田は、意外にもメンタルコントロールに優れている。

 

帰宅し、ネッ友とゲームをすると冷静になりふと気が付く。

「べつにいつも通り過ごせばよくね?刺激が増えたと思えばええやん」

 

遠田にとって最優先なのは人生を楽しむことであり、恋愛はその一部でしかないと割り切ったのである。なんだこいつ。

 

かくして翌日から、いつもの遠田匠が復活した。

教員の淡い期待は、当然ながら打ち砕かれた。

 

そして遠田は運に恵まれていた。

それは酒寄彩葉が優れたツッコミのセンスを持ち合わせたからである。

遠田がふざけ、からくりを持ち込む。

それに酒寄彩葉が笑い半分、呆れ半分でツッコむという流れが完成したのである。

 

しかし遠田は不幸でもあった。

それは酒寄彩葉が心の底から笑えてないことに気が付いてしまったのである。

 

親との確執。

学業とアルバイトの両立。

彼女の笑顔はどこか儚く、今にも消えてしまいそうだった。

 

遠田にはそれが非常に認めがたいことであった。遠田は、自身がそこそこに面白い人間であると自負していた。

彼が笑えば、周囲も腹を抱えて笑う――それが当たり前だと思っていた。

 

自分が楽しむこと。

そして周囲も楽しませること。

 

それが彼の矜持である。

 

だが当たり前というものは、往々にして盲点でもある。

笑いが起きていることと、心が救われていることは、必ずしも同義ではない。

 

遠田はまだ、その違いを知らなかった。

 

「ぜってぇ酒寄さんを心の底から笑わせてやる!!」

 

そう決意した。

 

なお、おまけのような話だが。

遠田の住むアパートの真上が、酒寄彩葉の部屋だった。

 

ある日、バイトへ向かおうと家を出た遠田は、階段を降りてくる酒寄彩葉と遭遇する。

互いに気づかなかった原因は、遠田にある。

 

彼は変なところで気が利く。

自分が趣味に熱中するとうるさくなる自覚があったため、部屋中に手作りの簡易防音壁を設置していたのだ。

そのせいで、上階の住人に気づかれなかったのである。

 

善意が巡り巡って伏線になることもある。

人生とはそういうものだ。

 

 

 

話を戻そう。

 

酒寄彩葉との会話の後、彼はいつものごとくバイトに向かうのである。

人生すべてを楽しんでやる!!と意気込む遠田だがバイトの間だけは苦しいのである。

 

酒寄彩葉との会話の後、遠田はいつものごとくバイトへ向かうのである。

「人生すべてを楽しんでやる!!」と豪語する男だが、バイトの時間だけは別だ。普通にしんどい。

 

関西色の強い地域で育った少年・遠田は、これまで見てきたおっちゃんおばちゃんのノリで働こうとした。

しかしここは関東、特に東京。

 

そのノリは、刺さらない。

というか、若干引かれる。

 

「え、なんでツッコまへんの?」という顔をしたまま滑る経験を何度か積み、遠田は学んだ。

東京は笑いに対してシビアである。

 

数少ない、彼の精神をすり減らす業務を終え帰宅。

その瞬間から、彼の本領が始まる。

 

これまでのストレスを発散するかの如く、遠田はある準備を始める。

 

実は彼--

は仮想区間ツクヨミにて'Mr.Mk(ミスターメイク)'として活動を行うライバーなのである。

 

ツクヨミは、誰もが表現者であり発信者。

歌を、ダンスを、ゲーム実況を。

無数のライバーがしのぎを削る世界だ。

 

そんな中Mr.Mkは異質であった。

 

遠田ことMr.Mkは、ツクヨミでは珍しい“モノづくり系”ライバーなのである。

実写では3Dプリンタによるからくり仕掛け。

ツクヨミ内では、仮想空間だからこそ作れる理不尽構造メカ。

 

ロマンを追い求め、今日も何かを作っている。

 

もちろんゲーム配信もする。好きだからだ。

だが本職はモノづくりである。本人もそう思っているし、ファンもそう思っている。たぶん。

 

さらに彼が異質なのは他のライバーとの取引も行っていることである。

ロマンをこじらせた結果、某獣狩りの狩人たちが使う仕込み武器――可変武器を制作することもしばしば。

 

そんなMr.Mk製武器を求め、依頼するライバーも存在する。

 

有名どころだとBlack onyX(ブラックオニキス)の帝アキラの鬼の棍棒兼・刀兼・銃も、彼の作品である。

もはや何の武器かは分からないが、ロマンはある。

 

なお、Mr.Mkはツクヨミ内でなかなかの問題児扱いを受けている。

 

配信はロマンあり、笑いあり、爆発あり、失敗あり。

コアなファンが付く程度には人気だ。

 

だが問題はそこではない。

 

彼の作品には――

バグやグリッチを巧妙に利用したもの。

規模が大きすぎてサーバーを圧迫するもの。

物理演算に喧嘩を売るもの。

 

管理者側からすれば、胃薬案件である。

 

そのためツクヨミの管理者にして歌姫、月見(ルナミ)ヤチヨからは、厳重注意や一部作品の封印処分が下されている。

 

ヤチヨよ、それでいいのか。

たぶんアカウントごとBANした方が平和だぞ。

 

 

 

 

そんな、そこそこ楽しそうな人生を送っていた遠田に――

さらなる刺激が、空から舞い落ちた。

2030年7月12日、金曜日の夜。

バイト帰りの遠田が目にしたのは、送電鉄塔に衝突する“虹色に光るゲーミングなナニカ”である。

説明はできない。

ただ、ゲーミングだった。

 

そしてそのナニカから放たれた虹色の光が、電線を伝って移動し始めたではないか。

 

「なんやこれ!!!」

 

叫ぶ。

考えるより先に、走る。

 

遠田はそういう男である。

 

だが光は速い。

人類代表・遠田匠では到底追いつけない速度で、街の上空を駆け抜けていく。

 

――しかし。

 

ここで彼は止まらない。

 

走りながら、電線の位置。

送電ルート。

地形。

自宅周辺の配線構造。

 

無駄にスペックの高い脳をフル回転させ、光の進路を予測し始めたのである。

 

その演算能力を、なぜ定期テストに使えなかったのか。

人類七不思議の一つである。

 

「ここってうちの近所じゃね??」

 

そう光が向かった先は遠田のアパートの近所であった。

なぜ直前までアパートが近いことに気が付かないのか?その無駄にスペックの高い脳はなんのためにあるのだようか?

 

この曲がり角を曲がればアパート、そしてゲーミングな光の発生源は目と鼻の先

 

――そのとき、遠田の足が止まる。

 

冷静に考えてほしい。

あれは何だ。

 

「ナニコレ!! 面白そう!!」の勢いだけで追ってきたが、正体不明である。

未知。ゲーミング。電線移動。

 

怖い要素しかない。

 

遠田はビビりだ。遠田はビビりである。大事なことなので二回いった。

 

具体的には某Bloodborneですら怖くて攻略できないレベルの。

 

もし宇宙的存在だったら。

もし化け物だったら。

もし課金を要求してきたら。

 

想像は膨らみ、足はすくむ。

 

――しかし。

 

ビビり散らかしているうちに、光が収まったではないか。

 

静寂。

 

何も起こらない。

 

……行けるのでは?

 

遠田は、曲がり角を“歩きながら”曲がる。

決して“そーっと覗く”ではない。

あくまで自然体である。

 

「いや、まったく、俺はビビってへんで?」という雰囲気を全身で醸し出しながら。

 

そして――

 

遠田が目にしたのは。

 

赤ん坊を抱きかかえながら、電柱を叩く酒寄彩葉の姿であった。

 

……

 

貴女まで何やってんだ?

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