モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方   作:超かぐや姫!脳焼きの民

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小説版「超かぐや姫!」を早く読みたくて脳が溶けだしたので初見です。

今話は少し短めです。

いつも感想、誤字報告ありがとうございます。
ほんとに誤字が無くならない...


非人道兵器の産声

 

「設計終了!

これはだいぶええ出来やぞ!!」

 

PCのディスプレイを見つめる、遠田の声。

そこには、新たなる挑戦の証が青白く光っていた。

 

今年の6月から基礎設計を開始した、新兵装。

SF的なビーム兵器や仕込み武器を得意とするMr.Mkにとって、それは未知の領域だった。

 

電磁気。

それが、彼の技術に新たな命を吹き込もうとしていた。

 

画面に並ぶ、二つの名前。

 

『電磁加速式杭狙撃砲:パイルキャノン』

『電磁加速式杭打機:パイルシステム』

 

レールガンの要領で大型の杭をぶっ放す高火力兵器である。

 

 

始まりは、配信中の何気ない一言だった。

 

「レールガンの原理で抜刀術やるキャラっておるやん?

あれってまじで出来たりせんかな?」

 

視聴者の悪ノリが、加速する。

 

『実際にやってみた』

『作ってやってみましょうぜ、旦那!』

 

コメント欄の悪乗りも相まって、

 

電磁抜刀術の構想は、いつの間にかパイルバンカーへと姿を変えた。

 

しかし。

 

電磁パイルバンカー1号機にて致命的な欠陥が露呈する。

 

「...杭が保たんとは。

この李白の目を以てしても...」

 

『その李白の目交換したほうがいいのでは?』

『いつもの【定期】』

 

一度の射出で、杭が歪む。

ツクヨミ内でも最高峰の強度と導電性を誇る素材ですら、その衝撃には耐えられなかった。

 

そのためこれ以上頑丈にしようとすると素材開発から行わなければならない。

 

そんな中、1つのコメントが。

 

『杭を消耗品って割り切って打ち出してみれば?

某鉄血なオルフェンズのダインスレイヴみたいにさ』

 

このコメントにより、

 

パイルバンカーはダインスレイヴへと変化する。

 

そこからが酷かった。

 

杭を消耗品としたことにより、様々なギミックを仕込めるようになってしまった。

 

その結論が、

 

大型のバレルを用いて、

 

超遠距離から、

 

杭を超高速で射出し、

 

相手に刺さると急制動をかけ、

 

相手の内部から爆発する。

 

まさに、非人道兵器。

悪魔の設計図が、完成に近づく。

 

 

『これさ、小型化したらパイルバンカーに戻せん?』

 

天啓のコメント再び。

 

Mr.Mkとコメント欄は、もう止まらない。

 

後に、想定外の挙動により、これが第7の封印指定兵装となることは誰も知らなかった。

 

 

そんな非人道兵器の試作が、昨日完了してしまった。

 

そして今日、2030年8月16日金曜日。

 

非人道兵器の実戦版への移行が始まろうとしていた...

 

 

 

 

「ちゅーわけで昨日、試作が終わったパイル兄弟を製品版にするで!」

 

ツクヨミ内にあるMr.Mkの工房にて配信が始まってしまった。

 

もう止まらない。止めることもできない。

 

『待ってました!!』

『これぶっ放すときは

『スーパーギャラクシーキャノン!発・射!!』

って言おうぜ!』

『パイル兄弟って聞くとなんかかわいい』

『火力はかわいくないけどな』

『これさ...マジで人に向けていい火力?

封印指定されない?』

 

「多分人に向けるには少々火力高いと思うで

理論上の初速は音速をはるかに上回るし...」

 

コメント欄の数少ない良心に対して彼の予測を告げる。

 

『少々?』

『感覚が狂ってる...これがインフレ...』

封印指定兵装No.01(エンフォーサー)とか、

封印指定兵装No.02(フォートレス)と比べたら少々やろ』

『↑上限と比較せんでもろて』

 

「せやろ? あれらに比べたら、可愛いもんや

この程度じゃ封印指定はされんと思う」

 

遠田が、ケラケラと笑う。

基準が、最初から壊れていた。

この配信に集うすべての者の感覚が、少しずつ、確実におかしくなっていた。

 

『じゃあこれを今、ヤチヨに報告できる?』

 

画面に流れたその一言に、遠田の指がぴたりと止まる。

 

月見(ルナミ)ヤチヨ。

 

この仮想空間ツクヨミを支配する邪智暴虐(Mr.Mk目線)な管理者。

 

彼は、そっとコメントから目をそらした。

 

「いや、大丈夫なはず...多分...

でも怖いから報告は後回しや!」

 

断言した。

逃避。あるいは、確信犯的な先送り。

 

『逃げたwww』

『ヤチヨ様に怒られる遠田ァの姿が見える見える』

『後で「想定外の挙動」って言い訳する準備してそう』

『今のうちに反省文用意したほうがいいな』

 

「やかましい! 実戦データがないのに報告なんかできるか!」

 

そんなコメント欄とのプロレス芸を終え、素材の加工を始める。

 

工房内に設置された近未来SFな金属加工機たちが一斉に動き出す。

 

もう後戻りなどできない。

 

ハナからするつもりもない。

 

Mr.Mkはそんな人間である。

 

 

 

一方そのころ。

 

ツクヨミ内にある真実のマイルームの中に、

 

そこには、かぐや、彩葉、芦花、真実の四人が集まっていた。

 

目的は、今日放送される『NEWS TSUKUYOMI』の視聴だ。

 

「おつ〜。彩葉、体調はどう?」

 

芦花が、隣に座る彩葉に優しく声をかける。

おととい、高熱で倒れていた彼女を気遣ってのことだ。

 

「...うん、もう大丈夫。ありがと」

 

彩葉は、穏やかに微笑み返す。

 

彩葉の体調は、昨日の時点で復活していた。

笑いの神様(大阪のおばちゃんスタイル)の加護のおかげかもしれない

 

「む~っ!

どうしたらいいのだ!」

 

一方、かぐやは湯船で暴れていた。

NEWS TSUKUYOMIの画面に映る、ヤチヨカップの非情な中間結果。

 

1位、黒鬼こと、Black onlyX。

 

かぐやいろPはいまだ圏外であった。

 

「強いね~黒鬼」

 

「と~ぜん!帝様だも~ん」

 

真実は自分のことのように胸を張る。

真実は黒鬼こと、Black onlyXの帝アキラ推しである。

 

「真実の裏切り者~」

 

かぐやがジト目で真実を見つめる。

 

「二推しでかぐやも推してま~す」

 

「や~だ~かぐやだけにして!」

 

真実の調子いい発言に、かぐやが子供のように地団駄を踏む。

お湯が激しく跳ねた。

 

「...メンヘラ彼女かよ」

 

彩葉の冷静なツッコミに、芦花がクスリと笑う。

 

「くっそ~帝出てこい!

勝負しろ!」

 

かぐやはこの場にいない帝に喧嘩を売る。

 

「かぐやvs帝でゲーム対決ってのは?

世紀の竹取合戦」

 

芦花が、絶妙な助け舟を出す。

王者とやり合えば、知名度は爆発的に上がるはずだ。

だが、その隣で彩葉が露骨に気まずそうな顔をした。

 

「それだ!」

 

かぐやは芦花の案に便乗する。

 

「マジでなし。

向こうはプロゲーマーだよ?

格が違うでしょ」

 

彩葉の現実を突きつける一撃。

 

黒鬼側にこの挑戦を受けるメリットが思い当たらないのである。

 

「なんで~

対決!」

 

かぐやが駄々を捏ねる。

 

「何としてもダメ!

ダメダメダメダメダメ!」

 

彩葉の必死の拒絶。

先の正論のほかにも理由があるのかもしれない。

 

「彩葉も一緒に...いや

いやっいやいやいや

彩葉が倒れちゃったらいやだし」

 

先日、目の前で力なく倒れた彩葉の姿が、彼女の心にブレーキをかけた――

...だが、そのブレーキは甘かった。

 

「あぁでも...?

もしやゲームなら息抜きにも?」

 

「うぅ...フンッ!」

 

彩葉は、そっぽを向いてソファに寝転がる。

完全に拒絶の構えだ。

 

「えっ、こ...このまま

迎えが来てもいいの?」

 

かぐやが、禁断のカードを切った。

「月からのお迎え」をダシにする。卑怯である。

 

「あんた一向にお迎えこないじゃん」

 

「そ...そんな!

わかんないじゃん!

来るかもしれないじゃん!」

 

彩葉の御尤もな意見にかぐやは返す言葉もない。

 

「あ~来るなら早く来てくれ~

連れて帰ってくれ~!」

 

「あ~意地悪言ってる」

 

「大体、何で自分のことも自分で分かんないのよ」

 

そんな口論に芦花と真実は首を傾げる。

彼女たちはかぐやが月から来たことを知らないのである。

 

「ハッピーエンド!

あそ~れハッピーエンド!」

 

「あ~あ~聞こえない聞こえな~い」

 

返す言葉を完全に失ったかぐや。

自棄になってハッピーエンド音頭を踊りだす。

 

遠田がここにいたら腹を抱えて爆笑していたことだろう。

 

 

そんなかぐやの元に一通のメッセージが届く。

 

『初めましてかぐやちゃん!

俺はブラックオニキスの帝アキラ

ファン数100万おめでとう!

 

ここからは提案なんだけど...

 

KASSENで

帝vsかぐやの竹取合戦

 

ってのはどう?

かぐやちゃんが負けたら......

やっぱ俺と結婚、かな?

こっちが負けたら、なんでもお願い聞くよ

俺らでツクヨミ盛り上げようぜ!』

 

「ウソでしょ?」

 

画面を覗き込んだ彩葉が、その場に崩れ落ちた。

必死に、全力で、文字通り体を張ってでも止めようとしていたもの。

それが、向こうから全力で殴り込んできたのだ。

 

 

 

所戻って、Mr.Mkの工房。

 

パイル兄弟の製作は、ついに大詰めを迎えていた。

 

必要な部品は、すべて揃った。

 

あとは組み立てと、仕上げの塗装を残すのみ。

 

静寂の中、火花の余韻が漂う工房に、爆音とともに扉が開く。

 

「遠田!遠田!

一緒に黒鬼と戦って!」

 

かぐやが、文字通り転がり込んできた。

 

あまりに唐突。

 

高性能なMr.Mkの脳ですら、一瞬、処理が追いつかない。

 

「...かぐやさん?

いっぺん落ち着こか?」

 

「帝から宣戦布告きた!

だからかぐやと彩葉と一緒に戦って!」

 

かぐやは送られてきたメッセージをMr.Mkに見せる。

 

「だはははは!

まじか!

分かった乗ってやる!」

 

「よっしゃあ!

3人で勝つぞ!!」

 

かぐやが拳を突き上げる。

その様子を映し出していた配信のチャット欄も、一気に沸点を超えた。

 

『おぉ!頑張れ!』

『黒鬼の連中のどてっぱらにパイルぶち込みに行こうぜ!』

『かぐやちゃんかわいい』

『遠田ァ!楽しみにしてるぞ!』

 

コメント欄も大賑わい。

 

リスナーの期待。王者の挑発。そして、手元にある非人道兵器。

すべての条件が、最悪で最高の形で噛み合った。

 

ここに、『かぐやいろP with Mr.Mk』対『黒鬼』。

ツクヨミの歴史に刻まれるであろう、世紀の「竹取合戦」の開催が決定した。

 

 

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