モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方   作:超かぐや姫!脳焼きの民

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すこし短めなので初見です。

いつも閲覧、感想、誤字報告ありがとうございます。

番外編リクエスト募集が想像の倍以上来てビビってます。
皆さんありがとうございます。

本編完結したらゆっくり書いていきます。


ハッピーエンドに至る道

「匠、どうやってハッピーエンドにするの?」

 

自宅に帰って来た彩葉が遠田に問いかける。

 

「う~ん...

彩葉はなんかプランある?

こっちさ、プランはあんねんけど、確実性に欠けるっていうか...」

 

遠田のプランは上手くいけば、最速で全員をハッピーエンドに連れて行くことができる。

 

しかし、プランに確実性がなく、成功するかどうかあやしい。

 

「私が考え付くこと...

匠のお母さんとお父さんの力を借りて、機械の体を作る。

それにヤチヨの意識を乗せるとか?

ヤチヨの記憶から8000年前に戻る前までの記憶をサルベージして、コピーすればかぐやにも体を与えることができるはず...」

 

彩葉のプランは時間はかかるが、確実性が高く、安定している。

 

それに対し、遠田は自身のプランを――

 

劇薬とも言えるその内容を口にする。

 

「俺のプランは

――ヤザカマの力を借りて、輪廻とか運命とかぶっ壊すことや」

 

「...えっ?」

 

「今の地球の技術じゃ時間遡行も、輪廻の破壊も観測もできん。

でも、月の技術は時を超えることが可能なら、輪廻を壊すことはできなくても、それの観測はできてもおかしくない。

輪廻が壊れてれば、かぐやとヤチヨが同時にこの先存在することが可能のはずや」

 

遠田は一度言葉を切り、確信を込めて続ける。

 

「ヤチヨがかぐやだった時代の記憶と、今回のかぐやの卒業ライブ...結末は変わらんでも、過程が大きく異なる。

もしかしたら輪廻は壊れてる可能性がある。俺の左目が無くなったのも、ヤザカマに勝ったのも、全部ヤチヨが知る歴史にはなかったことやからな」

 

遠田は自分の左目に指をかけ、確信を込めて言葉を継ぐ。

 

「輪廻が壊れてれば、世界線が分岐してれば、俺らの知る『かぐや』と、『ヤチヨ』は別人として扱われてもおかしくない。

記憶が違えば、これから辿るルートだって変わる。...なら、やりようはある」

 

遠田の瞳に、かつてないほど鋭い光が宿る。

 

「月から地球までの時間遡行の時に、ヤチヨが言っとった『衝突した石』がぶつからないルートか、タイミングがあるはずや...

それも含めてヤザカマに頼りっぱなしやけど、上手くいけば、かぐやは8000年の孤独な旅路を経験せんでいい。

ヤチヨの存在は消えなくて済むはずや。」

 

遠田のあまりにも大胆なプラン。

 

確かに上手くいけば、遠田や彩葉、かぐやだけでなく、ヤチヨさえ救って見せる最高のプラン。

 

「匠には...

ヤザカマを協力させることができるの?」

 

このプランの最大の欠点。

 

あまりにも月の技術に、ヤザカマに依存しすぎている。

 

ヤザカマが協力を拒否すれば、全て破綻する。

 

「ヤザカマの協力は得られると思う

アイツの本質は俺と同じや」

 

遠田は確信を込めて笑った。

 

「楽しいこと、おもろいことがしたい。退屈なんは真っ平ごめん、って感じや。

...やからこそ、機械的でプログラム的な月より、カオスで予測不能地球の方がアイツ好みのはず...

やったらこっちに引き込める可能性は高い」

 

遠田は不敵な眼差しで、自身のプランを裏打ちする「物理的な上下関係」を口にする。

 

「なにより、俺はアイツに勝った。敗者は勝者に従う——そんな単純な物理論でゴリ押しすれば、いけるはずや

ちゃんと口説き文句は用意してるし...」

 

「でも、どうやってヤザカマに連絡を取るの?」

 

彩葉の疑問は止まらない。

 

たとえヤザカマを口説き落とせる勝算があっても、そもそも彼と接触できなければ、すべては絵に描いた餅に過ぎない。

 

月と地球。そのあまりに遠い物理的な距離を、今の自分たちが超える術はないはずだ。

 

「ヤチヨは『彩葉の歌が聞こえたから、もう一度地球に戻ろうとした』って言っとった。

で、彩葉の歌声を月まで届ける媒介になったんが、かぐやが付けてた銀の腕輪って話や」

 

遠田の視線が、彩葉の手首へと向けられる。

 

「やから、銀の腕輪とかぐやを経由してヤザカマを呼び出す」

 

「彩葉の歌が届いたんなら、俺の声だって通るはずや。

...ヤザカマ、寝ぼけとる暇なんてないぞ。今から最高に『おもろい話』を叩き込んでやるからな」

 

遠田の唇が、挑戦的な笑みに歪む。

 

 

 

遠田は自宅を飛び出し、夜の静寂に包まれた近くの広場へと向かった。

 

手の中にあるのは、彩葉から託された「銀の腕輪」。

 

月と地球、そして過去と現在を繋ぐ唯一の架け橋だ。

 

遠田はそれを壊れ物を扱うように、けれど力強く握りしめ、夜空に向かって声を投げた。

 

「ヤザカマ...俺は遠田や...

お前に話がある...

最高におもろい話や...

やから協力してくれへんか...」

 

静まり返った広場に、彼の切実な、けれど不敵な呼びかけが響く。背後では、彩葉が祈るような心地でその背中を見守っていた。

 

その時だった。

 

漆黒の空を切り裂き、虹色の流星が尾を引いて走った。

 

あの日、彩葉とかぐやが出会った運命の夜に流れたものと、全く同じ輝き。

 

流星は凄まじい速度で高度を下げ、遠田の目の前へと轟音と共に着弾した。

 

土煙の中から姿を現したのは、ヤチヨの記憶の中で見たものと同じ、無機質なタケノコ型の宇宙船。

 

そのハッチから溢れ出した眩い光が、一箇所に集束し、次第に確かな輪郭を形作っていく。

 

180cmを超える長身。

 

無駄を削ぎ落とした強靭な体躯。

 

そして、夜風にたなびく鮮やかな青い袴。

 

見間違うはずもない。

 

数日前、かぐやの卒業ライブにて、全力を競い合った好敵手(ライバル)

 

「...ヤザカマ」

 

遠田の読み通り、月の技術屋は、退屈を切り裂く「おもろい話」に乗って、再びその地に降り立った。

 

 

 

「よう遠田!

こちらでは初めましてだな

俺の名はヤザカマ」

 

「おうヤザカマ!

改めて遠田匠や

よろしゅう」

 

2人は10年来の友人のように気軽に挨拶を始める。

 

「で?おもろい話ってのはなんだ?」

 

ヤザカマが端的に核心を突く。遠田は真っ直ぐにその目を見据え、言い放った。

 

「最高で最善のハッピーエンド作りに協力してくれんか?」

 

遠田は計画を話す。

 

かぐやが地球に戻ってくる時に事故で8000年前に行ってしまうこと。

 

そんなかぐやが多くの出会いと別れを得て、ツクヨミの女主人月見ヤチヨとなったこと。

 

そんな同一な別人を救って、ハッピーエンドにしたいこと。

 

輪廻をぶっ壊して、運命をぶち抜いて、最高で最善のハッピーエンドを目指すこと。

 

その計画の段階で、月の技術力とヤザカマの力が必要なこと。

 

「この計画は俺個人の域を超えてるし、地球全部が協力しても不可能や...

やからヤザカマ。あんたの技術力を借りたい!

どうか力を貸してくれ!!」

 

遠田は、一切の迷いなくその場に深く頭を下げた。

 

「頭を上げろ、遠田。...お前にいくつか問いたい」

 

ヤザカマは指を立て話を続ける。

 

「まず1つ。

技術屋として、他人の技術に乗っかって結果を得ることに対して...お前はどう思う」

 

遠田は顔を上げ、絞り出すような、けれど力強い声で答える。

 

「正直...めっちゃ悔しいわ。可能なら、全部俺の手で、俺の技術で救いたい。

...でもな、この計画に必要なもんは、今の俺には逆立ちしても用意できん」

 

遠田は拳を握りしめ、絞り出すような声で続けた。

 

その瞳には、敗北感と、それを飲み込むほどの強固な意志が同居している。

 

「...俺の技術屋としてのプライドなんて、そんなもん全部捨ててでも、

俺は最高で最善のハッピーエンドを掴み取りたいんや」

 

 

 

「そうか...

では2つ目の質問だ。

お前はなぜ、そこまでして...プライドを捨ててまで、姫様たちを救おうとする?」

 

ヤザカマの眼光が、遠田の心の奥底を覗き込むように鋭さを増す。

 

「それは...

俺の好きな人が、かぐややヤチヨと一緒にいる時...一番ええ顔で笑うからや。

好きな人に、ずっと笑っててほしいと思うんは変なことか?」

 

その言葉には、どんな高潔な思想よりも揺るぎない、1人の男としての真心が宿っている。

 

ただ愛する者の幸せを願った

――1人の男としての魂の叫びであった。

 

 

 

ヤザカマは、その言葉を真っ向から受け止め、しばし沈黙した。

 

月の静寂を体現したような無機質な表情が、わずかに、けれど確実に愉悦に歪んでいく。

 

「がはははは!

最高だな!お前は!

乗ってやる!」

 

ヤザカマは腹の底から突き上げるような大声で笑い、遠田の肩を叩かんばかりの勢いでその計画を肯定した。

 

「理屈じゃねぇ、プライドでもねぇ。ただ、ただ、愛する女の笑顔のため!

月じゃ絶対に聞けないセリフだ!!」

 

ヤザカマは一通り笑ったあと、一介の技術屋として問う。

 

「お前はオレに何をさせたい」

 

「ヤザカマには3つ頼みたいことがある。

1つ目は、8000年前にヤチヨが乗ってきたタケノコ型の宇宙船を修理してほしい。

そうすれば、ヤチヨは、今のお前のように、肉体を得て、現実に存在できる。」

 

目の前のヤザカマという「実例」を指し示し、遠田は言葉を継ぐ。

 

「2つ目は、月から地球までの時間遡行の再計算や。あの時、デカい石にぶつからないルートか、タイミングを割り出してほしい。そうすれば、かぐやは何の負担もなく、真っ直ぐこの地球に戻ってこられる。」

 

そして最後に、この計画の「勝利条件」を口にした。

 

「3つ目は、この世界の輪廻がぶっ壊れてるか、世界線が変化してるかを確認してほしい。

もし、輪廻がぶっ壊れて、世界線が変化していれば、かぐやとヤチヨ、二人を同時に救うことが可能になるはずや」

 

ヤザカマは一度言葉を切り、夜空を見上げて考え込んだ。

 

今、遠田が提示した仕様――それが現在のシステムで実行可能かどうか。

 

そして、完了までにどれほどのコストを要するのか。

 

「なるほど...

1つ目と2つ目の内容は可能だ。

ただ、今はリソースが足りん。一度月に戻り、準備が必要だ」

 

「...! ありがとう。

それで十分や。助かる」

 

遠田が安堵の息を吐く。だが、ヤザカマの表情はまだ晴れない。

 

「だがな、三つ目...これについては可能かどうかが分からん。

理論上、観測はできなくはないが、そのデータの正当性を保証する術が今の俺たちにはないんだ」

 

「そ、そうか...無理を言ってすま――」

 

「――だから」

 

謝ろうとする遠田の言葉を、ヤザカマが鋭く遮った。

 

「1年、時間をくれ」

 

「え...?」

 

「その1年の間に、俺がやれるだけのことはしてみよう。世界線のズレ、輪廻の綻び...

そのすべてを観測し、お前の言う『ハッピーエンド』の裏付けを叩き出してやる」

 

ヤザカマの不敵な宣言に、遠田は目を見開いた。

 

「ただし、条件がある。

計画終了後、俺も地球(こっち)に居たい

月は飽きた」

 

「それは別に構わんけど...」

 

拍子抜けしたような遠田の返事に、ヤザカマは満足げに鼻を鳴らす。

 

「それと、遠田、そして月見ヤチヨとの通信バイパスを確立したい。

軽い相談で月と地球を行き来するのは面倒だ」

 

ヤザカマの現実的な提案に、遠田はスマホを操作しながら応じた。

 

「それってツクヨミ経由でええか?

多分そっちの方が楽やと思うんやけど」

 

かつて正式に月からの迎えとして、ツクヨミに堂々と入場したヤザカマ。

 

それを考えると個別でバイパスを繋ぐより、ツクヨミを経由したほうが圧倒的に楽である。

 

「それで構わんが、月見ヤチヨが承諾するのか?」

 

「だから、今メッセ送って聞いてる...

返信はや...ええってよ」

 

遠田が画面を見せると、そこにはヤチヨからの即レスが届いていた。

 

「ヤチヨがそれ用の部屋用意してくれるらしいわ。

そこに俺らがアクセスできるように権限付与してくれるってよ」

 

ヤザカマは満足げに腕を組み、夜空を見上げた。

 

最高のハッピーエンドを作る条件が最低限整った。

 

「すまん。

以降は基本ヤザカマ主体になる。

負担多くて申し訳ない...」

 

遠田が技術屋としての敬意を込めて頭を下げると、ヤザカマは「気にするな!」と豪快に手を振った。

 

「ところで、計画に関係ない質問なんだが...」

 

「お前、その左目はどうした?」

 

遠田は一瞬、言い淀んだ。だが、隠すことでもないと割り切り、正直に打ち明ける。

 

先日、ヤザカマとの死闘の最中

――限界を超えて魔改造したスマートコンタクトレンズの排熱により、眼球が物理的に焼き切れたのだと。

 

「まじか!それはアホだろ!

道具である以上安全装置は必須だろう!!」

 

ヤザカマは腹を抱えて爆笑した。

 

月の高度な文明で、常に最適解と安全性を重んじてきた彼からすれば、安全性を捨て、性能を突き詰めた遠田一族の考え方は狂気に満ちていた。

 

破壊の権化に見えたヤザカマは、技術者として極めて「まとも」であった。

 

「本当にお前は面白いな遠田。

話を戻すが、1年で可能か不可能かを判別する。

その間、そっちはどうする?」

 

「こっちはサブプランを進めるわ。

サブは月の力借りんでええし、その分時間はかかるけど...」

 

「了解した。では何もなければまた1年後だ

なにかあったらツクヨミ経由で連絡しよう」

 

そう言い残し、ヤザカマは再び虹色の光を纏い、月へと帰っていった。

 

 

ヤザカマが去ったあと、遠田は彩葉と共に、帰路に就いた。

 

「思ったより上手くいったわ!

なんとかなりそうやな!」

 

遠田は交渉が上手くいったことに上機嫌である。

 

だが、隣を歩く彩葉は、先ほどから一言も発していない。

夜の暗がりに紛れてはいるが、彼女の顔は耳の付け根まで真っ赤に染まっていた。

 

(『俺の好きな人が、かぐややヤチヨと一緒にいる時、一番ええ顔で笑うから』)

 

脳裏で、遠田の声が何度もリフレインする。

 

交渉の最中、彼がさらりと口にした言葉。

 

その「好きな人」が誰を指しているのか。鈍感な彼女でも、今の言葉を聞いて気づかないはずがなかった。

 

「匠...」

 

「どうした?

なんか不安なことでもあるんか?」

 

遠田は酷く上機嫌で彩葉の悩みに気が付いていない。

 

「...ううん、なんでもない」

 

そう言って彩葉は歩き出す。

 

暗闇に紛れているはずなのに、顔の熱は一向に引く気配がない。

 

自分の胸の鼓動が、夜の静寂を破ってしまうのではないかと不安になるほどだ。

 

何も知らない遠田の背中を追いかけながら、彩葉は唇を噛み締める。

 

運命を書き換えるという壮大な計画。その中心に、自分への想いがあったのだとしたら。

 

月の光が2人を照らす中、奇妙な「共犯者」たちの長い1年が、静かに幕を開けた。

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