モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方   作:超かぐや姫!脳焼きの民

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小説を書くことの大変さを身に染みたので初見です。


誤字報告ありがとうございます。
めっちゃ助かります。


子育て開始!即終了!!

 

7月13日土曜日の朝のこと

 

朝の支度を終え西竹屋やドンキに向かおうとする遠田匠に一本の連絡が入る。

 

「遠田!!起きてる!?ちょっとうち来て!」

 

酒寄彩葉からの連絡である。

 

嫌な予感しかしない。

 

部屋に向かうと大慌ての彩葉がいる。

 

髪と整える暇さえなかったのかぼさぼさである。

 

「昨日の赤ん坊なんだけど

あんなにデカかったっけ?

幻覚じゃないよね?」

 

指さす先。

 

そこには――昨日より明らかに一回り大きくなった赤ん坊がいた。

 

「赤ん坊ってすぐに大きくなるって聞くけどこんな早いもんなんか???」

 

昨晩非常事態すら楽しんで見せた遠田さえも困惑する。

 

無言で部屋に上がり赤ん坊の隣に掌を並べ写真を撮影しだす遠田。

 

「なにやってんの?」

「大きさの比較。

昨日うちのおかんに連絡したときに写真送ってやとも言われてたからさその写真と比べてみよとおもって」

 

困惑しながら彩葉が問う

遠田は困惑からの立ち直りも早いようだ。

 

「昨日の写真と比較しても明らかにでけぇわ

幻覚じゃなかったぁ」

 

その瞬間、掌に違和感。

 

妙な湿り気。

 

「……こいつ漏らしとるわ」

 

遠田はため息をつく。

 

「とりあえず急いで服とおむつとミルク買ってくる。

布団干しといて、赤ん坊頼むわ。

ついでに道中でおかんに連絡してみる」

 

そう言い残し、遠田は去る。

 

やるときはやる男なのである。

平常時の言動がアレなだけで。

 

 

西竹屋にて

 

「おむつも服もたっかいなぁ。

哺乳瓶ってどれがいいんやろ。

...いっちゃん高いの買っとくか?」

 

遠田悩む。

ただの高校生たる遠田には子育ての知識なんて皆無である。

もちろん昨晩寝る前にも知らべはした。

結論は「うーんわからん!」であった。

 

とりあえず高いやつを買えば安心。

この発想がすでに浅い。

 

会計、約一万五千円。

 

なかなかに痛い。

 

この瞬間だけ、遠田は母に深く感謝した。

 

――が。

 

『あらやだ、一晩でものすごい大きくなってるやんはっはっは!』

 

電話越しでも分かる豪快さ。

 

「これって普通なもんなん?」

 

『さすがにないわ!ぶはははは!

はぁ...なんでそんなにおっきくなったかは聞かんでやわからんから』

 

(役に立たんな、このおばちゃん)

 

感謝の気持ちは西竹屋から帰宅する間になくなったようである。

 

 

 

 

場所は変わり、彩葉の部屋。

 

おねしょで汚れた布団を干し終え、彩葉はようやく一息ついていた。

 

酒寄彩葉は優秀である。

 

文武両道、才色兼備。

 

されど――

一晩寝ただけで完全回復できるほど、人間をやめてはいない。

 

ゲーミング電柱から赤ん坊が産まれ。

 

遠田に拉致誘拐犯の汚名を着せられかけ。

 

朝起きれば赤ん坊は一回り巨大化している。

 

体力もメンタルも、限界値はとっくに赤表示であった。なんなら点灯までしている。

 

 

 

(しかしこの子はどこから来たんだろ?)

 

すやすやと気持ちよさそうに眠る赤ん坊を見つめる彩葉の脳内はこの疑問に満たされていた。

 

電柱から赤子が出てくるなんて聞いたことがない。

 

昨日、彩葉が体験した出来事と、遠田の話を整理すると、

 

七色に光るナニカが送電鉄塔へ降下

 

 

落下地点から電線を伝って光が移動

 

 

アパート前の電柱が発光

 

 

ゲーミング電柱爆誕

 

 

中から赤ん坊

 

「いや、どうゆうことだよ...」

 

その通りである。

 

整理すればするほど、トンチキさが増すだけであった。

 

 

インターホンが鳴る。

 

遠田の帰還である。

 

右手におむつ。

左手にベビー服、哺乳瓶、粉ミルクの袋。

さらにもう一袋、肉、野菜、卵など食料品。

 

「とりあえず要りそうなもんはあらかた()うてきたで。

食材は冷蔵庫入れとくな」

 

許可を得る前に開ける。

 

そして、静止。

 

「...まじか...」

 

「人様の冷蔵庫を勝手に開けたうえで引くな!

あとその憐みの目をやめろ!!!」

 

1食百円を目標とする節約家。

 

そんな極限状態の冷蔵庫の中身は――

 

もやし。

水。

そしてパンケーキの素

 

以上。

 

流石の遠田も、引くを通り越して憐れみの境地に至った。

 

 

 

「とりあえず赤ん坊に服とおむつを装着させたし

あとは3時間ごとのミルクか...

これ自動化できんか?」

 

「多分自動化するより人力でなんとかしたほうが楽だと思う...

あと装着っていうな」

 

「んじゃあ、ミルクは交互にやったほうが安牌か」

 

そんな他愛もない会話のあと、話題は現実へ戻る。

 

3時間に1度のミルクタイム。

 

これが想像以上に重い。

 

方や、三連休は

バイトなし!ゲーム!モノづくり!配信三昧や!と息巻いていた男。

 

方や、

勉強して、ゲームして、目一杯休む予定だった女。

 

そこへ飛び込んできたイレギュラー。

 

二人の3連休の予定は一から組みなおしである。

 

ここで彩葉の脳内に、幾度目かの疑問が浮かぶ。

 

――遠田の、Mr.Mkとしての活動である。

 

彩葉はヤチヨの配信を追っている身だ。

ライバー事情は理解している。

 

動画や配信の内容と同じぐらいその頻度も大切であること。

 

そしてMr.Mkはモノづくりから配信、動画撮影、編集までワンマンで活動している。

 

この三連休は、本来なら貴重な制作期間だったはずだ。

 

そのことを問うと、

返ってきたのは意外で、しかし遠田らしい答えだった。

 

「このまま『じゃ、酒寄さんあとはよろしく!!』って丸投げするわけにはいかんでしょ」

 

少しだけ真顔になる。

 

「そんなことしようもんなら明日の俺は心の底から笑えんと思うし」

 

遠田は独特の価値観、信念を持っているようだ。

 

「俺は楽しく過ごしてバカ笑いするために真剣に生きてるからな。

後悔の後ろ髪を引かれると笑えんし楽しくないやん」

 

遠田は自己中心的な男である。

 

自分が笑っていたいだけだ。

 

だがそのために誰かを蹴落とすことはしない。

 

「一緒に笑おうぜ」と、勝手に肩を組んでくるタイプだ。

 

笑いに関してだけは、誰よりも真面目で、全力で、愚直だ。

 

その姿が、彩葉には少し眩しく見えた。

 

「遠田ってすごいね...」

 

「酒寄さんが褒めた!?俺を?!熱とかない?大丈夫??」

 

一瞬で台無しである。

 

「風邪なんて引いてません。

私だって遠田を褒めることぐらいあります。」

 

眩しさは消えた。

 

そこにいるのは、いつものバカだった。

 

哀れ遠田。

 

なお、このときの遠田は、

いきなり褒められてテンパっただけである。

 

やっぱりお前が悪い。

 

 

 

3時間ごとのミルクタイムを交互にこなしながら2人の三連休は静かに、そして確実に溶けていった。

 

一人では厳しいことでも、

人手があれば多少は楽になる。

 

人海戦術は正義である。

 

どこかの中将も言っていた。

 

「戦いは数だよ!兄貴!」

 

まったくもってその通りである。

 

もっとも

その'数'はたった2人であり、

 

敵は急速に成長する赤ん坊ただ1人なのである。

 

 

 

 

そんな子育て生活が始まって4回目の夜

7月15日...日付を越して

7月16日午前2時...

 

草木も眠る丑三つ時――の、少し前。

 

この時刻のミルクタイムは遠田が担当であった。

寝ている彩葉を起こさぬよう、静かに部屋へ入る。

 

音を立てぬよう扉を開け――

 

そこにいた。

 

黒い服を着た、見知らぬ少女。

 

月明かりに照らされて、静かに立っている。

 

その顔立ちは、

「あの赤ん坊が成長しました」と言われれば

納得してしまいそうな面影を残していた。

 

状況説明不能。

 

理解拒否。

 

脳内処理停止。

 

 

 

「ねぇねぇおなかすいた~

 

ミルク~」

 

月明かりの中、少女は当然のようにそう言った。

 

本能が告げる。

 

――お前の役目(ミルク担当)を果たせ。

 

遠田の脳が、強制再起動する。。

 

そして

 

「キャァァァァ!!」

 

遠田の脳が落ちた。

 

そう遠田はビビりである。

 

和風ホラーも洋風ホラーもダメなのである。

 

ジャンプスケアなどもってのほか。

 

なんでも楽しんで笑って見せるぜ!!と豪語する男だが、

ホラーだけは笑えない。

 

笑えないどころか――

 

泡を吹いて倒れた。

 

 

 

 

「なに!?なにごと!?」

 

甲高い悲鳴で目を覚ました彩葉は部屋の中を見回す。

 

そこにいるのは

 

「びびったぁ」

 

悲鳴にビビっている見知らぬ少女。

 

泡を吹いて倒れている遠田。

 

この男、大事な時に役に立たない。

 

親子はやはり似るらしい。

 

「...え、えーと、どちら様?」

 

これがのちにツクヨミで一世を風靡する

'かぐやいろP'と

Mr.Mk(気絶中)の出会いである。

 

 

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