モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方 作:超かぐや姫!脳焼きの民
番外編は時系列がバラバラです。ご注意ください。
いつも閲覧、感想、誤字報告ありがとうございます。
予約投稿ミスって誤爆したので上げなおしてます。
帰って来た日常
かぐやが月から帰還したあとの物語。
かぐやが彩葉と遠田の元へ帰って来て一晩が明けた。
戻ってくるまでの2年間。
再会した二人の間に流れる空気が、以前よりもずっと密やかで、どこか近い気がするのだ。
この距離感の変化の原因を突き止めるべく、芦花と真実に連絡を取った。
「芦花!真実!
彩葉と匠ってかぐやの居ない間に何があったの!?
なんか前とは違う感じがする!!」
再会の挨拶もそこそこに、かぐやは身を乗り出して二人に詰め寄った。
彼女たちが集まったのは、かつてかぐやと芦花、真実が初めて出会ったあの思い出のカフェだ。
「え~とね...
2人はね~少し前に付き合い始めたよ~」
真実は、かぐやの反応を伺いながら、探り探りといった様子でその事実を告げた。
かぐやが彩葉に対して抱いている、特別で巨大な感情。それが純粋な友愛なのか、
あるいはそれ以上のものなのかは、真実にも測りかねている。
だからこそ、この事実がかぐやにどれほどの衝撃を与えるか、真実は内心ハラハラしていた。
思えば、東大合格の報せと共に「あ、あと遠田と付き合うことになったから」という特大の爆弾を同時に落とされた時の、芦花の惨状は凄まじかった。
あの瞬間の芦花は、ショックのあまり口から半透明の魂が飛び出し、脳破壊を引き起こして完全停止していたのだ。
そんなことがかぐやの身にも起きるかもしれないと...
「え~!
彩葉と匠って付き合ってたの!?
だからあんなに距離近かったんだ!!」
かぐやにとって、彩葉も匠も、かけがえのない大好きな2人だ。
その2人が結ばれ、幸せを掴み取った。
これを喜ばずして、一体いつ喜ぶというのか。
ちなみに、かぐやには芦花のような「脳破壊」の兆候は微塵もなかった。
彩葉と匠がどれほど深い仲になろうとも、彼らが自分を疎かにしないという、岩盤よりも硬い、絶対的な自信があるからだ。
「かぐやはすごいね...」
魂が半分抜けかけ、これまでに何度も脳破壊の洗礼を浴びてきた芦花が、絞り出すように言葉を漏らした。
「だって、2人の距離がゼロになったところで、私と2人の距離が遠くなるわけじゃないから!」
一切の迷いなく断言するかぐや。その背後には、もはや神々しいまでの後光が差している。
「...眩しい。光が強すぎて、目が...っ!」
「かぐやちゃん、ちょっと直視できないよ~」
あまりにも純粋で、あまりにも無敵なその光に、芦花と真実は物理的に目を焼かれるしかなかった。
「彩葉!匠と付き合ってるってほんと!!!」
家に帰ってくるなり、かぐやが叫ぶ。
「そうだよ~
彩葉と匠は付き合ってるよ~
ラブラブだよ~」
「か、かぐや!? ...って、ヤチヨまで!?」
ヤチヨが彩葉の返答を待たずに答える。
「2人はね、付き合い始めてからの3日間、見てられないくらいぎこちなかったんだよー。
関係以外は何一つ変わってないはずなのに、中学生みたいな初々しさで...
あ、その時の様子はバッチリ録画してあるから、後で見せてあげるね」
「ほんと!あとで見せて!!」
かぐやの目が、獲物を狙うハンターのように輝いた。
そう――今でこそ落ち着いているが、付き合い始めた直後の二人は、文字通り「限界」を迎えていたのだ。
彩葉と遠田が付き合い始めた次の朝、顔を見合わせるだけで赤面し、無言の空間が発生した。
それだけでなく、手が触れ合うだけ、目が合うだけで、言葉を発することができなくなる程度にはぎこちなかった。
無言の、気まずい、けれど甘々しい空気がタワマンの一室を包み込んでいた。
そんな2人をヤチヨはニコニコ、にやにやしながら盗撮していたのだ。
「も、もう...ヤチヨ、それ以上言わんで...」
両手で顔を覆い、蚊の鳴くような声で抗議する彩葉。
だが、その隙間から覗く耳の先まで真っ赤な様子は、かぐやにとっては何よりのご馳走でしかなかった。
「彩葉?大丈夫か?
顔真っ赤やで」
不意に、背後から聞き慣れた声がした。
いつの間にか帰宅していた遠田匠が、不思議そうに彩葉の顔を覗き込んでいる。
「た、匠!い、いつの間に!?」
「いや、ついさっき帰って来てんけど...ただいま」
彩葉は、心臓を直接掴まれたかのような衝撃を受け、弾かれたように匠から距離を取った。
先ほどまでヤチヨによって「交際直後の醜態」をバラ撒かれていた余韻のせいで、今の彩葉にとって、匠の顔は直視することすら不可能なほどに眩しすぎた。
そんな状況を、かぐやとヤチヨはニヤニヤしながら見守っている。
「...?」
自分の存在そのものが、
彼は首を傾げながら、心配そうに歩み寄る。
そんな現在進行形で繰り広げられる2人の初々しいコントを、かぐやとヤチヨは、口の端をニヤニヤと吊り上げながら、至福の表情で見守っていた。
そんな初々しいコントを終え、かぐやが作った夕食を食べる4人。
「まじで美味い...
QOLが上がる...」
「ほんとに、かぐやのご飯はおいしいね...。
生きてるって感じがする」
一口運ぶごとに、彩葉と遠田は深いため息とともに涙を流した。まさに、胃袋をがっつりと鷲掴みにされた者の反応である。
かぐやが月へと旅立ち、不在だった二年間。
二人の食生活のレベルは、見るに堪えないほど著しく低下していた。
彩葉も遠田も、決して料理ができないわけではない。人並みの「普通レベル」の腕前は持っている。
しかし、素材の味を最大限に引き出し、食べる者の心まで満たしてしまうかぐやの「家庭の味」には、逆立ちしても及ばなかったのだ。
「おいしい...。
味が、するよぉ...ヤッチョ、いま世界で一番の幸せ者です...っ」
ヤチヨの頬を、大粒の涙が伝い落ちる。
これまで、電子の海の管理人兼歌姫であったヤチヨ。
ツクヨミ内では、味を感じることはできない。
そんな彼女が8000年という永い時を経て、ようやく得た肉体。
昨晩のパンケーキに続き、今夜の夕食は彼女にとって「生命の喜び」そのものだった。
「ふふーん、どやぁ!」
その隣で、かぐやは腰に手を当て、これ以上ないほどの満面のドヤ顔を披露している。
食卓を包むのは、数年の離別の悲しみも、8000年に及ぶ永い孤独をも優しく溶かしてしまうような、温かな湯気と賑やかな笑い声。
肉体を持たず、電子の海を漂っていた者。
月で1人、地球を見上げ続けていた者。
そして、彼女らを救うためにすべてを賭けた2人。
バラバラだったピースがようやく一つに重なり、彼らの「日常」が、本当の意味で再び動き出した瞬間だった。
夕食を食べ終え、心地よい満腹感に包まれながらリビングでくつろいでいた4人。
だが、ヤチヨが放った無慈悲な一言によって、その穏やかな日常は一瞬にして「修羅場」へと一変した。
「そういえば~
匠ってヤッチョに『お前の全部をくれ!!!』って言ってたよね~」
たった今までの春のような陽気が、一瞬でシベリアの寒気へと変わる。
「...匠? どういうこと?」
「待てっ! マジで身に覚えがない! 冤罪や!!」
氷のような眼差しを向ける彩葉と、全細胞で否定する遠田。だが、ヤチヨの追撃は止まらない。
「あんなに激しく、情熱的に求められたのに...
都合よく忘れるなんて、ヤッチョはとっても悲しいよ...ヨヨヨ」
ヤチヨは腕で目元を覆う。
ヤチヨは芝居がかった動作で目元を覆うが、その口角は隠しきれず、邪悪なほどに吊り上がっている。
「待って!待って!
そんなこといつ言ったっけ!?」
「匠がヤザカマと戦っている時だよ~」
あの日、かぐやの卒業ライブで行われた月の軍勢との闘い。
自身の演算能力の限界を超え、ヤザカマを打倒するために、匠がアドレナリンに身を任せて放った魂の渇望。
だが、極限状態だった当の本人は、自分の口が何を滑らせたかなど微塵も覚えていなかったのだ。
「へぇ...そっかぁ...ヤチヨの、全部を、ねぇ...」
彩葉の声は、底冷えがするほど低い。
だが、その瞳の奥には隠しきれない愉悦の光が宿っていた。
別に、当時の二人は付き合っていたわけではない。発言に下心などなかったことも分かっている。
だが、これまでの「初々しすぎる数日間」を散々辱められ、ヤチヨにすべてを暴露された後なのだ。
この千載一遇の反撃チャンスを、彼女が逃すはずもなかった。
「ちゃうやん!
アレはヤチヨの演算リソースをやな...」
遠田は椅子を鳴らして立ち上がり、必死の形相で身振り手振りを使って弁明を試みる。
「へぇ...演算リソースを共有するのが、『全部をくれ』なんて。匠ってば、そんな情熱的な言葉で誘ってたんやね」
「だから違うって! あれは比喩というか、システム的な要求であって...!」
必死に理論武装で盾を作ろうとする遠田。
だが、その盾は、彩葉の「ニヤニヤ」という最強の矛の前では、湿った障子紙のように脆く、あっさりと突き破られていくのだった。
そんな会話に置いて行かれるかぐや。
最初は映画を見るかのように楽しんでいた。
自分だけ、話についていけない孤独。
楽しそうに笑うヤチヨ。その瞳の奥には、彩葉と遠田に対する確かな「熱」が宿っている。
それが戦友としての信頼なのか、あるいはもっと深い親愛なのかは分からない。
そんな中、自分だけ除け者にされていることが我慢ならなかった。
「かぐやだけ除け者はヤダ!!
かぐやも混ざる!!」
そう言って修羅場にかぐやが乱入する。
彩葉に頬を引っ張られている遠田に向かって飛びつきに行く。
そこには笑顔で楽しい日常があった。
遠田は例外である。
その後、どういう訳か、遠田は3人に部屋まで拉致られ、
4人は朝までEx-yOtogibanashiして、めでたしした。
彩葉曰く、「かぐやとヤチヨならいいよ」ということらしい。
翌朝。
リビングのソファには、朝日に照らされて肌がつやつやと輝く、エネルギー満タンのかぐやとヤチヨの姿。
そしてその傍らには、あらゆる意味で体力を使い果たし、真っ白に燃え尽きた遠田と彩葉が転がっていた。
どうやら、嵐のような2人に「喰われた」のは、遠田一人だけではなかったようである。