モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方 作:超かぐや姫!脳焼きの民
前半と後半の温度差にビビる。
いつも閲覧、感想、誤字報告ありがとうございます。
2032年3月末。
「大学受験お疲れ様~!」
彩葉、芦花、真実の三人は、お洒落なカフェの一角で打ち上げを行っていた。
彼女たちの目の前には、これでもかとフルーツとクリームが盛られた豪華なパンケーキが鎮座している。
「彩葉って東大でしょ~
可愛いうえに天才すぎ~もう、無敵じゃん!」
文系から理系へ転向するという高いハードルを軽々と飛び越え、最高学府への切符を手にした彩葉。
芦花が自分のことのように喜び、褒めちぎる。
「流石に1人じゃ無理だったよ。結構匠に助けられたし...」
彩葉は少し頬を染めて謙遜した。
だが、客観的な事実を言えば――原作における彩葉は、遠田の介入がなくとも、その明晰な頭脳で東大に合格してみせる真の天才である。
彼女の努力と資質は、本来、誰の助けも必要としないほど完成されていた。
「いや〜、彩葉は『遠田のおかげ』って言ってるけどさ。
それなら今頃、遠田塾の参加者は全員東大生になってるよ」
真実が、フォークを手に冷静かつ常識的なツッコミを入れる。
確かに「遠田塾」の影響力は凄まじかった。参加した友人たちは皆、苦手だったはずの理系教科、特に数学と物理の成績を爆発的に伸ばした。
それでも尚、東大に現役合格したのは遠田と彩葉のみである。
「教え方が上手いのと、本人が天才なのは別問題でしょ。彩葉は元から凄いの!」
芦花の言葉に彩葉はパンケーキを口に運びながら小さく笑った。
「そうだ。2人に報告しなきゃいけないことがあった」
彩葉はそう言うと、芦花と真実を見つめる。
「私さ、匠と付き合うことになったの」
「えっ!?やっと!?」
真実の叫びに近いツッコミーーもとい、反応がカフェの店内に響き渡った。
隣のテーブルの客がびくりと肩を揺らしたが、今の彼女たちにそんなことを気にする余裕はない。
「や、やっとって...真実、ひどくない?」
彩葉が顔を赤くして抗議するが、真実はフォークを置いて身を乗り出した。
「いやいやいや、彩葉。遠田との距離感結構おかしかったよ!
いつも流れるように遠田の左側にいるし、もう付き合ってるどころか銀婚式の夫婦みたいだったじゃん!」
饒舌な真実の傍らで、芦花だけが幽霊を見たかのように放心していた。
いつか2人が付き合うことだろうと思っていた。覚悟もしていた。
だが、覚悟をしていたからと言ってショックを受けないわけではない。
「彩葉、おめでとう!真実も言ってるけど、ようやく付き合ったんだね」
たとえ、
彩葉が笑顔ならそれでいいと、
その晩、遠田は芦花にツクヨミ内に呼び出されていた。
「綾紬さん、どないしたん?」
「ねぇ、遠田。
彩葉と付き合い始めたんでしょ...」
遠田の問いに答える芦花の声には、あまり元気がない。
「そうやで」
「そっか...」
芦花は、息を深く吸い込み、言葉を紡ぐ。
「私ね...彩葉のことが好きだったの...
可愛くて、綺麗で、優しくて、頑張り屋さんな彩葉のことが...」
彼女の涙混じりの声が響く。
「だけどね...私じゃ彩葉の隣に立てないことも分かってたんだ...
遠田やかぐやちゃんと居るとき、彩葉はよく笑うから...
だから...」
芦花は遠田を正面から見つめる。
「彩葉を悲しませたりしたら、絶対に許さないから!
そんなことがあれば私がっ!...彩葉盗っちゃうから!
だから...彩葉を幸せにしてあげて...」
芦花の眼には涙が浮かんでいる。
自身の恋路を諦め、好きな人の幸福を願う。
そんな強い彼女が流す涙。
どれだけの後悔が、悲しみがそこに含まれるのだろう。
遠田には、彼女が飲み込んだ涙の重さを、そのすべてを理解することはできない。
それでも、彼女の宣言に、勇気に、強さに正面から向き合うことは出来た。
「彩葉に悲しい思いも、後悔もさせん。
...約束や」
迷いのない、鋼のような遠田の宣言。
その言葉を聞いた芦花は、涙を浮かべながらも、最大限の笑みを咲かせる。
もし、ここで遠田が言い淀むようであったら、芦花は本気で、彩葉の手を引いて連れ去るつもりであった。
「そっか...彩葉を幸せにしてあげてね...約束だよ!!」
その叫びは、彩葉への愛であり、遠田への信頼であり、そして自分自身の初恋に対する最後の手向けでもあった。
逃げるようにログアウトした芦花。
綾紬芦花の恋は、ここで幕を閉じた。
けれど、彼女たちが築き上げてきた絆が、この程度で壊れるほど脆くないこともまた、確かな事実だ。
明日になれば、彼女はまたいつもの「綾紬芦花」として、少し腫れた目を隠しながら、彩葉の隣で笑って見せるだろう。
これからも、彼女たちは変わらぬ親友として、共に歩み、共に笑い合う。
だが、今この瞬間だけは。
誰の目も届かない場所で、一人の少女として、胸の奥にある痛みが枯れるまで泣く時間が必要だった。
芦花が静かに涙を拭い、自らの恋に終止符を打った、そのまた後日。
仮想空間・ツクヨミの全域を、かつてない規模の激震が襲った。
『Mr.Mkと、いろPが交際を公表』
そのニュースは、瞬く間にログを埋め尽くし、トレンドを独占した。
『いろPが...俺のいろPが...』
『↑お前のじゃない定期』
『いや待て! 遠田ァ! 俺たちを置いて1人だけリア充になるつもりか!?』
『何やってんだ遠田ァ!!』
いろPガチ恋勢は魂が抜けたように発狂し、一方でMr.Mkの熱狂的なファンたちは、嫉妬と祝福が混ざった複雑な絶叫を上げている。
こんなカオスな状況は、彩葉と遠田にとって想定通りであった。
「公表せずに、後からバレたときの方が面倒」という遠田と彩葉の意見により、このニュースは公開されたのだ。
『交際公表』という特大の爆弾が投下された直後。
彩葉の手元で、スマートフォンのバイブレーションが鳴り響いた。
その画面には彼女の兄である「酒寄朝日」の名前。
『彩葉っ!お、お前...Mr.Mkと交際してるって記事があんねんけど!?』
なかなかにシスコンである朝日。
そんな彼にとって、妹があの
朝日は、このニュースが「誰かのタチの悪いデマ」であることを祈りながら、指を震わせて彩葉に連絡を取ったのだ。
正直、察してはいた。
2年前のかぐやいろP with Mr.Mk 対 黒鬼の竹取合戦のあと、彩葉、かぐや、遠田の3人が同棲していることも知っていた。
いつか、そういう関係になるだろうという予感はあった。
だが。
それはそれ。これはこれ、である。
「そうだよ、お兄ちゃん。
私は匠と付き合うことになったから...」
彩葉の返答を聞き、朝日は奥歯をガタガタと鳴らす。
妹の幸せを願う気持ちと、よりによって、相手があの奇人で変人な
朝日は今、人生最大級の板挟みに遭っていた。
そんな朝日に、彩葉からスマホを受け取った遠田が追撃を入れる。
「帝の
「ちょっと!?」
未来の義兄を全力で煽る遠田。
そんな遠田に朝日の中で何かが弾ける。
『キレちまったよ...ツクヨミに来い...』
そうして幕を開けた、第一次いろP争奪KASSEN。
発端は、妹を愛する兄・朝日の「キレちまった」怒りと、未来の義弟(仮)・遠田による全力の煽りから始まった、
純粋なタイマンバトルーーのはずだった。
しかし、参戦を表明したのは、ショックで理性を失ったいろPガチ恋勢の面々も参戦を表明。
それだけでなく、「遠田ァ!
遠田ことMr.Mk、帝アキラ、いろPガチ恋勢、そしてMr.Mkファンという、四つ巴――
いや、全方位敵だらけの狂乱のバトルロイヤルへと変貌を遂げたのである。
『唐突に始まった、第一次いろP争奪KASSEN!!
いろPの隣をめぐって血で血を洗う争奪戦!!
実況解説は私、乙事照琴でお送りします!!』
爆発音と怒号が響き渡るツクヨミ特設エリア。
その上空に設置された実況解説席で、乙事照琴がテンションを最高潮に引き上げる。
『特別ゲストとして、当事者であるいろPさんにも来ていただいてます!!
いろPさん!当事者として何か一言お願いします!』
『え、え~と...とりあえず...Mr.Mkに勝ってほしいですね...
それはそれとして、これが終わったらオハナシします』
カメラに向けられた彩葉の笑顔は、完全に引きつっていた。
恋人と兄が暴走し、ツクヨミ全体を巻き込んだ事件現場に「主賓」として拉致された彼女の心中は、不服を通り越して「後で全員正座」の決意に満ちている。
『あ、あの~...いつもならオタ公さんが居るような気がするんですけど...どこに?』
普段、乙事照琴と共にイベントの実況解説を行っている忠犬オタ公。
そんな彼女がこの場に居ないことにいろPは疑問を持つ。
『え、え~と...それはですね...』
乙事照琴は空中に投影されているディスプレイの1つを指さす。
その先には、他のプレイヤーを両手で持った特大剣で屠る修羅の姿があった。
かぐやいろPの古参オタクであり、その聖域を誰よりも重んじる忠犬オタ公
そんな彼女は、有象無象がいろPの隣に立つことを拒むために、第一次いろP争奪KASSENに参戦していた。
『『......』』
あまりにガチすぎる身内の乱入。
あまりに気まずい空間に実況解説席は無言になる。
放送事故になるぞ、何かしら喋るんだ乙事照琴。
第一次いろP争奪KASSENの舞台。
それは、この日のために用意された10km四方の広大な特別フィールド。
時間経過と共に戦闘エリアが収縮していくフィールドに、1000人を超えるプレイヤーが等間隔でスポーンした。
KASSENの新モードとして実装予定の「バトルロイヤル形式」のβテストを兼ねたこの試みは、愛と嫉妬、憎悪が満ちた無慈悲な地獄を生み出した。
運よく集結したアジア4兄妹が振り回す、4本のデグリー・クロス。
それは、死を撒き散らす銀色の嵐だった。
連携の取れた十字架の旋風。
何人たりともこの嵐の壁を突破することは叶わず、近付く者は等しく粒子となって消えていく。
彼らにとって、この戦場はMr.Mkと遊ぶための前哨戦に過ぎなかった。
対照的に、北西エリアは静寂と破壊が支配していた。
屍の山を築き、その頂に立つ忠犬オタ公。
特大剣を一振りするごとに、複数のプレイヤーが光の塵へと消し飛ぶ。
彼女の視界に入る者は、敵であろうと味方であろうと、等しく「いろPの隣に立つ資格なき者」。
その基準は彼女の魂のみが知る。文字通り、歩く災害として戦場を裁いていた。
「どこだ、どこにいる!Mr.Mkゥ!」
南東から響くのは、地響きのような咆哮。
Mr.Mkに対する純粋な怒りと殺意に突き動かされる帝アキラ。
両手に構えた棍棒で、群がるいろPガチ恋勢の頭部を次々と砕く。
その鬼気迫る姿は、まさしくの鬼神そのものである。
南西のエリア。
我らがMr.Mkは、徒党を組んで襲い掛かる自身のファン達を蜂の巣にしていた。
「遠田ァ!
ここは実質的なファンミ会場となっていた。
ただし、交わされるのは握手やファンサービスではなく、ビームや銃弾、刃のみ。
会場に残されるのは、Mr.Mkによって焼き払われたファンの亡骸だけであった。
戦闘エリアがゆっくりと収束を始めた。
周囲の敵を逸早く一掃した帝アキラとアジア4兄妹が中央エリアで会敵していた。
「帝アキラ!貴様の相手は我々、上下左右真ん中微敗!デグリー・アジアがしようではないか!!
博士・アジアがマスターアジアのポーズで宣戦布告を行う。
「悪いが、今回ばかりは夢を見せる余裕はないからな!
容赦も加減もない!!」
忌々しい
そんな彼は
帝の放った迅雷の如き初撃を、アジア4兄妹は羽虫のように散って回避する。
次の瞬間、彼らは帝を円陣に閉じ込めるように包囲した。
いかに最強の帝アキラといえど、死角なき四方同時攻撃を凌ぎ切る術はない。
だが、しかし。
今の帝アキラは普段とは異なる。
ファンの面々に夢を見せる必要も容赦も加減もない帝アキラには彼らのコンビネーション攻撃の対処は朝飯前であった。
重厚な棍棒の殻を脱ぎ捨て、剥き出しの白刃が閃く。
博士・アジアと学士・アジアのデグリー・クロスを、帝は冷徹なまでの最小動作で受け流した。
背後から迫る修士・アジアと妹・アジアの攻撃には、分離、浮遊した棍棒が受け止めた。
帝の棍棒は、改修されていた。
刀を抜いている間、取り外された棍棒兼銃がビット兵器として運用できるようになっているのである。
これにより、圧倒的近接攻撃力と手数を手に入れた。
未だに進化を続ける
未完成の最強を相手にアジア4兄妹はただ蹂躙されるだけであった。
博士・アジアと学士・アジアの攻撃をいなし、学士・アジアの懐に潜り込んだ帝アキラ。
そのまま、腹と首に刀を差し込み、学士・アジアを解体する。
『学士・アジア、ロスト!! あまりに、あまりに無慈悲な一撃!!』
実況席で乙事照琴が叫ぶが、戦場は止まらない。
仲間の消滅という、その一瞬の隙を突くべく背後から音もなく接近した修士・アジア。
そんな彼を襲ったのはビットと化した2本の棍棒。
死角から飛来した鈍器に後頭部を強打され、修士の体勢が大きく崩れる。
生まれた致命的な一瞬の隙、棍棒の銃口から放たれた弾丸がその脳天を正確に貫いた。
会敵から、僅か13秒。
一糸乱れぬ連携を誇ったアジア4兄妹の半分を、帝アキラは独力で撃滅せしめた。
そこに「夢を見せるスター」の姿はない。
返り血のエフェクトを浴び、無機質な殺気を放つその後ろ姿は、まさに悪鬼羅刹。
御伽噺のページを破って現れた、生ける伝説の鬼そのものであった。
戦闘エリアの最端。
喧騒と怒号が支配する中央とは対照的に、そこには死神のような静寂が横たわっていた。
Mr.Mkは光学迷彩を展開し、風景の一部に同化して戦場を俯瞰していた。
その手には、武骨なシルエットのビームスナイパーライフルが握られている。
連射性能を極限まで削ぎ落とし、有効射程とビームの貫通力のみを極大まで引き上げた逸品。
積載された倍率可変スコープ越しに、Mr.Mkは帝アキラに蹂躙されるアジア4兄妹の姿を見ていた。
そんな中、スコープの端で、不自然に動く影を捕捉する。
北東エリアで屍の山を築き上げていた忠犬オタ公。
彼女もまた、獲物の喉元を狙う獣の如く、帝とアジア兄妹がぶつかり合う「隙」を伺い、身を潜めていた。
Mr.Mkは、迷うことなく照準をスライドさせた。
狙うは、忠犬オタ公の額。
帝アキラとサシで殺り合うために、部外者には退場して頂く必要がある。
帝アキラが残された博士・アジアと妹・アジアを同時に「排除」し、戦場に僅かな空白が生まれたその刹那。
ビームスナイパーライフルの銃口から放たれた死の光が忠犬オタ公の額を容赦なく撃ち抜いた。
『忠犬オタ公!額を容赦なく撃ち抜かれロスト!!』
乙事照琴が同僚の死を叫ぶ。
中央エリア、そのさらに中央。
収縮を続けた戦闘エリアは、直径わずか数十メートルの決闘場と化していた。
一方は、返り血を浴びた悪鬼羅刹、帝アキラ。
両手に剥き出しの白刃を携え、両肩には分離・浮遊する2本の棍棒ビットが、主の殺意に呼応して鈍い光を放っている。
対するは、光学迷彩を解いたMr.Mk。
両手にビームサーベルを構え、その周囲には、4基の小型ビットが、幾何学的な軌道を描きながら浮遊していた。
2人は、正面から相対していた。
逃げも隠れもしない。計算も策略も、今は必要ない。
ここから始まるのは、理屈抜きの義兄弟喧嘩。
「彩葉が欲しければ俺を倒してみろ!!」
「言われずともやったるわ!」
短い言葉が交わされた、その刹那。
ツクヨミの空間を切り裂く爆音と共に、2人は超高速戦闘へと移行した。
流星と化した2人は空を駆け、激突する。
互いのビット兵器による絶えることのない射撃の雨。
光の翼の圧倒的機動力の前に射撃は意味をなさず、戦闘は超至近距離戦に移行する。
(光の翼面倒やな...誰やねんこんなん作ったんは...)
迫り来る帝アキラの白刃を、ビームサーベルで火花を散らしながら受け流し、Mr.Mkは内心で毒づく。
(俺なんよね~
流石俺の作品って自惚れとくか)
帝アキラの2振りの棍棒、そして光の翼はMr.Mkの作品である。
最も、棍棒のビット化にMr.Mkは関与していない。
(とりあえず、相手の翼を捥ぐ!)
Mr.Mkは正面から突撃し、白刃とビームが火花を散らす至近距離で鍔迫り合いを演じる。
4基のビットのうち、2基で帝の棍棒ビットの動きを牽制。
そして残りの2基から放たれたビームが帝の光の翼の基部を破壊する。
「なっ...!?」
翼を失い、重力に引かれる帝アキラ。だが、彼はただ墜ちる男ではなかった。
地上に落下する帝アキラだが、ただやられる男ではない。
「...道連れだ、Mr.Mkゥ!」
落下する刹那、残された棍棒ビットが咆哮を上げ、Mr.Mkの翼を粉砕する。
爆炎と共に、2つの流星は地面へと叩きつけられた。
もう、空を飛ぶ手段も、ビットを操る余裕もない。
互いのHPゲージは風前の灯火。
先に一撃を入れた方が、このKASSENの覇者となる。
帝は、迷わず走り出した。
狙うは、Mr.Mkの致命的な弱点——―かつて失った左側の視界。
見えない死角から回り込み、一瞬の反応の遅れを突く。帝の振るう刀が、遠田の首筋へ向けて最短距離で振り下ろされた。
勝負は決した。誰もがそう確信した、その直前。
遠田の、動かないはずの左目が妖しく光った。
刹那、Mr.Mkの左眼球から一条のビームが放たれた。
失った左目の代わりに埋め込まれた、自作の義眼。
この義眼によって視界が戻るわけではなかった。
しかし、視力を取り戻すためのデバイスではなく、男の夢を詰め込んだ隠し武装へと改造されていた。
小型故に火力も射程も微々たるもの。
しかし、相手は今、刀が届くほどの超至近距離にいる。
そして、あと一撃で沈むほどに削られている。
これらの条件が重なり、義眼ビームが最大限の効果を発揮した。
放たれた義眼ビームは、回避不能の距離から帝アキラの右目を正確に撃ち抜き、残り僅かなHPを削り切った。
『決まったぁぁ!!
第一次いろP争奪KASSENの勝者はMr.Mk!!!
いろPの隣を守り切ったぁ!!!』
乙事照琴の絶叫が、静まり返ったフィールドに木霊する。
優勝者の誕生に沸き立つ照琴の横で、彩葉が深い、深いため息と共に頭を抱えていた。
遠田が朝日を煽ることさえしなければ、もっと平穏だったというのに...
兄が鬼神化することも、オタ公がバーサーカーになることもなかったはずなのに...
こうして第一次いろP争奪KASSENは幕を閉じた。
この後、遠田と朝日は3時間にわたって、彩葉から「周囲を巻き込むことの是非」と「家族・友人間の適切なコミュニケーション」について、みっちりと説教を食らうことになった。
結論:煽った遠田と乗った朝日が100%悪い。