モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方 作:超かぐや姫!脳焼きの民
彩葉と遠田の初デート回です。
イチャイチャさせます。
いつも閲覧、感想、誤字報告ありがとうございます。
2032年4月末。
大学生になって初めての
遠田は自室で頭を抱えていた。
彩葉と交際を始めてそろそろ1か月が経つ。
世の中の「カップル」という響きにようやく慣れてきたものの、実情はと言えば、高校生の頃からほとんど変わっていない。
同じ屋根の下で暮らし、同じ釜の飯を食べ、外に出る時は彩葉が遠田の左側に立つ。
おい、遠田。お前らカップルどころかやってること熟年夫婦と変わらんぞ。
そんなことに気が付かない遠田。
せめて、デートにでも行きたい。
せっかくの大型連休だ。どこかへ出かけたい。恋人らしい思い出の一つも作りたい。
だが、いざ誘おうとすると、大きな壁が立ちはだかった。
「どこか行こうって誘うのはええけど...肝心の行き先が決まってへんのは、無責任すぎるやろ」
スマホの画面を見つめながら、遠田は独り言をつぶやく。
彩葉を喜ばせたい。
けれど、自分がリードして「ここに行こう」と胸を張って言えるような場所が思いつかないのだ。
「う~~ん、どうしたものか...」
デスクに突っ伏して唸る遠田。
検索画面には[GW 大学生 デート]なんて文字が虚しく並んでいる。
「匠!なにか悩み事?」
「うっわ!!びびったぁ」
突如遠田のスマホからヤチヨの声が響く。
「なになに?もしかして彩葉とのデートプランについてお悩みかな?」
「なんでバレてんねん...」
画面の中で、ヤチヨが楽し気に笑っている。
『検索履歴に[GW 大学生 デート]なんて残ってたら、誰でも分かるよ~』
さらば遠田のプライベート。
『ヤッチョ的には、温泉旅行とか~?』
「温泉はハードル高いわ...」
思わず頭を抱える遠田。
付き合って1か月、大学生になったばかりの遠田には、温泉旅行という単語の破壊力は凄まじかった。
宿泊、浴衣、夜の会話...
脳内シミュレーションがそこに至った瞬間、顔が熱くなるのを感じた。
「ムリやムリ!付き合いたてやぞ!
もっとこう...なんや...簡単なもんがあるやろ...」
『えー? 匠って意外とピュアなんだね~。
ヤッチョ的には混浴露天風呂とかで一気に距離を縮めるプランもアリかと思ったのに!』
「んなこたぁ出来るわきゃねぇだろ!!」
全力で、かつ即座に否定する。
画面の中でケラケラと笑うヤチヨを指差して叫ぶが、その耳元がわずかに熱くなっているのを、遠田自身も自覚していた。
ヤチヨは時々わざと極論を投げて反応を楽しんでいる節がある。
『冗談だよ~。やっぱり、ショッピングモールで買い物とか?
映画観て、ご飯食べて、ちょっとしたプレゼント買ったりしてさ』
「それが無難か...
よし...彩葉誘って来るか...」
独り言のように呟き、自分を納得させるように頷く。
これ以上悩み続けても、時間は過ぎるだけだ。
遠田は意を決して席を立ち、スマホを掴み直すと、彩葉の元に向かう。
『いってらっしゃ~い。頑張ってね~』
ヤチヨの無責任なエールが、背後から響く。
「な、なぁ、彩葉。
ゴールデンウィークの予定って空いてる?」
自習に集中していた彩葉の隣に、遠田がおずおずと歩み寄る。
その足取りは、どこかぎこちない。
「ゴールデンウィーク?
空いてるけど...」
彩葉が顔を上げ、不思議そうに遠田を見つめる。
その真っ直ぐな視線に、遠田は思わず喉の奥が乾くのを感じた。
「そっか...
ゴールデンウィークにさ...買い物..」
言いかけて、一度言葉を飲み込む。
「買い物に行こう」と言うだけなら簡単だ。
けれど、今の自分たちが踏み出すべき一歩は、それでは足りない気がした。
「...デート、行かへん?」
顔を朱く染めながら、遠田はついにその言葉を口にした。
「ええよ...ん?
...えっ、で、デート!?」
一瞬、生返事をした彩葉だったが、一拍おいて、顔を朱く染め、フリーズする。
「そ、そうや...
彩葉...改めて、俺と一緒にデート行かん?」
逃げ出したくなるような沈黙の中、遠田は震える声を絞り出した。
視線を逸らさず、真っ直ぐに彼女を見据える。
「...はい」
消え入るような声。
彩葉は、茹で上がった顔を隠すように俯いたまま、小さく、けれど確かな拒絶のない頷きを返した。
2人だけの世界に、甘く痺れるような緊張感が満ちていく。
『なんか、プロポーズしてるみたいな雰囲気だね~』
「「ヤチヨ!?」」
突如として遠田のスマホから響いた、場違いに明るい電子の声。
完成されかけていた2人だけの世界は、一瞬にして木っ端微塵に打ち砕かれた。
「な、何言っとんねん!た、ただ、デートに誘っただけやん!」
裏返った声で叫ぶ遠田。
その顔は、もはや赤色を通り越して、熱を帯びた蒸気を吹き出しそうなほどだ。
遠田の顔は、赤色を通り越して、熱を帯びた蒸気を吹き出しそうなほどだ。
『いや~でも言い方とか、雰囲気がデートに誘うそれじゃなかったよ~』
「ちゃうやん...これは、そう、あれや、緊張や!
こんなん初めてやから緊張しただけや!!」
遠田の必死の言い訳も、ただの照れ隠しにしか見えない。
『へぇ~?匠ってば緊張してたんだ?
それってやっぱり彩葉のことがそれだけ特別に...』
「だぁぁーーーっ!」
もはや言葉にならない叫びを上げ、遠田は力任せにスマホの電源ボタンを押し込んだ。
暗転する画面。
これでようやく静寂が訪れる——はずだった。
『彩葉のスマホからでもお邪魔できるんだよ~』
今度は彩葉のデスクの上に置かれた端末から、ヤチヨの勝ち誇ったような声が響く。
電子の海で生きる歌姫にとって、端末の電源を切る程度の抵抗は、逃走経路を一つ塞いだに過ぎない。
「ヤチヨ...お願い...これ以上は...っ」
彩葉は、茹で上がった顔を両手で覆い隠しながら、消え入るような声で懇願した。
その指先は小刻みに震えている。
これ以上、自分たちの内面をヤチヨに言語化され、白日の下に晒され続けたら、羞恥心で心が焼き切れてしまいそうだった。
『彩葉直々のお願いなら仕方がないなぁ...
それじゃあ、ヤッチョは退散するよ~』
ヤチヨは満足げに笑うと、今度こそ静かに沈黙した。
「「.........」」
後に残されたのは、嵐が去った後のような、けれど先ほどよりもずっと密度の高い、気まずくも甘い空気。
電源の落ちたスマホを握りしめたまま固まる遠田と、顔を覆ったまま動けない彩葉。
その後、どちらからともなく「...あ、あの」「...うん」と、意味をなさない言葉を交わし、遠田は彩葉の部屋を逃げるように後にした。
そんな喧騒と気恥ずかしさを乗り越え、ついに迎えたゴールデンウィーク、デート当日。
準備を終えて部屋から出てきた彩葉をひと目見た瞬間、遠田は石像のように固まった。
「...あ」
声すら出ない。
今日の彼女は、いつも以上に眩しかった。
艶やかな髪を高い位置でポニーテールに纏め、うなじが覗く。
普段とは違う、繊細な色使いのメイク。
それが彼女の端正な顔立ちに重なり、いつも以上に大人びて見えた。
ブルーのラインが知的なアクセントを添える赤みがかったニットは、彼女の柔らかなシルエットを程よく強調していた。
そこに合わせた白のボリュームスカートが、彼女が動くたびにふわりと揺れ、春の陽光を反射している。
大人びたカジュアル。けれど、細部まで計算されたその装いは、彼女の抜群のスタイルと整った顔立ちを、これ以上ないほどに引き立てていた。
「...匠...どうかな...変じゃないかな?」
「あ、あぁ。
めっちゃ似合っとる...綺麗や...」
たどたどしく、けれど心からの本音を絞り出す。
脳内は彼女の美貌という名のノイズで埋め尽くされ、気の利いた言葉なんて一つも浮かんでこない。
「...ありがと」
彩葉は照れくさそうに視線を泳がせ、遠田はあまりの直視できなさに顔を背ける。
二人の顔は、もはや茹で上がった甲殻類のように真っ赤だった。
「行こっか...」
ぎこちなく歩き出した二人の間には、まだ少しの距離がある。
けれど、その距離さえも熱を帯びているような、特別な1日が幕を開けた。
そうして2人は電車を乗り継ぎ、横浜にある某三井アウト〇ットパークに到着した。
広大な敷地を歩き回りながら、服や靴、鞄など、目に入るものすべてを品定めしていく。
最初は遠慮がちだった彩葉も、次第にエンジンがかかってきたのか、遠田を着せ替え人形にして楽しむようになった。
「匠、これも着てみて」
「俺には、派手すぎんか?」
そんなやり取りを繰り返しつつ、遠田も負けじと、自分好みの服を彩葉にあてがって着せ替えのお返しを楽しんでいた。
「ねぇ...匠...せっかくのデートでお金出してもらってありがたいんだけど、本当に大丈夫なの?」
ふと、彩葉が心配そうに遠田の顔を覗き込んだ。
今日のデート、移動費から食事、買い物の支払いに至るまで、すべてを遠田がスマートに
――いや、どこか「豪快に」引き受けていたからだ。
「大丈夫、大丈夫!
ツクヨミでめっちゃ稼いだし」
遠田のお財布には、圧倒的な余裕があった。
先日、視聴者から「作った製品を量産して売らないのか」という提案を受け、試験的に量産型の『光の翼』をオークションに出品してみたのだ。
すると、あれよあれよという間に価格が跳ね上がり、気づけば個人の大学生が手にするには想像もできないほどの金額に達していた。
そして、その『光の翼』を、競合を蹴散らして落札したのは...他でもない、ヤチヨだった。
ツクヨミの管理者にして絶対的な歌姫。
彼女の財力ならば、落とせぬ商品などなかった。
『ヤッチョだけ仲間外れなんて、絶対に許さないんだから!』
落札直後、彼女から届いたメッセージはそんな叫びだった。
かぐやの卒業ライブにおいて、彩葉、黒鬼、芦花、そして真実の全員に配布された光の翼。
ただ1人、それを持っていなかったヤチヨの執念が、今の遠田の潤沢なデート資金へと形を変えていた。
尚、かぐやも光の翼を持っていないことを全員が忘れている。
「なあ、ちょっと行きたいとこあんねんけどええ?」
15時を回り、歩き疲れた頃合いを見て、遠田が休憩を提案する。
「いいけどどこなん?」
彩葉が小首をかしげて尋ねる。
手には先ほど遠田に選んでもらったショップの袋がいくつか提げられていた。
「もみじ茶屋ってとこやねんけど、抹茶使ったデザートが有名らしいねん。
『宇治抹茶ティラミス』と『抹茶生わらび餅』が美味そうでな」
そう言って遠田はスマホの画面を彩葉に見せた。
そこには、升に入った鮮やかな緑のティラミスと、とろけるような質感のわらび餅の写真が並んでいる。
「これ美味しそう!
匠って抹茶好きなん?」
彩葉の瞳がパッと輝く。
スマホの画面に映る鮮やかな緑色を食い入るように見つめている。
「最近、ハマっててな」
2人は潮風の吹くデッキを歩き、和の趣が漂うその店へと向かった。
贅沢なデート資金がある今、注文に迷う必要はない。
遠田は彩葉が食べたそうにしているものを、全部食べさせてやるつもりだった。
「彩葉を喜ばせたい」という大義名分を隠れ蓑にして、実は自分もそのとろけるような宇治抹茶ティラミスに惹かれている。
「お待たせしました。
ティラミスドリンクセットと抹茶生わらび餅ドリンクセットです。」
和モダンな盆に乗せられて、主役たちがテーブルに届けられる。
目の前に置かれた、升いっぱいに敷き詰められた鮮やかな緑の粉末。
その美しさに、遠田の瞳は子供のようにキラキラと輝いた。
「...っ、美味い...美味すぎる...!」
スプーンを一口入れた瞬間、遠田の表情が劇的に変化した。
表面の濃厚な抹茶パウダーの下から現れる、とろけるようなマスカルポーネ。
そのハーモニーに、今にも感動の涙が零れ落ちそうなほど、彼は宇治抹茶ティラミスの世界に深く没入していた。
「...ふふ、そんなに美味しいの?」
あまりに幸せそうな遠田の反応に、彩葉は思わず小さく吹き出しながら問いかける。
「食べたら分かるで...ほら!」
無意識だった。
こんなに美味しいものを1人で味わうのはもったいない。
そんな、子供のような素直な共有欲求から、遠田は迷わず行動に移していた。
自分が今使っているスプーンにたっぷりとティラミスを掬い、そのまま彩葉の口元へと差し出した。
「えっ...あ...」
差し出された木製のスプーンと、遠田のまっすぐな視線。
それが間接キスであることを理解した瞬間、彩葉の顔は一気に赤く染まった。
けれど、差し出された好意を拒む選択肢などなく、彩葉は恐る恐る、そのスプーンに口をつける。
「...っ!!」
口の中に広がる、抹茶の程よい苦味と上品な甘さ。
そして、淡雪のように消えていくクリームの質感。
「お、美味しい...」
彩葉は、遠田がこれほどまでに感激していた理由を、その身をもって知ることになった。
口の中に残る甘美な余韻と、木製のスプーンに残った確かな熱。
(これ...匠がさっきまで使ってた...)
心臓の鼓動が耳元まで跳ね上がる。けれど、やられっぱなしでいるのは、今の彼女のプライドが許さなかった。
「これも美味しいよ」
仕返しとばかりに、彩葉は自分の皿にある抹茶生わらび餅を菓子楊枝で器用に持ち上げた。
きな粉と抹茶をたっぷりと纏い、今にも零れ落ちそうなほどプルプルと震える塊を、遠田の唇の間近まで運ぶ。
「は、はい。あ~ん...」
彩葉は、敢えてその言葉を、甘く、はっきりと声に出した。
「...ッ!?」
その瞬間、遠田の脳内に強烈な電流が走った。
差し出されたわらび餅。
その先にある、少しいたずらっぽく潤んだ彩葉の瞳。
(あ...待て、俺、さっき...彩葉に...か、間接...)
ここでようやく、遠田は先ほど自分が無意識にしでかした間接キスという暴挙の全貌を理解した。
理解した途端、全身の血が音を立てて顔面に逆流していく。
みるみるうちに遠田の顔が、茹でた蟹を通り越して深紅に染まっていく。
自覚した瞬間に心臓がバックバクと暴れ出し、目の前のわらび餅が、まるで爆弾か何かのように恐ろしいものに見えてくる。
「...食べへんの?」
小首を傾げて、追い打ちをかける彩葉。
普段使わない方言を交えることで攻撃力を増していた。
逃げ場を失った遠田は、もはや羞恥の限界を突破し、爆発寸前の状態でその「甘い爆弾」を迎え撃った。
「...う、美味い...」
「「......」」
勢いのままにしでかした「あーん」の応酬。
その直後、二人の間に訪れたのは、心臓の音すら聞こえそうなほどの深い沈黙だった。
咀嚼する音すら憚られるような静寂。
ティラミスとわらび餅のとろけるような甘さも、今はただ、熱くなった脳内をさらにかき乱す刺激でしかない。
ふと我に返ると、周囲の視線が痛いほどに刺さっていた。
賑わう店内の客たちからの視線は、あまりの初々しさに「見てはいけないものを見てしまった」という冷ややかさと、それ以上に「ごちそうさま」と言いたげな、どうしようもなく生温かい感情が混ざり合っている。
「...な、なぁ」
「...う、うん」
遠田は手元の冷めたお茶を、まるで命の水であるかのように一気に煽り、彩葉は意味もなく自分のスカートの裾を指先で弄り始めた。
2人の間には、世界で1番甘くて、世界で1番気まずい時間が流れていた。
2人の顔の熱がようやく引き、買い物を再開した頃。
夕暮れに近い午後の光が、アウトレットの通路をオレンジ色に染め始めていた。
顔の熱こそ落ち着いたものの、二人の頬にはまだ、消えきらない淡い朱が残っている。
そんな中、遠田は自分の左側、いつもの「定位置」を歩く彩葉に、意を決したように声をかけた。
「なあ、彩葉...今日ぐらいは俺の右側に居ってくれん?」
「えっ、なんで?」
彩葉は不思議そうに首を傾げる。
遠田が左目の視力を失って以来、彼女が彼の左側を歩くのは、2人にとって無言の約束事のようなものだった。
見えない死角をカバーし、彼が何かにぶつからないように、あるいは彼が不安を感じないように。
それは彩葉なりの、献身的な愛情の形でもあった。
「え、えっとな...その...
彩葉が俺の見えん左をカバーしてくれてんのは...重々、知っとんねんけど...」
遠田の声は、先ほどの「あーん」の時以上にたどたどしく、迷路を彷徨っている。
「その...彩葉の顔をよぉ見たいねん...
左側に居ると、ちょっと見えにくいし...」
遠田にとって、左側は暗闇に近い「空白」の領域だ。
そこに彩葉がいてくれる安心感は何物にも代えがたい。
けれど、今日という特別な日、精一杯にお洒落をして、自分を真っ直ぐに見つめてくれる彼女の美貌を、彼はその唯一残された右目で、一瞬たりとも逃さずに焼き付けておきたかったのだ。
「...匠」
彩葉は呆気にとられたように目を丸くした。
遠田の珍しいわがままに、彩葉はふわりと微笑みかける。
「...わかった。今日は右側に居るね」
彩葉は小さく笑うと、遠田の背後を回って右側へと移動した。
右隣に並んだ彼女の姿が、遠田の視界に鮮明に映り込む。
「...これで見やすくなった?」
「...ありがとう。よぉ見えるわ...」
右側を歩く彩葉と、それを眩しそうに見つめる遠田。
遮るもののないその視界には、彼女の微笑みも、風に揺れるポニーテールも、照れくさそうに泳ぐ瞳も、そのすべてが宝物のように収まっていた。
「彩葉...大好きや...愛しとる」
不器用で、けれど一切の迷いがない、心からの独白。
これまでの「あーん」の恥ずかしさも、周囲の目も、今はもうどうでもよかった。
ただ、隣にいる、自分を信じて隣を歩いてくれる彩葉に、この想いを届けたかった。
「...私も。匠...大好きだよ...愛してる」
彩葉もまた、真っ赤な顔を隠すことなく、真っ直ぐに遠田を見つめ返した。
彼女の声は、潮風に溶けて消えてしまいそうなほど優しく、けれど遠田の胸の奥底には、どんな爆音よりも強く響き渡った。
2人の歩幅は、先ほどよりも少しだけゆっくりと、重なり合うように進んでいった。
右側を歩く彼女の体温が、触れ合うか触れ合わないかの距離で伝わってくる。
見えない左側の不安を、見える右側の幸福が塗り替えていく。
ゴールデンウィークの喧騒の中、二人だけの特別な時間が、オレンジ色の世界に溶け込んでいった。
デート先候補として、温泉旅行もありました。
初デートで温泉はハードル高いか...というのと、
たまたま見つけたもみじ茶屋さんに引かれて、アウト〇ットへ変更しました。
作者も宇治抹茶ティラミス食べたい...